巷で話題のイーオくん!
「このごみ、どうやって捨てればいいの?」と、捨てたいものを前にして迷った経験は誰にでも一度はあるはず。こんなときに、手軽に誰かに聞くとができたら助かるのに…。
横浜市では「ボウリングの球」は燃えないごみです
そんな横浜市民のニーズに応えてくれるのが、2017(平成29)年3月から実証実験が行われている「イーオのごみ分別案内」。
これがイーオくんです(横浜市HPより)
横浜市民に限らず、横浜市のHPにアクセスすれば誰でも手軽に利用可能。イーオくんに捨てたい物の品目を話しかけると、分別品名や具体的なごみの分別方法を答えてくれる。
このアイコンをクリック!(横浜市のHPより)
パソコンに不慣れな高齢者やスマートフォンによるコミュニケーションに慣れた若年層にも興味を持ってもらえるよう設計されただけあって、操作方法は非常に簡単だ。
この「イーオのごみ分別案内」が、「旦那」「妻」「夢」「過去」など、ごみ以外の珍項目を入力しても“神回答してくれる!”と最近巷で話題になっている。
ちょっとイジられてません?
旦那と聞くと「グスン」と悲しそうな表情
さらに、他人にはなかなか聞けないあんなグッズの捨て方まで熟知しているらしく、一部青年たちからリスペクトされているそうだ。
こんな風に話題になっていることを、横浜市はどう受け止めているのだろうか? こんなにイジられて、怒っていないのか? そしてどんなきっかけや経緯があってこの企画が誕生したのか? 苦労した点は? 横浜市に取材を敢行!
燃やせるごみの約15%が“未分別”
今回取材に対応してくれたのは、横浜市資源循環局政策調整課3R推進課長・江口洋人(えぐち・ようと)さん。
急な依頼にも関わらず、迅速に対応いただきました
まずは、「イーオのごみ分別案内」が誕生したきっかけや経緯を聞かせていただくことに。
「横浜市では年間ごみ排出総重量約60万トンに対して、約15%が“未分別”であるという課題を抱えています。未分別のごみは適切にリサイクルすることができず、そのぶん環境に負荷がかかりますので、以前からごみ分別率を改善する施策を講じてきました」と江口さん。
分かりやすいパンフレットを作成して配布しているが…
「イーオのごみ分別案内」が登場する以前から、横浜市では分別検索システム「ミクショナリー」を実施している。
横浜市HP内にあるページにアクセスし、検索欄に分別法を知りたい品名を入れて検索ボタンを押すだけで、具体的な分別方法を検索できるというもの。
ここにもイーオくんがいるんですね(横浜市のHPより)
しかし「ミクショナリー」には、入力した単語に対して関係性の薄い情報までヒットしてしまうなどの課題があった。
例えば、収納に使う「ラック」の分別を知りたいのに、「ラック」で検索すると「ブ『ラック』ボード」など、46件の対象項目が表示されていた。
これは探すのが大変…
今回の実験では、いかにしてユーザーの意図をくみ取ってピンポイントな回答ができるかというユーザビリティを重視し、システム開発者と何度も相談を重ねたという。
2万語以上の単語データを搭載!
システムの開発はNTTドコモ。2016(平成28年)9月に同社の提供するチャットボットシステムを使用して、一緒に新しい試みができないかという提案が横浜市にあった。横浜市がそこにごみ分別サポートとの親和性を見い出したことで、今回の企画がスタートした。
江口さんは「横浜市には年間約13万人の転入者がおりますので、新たに市民になった方々にも横浜市のごみ分別ルールを理解していただきたいのです。そのために、手軽に利用できて、的確な対応ができる高精度のチャットボットは有効だと考えました」と経緯を語る。
ごみの分別ルールについて説明する江口さん
このシステムを完成させるには膨大な量の単語やそれに対応する回答を用意する必要があったが、「ミクショナリー」で培った2万語以上の単語データを活用できることが大きな強みになった。
質問項目に対する分別方法はもちろん、雑学やクイズなども案内してくれるイーオくん。NTTドコモの言語処理ノウハウを生かして会話形式の表現にも対応するなど、楽しい要素が盛り込まれている。
「クイズ」と入力するとクイズを出題してくれる
今回の開発はNTTとの共同実証実験であるため、実験段階では横浜市からNTT側への支払い等は発生しておらす、現時点で発生した費用は「開発のために市の職員が稼働した人件費程度」とのこと。
今後本格稼働した場合は、何かしらの形でNTT側への支払いが生じる可能性もあるそうだ。
実証実験の目的は?
2017年3月6日に開始された実証実験は実際にイーオ君が利用者の質問に対してどの程度的確な対応が可能か、そしてどれくらい利用されるのかを探ることが大きな目標だという。
すごくよく回答できてると思うけど…
これに対して江口さんは「なかなか良い手ごたえを感じています。転居が多い4月やゴールデンウイークを含む5月はごみの分別に関する問い合わせの電話が増えるのですが、今年は通年よりも少ないと感じています。これがイーオのごみ分別案内が活用されたおかげであれば、非常にうれしいです」と話す。
実証実験は2017年6月までの予定だったが、想像以上に反響があったこと、そしてより多くの方に利用していただくことで検証に有益なサンプルを獲得することを目的に2017年9月末日までの延長が決定。9月以降、本格導入するかなどについては現時点ではスケジュールも含めて未定だという。
想像以上の対応力を見せるイーオくん!
いろいろと真面目なお話を聞かせていただいたところで、巷で話題になっている珍質問について聞いてみる。
横浜市としては、特に「変な質問しないでください」と怒っている様子はない。「おかげさまでたくさんのメディアに取り上げていただき、話題になっていることはありがたいことです。より多くの方に愛用していただけるよう、楽しい要素を盛り込んでいるので、それもご利用いただきたいです」と、むしろ話題になっていることを前向きにとらえていた。
「旦那を捨てたい」がSNS拡散された8月15日以降、話題だという
ということで、調子に乗って「旦那」「姑」「嫁」などのキーワード以外にもユニークな回答が出る単語を教えていただいた。
まず「横浜名物」といえば?
イーオくん、きょうは油多めな気分らしい
歴史にも詳しいイーオくん。野球の「バット」と調理器具の「バット」も区別
「タンス」と入力すると分別方法が表示されるが、「タンスいくら」と入力すると…
丁寧に粗大ごみ排出時の手数料まで教えてくれる! 直接の申し込みも可能
イーオ君の趣味や身長も答えてくれる!
横浜市では初となるAI活用サービス「イーオのごみ分別案内」。
「今後本格始動した場合は、さらに利便性を高めるためにアプリ化できればよいですね。また、“大根の葉”と入力すると大根の葉を捨てずに活用できるレシピを案内するなど、生活に役立つ情報を提供する機能なども追加することができれば、より利用価値が高まると思います」と江口さんは展望を語ってくれた。
取材を終えて
SNS投稿がきっかけとなったが、横浜市がイーオくんに望む本来の目的はごみの正しい分別を実現することによる環境負荷の軽減。
横浜市のごみ分別率向上の大きな一歩となるべく、頑張れイーオくん!