あのとき渡せなかった初めての引っ越し祝い
今回、引っ越し祝いを渡される友人の能登さん。
昔から記事の撮影でお世話になっている能登さん。現在、仕事を退職し、新しい仕事に向けて準備しているところである。
それにともなって、環境を変えるために引っ越したそうで、先日遊びに行ってきた。
普段はテレビやゲーム、読書など有意義な生活をしている。
遊びに行っても特にすることなく寝た。
楽しい話をして、疲れたら寝て、そして帰るという生産性のないことをして能登さんの新居を後にしたが、これではあまりにも失礼だと思い、(いつもお世話になっているのだから引っ越し祝いをあげよう)と心にちかって帰った。
しかし、実際にあげようとしたとき、なにをあげればいいのだろうか。1週間、色々とお店をまわった。まずは正解がありそうなデパートの地下街へ。
デパ地下に行ってみた
世の中にある全てのおいしさがそこにはある、と言われている場所をご存知だろうか。それはデパ地下である。満腹中枢を満たすためのあらゆるおいしい料理が存在している理想郷である。
そこにあるインフォーメーションで引っ越し祝いについて聞いてみた。
――あの、友人の引っ越し祝いで何かあげたいのですが、どういったのが一般的ですか?
「よくお客様が買われるのは、日持ちするものだったり商品券ですね。」
有名な老舗和菓子店のようかん。今、気づいたけどべらぼうに高級じゃないか。
洋風なおかし。エンゼルパイとかじゃない。
おせんべいも日持ちするので人気らしい。
なんというか、想像通りの答えだったと思うが、これが一般的なのだ。相場は5000円~10000円らしい。このあと、CDショップやドンキホーテ、果物屋など様々なお店で聞いてみたが、これは候補に入れたいと思った物を紹介していく。
デパ地下の中では、個人的にこれを送りたい。そして、「一緒に食べる?」と聞いてきてほしい。食べるから。
電気量販店で引っ越し祝いのヒントをもらう
電気量販店でもデパ地下と同じく聞いてみる。新生活にふさわしい、これがあれば便利というものが盛りだくさんだ。もし、ここで送るなら何がいいのだろうか。
「壊れたときにしか買わないものや自分ではあまり買わないものはどうでしょうか。ルンバなどのロボット型の掃除機はいかがですか。」
なるほど、ちょっと見てみよう。売り場に行くと最近の掃除機が並んでいるが、ちょっとかわいいデザインが多い。
ミニストップみたいな色でかわいい。
赤いから緑色の掃除機の3倍早く吸える。かっこいいし、かわいい。
掃除機がかわいい。インテリアとして送ろうかと思ったが、おすすめはあるのか。
主流は使う時にじゃまにならないコードレスで、マンションで使う方が多いため、音が静かなタイプが人気だ。サザエさんのCMで流れるでおなじみの東芝や、吸引力が変わらないで有名なダイソンの掃除機が特に人気らしい。
ダイソンの掃除機はフィルターや紙パックなどがなく、ほこりやゴミが詰まる設計になっていないため、吸引力が変わらないらしい。
実際に使わせてもらうと、1回でゴミが取れて、コードもないので使いやすい。ただ、先ほどから見える値段が心を無にしてくる。
納得のお値段。
買えない。冗談で「引っ越し祝いに買ってきました!」と気軽に買える値段じゃない。むしろ、自分がほしい。
安いものもあるが、どうだろうか聞いてみる。
「私も経験があるのですが、一人暮らしを始めたくらいの頃に安いからと1万円以下のやつを買っていざ使ってみたら、吸ったと思ったものが吸いきれていなくて、何度も掃除機をかけることが多く、それが嫌で掃除が面倒になってしまうことがありました。予算の都合もあると思うのですが、ある程度のものを買った方がおすすめです。」
あーそうですねよねー。ちょっと一度検討します。一応、候補に入れて置こう。
ロボット掃除機の実演コーナーでは、子どもたちがずっと見ていたがその気持ちわかる。上に乗せて「合体!」と言っていた。
地域によって変わる包丁を渡す意味
ホームセンターではどうだろうか。ブラブラ見ていると、台所用品のコーナーにて包丁の実演販売をしていたので、そこで聞いてみた。
高知を起点にして、全国で実演販売をしたりしているそうで各地の包丁にまつわる話をを聞けた。
――友人の引っ越し祝いであげるものを探しているのですが、包丁をあげるとかってどうですかね。
「新しいものにすることで悪い気を断ち切ったり、新しい生活を切り開くという意味で送られる方も多いですよ。」
「刃物を送ると縁が切れると言われている地域や、包丁を入れる箱の隅に五円玉を一緒に入れて、ご縁があるようと地域もありますね。」
「引っ越し祝いではないですが、兵庫では厄年でのを断ち切るという意味で出刃包丁を送るところもあるそうです。」
すごい、ちゃんとした情報だ! こういう情報に出会いたかったので泣きそうになった。これも候補にしよう。ちなみに風習がありそうな花屋にも聞いてみたところ「送ってはいけない花や送るべき花というのはあまり聞いたことないですね。でも、赤い花はやめたほうがいいです。火を連想させるので」という情報も頂いた。
また、マナーに詳しい知り合いに聞いてみたところ、「くつはふみつける、時計は勤勉といった意味があるので、目上の人にはあげないほうがいい」と教えてもらった。色々とあるものだ。
ちなみに花の色は目に優しい白と緑が人気らしいです。
人生に勝てるカレー
いつだっておいしいカレーは引っ越し祝いにも最適だと思う。祝うのにふさわしいトッピングがあるはずだ。ただ、歩いてお腹が空いたからカレーが食べたかったわけではない。
カレーしかない夢の国。しかも福神漬けが食べ放題なのだから抱きしめたい。
多くのメニューがあるが、どれがいいのだろうか。店員に聞いたところ困惑している。そりゃそうだ。しかし、なんとか聞いてみたところ、紹介されたのがカツだ。
「ココイチバンで勝つ!」引っ越しした先でも勝ってほしい。
これもおすすめされた。チキンを食べてきちんと勝つとはよく言ったもので。
そうして頼んだのが、ポーク三昧カレー。とんかつ、ひれかつ、ぶたしゃぶが乗ったメニューだ。
受験のときや大事な場面でカツを食べることが多い。昔からあるゲン担ぎである。カツカレーを食べて、華麗に勝つ。ダジャレを恥ずかしくもなく言える大人になってしまったが、これが大人になるということなのだろう。
注文したカレーがいざ目の前に来るとあまりの豪華さに喜びが漏れ出る。
そこに半熟卵をトッピングすると、
ようかんや商品券に負けないプライスレスなカレー。
おいしさと豪華が押し寄せてくる。これを引っ越し祝いだけではなく、年をとってからも孫と一緒に笑いながら食べたい。そんな老後を過ごしたいものだ。
あまりに豪華なものを食べたせいか、帰り道にしゃっくりが止まらなくなった。
粋な本を渡したい
本を渡すのもいいかもしれない。しかし、どんな本を渡せばいいのだろうか。自分の好きな本を渡すのは趣味の押し売りになってしまうだろうし、実用書は役に立つかもしれないが粋じゃない気がする。
調べていると「本のコンシェルジュ」がいるお店があるらしい。そこで聞いてみることにした。
代官山にあるおしゃれな本屋。
(自分がいてもいいのか)と思うほどのおしゃれさに挙動不審になる。
面白そうな本が数多く置いてあるのでどれを取ってもプレゼントになりそうだが、店員さんに聞いてみる。
「どういう本がお好きかわかりますか?」
――ミステリーが好きだったと思います。確か、ミステリーを書いていたので。
それらの情報で複数の本をおすすめしてくれた。
「ミステリーを書くぐらい好きだと詳しいと思うので、下手な本は送れないと思います。この本はどうでしょうか。」
ウンベルト・エーコ作「薔薇の名前」。ウンベルト・エーコって言いたくなる名前だ。
「哲学者としても有名な作者で、ミステリーとサスペンスが楽しめる内容になってます。哲学的な内容も含まれており、難しく感じる方もいるかと思いますが、面白いですよ。文庫になっていないので持っている方は少ないかもしれません。」
ミステリー好きな人にミステリーの本をあげるのもどうだろうか、「読んだことあります」と言われてしまったら何も言わず、涙目で帰る自信がある。
――逆にミステリーじゃなくて、普段買わないような楽しめる本の方がいいかもしれないです。
「そうですね、その方がいいかもしれません。」
――文章とかデザインに興味がある人なので、そういうので面白い本はないですか?
「それでしたら、こちらの本たちはどうでしょうか。」
次から次へとテーブルに置かれていくおすすめ本。立ち読みさせてもらったらどれも面白い。
中でも「なくなりそうな世界の言葉」、「翻訳できない世界の言葉」が面白かった。
今までの候補の中でセンスのあるプレゼントが見つかった。よし、これにしよう。こうして、引っ越し祝いが決まったところで、いよいよ渡す日がやってきた。果たして、よろこんでもらえるのか。
いよいよ引っ越し祝いを渡す
新居に手ぶらで行った1週間後、あの時の引っ越し祝いを渡すために都内に来てもらった。
ちなみに一番欲しいのは除湿機だそうです。湿気が多いらしい。
色々なお店を回り、見てきた商品を説明する。あげるものは決めてあるが、この中でなら一番どれがいいのか、一応、質問してみる。
10万以上する時計もあるが、買えないから絶対に選ばないでほしい。
「この中だと、本がいいです。高いものだともらっても困るじゃないですか」
持つべきものは恐縮してくれる友人である。
「遅くなってすみませんが、こちら引っ越し祝いです」「わざわざ、ありがとうございます」
モノトーンの包み紙を開けて、
その場で読んでもらう。
「表紙を見たとき、どんな本かわからなかったのですが、読んでみると日本語には外国語に翻訳できない言葉があったり、その逆もあったりと言葉の持つ意味の面白さが知れて楽しい本ですね。知識欲が刺激されて面白いです。確かに自分だとこういう本は手に取らないのでもらえるとうれしいですね。これはかなりセンスいい人のプレゼントですよ」
「ありがとうございます!」。よろこんでもらえてよかった。
あの人に聞いたサプライズプレゼント
掲載しようとしていたのだが、きれいにまとまってしまったので、最後に少しだけ載せたい話がある。実はプープーテレビの日常ミュージカルでおなじみ宮城さんにも話を聞いていた。
左が宮城さん。会うたびにダイエットや健康について話す。
宮城さんはラーメンチェーン店の「天下一品」が好きでよく食べているようだ。先日、「酔い覚ましに歩いていたら大好きな名店があらわれた」とインスタグラムに天下一品の店舗の写真をアップしていたのを見たとき「本物の天一好きだ」と思った。
そんな宮城さんに天下一品で引っ越し祝いをするならどんなメニューがいいか聞いてみた。
――天一好きな宮城さんにご相談なのですが、 友人が引っ越しまして、もし天一をおごるとしたら、宮城さんならどんなトッピングをしますか?
「白飯定食かなーこってりで。ラーメンにニンニク薬味をガッツリ入れて食べて、残ったこってりのスープに白飯入れてリゾット風にするのが好き。明太子ご飯にするのもいいけど、シンプルな白飯定食がいちばん好き。」
――お祝いだからトッピング全部のせにした方がいいかなと思いましたがどうでしょうか?
「ぼく、天一はシンプルな普通のこってりが好きなんですよね。餃子が付いてたら特別感あるかな。あと豚キムチとか。トッピングよりサイドメニューがいいと思います。」
引っ越し祝いで食べる理由を縁起や理論ではなく、自分の好みで説明してくれてとてもよかった。
これが宮城さんの引っ越し祝い定食。能登さんと帰りに食べて帰った。