特集 2017年6月6日

進化型三角巾で骨折ライフを快適に暮らす

骨折ライフを快適に過ごすためのご提案です。
骨折ライフを快適に過ごすためのご提案です。
いま、ちょっと右肩の骨を折っちゃって、三角巾で腕をずっと吊ってる生活である。右手がぶらーんとなってるのを吊って固定しているわけだが、これがまぁ窮屈だし色々と不便はあるしで、困るのだ。

しかし、不便なものを不便と言ってるだけでは人類の進歩は無い。まずは三角巾をもっと便利にするところから始めてみるべきではないか。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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> 個人サイト イロブン Twitter:tech_k

三角巾に進化は無いのか

ことは5月の半ばごろの話である。
雨で足を滑らせて転倒したのだが、そのときにうっかり変な手の着き方をしたらしく、右の上腕骨近位端(腕の骨の一番上、肩の付け根あたり)が割れてしまったのだ。
その後、手術でゴツいプレートを埋め込んで骨を固定したんだけど、しばらくは三角巾で腕を吊って安静にせよ、とお医者さんから指示が出ている。
ちょっと生々しいので、スマホのキラキラ自撮りアプリでさわやかに加工したキラキラレントゲン写真。いま僕の肩、こんな感じだ。
ちょっと生々しいので、スマホのキラキラ自撮りアプリでさわやかに加工したキラキラレントゲン写真。いま僕の肩、こんな感じだ。
今は人生初の腕吊り生活をしているんだけど、そこで驚いたのが三角巾だ。みんな知ってるだろうか。あれ、単なる布なのだ。
たとえば肩の手術跡が熱を持ってるのでアイシングしたいんだけど、保冷剤を固定する手段が無い。本当に普通に三角形なだけの布だから。
有史以来、人類は何千何億人と肩の骨を折ってきただろうに、そこに何の工夫も進化も無いのだ。
というわけで、さっそく三角巾の改造に着手。
というわけで、さっそく三角巾の改造に着手。
仕方ないので、タオル地で作った小さい袋と三角巾の裏側に、面ファスナーを布用接着剤で貼り付けたものを作成。
この小袋に凍らせた保冷剤を入れ、必要なときに三角巾にペタッとくっつける。
こんな感じで肩に保冷剤がジャストフィット。あまりに快適すぎて気持ち悪い笑顔になってる。
こんな感じで肩に保冷剤がジャストフィット。あまりに快適すぎて気持ち悪い笑顔になってる。
これならその時々で冷やす位置を調整することもできて、超快適なのだ。
やはり三角巾はもっと進化すべきなんだ、と確信した瞬間である。

三角巾の余白地を有効活用しよう

さらなる三角巾の進化を考えるにあたって、まず現状で不便だと感じるポイントの洗い出しから始めよう。
腕を吊っている生活でいま困っているのが、カバンからモノを取り出しにくいということだ。
たとえばカバンから筆箱を取り出して、さらにそこからペンを出す…という行為が毎回イライラさせられる。
…ここ、空いてるんだよな。
…ここ、空いてるんだよな。
で、気づいたのが三角巾の余白地である、ここ。
無駄に空いているこの場所を筆箱化すれば、いちいちイラつくこともなく便利なんじゃないか。

作業自体はシンプル。三角巾と同じさらし布を必要なサイズに合わせて切って、余白地に布用接着剤でペタリと貼るだけ。
まずペンは絶対に必須だよな。この位置にペンホルダーをセット。
まずペンは絶対に必須だよな。この位置にペンホルダーをセット。
ただ、作業を行うのに右手が思うように動かせないため、切ったり貼ったりが想像以上に難しい。
しかしおかげで「膝と左手で布を固定して、右手にハサミを握ったまま上半身全体を動かして裁断するとスムーズ」など、右肩を骨折してる時に工作するノウハウが蓄積できた。
このノウハウ群、今後も役に立つ可能性はあるが、できれば役立たせずにおきたいものである。
布接着剤はアイロンをかけると早くくっつくのだが、この際、左手で荷重をかけつつ右手首をそっと乗せることで、肩に負担をかけずに上手に圧を加えられる。
布接着剤はアイロンをかけると早くくっつくのだが、この際、左手で荷重をかけつつ右手首をそっと乗せることで、肩に負担をかけずに上手に圧を加えられる。
とはいえ、普通であれば1時間足らずでできそうな単純な工作に4時間も費やしてしまった。
写真で改めて見ると布がガタガタのヘボヘボで恥ずかしい限りだが、まぁ体調を考えれば仕方ない。むしろよくやったと自分を褒めてやりたい。
これが完成した新・三角巾。三角巾の進化のカタチだ。
これが完成した新・三角巾。三角巾の進化のカタチだ。
苦労はしたが、これが三角巾の新たな歴史の始まりだと思えば無駄な労力では無い。無いはずだ。

マッシュアップ!筆箱と三角巾!

ということで、ご覧いただこう。
これが筆箱と三角巾の融合『フデバキン』だ。名前はいま考えたが、今後もうちょっとマシなのを思いついたら変更したい。
見た目にはほぼ三角巾。外を歩いていても違和感はあまり無い。
見た目にはほぼ三角巾。外を歩いていても違和感はあまり無い。
三角巾のあの無駄な余白地に、機能を詰め込んでみた。
三角巾のあの無駄な余白地に、機能を詰め込んでみた。
積載物としては、まずペンが3本。今回は使用頻度の高いボールペンの黒・赤とシャープペンシルをセットしてみた。
さらにシャープペンシルがあるなら消しゴムも必要だし、個人的に使用頻度の高いテープのりも備えておきたい。ハサミも欲しい。
裏側には貴重品を収納する専用ポケットも。
裏側には貴重品を収納する専用ポケットも。
宅配便が来たときにハンコを探すのにもたついたので、印鑑専用のポケットと、あとは財布代わりになる紙幣ポケットを裏側にセット。ここならうっかり落としても三角巾の中に転がるだけなので、安心だ。

これで三角巾ライフの不便もかなり解消されるのではないだろうか。
通勤時に満員電車に乗ると周囲に迷惑をかけそう、という不安はあるが、「ケガしてるときぐらい大人しくしてろ」というのが正解だろう。

個人的には大満足、という終わりにしたかったのだが、実はもうひとつ大きな問題に気づいてしまった。重いのだ。
フル装備時の重量で約400g。右手の重量にプラスそれだけが首の後ろに集中してかかるので、意外と辛い。今後は文房具の軽量化などの方向で解決を図る必要がありそうだ。
撮影中、無意識に首の後ろにばかり手を回していた。やっぱり重かったのだ。
撮影中、無意識に首の後ろにばかり手を回していた。やっぱり重かったのだ。
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