いつもと違うケンタッキー
圧倒的に白い
高田馬場駅から徒歩1分。これが酒が飲めるケンタッキーだ。いつもとちょっと違う、白を基調とした外観で我々を出迎えてくれる。いつも普段着で会っている人に、結婚式の二次会で会ったみたいなドレスアップ。
そうそう、お前世間じゃジャンクフードみたいに言われているけどさ、本当はそういう格好よく似合うんだぜ……?
と、参加者全員の脳内にそんな小粋な口説き文句が浮かぶ。しかし、口にすることで冗談めかしたくない。今はまだ沈黙を保つときだ。
かわいい看板
17時から23時までのバータイムの表示。これを見たときにみんなから「おいおい」「マジでか?」「すごい」「こんなのありか」「今すぐやめろ」との思い思いの歓喜の声が上がる。
この業態での営業は去年から行われており、当初からネットメディアなどで話題になっていた。本当は、今さら感のある話題であること否めない。知らない人たち連れてきて、本当によかった。情報格差に薔薇を捧げよう。
選び放題、生ビール
どのサーバーも素敵だ
店内には通常のカウンターと、バー用のカウンターがある。ぼくたちの目はバーカウンターそばのサーバーに釘付けだ。一番左のカーネルサンダースの顔が付いたサーバーはケンタッキーフライドチキン特製のハイボール「カーネルハイ」。生ビールは「プレミアムモルツ香るエール」「プレミアムモルツ」「エーデルピルス」「ハートランド」。
小さな立て看板が「飲み放題あります」と控えめだが力強く囁いている。おいおい、がっつきすぎだよ。それはまた今度。しかし、90分1,600円に心が動いたことも否定できない。
ともあれ、この中から最初の一杯を選ばなくては。なかなか辛い決断になる。参加者全員がジャケットの襟を一度正した。
左からエーデルピルス、カーネルハイ、ハートランド
それぞれの飲み物を選ぶ。店員さんが、生ビールをまるで首の据わっていない赤ちゃんを扱うがごとく、慎重に注いでいる。うん。これでうまくないはずがない。
カーネルハイは単なるウィスキーと炭酸水のハイボールではなく、ピリッと渋いスパイスが効いていたのが印象的だった。スパイスの正体が最後までわからなかった。種明かしが必要だろうか? ううん、アルコールとほんの少しのミステリーはベストマッチと昔から決まっている。
「プレミアムモルツ香るエール」とおまけの「プレミアムモルツ」
ビールを頼んだら小さなビールがついてきて面くらう。「プレミアムモルツ香るエール」か「プレミアムモルツ」を頼むと、頼まなかった方のビールがおまけでついてくるそうだ。
プレミアムフライデーの特別企画
そうえいえば、今日はプレミアムフライデー。月に1度の特別な夜だったね。ケンタッキーフライドチキン高田馬場店がぼくたちにしてくれたとびきりのサービスだ。でも、あれだけビールの選択で悩ませておいて、こんなことになるなんて。ちょっと意地悪じゃないか?
本当にいろいろあるおつまみ
ケンタッキーフライドチキン高田馬場店には通常の店舗には置いていないフードがたくさんある。 生ハムとデンマーク産チーズの盛り合わせ。真っ白なチーズがとてもおいしかった。柔らかくて、しょっぱくない。ただ舌の上にコクの余韻だけを静かに残してゆく。
熟成ベーコンとほうれん草のキッシュ。ケンタッキーでキッシュを食べられるなんて! 鮮やかなお皿がまぶしい。
鶏もも肉の燻製。鶏肉はプリプリとした歯ごたえ。見せつけるような粒こしょうがきっちりきいている。
でも一番なのは……
ここまでうまいうまいと言ってきたが、実はみんなが最初に手を付けたのはやっぱりフライドチキンだ。やっぱり骨付き肉がみんな大好き。
遠くを見つめる古賀さん
参加者のひとり、編集部の古賀さんがこんなことを言った。
「おいしいおつまみがいろいろあるのはわかるけどね。結局はフライドチキンが一番うまくないですか? 相対的にフライドチキンの価値を高めようっていうケンタッキーの戦略じゃないんですかね?」
無心でかぶりつくさくらいさん
それを受けてライターのさくらいさんがこんなことを言い出す。
「きっとそれはそうです。私はケンタッキーが本当に大好きなんですよ……。ファーストフードの中で一番好きなんですが、ケンタッキーって好きって言いにくいじゃないですか。スペック高すぎて他のファーストフードと同じ土俵に立つなよ、というか…… 」
古賀さんの鼻息が一層荒くなる。
「それは本当にそうだ! もう私はね、ケンタッキーの横っ面をひっぱたいてやりたい。こんな店をつくらなくても、ケンタッキーはそのままでうまいんだよって、言ってやりたい!」
何も言えないおろかなおれ
みんなフライドチキンとビールで、ケンタッキーへの情熱が隠せなくなってきているようだ。語気が荒い。ぼくはといえば、なんだかみんなの熱に居心地が悪くなってしまった。でももちろんぼくだってフライドチキンは好きだ。ただ、みんなみたいにエピソードが出てこない……。
そんなときに店員さんが席にオーダーをとりに来てくれた。
「オリジナルピース、追加で……」
なんとこのケンタッキーはバー利用で2回目以降のオーダーは店員さんの方からとりに来てくれる。
ぼくはただ食べているのが、ちょうどいい。
ビールはまだまだある
追加で頼んだアヒージョ。「ケンタッキーで海鮮を食べるなんて、フライドチキンに対する冒涜では?」と参加者のライター井上さんが言ったけど、まっさきにタコにフォークを突き立てたのは井上さんである。なんでもいいのだろうか。
結局、長々と2時間半滞在してしまった。とても気持ちがよかった。店を出ると、湿気混じりの初夏の風がぼくたちを吹き付ける。もしも古賀さんが本当にケンタッキーの横っ面を張り倒そうとしたら、ぼくは一体どうすればいいだろう。ケンタッキーを守れるだろうか。
二日酔い
この後、なぜかもう1軒行ってそこでも飲んでしまった。泥酔である。ぼくは次の日に原稿を上げなくてはいけなくて、今二日酔いの中書いている。そのせいでなんだか文体も気持ち悪くなってしまった。ごめんなさい。でも本当に楽しかったし良い店だったよ、というのは伝えておきたい。
次の居酒屋に行くみんなの軽快な足どり、このあと泥酔する