路上ライブを見るのは楽しい
僕は渋谷で働いているのだけれど、帰り際にときどき路上ライブを聴いていくことがある。意識して聴きに行っているわけではなく、歌声に思わず足を止めてしまうことが多々ある。
路上ライブをやる勇気がすでにすごいし、やはり何よりその歌声に感動する。これだけうまい人ばかりであれば、「誰を連れていってもカラオケで高得点がでるんじゃないか?」という疑問が僕の中に湧いた。
ということで実際に検証してみようと思った。方法として、路上ライブをやっている人に直接声をかけて、カラオケに連れていって採点をするという、かなり無茶なやり方をする。
今思えば初対面の人間に「カラオケに一緒に行って採点させてください」とわけがわからない提案をされるのである。恐ろしさしかない。「ラッセンの絵を高額で買いませんか?」と声をかけられた方がよっぽど安心感がある。
今回は路上ライブをしていた3組に協力してもらった。よくこんな突拍子もない企画に参加してくれたなと思う。心が広すぎる。
この企画をやってものすごくラッキーだと思ったのは、きちんと音楽をやっているアーティストの方たちの歌を、カラオケで独占して聴けたことである。
月1くらいでこの企画をやりたいくらい贅沢な時間だった。人生で初めて「耳が幸せ」という言葉を実感できた瞬間かもしれない。
一人目: 亡くなった友人の一言がキッカケで歌手を目指した
多くの人に囲まれていたバンドを見つけた。たまたま立ち止まっている人だけでなく、女性ファンも多くいたようだ。羨ましい。
ボーカルの岩越涼大さん
岩越涼大(@RyOtA1854)
1994/7/3
SLOWBIRDというバンドに所属し、キーボードボーカルを担当。キーボード以外にもコーラス・ギター・作詞・作曲・編曲・DTMまでマルチにこなすシンガーソングライター。
一組目はSLOWBIRDというバンドでボーカル/キーボードを担当している岩越涼大さん。SLOWBIRDはなんと渋谷のタワレコにもCDが置いてあるほどの実力者だ。プロのアーティストだ。カラオケで歌ってもらうのが恐縮すぎる。
偏見だけれどバンドマンというだけで怖くて破天荒なイメージがあったので、声をかけるときに「いきなり殴られたらどうしよう」と思っていたのだけれど、物腰も柔らかく爽やかな青年だった。
むしろ「声をかけてくださりありがとうございます!」と言ってくれるほどであった。爽やかすぎて僕の心の汚い部分が浄化されるようであった。合掌。
そんな爽やかボーイとカラオケに移動して、さっそく企画に挑戦してもらうことになった。
今回は上記のようなルールで行う。
音楽を本気でやっている人の歌を、カラオケで独占できるという至福の時間。
岩越さんが歌いだすと思わず聞き惚れてしまいそうになる。企画のことなんか忘れて2時間くらいずっと聴いていたくなる歌声だった。
透き通った甘い声で、高音の響きがものすごくキレイだし、特にビブラートがすごく心地よい。このままこの声に抱かれたい。
サザンオールスターズの「いとしのエリー」を聴いているときは思わず頬が緩んでいることに気づいた。うますぎる歌を聴くと、人間は自然と笑ってしまうということに初めて気がついた。
結果は「いとしのエリー」は92点!「ジェットコースター・ロマンス」は94点!!
2曲続けて歌ってもらったが、やはり連続で高得点であった。路上でも聴いていたが、カラオケで改めて聴かせてもらうと圧倒される。
僕の友人にもカラオケがうまい人は何人もいるが、やはり本気で音楽をやっている人の声量や声のノビが段違いだ。素人とは違い、やはり聴いているときの心地よさも圧倒的が差がある。ずっと聴いていたくなる。
友人が亡くなったのがキッカケで歌を始めた
バンドでの路上ライブは1年ほど前から行っているとのこと。最初はメンバーから「やりたくない」「無理だ」と拒絶されたらしい。
音楽をやり始めたキッカケはドラマのような出来事があった。
路上ライブを通した出会い
その結果が身を結んで、渋谷のタワレコにCDが置かれるまでに成長した。僕ももちろん買った。
どれだけ歌がうまくても、もし自分だったら絶対に路上ライブなんてやる勇気がでない。毎回やれる勇気がすごい。
家に帰ってからSLOWBIRDのCDを聴いてみたけど、オリジナル曲も良い。キャッチャーで耳に残りやすいし、楽曲の幅も広い。今度ライブ行こう。もはやただのファンだ。
二人目:東北、関西、九州を旅する行動派の女性
二人目は路上でギターを弾きながら力強く歌っていた「かさね」さん。ものすごく楽しそうに歌っていたのが印象的だった。
かさねさん
かさね(@scope_2w)
1994/3/18
2014年6月よりギター弾き語りシンガーとして活動をはじめる。
4月から12月20日までに『ライブハウスだけで』ライブ100本ノック達成を掲げ、無事初企画として12月20日満員御礼で100本目を達成し、2017年3月18日渋谷チェルシーホテルにて1年で200人を動員した。
声をかけたらさすがに怪しまれたのか、連絡を取って後日待ち合わせをしてから受けてくれることになった。そりゃいきなり見知らぬ男とカラオケに二人きりになるのは怖いよな…
2曲がまったくタイプの違う歌であったが、どちらも声にあっていて圧巻だった。音域がすごい。
聴いているときは、仕事だということを忘れて思わず聴き入ってしまった。
まったくタイプの違う歌でどうなるのか想像ができなかったのだけれど、「ヒカリへ」の方は柔らかく軽やかに歌い、「残酷な天使のテーゼ」は曲のテンポを自分でさらにあげて、力強く激しく歌い上げていた。表現力の幅がすごい…!
「残酷な天使のテーゼ」は僕も好きな歌で、たまにカラオケでも聴くけれど、初めてこの歌で感動した。歌が上手い人って声が透き通っているから、早口で歌っていても一音一音がキレイに聴こえる。それでいて力強い。CDに録音して欲しいくらいだった。
「残酷な天使のテーゼ」は92点!「ヒカリへ」は95点!!
やはり2曲続けて高得点だった。聴いていて「これは高得点でるだろうな」という安心感があった。
やっぱり「路上ライブをやっている人はみんな高得点が出る」という説は正しいのかもしれない。
各地を飛び回ってわかった路上ライブの楽しさ
実際に東北を路上ライブをしていたときの写真
僕のわけのわからないこの企画にもすぐにOKしてくれたし、行動力というか実行力がとにかくすごい
そういった活動の成果もあって、ライブハウスに足を運ぶお客さんも増えた。
かさねさんは歌に対しての熱量がすごかった。年齢もまだまだ若いし、行動力もあるので、これからますます活躍していきそうな勢いを感じた。
今度また路上ライブをやっているのを見かけた時はサインしてもらおう。
三人目:人を笑顔にしたい、幸せにしたい、元気にしたいために歌う
路上ライブでは珍しくMCを長時間する明るい人を見つけた。「あ、この人ならカラオケについて来てくれそう」と思って声をかけてみた。
yuriyaさん
yuriya
1988/9/7
2012年8月から2016年2月25日まで、バンドのボーカルとして活動していた。現在はシンガーソングライターとしてソロ活動をしている。
声をかけてみたらyuriyaさんは初め戸惑っていたものの、最終的には企画に参加OKをしてくれ、後日カラオケに集合することになった。
スローテンポな曲が声に合っていて最高だった。
柔らかくキレイな歌声で、特に「Good-bye days」は声質に合っていて、思わず聴き入ってしまった。
声の好き嫌いは誰でもあると思うけど、yuriyaさんの歌声が嫌いになる人はいないんじゃないだろうかと思えた。子守唄のように優しい声で、ずっと聴いていたくなる。歌がうまい人って、ただうまいだけじゃなくて声が良いなぁ…。
「桃ノ花ビラ」は92点!「Good-bye days」は95点!!
ここまで3組に2曲ずつ歌ってもらったけれど、いずれもすべて90点超えであった。もうここまでくるとたまたまではなく、「路上ライブやっている人はみんなカラオケで高得点がでる」という説は、ほぼ確実に立証されたんじゃないだろうか。
テレビ出演からの路上ライブという異色の経歴
とにかく明るくて快活な人だった。ときどき「ずるいやろう?」などといったように方言がでて可愛らしかった。
歌はずっと大好きで「ずっと別れられない彼氏みたいな存在ですね(笑)」と言って笑っていた。
ただただ歌が上手い人はたくさんいるけれど、やはりプロとして活動している人のレベルは違う。得点が高いだけではなく、心から感動する何かがある。ずっと聴いていたくなる。
今回の「路上ライブをやっている人はカラオケで全員高得点がでるんじゃないか?」という検証は、正しいと言っても良いんじゃないかと思う。
あと路上ライブをやっている人は、それぞれドラマのような話があっておもしろかった。次は「路上ライブをやっている人に話を聞けば、必ずおもしろい話しが聞ける」というのを検証しても良いかもしれない。
「もしかして最近のカラオケは誰でも高得点がでるんじゃないか?」と疑って僕も後日やってみたけど、リアルな点数が出てなんとも言えない気持ちになった。