特集 2017年2月16日

アメ横の専門店がおもしろい

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アメ横の路地裏に行ったことがあるだろうか?異国の地に入り込んでしまったようなディープな世界がそこには広がっている。

僕はこの路地裏に怖いイメージがあった。一人では絶対に行きたくなかった。だけど怖い場所ほどおもしろいお店が多い気がする。(謎の持論)

ということで、あえてアメ横の路地裏のお店にアポなしで話を聞いて回ることにした。
大学中退→ニート→ママチャリ日本一周→webプログラマという経歴で、趣味でブログをやっていたら「おもしろ記事大賞」で賞をいただき、デイリーポータルZで記事を書かせてもらえるようになりました。嫌いな食べ物はプラスチック。(動画インタビュー

前の記事:カバディがどんなスポーツか知りたかったので実際に体験してきた

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アメ横に行く

いつ行っても人が多いアメ横。
いつ行っても人が多いアメ横。
大通りは人でごった返している。色んな国の人がいるのもアメ横の特徴だ。
大通りは人でごった返している。色んな国の人がいるのもアメ横の特徴だ。
上野の「アメ横」と言えば都内でも有名な観光地だ。
チョコレートの叩き売りや、赤ちょうちんの居酒屋、閉店セールの呼び込みのお兄さん、異国の料理店…などたくさんお店が軒を連ねている。いつ来ても活気に溢れている場所だ。
スポーツ用品店や、お菓子屋、タイ料理專門店など様々なお店がある。
スポーツ用品店や、お菓子屋、タイ料理專門店など様々なお店がある。
都内ではなかなか見れない光景もアメ横にはある。
都内ではなかなか見れない光景もアメ横にはある。
地下の食品売り場では外国語が飛び交っている。
地下の食品売り場では外国語が飛び交っている。
アメ横は大通りだけと思われがちだが、路地を一本入っても様々なお店が並んでいる。
ドラクエのダンジョンの入り口に見えるかもしれないが、商店街の入口だ。
ドラクエのダンジョンの入り口に見えるかもしれないが、商店街の入口だ。
僕はこの中は怖くてあまり入ったことがない。試しに入ってみたことはあるが、中の独特な空気に押されてしまい、ほとんど何も見ずにすぐにでてきてしまった。

だけど今日は勇気を振り絞って商店街にはどんなお店があり、どんな歴史があるのか直接お店の人に聞いてみたいと思う。
アポもなく一人で取材に行くのは怖い。

路地裏に入ってみよう

いざダンジョンの内部へ。
いざダンジョンの内部へ。
左右にお店がずらっと並ぶ。
左右にお店がずらっと並ぶ。
ダンジョンのような入り口から路地裏に入ってみると、通路の左右に所狭しとお店が並んでいる。タイの市場もこんな雰囲気だったなと思い出す。日本にいる感覚を忘れられる。
おしゃれな洋服屋
おしゃれな洋服屋
アメ横には化粧品を専門に取り扱っているお店も多い
アメ横には化粧品を専門に取り扱っているお店も多い
路地裏のお店には、化粧品や、皮製品、アクセサリなど、様々な専門店が軒を連ねている。
表通りにはチェーン店などもちらほらとあったが、この通りにはほとんど個人経営のお店しかないようだ。
歩き周っていたら外に出ていた。
歩き周っていたら外に出ていた。
「よしどこかのお店に入って話しを聞こう!」と思ったが、一人でこの通りを歩いているうちに別の入り口まで出てきてしまった。
路地裏の商店街の雰囲気が独特すぎて話しかけるのが怖かった。何回もこの通りをウロウロしては、戻ってきてため息をつくのを繰り返した。

今日は写真を撮ってくれる人もいないので、完全に一人なのだ。一人がこんなに心細いとは思わなかった。

もうこんな企画やめて家に帰ろうかなと脳裏に何度もよぎった。

異彩を放つ銀髪の店員に話を聞いてみる

路地裏の通りの中でも一際目立っていたのが、銀髪の子が店員をやっているお店だった。
思わず立ち止まってしまった。
思わず立ち止まってしまった。
店員さんを見て「よし、まずはこのお店に話を聞こう」と思った。
なぜなら、他のお店の店員さんは年齢が自分より高い。でもこの銀髪の店員さんは若そうな感じだったので、聞きやすい気がする。
「年齢が自分より低ければ大丈夫」というなんとも情けない気持ちで取材をお願いしにいった。

お願いしてみると、快く取材を受けてくれた。とりあえず、「一つも取材ができない」ということがなくてよかった。編集部の人に怒られずに済む。
このお店の店長さんですか?
いえいえ、私は店員です!
店長は少し離れたお店にいます。ここは支店のようなもので、雑貨を中心に扱っているお店なんです。本店はレザーを中心に扱っています。
お店は一畳くらいしかないが、商品はギチギチに並べられている。
お店は一畳くらいしかないが、商品はギチギチに並べられている。
色んなものがありますけど、ここに置いてある商品はどこから仕入れたりしているんですか?
店長がインドやネパールから仕入れているみたいです。
外国人のお客さんも来るので、和雑貨の商品も置いてあります。
インドやネパールの商品。
インドやネパールの商品。
和雑貨。
和雑貨。
もっとお店のことが詳しく知りたいなら、店長のお店に行けば教えてくれると思います。
すぐ近くなのでよかったら行ってみてください!
ありがとうございます、店長に話を聞きに行って見ます。

でもすごいですね、女の子一人でお店任されるなんて!
髪の毛長いですし、化粧もしているのでよく間違われるんですが、私…男なんですよ。
!?
店員さんのことをずっと女の子だと思っていたので、最後の最後にびっくりした。商店街からの洗礼を受けた気分になった。

レザー専門店の店長に話を聞いてみる

銀髪の店員さんに教えてもらって、店長さんがいるお店に行ってみることにした。お店の中を除くと、ヤンキー漫画に出てきそうなドレッドヘアーの店員さんが見えた。

まさかこの人が店長じゃないよな…?怖くて話しかけるのをためらいそうになる。
やっぱりこの人が店長だった。
やっぱりこの人が店長だった。
しかし、取材をお願いすると快くOKしてくれ、気さくに色々と質問に答えてくれた。むしろ話し方が快活で爽やかだった。ヤンキーじゃなくてよかった。

ここは石原商店というお店で、過去にマツコ・デラックスのテレビに出たことがあるらしい。すごい。
このお店が開店してからどれくらい経つんですか?
創業者から数えると、もう70年くらいになりますね。戦後くらいからやっていて、僕で3代目になります。
石原商店は何店舗かあるが、店長がいるこのお店が本店。
石原商店は何店舗かあるが、店長がいるこのお店が本店。
おお、老舗ですね!
このあたりにある路地裏のお店は、同じように何代も続いているお店が多いんですか?
長く続いているお店は減ってきていますね。やっぱり跡継ぎ問題とかもあって、今は新しくできたお店も多いですね。
そうなんですね…!時代の流れなんですかね…

歩いてて思ったんですけど、ここの路地裏の通路って独特なお店が多いですね
そこがこの商店街の良いところだと思っています。他の場所で手に入らないものがたくさんあります。日本を見てもこれだけ専門店が密集している場所はなかなかないと思うんですよ。
確かに他には見たことないですね…!
例えばうちの店の場合だと、「エキゾチックレザー」と言って、ワニとかトカゲの革製品を専門に扱っています。
ワニがそのままカバンになっている商品。迫力がすごい。
ワニがそのままカバンになっている商品。迫力がすごい。
そのまんまワニだ!!

すごい…
これってけっこうな値段するんじゃないですか?
これは12万円です。うちの場合は、ベトナムの養殖している食用のワニの皮を使っているので、安く提供できています。
お客さんから聞いた話しだと、同じようなもので50万くらいするものも見たことあるという話も聞きました。
だいぶいい値段しますね…

こういう動物の革の商品って輸入とか難しいんじゃないですか?
カバとか亀はワシントン条約で取引が禁止されているので、大昔に取られたものを使いますね。
カバの革製品もあるんですね、見たことないな…
カバの革製品もあるんですね、見たことないな…
カバの革製品もあるんですね、見たことないな…
カバの革製品はふわふわとして手触りがよかった。動物によって手触りがまったく違っておもしろかった。
カバの革製品はふわふわとして手触りがよかった。動物によって手触りがまったく違っておもしろかった。
センザンコウというアルマジロの似た動物の革製品は貴重らしい。
センザンコウというアルマジロの似た動物の革製品は貴重らしい。
長くお店をやっていて、アメ横って昔と何か変わったなーって感じることとかありますか?
大通りを見てもらうとわかると思うんですけど、最近はかなりチェーン店が増えてきていることですかね。
あー!たしかに普通に居酒屋のチェーン店とか、スポーツ用品店とかたくさんありましたね。
アメ横がこの先も盛り上がっていくためには、ある特定のものだけを追求するような、アメ横にだけしかない專門店のようなお店が、もっと増えてくれればいいなと思います。
ドレッドヘアーの店長は、見かけたときはオシッコ漏らしそうになるほど怖かったけど、話してみると人柄が良く、いきなりの取材にも丁寧に対応してくれた。

アメ横の路地裏は怖いと思っていたけど、良い人が多いのかもしれない。

日本初のナイフ專門店

こんなにナイフがあるところに初めてきた。
こんなにナイフがあるところに初めてきた。
次に行ったお店はナイフ專門店だ。店長さんはいないようだったけど、店員の方が丁寧に対応してくれた。マルキン商店というお店だ。
ここのお店はいつからやっているんですか?
1949年からやっているので、戦後すぐからやっています。ここが日本で初めてのナイフ専門店なんですよ。
日本初!?
そうなんですよ。
種類も色々と揃えてあります。そこに置いてあるのは映画のランボーでも使用されていたものと同じものですよ。
カッコイイ!
カッコイイ!
有名な職人が作ったナイフだと値段がかなりするらしい。
有名な職人が作ったナイフだと値段がかなりするらしい。
この路地裏の商店街の魅力って何かありますか?
こんなに多種に渡って専門店がある商店街は他にはないところです。
歩いているだけでも「あっ、こんなもの売っていたんだ!」という発見があるのでおもしろいと思います。
まさか適当に入ったお店が、ナイフを日本で初めて取り扱ったお店だとは思わなかった。しかし、この路地裏の人っていきなりでも取材に応じてくれるな…みんな優しい。

商店街の理事長に話を聞く

この通りで何人かの方に話を聞いていると、この辺りの商店街の理事長のお店があるということで行ってみることにした。
怖いと見せかけておちゃめな店長
怖いと見せかけておちゃめな店長
初めお願いしたときは「あんまり長いとダメだけど大丈夫?」と言われたので、理事長は怖い人なのかな…と心配になった。
しかし、写真を撮るとなると「撮るならこれ被った方が良いよな!」と言って、帽子を取り出して被ってくれた。サービス精神旺盛だ。
理事長さんがこのお店を作ったんですか?
親父が始めて1965年くらいからやっているから、俺は2代目だね。
(話を詳しく聞いてみると、ドレッドヘアーの店長が3代目とのことだった。こんなところで話が繋がるとは思わなかった)
理事長のお店は革製品やベルトのバックルなどを多く扱っている。
理事長のお店は革製品やベルトのバックルなどを多く扱っている。
昔からこういう革製品を扱うお店だったんですか?
いやいや、最初はお菓子屋さんだったよ。
お菓子屋さんですか!?
アメ横はもともと大空襲があったあとに、アメを売ってたりお菓子を売っていたりする店が多かったんだよ。
だからアメ横にはお菓子屋が何軒もあるんですね…
歴史を感じる!
今は店内には大量のバックルなどが置いてあり、お菓子屋だった雰囲気は微塵も感じない。
今は店内には大量のバックルなどが置いてあり、お菓子屋だった雰囲気は微塵も感じない。
他の店員さんに話を聞いていると、「昔ほど人がこなくなった」っていう意見があったのですが、理事長はそう感じますか?
いや、そんなことはないと思うよ。
人が減っているというよりも、世の中的に購買意欲が低下しているからそう感じるだけじゃないかな。今は不景気だからね。
たしかに大通りを見ると、かなり人はいるようには感じますね
アメ横って大通りのことだと思っている人が多いけど、こっちの専門店ばかりの商店街の方が昔は「アメ横」って呼ばれていたんだよ。
えー!そうなんですね!!
だけど今はこっちの商店街の存在すら知らない人も多いと思うんだよ。

だから知られてないことって多くて、例えばあそこにギャロップってお店があるだろ?
あそこはABCマートって靴屋のはしりだったんだよ。
初めて知った…!
靴專門店のギャロップ。
靴專門店のギャロップ。
話を聞いてみるとどんどんと知らなかった情報がでてきた。お客さんも来ていたので、そんなに長く話ができなかったのだけが残念だ。掘れば掘るほどおもしろい話がでてきそうだ。もっと深掘りしたい。

初めは路地裏のお店だから怖いだろうな…と思っていたけど、話してみるとみんな良い人達でよかった。あと生きて帰ってこられてよかった。

アメ横は何度か行ったことあったけど、路地裏をガッツリと歩いたことがなかったので、新しい発見が多くておもしろかった。アメ横に行ったことはあるけど、路地裏に立ち寄ってみたことがない人はぜひ行ってみて欲しい。

無事に生きて帰ってきたあとに、赤ちょうちんの店で一人酒したけどめちゃくちゃ美味かった。生きてるって素晴らしい。一人突撃取材は怖い。
至福…!
至福…!
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