特集 2016年11月10日

たまごっちのオルタナティブを育てる

それも4つ同時に
それも4つ同時に
1996年11月に、大ブームを巻き起こした初代たまごっちが発売された。もう20年前である。

その人気に対して品薄状態だったため、たまごっちと似たようなシステムの育成ゲーム(「オルタナティブ」と呼ぶことにする)を買う人も多かった。

ぼくは幸か不幸か「本物のたまごっち」を買うことができたのだが、今改めて思い出すと、あのときのオルタナティブたちも経験してみたくなってきた。はたして違いはあるのだろうか?
1986年埼玉生まれ、埼玉育ち。大学ではコミュニケーション論を学ぶ。しかし社会に出るためのコミュニケーション力は養えず悲しむ。インドに行ったことがある。NHKのドラマに出たことがある(エキストラで)。(動画インタビュー)

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いろいろあるけど今回は4つ

・たまごっち(英語版)
比較用に買ったら海外版だった
比較用に買ったら海外版だった
ご存知たまごっちである。比較用にと思ってネットオークションで買ったら、中身は海外版だった。パッケージは日本版だったので、そのことには電源をつけたあとに気づく。

ただ、あのころも何故か海外版のたまごっちをやっていた人もいた(どういう経路で入手したのだろう)ので、今回はこの怪しいたまごっちもオルタナティブの一員に加えることにする。

ちなみに「新種発見!!」は初代が発売されて数ヶ月後に出された、出て来るたまごっちの種類が違うバージョンである。
パッケージの「ケッコーイケテル」「クルクルまーわーるー」など文言の一つ一つを読んで、こういう時代だったのかなという気持ちになってくる。
パッケージの「ケッコーイケテル」「クルクルまーわーるー」など文言の一つ一つを読んで、こういう時代だったのかなという気持ちになってくる。
パッケージングは当時らしいキッチュなデザインになっている。このテンションの高さに反比例して、見ているこちらは厳かな気持ちになる。あまりのなつかしさに。
・ぎゃおッPi
代表的な「オルタナティブ」
代表的な「オルタナティブ」
ぎゃおッPiは恐竜をモチーフにした携帯型育成ゲームで、システムはほぼ初代たまごっちを踏襲している(というかパクリであると問題になった)代表的オルタナティブである。
説明書には「右か左か当ててねゲーム」、「7より多いか少ないか、当てるゲーム」と書かれている。冗長。
説明書には「右か左か当ててねゲーム」、「7より多いか少ないか、当てるゲーム」と書かれている。冗長。
パッケージはたまごっち同様けばけばしいデザインであるが、どうしてもクオリティの差を感じてしまう。いかにもオルタナティブという趣だ。

説明書を詳しく読んで、個人的に衝撃だったのは「ぎゃおッPi」の「Pi」の読み方。「ぎゃおっぴ」ではなく「ぎゃおっぴー」だったのだ!! 20年経って勘違いが訂正される機会が来るとは。どうでもいいですね。


・ラクラクダイノくん
これも当時よく見かけた
これも当時よく見かけた
続いてのラクラクダイノくんも同じく恐竜をイメージしたゲーム。画面が少し大きくなっている。キャラクターが赤ちゃんっぽくてかわいらしい。

ボタンが5つあったり、たまごっち的なゲームにいろいろと機能を付け加えようとする努力が見られる。
「僕のわかまま時、世話して下さい」 日本語があやしい
「僕のわかまま時、世話して下さい」 日本語があやしい
エアコン機能で室温を25度にしないといけないらしい。そこを進化させたか。
エアコン機能で室温を25度にしないといけないらしい。そこを進化させたか。
説明書を読むと、汚れたらシャワーを浴びせたり、エアコンで室温を調整したり、たまごっちにはないコマンドがあって、ゲームとしては複雑さを持たせようとしたようだ。

ところで小学生当時、ラクラクダイノくんはぎゃおッPiの続編だと思っていた。メーカーを確認しようとしたが、どこにも書かれていないのでよくわからなかった。
ぎゃおッPiとラクラクダイノくんはパッケージにメーカーが書かれていなかった。
ぎゃおッPiとラクラクダイノくんはパッケージにメーカーが書かれていなかった。
・ポケットビスケッた
パッケージには懐かしい感じの3DCGが描かれている。
パッケージには懐かしい感じの3DCGが描かれている。
テレビ番組発の音楽ユニット「ポケットビスケッツ」をモチーフにしたゲームだ。

14日以内にチャート1位を取らないと解散というルールで、内村光良(TERU)、千秋(CHIAKI)、ウド鈴木(UDO)をマネージメントするという内容である。説明していて一体なんなんだという気もする。
ボタンの操作方法の他にチャートを上げるコツのような紙が挟まれていた。こういう場合はこうする、という作法の量がもの多い。心配だ。
ボタンの操作方法の他にチャートを上げるコツのような紙が挟まれていた。こういう場合はこうする、という作法の量がもの多い。心配だ。
昼はレッスン、夕方は番組出演、夜はストレス発散とスケジュールが決まっているようだ。システムの工夫である。

それでは電源を入れてみよう。
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電源をいれてみよう

ゲームのオープニングとも言うべき電源を入れたあとの画面をそれぞれ確認しよう。違いがあるのだろうか。

・たまごっち
電池を入れ替えて
電池を入れ替えて
卵がでてきた(壊れていて液晶が見づらくてすみません)
卵がでてきた(壊れていて液晶が見づらくてすみません)
そしてうまれた!
そしてうまれた!
スタートすると卵があらわれ、数分したら孵化した。事務所で撮影していてピーピー鳴るのは困るので即座にサウンドオフ。このあたりの操作は無意識でできた。


・ぎゃおッPi
ぎゃおっPiも卵からはじまる
ぎゃおっPiも卵からはじまる
電源を入れるとたまごっちよろしく卵があらわれ、数分かすると丸い何かが孵化する。たまごっちと同じである。さらに気づいたのだが、はじめのキャラがたまごっちとデザインも動きもまったく同じである。
とんでもないやつだ
とんでもないやつだ
・ラクラクダイノくん

電源を入れて時計をセットすると、暗闇の中から爆発がおきた後、ダイノくんが覚醒するという謎の演出がはじまる。
大爆発がおきて
大爆発がおきて
うまれた
うまれた
なぜ大爆発から始まるのかはまったく説明がなかった。


・ポケットビスケッた

ビスケットがフタになっているのが特徴のポケットビスケッた。フタをあけて電源を入れると3人の紹介(TERU、CHIAKI、UDOの名前が出る)のあとに「ポケビ」と出て、3人の顔が登場する。
それぞれの名前と「ポケビ」の文字が出てきて
それぞれの名前と「ポケビ」の文字が出てきて
これが基本の画面となる
これが基本の画面となる
このあとすこしいじって遊んだら、すぐウドのお腹がすいてしまったみたいだったので「メシ」を与えた。すごいゲームだ、という予感がした。

2週間くらい育ててみよう

ではこれからおよそ2週間これらを育ててみたい。あの頃の興奮は蘇るだろうか。4つ同時に育てるのは大変かもしれないが、期待は高まる。
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それぞれの経過を見ていく。
たまごっち
こちら「たまごっち」の育成は昔取った杵柄というか、慣れたものである。英語版なので細部の表現は違うが、操作方法はかわらない。
表記が英語だったりする
表記が英語だったりする
あと餌が食パンだ
あと餌が食パンだ
日本版のたまごっちは餌がおにぎりなのに、海外版は食パンになっている。

それ以外はやっていてなつかしい感じがした。
20年前のゲームなのに、やっていてあまりストレスを感じないのはさすがだ。「餌・ごきげん・しつけ・病気・トイレ・照明」などのの簡単なシステムで育成ゲームがきちんと成り立たっている。

ただ途中で気づいたことがあった。

これ初代だな
これは成長した「たらこっち」
これは成長した「たらこっち」
たまごっちが「たらこっち」まで成長したところで気づいた。これ初代だ。

パッケージは「新種発見!!たまごっち」だったで勘違いしていたのだが、この「たらこっち」が出てくるのは初代たまごっちである。日本版じゃなくて英語版だし、何もかもが違う(それはオークションで売った人が悪いのだが)。

この掴まされた感じもあの当時あったのだろう。
2週間のうち、たまごっちを2度死なせてしまった。その際、たまごっちは天使になっていた。日本版はお墓の横に浮かぶお化けだったはずなので、英語版ならではだ。
2週間のうち、たまごっちを2度死なせてしまった。その際、たまごっちは天使になっていた。日本版はお墓の横に浮かぶお化けだったはずなので、英語版ならではだ。
難易度と感じたことに星を付けてみた。
難易度 ★★★★★
なつかしさ ★★★★★
ぎゃおッPi
うんちと一緒にすごす恐竜
うんちと一緒にすごす恐竜
基本的にはたまごっちを踏襲しているぎゃおッPi。

ところどころたまごっちよりちょっと複雑なしくみになっていて、たとえば「雨が降ってきたら傘を、雪が降ってきたらマフラーをかけてあげる」システムがある。
雨が降ってきたときに傘を与えると喜ぶ。よく見ると使えてない気もするけど。
雨が降ってきたときに傘を与えると喜ぶ。よく見ると使えてない気もするけど。
しばらくするとプテラノドンみたいなやつになった。順調に育ってうれしい。
プテラノドン
プテラノドン
首を左右に振る様子がかわいい。
首を左右に振る様子がかわいい。
たまごっちとシステム的な違いがほとんどなく手に持ってしっくりくる感じも手伝ってか、もっとも長生きしたのはこのぎゃおッPiだった。
難易度 ★★★★★
絶妙さ ★★★★
ラクラクダイノくん
ラクラクダイノくんの特徴といえば、すぐ死ぬことに尽きるだろう。
本当にすぐ死ぬ
本当にすぐ死ぬ
1時間位ほうっておくとお腹も水分も空になっている。弱り方の早さがすごいのだ。3時間放っておくと死ぬ印象である。
ダイノくんが死ぬ理由1 ゲージの減り方がはやい
ダイノくんが死ぬ理由1 ゲージの減り方がはやい
さらに気温が高かったり低かったりするとエアコンで調節したり、汚れたらシャワーを浴びせたりしないといけないというやっかいなシステムも追加されている。
ダイノくんが死ぬ理由2 管理する項目が多い
ダイノくんが死ぬ理由2 管理する項目が多い
お世話するべき項目が多いので病気にかかりやすく、そして死にやすいのだろう。

ダイノくんが寝る時間がとくに鬼門だ。
寝てる間はどうやってもお世話することができないので、寝る前と起きた後のお世話しない時間が重なることによって死ぬ確率がぐーんと上がる。

朝に見過ごして、昼前に確認するとダイノくんが死んでいるなんていうことは何度かあった。ある意味で難易度が高いゲームだ。
病気になっている状態を見過ごすと死ぬ(のだと思う)
病気になっている状態を見過ごすと死ぬ(のだと思う)
シューティングゲームや格闘ゲームなど、往々にしてゲームのジャンルというのはそのままにしておくと単純に難易度が高くなる傾向があるが、ちょっとほうっておくと死んでしまうダイノくんは、携帯型育成ゲームが高難度化した例であろう。
さっき成長したんですよー、と見せようとしたらそのタイミングで死んでいるときもあった。
さっき成長したんですよー、と見せようとしたらそのタイミングで死んでいるときもあった。
本当にすきがあったら死ぬダイノくん。すごい細かくお世話をしないと長生きさせるのは難しそうだ。
かわいそうとか申し訳ないという感情よりも、憎たらしいと思うようになってしまった。
でもシャワーを浴びるダイノくんは超かわいい
でもシャワーを浴びるダイノくんは超かわいい
難易度 ★★★★★
死んだ回数 6回
ポケットビスケッた
昼はレッスン、夜はテレビに出ることでチャートを上げていく仕組みになっている。ご飯を食べさせ、レッスンする。基本はそのくりかえしだ。
50位からチャートを上げていくという漸進的な取り組み
50位からチャートを上げていくという漸進的な取り組み
ダンスレッスンはご多分に漏れずあっち向いてホイである
ダンスレッスンはご多分に漏れずあっち向いてホイである
レッスンしたりテレビに出たりすると、お腹(「ハラ」)が減り、一人でも空腹状態だと行動できないのでご飯(「メシ」)を食べさせなければならない。
なぜか「メシ」はラーメンだけ。これしか食べない。
なぜか「メシ」はラーメンだけ。これしか食べない。
ところがご飯を食べるアニメーションがカットできないので時間がかかる。途中でボタンを押すのがいやになってやめてしまいがちだ。

すると、ウドのお腹が減り、千秋が泣き、うっちゃんがストレスで動かなくなってチャートは落ちる…という負のスパイラルに陥ることになる。それが妙なリアリティを生むと考えることもできるかもしれない。
千秋はすぐ泣く
千秋はすぐ泣く
ポケットビスケッたの特徴はその表現の豊富さだ。クラブやカラオケに行ったり、夜になると出られるテレビ番組など、多様なシーンをドット絵でうまく表現しているところがかわいらしくていい。
あと、たまにランダムで2人がラブラブ状態になっているときは説教して引き剥がす
あと、たまにランダムで2人がラブラブ状態になっているときは説教して引き剥がす
チャートは圏外になるとゲームオーバーなものの、下がりすぎたら50位まで引き戻してくれるじゃんけんシステムがあるので安心だ。ともかくチャート1位になるのには真剣に取り組む気持ちがないとむずかしそうである。
難易度 ★★★★★
複雑な気持ち ★★★★

まとめ

どれも同じかと思ったたまごっちとそのオルタナティブたちだったが、かなり違いがあることがわかった。

それぞれの魅力は比較し難いので、プレイの難易度でまとめた。
!
たまごっちは2回死なせてしまったものの、ぎゃおッPiだけは1度も死なず15日経った今も生きている。たまごっちも画面が故障していなければこのくらい生きたかもしれない。

ポケットビスケッたは2回解散してしまったうえ、チャートも最高30位と奮っていない。レッスンや食事をさせると、いちいちアニメーションが入ってしまうので、それが煩わしさを感じさせたせいかもしれない。

しかしそれと比べてもすごいのは、3時間放置すると死んでしまうラクラクダイノくん。「6回死亡」で圧倒的な難しさを誇った。最後まで成長させたらいったいどんな姿になるのだろうか、いずれ挑戦してみたい。

ただ、社会性がダメージを負うから気をつけろ

さて、そんなオルタナティブたちを2週間ほど、ときに楽しくときにいい加減にやっていたのだが、失うものもあった。社会性である。

熱心にやればやるほど、一人の世界に入って遊んでるやばい人になってしまった。
食事で一息ついたときも
食事で一息ついたときも
電車の中でも
電車の中でも
むろん車中も
むろん車中も
地方への出張の最中も手を抜くと死ぬのでまったく放置することはできない
地方への出張の最中も手を抜くと死ぬのでまったく放置することはできない
その姿たるやスマホでちょっとポケモンGOをやっている人とは比べ物にならない。完全に心が閉じていて、知人からも「(その姿は)やばいね」と言われた。

もっと人目を気にするべきだったのだ。今、自分の姿をみて手に冷や汗をかいている。

たんすの奥にしまってあるたまごっちの存在を思い出して、これからちょっとやってみようと考えた人に僕が一番伝えたいことは以上である。
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