特集 2016年5月9日

「もうダメだ」と思ったらどうすればいいのか

「もうダメだ」以降をいかに乗り切るかの指南書たち
「もうダメだ」以降をいかに乗り切るかの指南書たち
みなさんどうですか、最近「もうダメだ」って思ってますか。
個人的には週2くらいのペースで思っている。新年度開始から約1ヶ月というタイミングも、「もうダメだ」がよく似合う季節だろう。

時にふんわりと、またある時はガツンと思う「もうダメだ」。そう思うまではいいのだが、ついつい思いっぱなしにしてきてしまったように感じる。「もうダメだ」と思ったら、一体どうすればいいのだろう。

人は「もうダメだ」と思ったらどうすればいいのか。様々な知見を紐解いていこう。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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「もうダメだ」への潤沢なソリューション

解決策を求めて「もうダメだ」をキーワードにアマゾンで検索をかけたら、「もうダメだ」以降について指南する本がたくさん見つかった。「もうダメだ」と思うバリエーションもいろいろあることがわかって、ワクワクしてきた。

「もうダメだ」からの一手を知るために今回入手した本は7冊。ざっと検索しただけでこれだけの本が集まるなんて心強い。
大量に集まるとやばさが本格化
大量に集まるとやばさが本格化
救いを求めてファミレスでこれらの本を積んで読んでいた私は、店員や他の客から「この人、本当にダメなんだろうな」と思われたことだろう。一冊なら普通に自己啓発ムードが漂うだけだろうが、これだけあると愚かしく見える。

しかし私は、愚かさと引き換えに「もうダメだ」と思ったらどうすればよいかについて、たくさんの知識を手に入れた。日本最高レベルの情報量がここに集まっているかもしれない。

では、それぞれの本で説かれる内容について、特に私の心に響いた部分を紹介していこう。最初に開く本は『仕事で「もうダメだ!」と思ったら最後に読む本』(千田琢哉 著 宝島社」だ。
背を向けて逃げてる人たちが頼もしい
背を向けて逃げてる人たちが頼もしい
いきなり「最後に読む本」から行ってしまおう。「もうダメだ」からの反撃の狼煙は、逆説的で派手な方がいいからだ。
いろんな「もうダメだ!」に対応
いろんな「もうダメだ!」に対応
裏表紙でも「もうダメだ!」と思いまくっていて頼もしい。「自分の『もうダメだ』はどれかな?」と、チョイスする楽しみも生まれてくる。全てにあてはまると思ったなら、全て解決してくれると思えばいい。
そうだったのか!
そうだったのか!
カバーの折り返し部分にも、いきなり嬉しいメッセージがある。「もうダメだ!」と思ったら、一目散に逃げていいのだ。やったー!そうだったのか!
そ、そうだったのか!!
そ、そうだったのか!!
折り返し部分に書かれていることは、最後まで私を鼓舞してくれる。「もうダメだ!」に対抗して頑張り続けると、結果は「もうダメダメだ!」になると言うのだ。

「もうダメだ!」の次に待ち構えていた展開、それは「もうダメダメだ!」。正直、そこまで想定してなかった。カメハメハみたいでさえある。頑張るのはもう金輪際やめよう。

本文に入っても、最初のページに大きく書いてあるのは「『もうダメだ!』と思ったら、ズル休み」。目覚ましが鳴っても布団から出なかったり、通勤と逆方向の電車に乗ったりすることをこんなに力強く勇気づけてくれるとは。

目次にある見出しも「今日から3ヶ月間は死んだふりをして、今から4ヶ月後の種をまく」「周囲に病気知らずだと勘違いされないように、たまには仮病で休んでおく」など、ちょっとの勇気さえあればスナック感覚でできそうなのが多々あって頼もしい。最初から「最後に読む本」にして元気が出てきた。

より幅広いニーズに

先ほどの本は、仕事で「もうダメだ!」と思ったら読む本であったが、続いての本はもう少しは幅広い。『会社・仕事・人間関係で『もうダメだ!』と思ったとき読む本』(斎藤茂太 著 あさ出版)である。
そう言えば最近ブランコ乗ってないな
そう言えば最近ブランコ乗ってないな
カバーする部分が似通ってはいるが、ややレンジが広い。よりバリエーション豊かな「もうダメだ」に対応してくれそうなタイトルだ。
そ、そ、そうだったのか!!!
そ、そ、そうだったのか!!!
表紙の折り返し部分のメッセージも大発見だ。「もうダメだ!」の分だけ幸せが大きくなるならば、安心して「もうダメだ!」と思いまくりたい。思った分だけリターンもでかいはずだ。

この本の基本メッセージはシンプル。「はじめに」の部分に凝縮されているのだが、「もうダメだ」と思ったら、あきらめる前にやってほしいこととして「待つ」ことが挙げられているのだ。
よし、待つぞ
よし、待つぞ
これも衝撃的。「もうダメだ」と思ったら、待つ。目次の見出しでも「時間がたてば『ダメ』ではなくなる」「待つ時間はいくらでも作り出せる」と、待つことを次々に推奨。もうダメだ状態の人は追い詰められている場合が多いだろうが、「待つ」という策はとりあえずの間口が広い提案だと思う。
「もうイヤだ!」対応版もあります
「もうイヤだ!」対応版もあります
巻末で紹介されているが、シリーズとして『会社・仕事・人間関係が『もうイヤだ!』と思ったとき読む本』もある。「ダメって言うかイヤ」派の方はこちらを手に取ってみるとよさそうだ。

ぼんやりと「もうダメだ」と思っているあなたに

ここまでの本は、「もうダメだ」でも仕事や人間関係といったカテゴリーに特化した提言だったが、もっと掴みどころのない「もうダメだ」もあると思う。
ノンジャンルの「もうダメだ!」に対応
ノンジャンルの「もうダメだ!」に対応
そんな曖昧な「もうダメだ」を抱える方に勧めたいのが『[もうダメだ!]と思ったら読む本』(アントレックス)。仕事や人間関係といった括りがないタイトル。フリースタイルの「もうダメだ!」に対応していると言える。
人生のあらゆる場面に使えそう
人生のあらゆる場面に使えそう
裏表紙に挙げられている「○○なとき」も網羅的で、人生のさまざまな局面で役立ちそうに思える。どんな「もうダメだ」も救おうとする姿勢と多目的性が頼もしい。
解釈を委ねてくるタイプ
解釈を委ねてくるタイプ
この本はいわゆる「名言集」体裁の本。「自分でその言葉を自由に解釈でき、とても楽に読めました」という読者の感想もある通り、名言集の中でも解説を加えることなく列挙するタイプだ。
26万人もの仲間がいるように思える
26万人もの仲間がいるように思える
名言から自分で意味をつかみ取るスタイルというわけだ。なるほどと思って本を開くと、最初に出てくるのは「心に勇あれば、悔いることなし」という武田信玄の言葉だ。
あなたの提言には同意しかねる
あなたの提言には同意しかねる
先の2冊と比べて、言ってることのハードルが高い。僕がこれまでに言われてきたことは、一目散に逃げていいとか、「もうダメだ!」の分だけ幸せが大きくなるとかいったことなのだ。心に勇なんてあるわけない。

それでもこの本のいいところは、収録されている名言の数。かなりの量の名言が載っているので、自分にしっくりくるものを消化すればいい。

個人的に気に入ったのは、チェーホフの「平らな道でもつまづくことがある」だ。あるある、あるよね~、と親近感にほっこりする。

ただ、この言葉はまだ途中までで、続きには「人間の運命もそうしたものだ。神以外に誰も真実を知る者はいないのだから」とある。平らな道でつまづくことにはあるある感だが、そこまで考えたことはなかった。

すぐできる解決策が知りたいあなたに

名言には解釈に深みがあるのが魅力だろうが、実際に「もうダメだ」状態に追い込まれている人が欲しているのは、深みよりもサクッと解決できる方法かもしれない。そんな方にお勧めしたいのが『「もうダメだ」が「大丈夫!」に変わる1秒セラピー』(植西聰 著 PHP研究所)。
本当なのか?
本当なのか?
たった1秒で「もうダメだ」が解決。ちょっと信じられないタイトルだが、この書名はちゃんと内容ともつながっている。
1秒の仕組みがわかる
1秒の仕組みがわかる
裏表紙での説明からもわかるが、この本の提言はネガティブな気持ちを捉え直して、ポジティブな一言をつぶやこうというもの。確かにつぶやくことなら1秒でできる。
なんだかいけそうな気がする
なんだかいけそうな気がする
表紙の折り返し部分にも例示がある。目次の見出しもそのようになっていて、例えば第4章「能力の不安が『大丈夫!』に変わるひと言」の最初にあるのは「自分がダメ人間に思える→私はすごい」。

で、できるかな…。そんな風につぶやけるかな…。

個人的には自信が持てないのもあるが、「最悪ばかり考えてしまう→解決策に集中しろ」「意見が食い違う→共通の利益を話題に」といった言葉は、今後使ってみたいとも感じた。たくさんの言葉が載っているので、使えるものから利用していけばよいのだと思う。

辛口も甘口もあります

ここまで紹介してきた「一目散に逃げていい」「1秒で大丈夫」といった提言。その敷居の低さに、逆に戸惑いを覚える方もいるのではないか。もっとガツンとやられたい人にお勧めなのが『強運になる4つの方程式──もうダメだ、をいかに乗り切るか』(渡邉美樹 著 祥伝社)だ。
辛口タイプの「もうダメだ」対策
辛口タイプの「もうダメだ」対策
「もうダメだ」を乗り切って強運をつかむためには、4つの方程式があるというのがこの本の論旨。例えば「第一の方程式」は「神様が応援したくなるような努力」。

それって「ものすごい努力」って意味だと思う。これまで聞いてきたことと話が違う。

ハードモードで「もうダメだ」と向き合いたい人にはいいのだろう。反対に、ほんわかした感じでいきたい人にお勧めなのは『「もうだめ!」「もう無理!」から抜け出す方法』(有川真由美 監修 宝島社)だ。
ゆるふわムードで「もうダメだ」
ゆるふわムードで「もうダメだ」
帯には「がんばりすぎない『ゆるメンタル』で行こう!」とある。内容もコミック仕立てで読みやすい。

あと、よくわからないけど、この本からはいいにおいがする。
なんだろうね
なんだろうね
個体差なのだろうと思うが、なんだかフローラル&スパイシー。

まえがきには「まずは『だめ!』や『ムリ!』という気持ちをちょっと横に置いて、心をラクにしてみませんか?」とある。クンクンしてたらそんな気分にもなってきた。

目次の見出しも「『それわかる!』と言ってくれる友人と話す」「傷ついた日は好きなことで気分の上書きをする」など、すぐに実行できて気分転換になりそうなものが多い。

ただ、「気分が落ち込むようなメールは削除する」はメール内容を吟味しないと仕事で大変なことになりそうだから要注意だ。

「もうダメだ!」を超えた「もう終わりだ!」にも対応

個人的に週2ペースで「もうダメだ!」と思っている私だが、その進化形もときどきやってくる。半年に1回くらいの「もう終わりだ!」がそうだ。

「もうダメだ!」から深刻度が増した「もう終わりだ!」。そんなときにも『「もう終わりだ!」と思った時に読む本』(ダイアプレス)という本がちゃんとある。
いよいよ最終局面を迎えるあなたに
いよいよ最終局面を迎えるあなたに
「はじめに」は「人生、終わった──。そう思ってしまう絶望的な瞬間が、世の中にはあふれすぎています。」と、ハードな書き出し。そこまでは思ってなかった。

ただ、その終わりは「生きてさえいれば、あなたを覆っている深い闇はいつか晴れることでしょう」と、前向きに締めくくられている。生きてさえいればいい。全てが解決したようでもあり、全く解決していないようでもある。人生の真実とは、常に多面性を帯びているものなのだろう。
のび太の名言も載ってる
のび太の名言も載ってる
この本の体裁は名言集で、数々の警句に解説が加えられているタイプ。収録されている名言を放った人たちは、シェイクスピアから江頭2:50までと幅広い。

112の名言の中で、最後に載っているのはアメリカの作家、デイル・ドーテンの「試してみることに失敗はない」という言葉。勇気が出る言葉だ。お試し無料なのだ。失敗というパイはないのだ。

ただ、僕たちはお試しではなく、常に小さな本番の連続にさらされ続けてはいないだろうか。大人ってそういうもんじゃないだろうか。

でも、現実とずれていたとしても、言葉からなんとなく勇気をもらえるのは事実。深層はともかく、勇気という上澄みだけ掬い取ってその日を乗り切れるならそれもありだと思う。

本棚を人に見せたくなくなる
本棚を人に見せたくなくなる
今回やってみてわかったことは、「もうダメだ!」と書かれた本が並んでいるのを見ていると、本当にもうダメだ!という気になってくることだ。これはよくない。

ただ、これだけこの手の本が出ているのは、日本中で多くの人が「もうダメだ!」と思っていることを意味するのだと思う。

本の向こうに見える、たくさんのもうダメだ仲間。何の解決にもなってなくても、自分だけではないと知るだけで、もうダメだが少しはマシになる気はする。今日も自分の「もうダメだ」を生き抜こう。
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