林さんと一緒に痛い体験、イ体験を読む
人の痛い体験を聞いたら自分の痛みが癒されるのではないか。隣の芝は青いんじゃない、痛いんだ! そんな不純な動機から「痛い体験」を募集したが、蓋を開けたらたくさん届いて驚いた。それぞれのメールの文章量も多い。みんないろいろな痛い体験をしていて、それを語る時は饒舌になる。
そして、リア充ならぬイタ充のみなさんは、それぞれの痛みを乗り越えて今に至っている。病院のベッドでとても勇気付けられた。
たくさんいただいた投稿の中から、特に印象的な痛い体験、「イ体験」を林さんと一緒に読んでいく。
「球は捕ってます」(全治一ヶ月さん)
高校野球の試合でのこと。 あわやホームランという打球を捕ると同時にフェンスに激突しました。 幸いクッション性のある壁だったので大事には至らなかったものの頭と左膝を強打。
朦朧とする意識の中で「球は捕ってます」「保険証は財布の中です」とだけ駆け寄ってきた監督に伝えたのを覚えています。
その後人生初のタンカと松葉杖を経験しました。 診断の結果は軽い脳震とうと骨挫傷。 保険証の件は今でもネタにされます。
ちなみに監督には怒られました。 ボールは捕ったのに…。
住:外野手としての責任感が強いですね。痛いのに「球は捕ってます」ですから。エラーはしていない! と。
林:住さんが事故に遭った時は保険証持ってたんですか?
住:持ってましたよ。
林:じゃあ、救急隊の人に保険証は財布の中です、って?
住:いや、保険証のことなんて一切考えなかったですね。
林:全治一ヶ月さんは相当冷静だったんですね。
住:僕、20才くらいの時にアメリカでも交通事故に遭ってるんですよ。友人が運転する車の助手席に乗っていたら、その車が交差点で衝突して。
林:え? 保険証は?
住:だから、事故に遭ってすぐ保険証のことなんて考えないんですって! しかもアメリカで日本の保険証は関係ないし。ただ、救急車の中でずっと英語で何か聞かれてて。ここはアメリカだからきっと保険には入っているのか? と聞かれてると思って「イエス!」って言い続けていた記憶はあります。
林:やっぱり保険だ。
住:ただ、よく聞き直したら『薬は何か飲んでいるか?』と聞かれていたことが分かって。正露丸を飲んでいたことを告げました。
林:アメリカ人に正露丸って伝わったのかな?
住:たぶん、伝わってないと思います。
「ありました。指先」(コウタももさん)
ありがちな話ですが、スライサーで親指もスライス。
激痛で血も出てるのにボウルのなかのキュウリはきれいなままで、おかしいな~と思いスライサーをひっくり返したら、ありました。指先。
人生で三回やってますが、その都度復活する指先はすごいです。でももう経験したくない。痛いから。
林:「ありました。指先」って、すごいですね。
住:くっつけたんですかね? 指先。
林:くっつくのかな?
住:そういえば、僕の大学の先輩が右手の親指をワイヤーで持っていかれて、親指の肉がなくなっちゃって。
林:すごいですね、それ。
住:お腹の肉を親指に移植してすっかり良くなったのですが、それ以降、お腹を日焼けすると親指も一緒に日焼けするようになったんです。
林:本当ですか?
住:本当です。
林:脳が親指はお腹だって認識してるのかな。
住:キュウリをつけたら、つくかもしれませんね。
林:脳がキュウリを親指だと認識して。
住:でも、想像したら相当痛いですね。スライサー。
林:ぞわっとしますわ。
「電動のこぎりを動かしている先生」(こしあんさん)
ひざの靭帯を痛めた時に、大腿部から足首までギプスで固定しました。
一か月後、ギプスを取るからと電動のこぎりみたいなもので 縦一直線に切れ目を入れ始めたのだけど弁慶の泣き所的な脛の部分が妙に痛く熱くなってきたのです。
電動のこぎりを動かしている先生に
私「あのー、なんか熱いんですけど」と申しましても
先生「ダイジョブダイジョブ!」
と取り合ってもらえずそのままチュイーンと足首の所まで切り終えました。
いざパカッとギプスをあけると脛の部分から血がじわっと滲んでまして 先生は無言のまま絆創膏を取りにいきました。
今でも覚えているその静寂感。 痛くてチリチリと熱い思い出であります。
林:僕、ずっと気になってたんですよ。ギプスを外す時に足を切っちゃわないのかなって。
住:切られちゃってますね。こしあんさん。
林:やっぱりな、って思いました。これ読んで。
住:チェーンソー的なもので切られるわけですからね。ほぼジェイソンですよ。考えたら恐ろしいです。
林:ケーブルのビニールを切ろうとしたら、中の銅線も切っちゃったみたいな話ですよ。
住:銅線切っちゃったらそのケーブルは使い物にならない。
林:銅線を切らずに外側のビニールだけをカットできるカッターがあるんですよ。
住:そういう道具でギプスも外すべきですね。痛くてチリチリと熱かったんですから。
林:僕は骨折したことがないから他人事ですが。
住:僕も骨折はないんです。
林:骨折するようなことしないですもんね。
住:まぁ、そうですね。
「車の運転手が内定出てた会社の特約店の社長」(ひよどりさん)
大学の桝田ゼミの合宿の時に、たしか院生を眼科に連れていく役を買って出て、河口湖沿いを走ってときのこと。横から出てきたトレーラーを行かせるために国道上で一時停止。そしたら、後ろからノーブレーキの車が突っ込んできて、車は大破。
僕は住くん同様にむち打ち。助手席の後輩はフロントガラスに頭を打って割れてしまった。幸い大怪我にならなかったけど…。
落ちは、突っ込んできた車の運転手が内定出てた会社の特約店の社長だったってこと。笑えなかったけどね。それはそうと、住くん、お大事にね。
住:たぶん、大学の同級生からの投稿です。僕、桝田ゼミでしたから。
林:覚えてますか?
住:いや、全然覚えてないんですよ。河口湖で合宿とかやってたような気はするんですが。僕は行かなかったのかな。
林:住くん、って書いてかるから同級生っぽいですよね。
住:こんな大きな事故があったらさすがに僕も忘れないと思うので、合宿に行かなかったんですね。きっと。
林:住さんが行ってたら、もっと大きな事故になってたりして。
住:いや、僕は事故を呼ぶ男じゃないんです。
林:でも、結構事故に遭ってる。
住:それにしても、突っ込んできた車の運転手が内定先の特約店の社長って!
林:ドラマチックですね。
住:同級生は内定出てたのか! って思いました。
林:住さんは内定もらってなかったんですか?
住:ええ。しかも、そうだ! 僕は4年の時に留年してました。
入院中に食べた食事を紹介します
痛い体験談が続いてぞわぞわしてきたと思うので、入院中に僕が食べた食事を紹介しようと思う。14日間、39食の病院めしである。
入院初日の昼食
初日の夕食
林:入院中、住さんが毎食Facebookに写真を上げてたじゃないですか。
住:やることなくて。せめて食事の写真を撮ろうと。
林:規則正しいなぁ、って思ってました。
住:朝は7時、お昼は12時、夜は6時。きっちりとその時間でした。
林:夕食6時って!
住:規則正しい生活だったから痩せるかなと思ったけど。
林:どうでした?
住:まったく体重は変わりませんでした。
林:体も動かしてないですしね。
住:あと半分あるので、続けていいですか? 病院めし。
林:どうぞ。
14日目の朝食
住:以上が今回の病院めしです。なんだか感動的ですね。
林:これといった感動はありませんが。
住:この期間、林さんはどんな食事をしてましたか?
林:ああ、美味しかった食事をいくつか撮ってありますよ。見ますか?
住:お願いします。
林さんのシャバめし
僕が入院中に質素な食生活を送る中、シャバにいた林さんはどんな食事を食べていたのか。
林「Tボーンステーキ。経堂に肉料理の店ができていたので行きました」
林「蒲郡取材の帰りに食べた刺身定食」
林「原宿での取材の帰りに食べたちゃんぽん」
林「経堂の気に入っている洋食屋のピザ」
住:どれもうまそうでいいなぁ。しかも、牛乳がついてない。病院めしはなんで毎回牛乳がついてくるんでしょう?
林:栄養?
住:林さんが食べた食事の方がよっぽど栄養ありそうです。
林:住さんの回復を願って食べていましたから。
住:いや、それは嘘だ!
林:最後のピザの店、ここは何を食べてもうまいです。こんど行きましょう。
住:それは是非。そのお礼に病院めしを食べさせてあげられないのが残念です。
林さんの豪華な食事をみて少し場がギスギスしてきた
「私の左肩に霊が3体ついている」(工学部女子さん)
顔にまつわる痛かった話です.
私が中学生のとき,体育でハードル走をしていたら,思いっきりハードルにひっかかって顔からダイブ.
左顔面全体が擦り傷に.まぁ痛かったですが,数週間かけて完治.
そして完治してすぐ,駅で乗り換えのために走っていたら階段で思いっきりつまずいて,これまた顔からダイブ.
全衝撃をまたまた左顔面に受け,擦り傷&たんこぶ.これもなかなか痛かったです.
で,後日談.
学校に霊感の強い先生がいたのですが,その先生曰く,私の左肩に霊が3体ついているとのこと.だから全てケガが左側なんですね,納得.
住:さすが工学部だけあって、句読点がカンマとピリオドですね。
林:確かに工学部っぽいけど、話は科学的じゃない。
住:中学校に霊感の強い先生がいるなんて。
林:これが医者の意見だったら嫌ですよね。霊とかじゃなく科学で診てくれって。
住:中学3年の時、横浜に住んでいたのですが、遠藤くんという友達がいまして。
林:ええ。
住:彼が霊感を持ってるから、一度お前の家をみてあげると言い出して。
林:話の雲行きが怪しいですね。
住:僕の家のリビングで腕を組んで仁王立ちするんですよ。目を閉じて。
林:何か見えたんですか?
住:霊が2体いる、と言って帰っていきました。
林:感じ悪いですね。
住:せめて除霊して欲しかったですよ。いるのが分かったのなら。
林:みえるだけだったのかもしれませんね。
住:だったら、わざわざ家に来なくて良かったのに。
林:住さんの家に来たかっただけかもしれませんよ。
住:そんなゆがんだ友情イヤだ!
「救急車の音がマックのポテトが揚がる音に聞こえた」(縄文の宇宙人さん)
去年、アルバイト先の階段からスタントマンもびっくりの階段落ちをしました。
その時はバイト先のみんなのためにマクドナルドに買い出しに行こうとしてた矢先だったので、全身打撲、額はぱっくり割れて血まみれの状態でしたが「マックに行かなきゃ…」という思いで悶えていました。
物音に気づいた同僚に、救急車を呼ばれ、遠のく意識の中で救急車の音がマックのポテトが揚がる音に聞こえたのは内緒です。
しばらくは体の痛みと、マックの人と呼ばれるのと二重の意味で痛かったです。
住:あの、テレレレテレレレテレレレ、って音ですよね。
林:よっぽどマックに行きたかったんですね。血出てるのに。
住:最初の外野手の人もそうですけど、何か目的がある時に痛い目にあうと痛さより目的の方に気持ちがいくんですね。
林:人間は1つのことしか心配できないって話を聞いたことがあります。
住:なるほど。2つ以上のことは心配できないから、痛さよりマックなのか。
林:それはどうだが分かりませんが、心配事があるときにどこか体を痛くすると心配事はなくなるかも。
住:老後の不安が頭をよぎったら脛を叩いてみる。
林:直面する脛の痛みに比べたら、老後の心配なんて吹っ飛びますね。
住:でも痛いのはイヤですね。
林:特に脛は。
「サドルの先で恥骨を激しく打ち付け」(宮前華さん)
大学生時代に雨上がりの道を自転車で疾走していた所左から出てくる自動車に気づかず、急ブレーキをかけたのですが雨のせいで前輪のブレーキが効きすぎて後輪が浮いて投げ出されました。
投げ出されたタイミングでサドルの先で恥骨を激しく打ち付け、ハンドルや車体に足や腕を殴られ、地面で膝と手のひらを擦り剥きました。
女でも股間をぶつけると痛いのだと実感し、呻きながら前籠の歪んだ自転車を押して大学に向かったのは多分人生で一番痛い思い出です。
住:実は僕、もらい事故に遭う1週間くらい前に自転車で転んでるんですよ。
林:ええ!
住:ちょっとした小石につまづいて、膝と頬骨を地面に強打しました。ズボンは破けるし頬から血も出て。だから、宮前さんの気持ちが痛いほど分かります。
林:災難続きじゃないですか!
住:さっきの中学の先生にみてもらった方がいいですかね?
林:いやいや、霊は関係ないですって。
住:林さんは、どうですか? 痛い話。
林:こないだトイレで寝てたら寝違えてしまってしばらく首が痛かったです。
住:なんでトイレで?
林:朝礼があるというので、ほとんど寝てない状態で朝早くに会社にきまして。
住:ええ。
林:お昼ご飯食べたらもう眠くて仕方なくて、トイレで仮眠を。
住:トイレの個室で?
林:そのせいで寝違えました。だから、それ以来、眠くなったら会社の健康管理室で寝るようにしています。
住:健康管理室の先生に何て言うんですか?
林:眠いから寝させて欲しい、と。
住:それで寝させてくれる?
林:はい。眠いまま仕事をしても効率悪いですからね。
住:学校の保健室だったら怒られそうですね。
林:大人の特権です。
住:あっ、開き直った。
たくさんの投稿ありがとうございました
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林:どうですか? 癒されました?
住:みんな痛い思いをしてますよね。それに比べたらまだましだって思えました。
林:今回紹介できなかったものの中にもかなり痛そうなのがありましたね。
住:読んでいて顔をしかめてしまうような、痛い話がいっぱい。
林:みんな痛い思いを乗り越えてきたわけですから。
住:そうですね。僕もリハビリがんばります。
林:リハビリ?
住:今、毎朝通ってるんですよ。
林:まだ終わってないんですね。
住:みなさんからの投稿をお守り代わりにがんばります。みなさん、ありがとうございました。みんなでイ体験をシェアして明るい未来を。
退院した日にスーパーで買い物をしたら、合計金額が6,666円だった