特集 2016年1月23日

小さいキミドリの旗が出ているときだけ営業している店

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「井土ヶ谷に焼菓子キミドリというお店がある。すごく小さなキミドリの旗が出てる時にだけ営業しているとか? 店長さんはきれいな方らしく、お店と店長の調査をお願いします。」という投稿がMですさんからはまれぽ.com編集部へとどいた。

調査してみたら、物作りが大好きな美人店長さんがいちから作った「焼菓子キミドリ」のお菓子は手間を惜しまずに作られているため、大変に美味。ちなみに店長さんは独身。ということがわかった。

はまれぽ.com 山崎 島
はまれぽ.comは横浜のキニナル情報が見つかるwebマガジンです。毎日更新の新着記事ではユーザーさんから投稿されたキニナル疑問を解決。はまれぽが体を張って徹底調査します。

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翠さんの「焼菓子キミドリ」

神奈川県横浜市南区井土ヶ谷のちょこんとある「焼菓子キミドリ」には、お菓子が作れるうえに美人な店長さんがいるという。これは行かねば、行かねばこれは。小さなキミドリの旗をめがけて出発。
ほいっと京急井土ヶ谷駅
ほいっと京急井土ヶ谷駅
「焼菓子キミドリ」は井土ヶ谷駅から徒歩約10分
井土ヶ谷交差点を日ノ出町側へ斜めに入っていく
井土ヶ谷交差点を日ノ出町側へ斜めに入っていく
静かな通りです
静かな通りです
ここら辺は住みやすいのでしょうか
ここら辺は住みやすいのでしょうか
感じの良い通りをふらふらと歩いていると、ほのかにお菓子の甘い匂いが漂ってくる。これは、と思いよくよくあたりを見回すと……
あれ
あれ
あれれ
あれれ
あー!
あー!
小さいちいさいキミドリの旗が!! ここなんじゃなかろうか。
階段を上がります
階段を上がります
よっとっと
よっとっと
お邪魔します
お邪魔します
店内に一歩入ると、甘くて香ばしい匂いにふうわっと包まれる。「焼菓子キミドリ」到着致しました。

店内の様子は玄関先にお菓子が並べられたカウンターがあり、左手奥に整頓されたキッチンが見える。白と明るい木の色を基調とした、柔らかい空間は、昔の友達の家に久々に遊びに来たような、懐かしい感覚を思い起こさせる。
さりげなく飾られている小物たち
さりげなく飾られている小物たち
店先でクンクンしていると、キッチンから透明感が半端ない女性がふわっと出てこられた。
この方がお綺麗な店長・久保田翠(くぼた・みどり)さんです
この方がお綺麗な店長・久保田翠(くぼた・みどり)さんです
もう一度書きますが、久保田さん、透明感がすごい。きれいなお水の中からすうっと出てこられたような、そんな感じです。

今回は「焼菓子キミドリ」の魅力だけではなく、光の反射率が絶対的に高いであろう久保田さんご自身のこともいろいろお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
うっとり
うっとり
まずは久保田さんが「焼菓子キミドリ」のお店を出す経緯について伺った。

「焼菓子キミドリ」がここ井土ヶ谷にオープンしたのは2014(平成26)年7月。ご両親の経営する印刷会社の2階で始められた。元々工作など、物作りが大好きだった久保田さん。「お菓子は作った後に食べられるから」と特にお好きだったそうで、好きが転じて弘明寺の洋菓子店・ルアン(現アンプリュース)で5年間修行をされた。

製菓の専門学校でも学び、卒業後は葉山のカフェで働いていたそう。「カフェではお菓子だけではなく、お料理も作っていました。とても素敵なカフェだったんですけど、いろいろ事情があって閉店してしまったんです。とても悲しくて、でも、物作りは続けたい気持ちも強くて、自分でお店を作ろう! と思ったんです」と久保田さん。
ふむふむ
ふむふむ
ご両親の助けも借り、印刷関係の機械が置かれていた2階に、久保田さんの思うようなお店を一から作り上げられた。お店を作るだけでも相当な苦労がありそうですが、オープンしてからも、最初は営業日を週2日にし、ほかの洋菓子店へアルバイトをしに行っていたんだそう。

久保田さん、そのしなやかさからは想像できないガッツがあるんですね……、見かけのまんまヘロヘロな自分が恥ずかしくなりました。
お話しながらも、てきぱきとお菓子を作られる。そのシャツどこで買ったんですか?
お話しながらも、てきぱきとお菓子を作られる。そのシャツどこで買ったんですか?
オープンからしばらくして、徐々に「焼菓子キミドリ」のお仕事がお忙しくなり、現在は週4日、月曜・金曜・土曜・日曜と営業日を増やした。口コミにて評判が広がり、たくさんのファンが付いた今でも「焼菓子キミドリ」のお菓子は仕込みから全て久保田さんお一人で作られている。

「お店が忙しくなると、商品をたくさん作って売り上げを伸ばした方が賢いんでしょうけど、私はいつも変わらず丁寧に、手間を惜しまずに作っていきたいと思ってます。楽はしたいとは思わないですね」と、凛と凛とおっしゃっていました。
お菓子の説明も手書き
お菓子の説明も手書き
客層は、主に地元のお子さんがいる女性が多いそうで「お子様のおやつによく買ってくださいます」とのこと。それだけではなく、お年寄りや男性客のご利用もあるのだとか。

「1人で入るのに勇気がいる」というはまれぽの投稿に関しては「小さいお店なので、すみません……でもどんな方でも大歓迎です。是非一度立ち寄ってみてください」とおっしゃっていました。

ちなみに店名の由来は、久保田さんのお名前の翠(みどり)を少し変えて、分かりやすくだれにでも読めるように「キミドリ」にしたんですって。好きなお色は白だそう。

そんな素敵な久保田さんの、プライベートなお話も伺ってきました。
きっちり盛り上がりました
きっちり盛り上がりました
まず、ご趣味は? との質問に対して「切り絵です」とのご返答いただきました。久保田さん、手先がとっても器用で「ほんとに、なんでも作ることが大好きなんです」って。わー、久保田さんと一緒にガーデンチェアとかつくりたーい。筆者は全然役に立たなさそうだけど。
入口に作品が飾ってありました。かわいらしい
入口に作品が飾ってありました。かわいらしい
それからね
それからね
古道具もお好きなんだとか。少し前まで主婦と生活社発行の『ナチュリラ』という雑誌で、古道具とお菓子の連載を5年間持ってらした。2人で古道具屋めぐりも素敵ですねえ。

でもってキニナルお休みの日について。休みの日は、好きなおつまみを作って録画したお笑い番組を見ながらお酒をのんでいるそうで、1人で逗子にも飲みに出かけられることも。

お好きなお酒はワイン。「今度一緒に飲みましょう」って誘ってくださいました。うしし、ぜひぜひ。
ちなみに格闘技もお好きだそうです
ちなみに格闘技もお好きだそうです
掘れば掘るほど「おっとこまえ」な一面も見えてくる久保田さん。好きな男性のタイプを伺うと……
「もう特にないです」
「もう特にないです」
「人間、結局は一人ですから」と重ねておっしゃった。お、おおう……なるほど……ちなみに、久保田さんは独身でいらっしゃいますよ。
いったん広告です
物作りが好きで、格闘技とお笑いとお酒も好きで、ガッツがあって、なにかいろいろあった過去もあって、そしてほんのり友達がいない久保田さん。パワースポットはズバリ逗子。そんな久保田さんの作るこだわりのお菓子達を、いよいよご紹介していきましょう。
いざ
いざ
まずは取材中にいただいたガトーショコラ(販売時の大きさは5×5cm/350円)
まずは取材中にいただいたガトーショコラ(販売時の大きさは5×5cm/350円)
しっとり
しっとり
久保田さんも大好きなガトーショコラ。ご自分のおやつとしても召し上がるそうです。オランダ・バンホーテン社の70%カカオのチョコレートを使用して作られた、濃厚なのにくどすぎず、最後までおいしくいただける一品。
いろいろなチョコレートを試し抜き、ガトーショコラに合うものを見つけた
いろいろなチョコレートを試し抜き、ガトーショコラに合うものを見つけた
子どもにも大人にもおいしくいただけそうな、とってもバランスがとれた素晴らしいガトーショコラでした。ブラックコーヒーにもよくあいました。これをおやつ用にひょひょひょっと作れちゃうなんて……いいなあ。
一番人気の「ブール・ド・ネージュ(400円)」と「ラム漬けいちじくのタルト(250円)」
一番人気の「ブール・ド・ネージュ(400円)」と「ラム漬けいちじくのタルト(250円)」
まるっ
まるっ
「ブール・ド・ネージュ」は、本当に軽やかで口の中に入れるとほろろと崩れる。アーモンドの食感もしっかりとあるのに、驚きのほろほろさ。お味はとても素朴で、親しみやすい。このクッキー、ファンになった方が、自分でも作ろうと長いあいだ研究したとのエピソードもある。うんうん、お気持ちわかるなあ。
「ラム漬けいちじくのタルト」はといいますと
「ラム漬けいちじくのタルト」はといいますと
こちらはお作りしているところを少し見せていただきましたの。
ラム酒に一晩漬け込んだ自家製のラム漬けいちじくを
ラム酒に一晩漬け込んだ自家製のラム漬けいちじくを
手作りのタルト生地にたっぷりと詰めたアーモンドのクリームの上へと敷き詰める
手作りのタルト生地にたっぷりと詰めたアーモンドのクリームの上へと敷き詰める
手間を惜しまずに作られたタルト
手間を惜しまずに作られたタルト
ラム酒の香りはしっかりとするのに、アルコールはさほど強く感じませんでした。本当に気の良さそうなタルトです。

いちじくは甘さ控えめでしっとりとしていて、中でもびっくりしたのは種をぷつっとかんだとき、じわあっとラムの香りが広がったところ。お年寄りにも嬉しいんじゃないでしょうか、な、タルト。
それから「バニラシフォン(200円)」
それから「バニラシフォン(200円)」
切るのに罪悪感があるほどの柔らかさ
切るのに罪悪感があるほどの柔らかさ
赤ちゃんを彷彿とさせるピュアな柔らかさと舌触りの「バニラシフォン」。卵とバニラの風味が一体になって、優しい味わい。おやつとしてだけではなく、朝ごはんとしても食べたくなる、シンプルさ。
「紅茶のシフォン(220円)」もいただきました
「紅茶のシフォン(220円)」もいただきました
アールグレイが主張しすぎない、これまたさすが!! としか言いようのないシフォンケーキ。ぐっと大人っぽい味わいになりますが、なんていうか、少女を失ってないというか、こういう女性になりたいです。
スパイスを混ぜ込んだ甘くないクッキーの「パプリカ(400円)」も
スパイスを混ぜ込んだ甘くないクッキーの「パプリカ(400円)」も
「これは好き嫌いがはっきり分かれるんですよ」と久保田さんがおっしゃっていた塩気のあるクッキー。
たのしみ
たのしみ
久保田さんのお酒の好みが伝わってくる、おしゃれな味わいでした。美味しかった。クッキーってこういうのもクッキーなのか!! と、新たなクッキーへの見方ができそう。スパイシーでビールのおつまみに絶対あう。「ビールのつまみにクッキー?」と思っている方、百聞は一見に如かずです。
まだまだたくさんのお菓子があります
まだまだたくさんのお菓子があります
本格的な夏に向け、爽やかなタルトも登場するようです。定番のお菓子から季節のお菓子まで、気取らない毎日の中で食べていきたいお菓子がたくさんの「焼菓子キミドリ」。

「長くお店を続けていきたいです。おばあちゃんがやっているお菓子屋さん、って言われるぐらい」と笑顔でお話くださった、久保田さんの夢とこだわりが、たくさんの方に愛され続けられるのではと思います。

取材を終えて

ご自分の好きなことを、社会の中で形にしている方々に出会うと、本当に元気が出る。久保田さん、とても素敵な方で、取材の時に着てらしたシャツも、どこで買ったかおしえてもらっちゃった。


―終わり―


キミドリ
住所/神奈川県横浜市南区井土ヶ谷下町32-18 プリントランド 2F
電話番号/090-1736-4109
営業時間/月・金・土・日 11:00~18:00
定休日/火・水・木曜日
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