当たり前の旅 2015年11月7日

IoT三兄弟の「みかん狩り」

観光農園でみかん狩り
観光農園でみかん狩り
季節がすっかり秋めいてきた。先日などは朝から冷たい雨が降り、「なんでも12月中旬の気温らしいですよ」とタクシーの運転手さんから冬の近づきを教えてもらった。そんな季節には、果物を狩りたいと思うものだ。そこで、我々IoT三兄弟は観光農園を目指した。

少しの間、IoT(Internet of thing)のことを忘れ、ただ観光農園でみかんを狩るために。

この記事はとくべつ企画「当たり前の旅」シリーズのうちの1本です。
1970年神奈川県生まれ。デザイン、執筆、映像制作など各種コンテンツ制作に携わる。「どうしたら毎日をご機嫌に過ごせるか」を日々検討中。


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> 個人サイト すみましん

藤沢駅から車で15分の農園で

今回、IoT三兄弟として3本目の企画となる訳だが、IoTを駆使してみかんを狩るようなことはしない。ジャスト「みかん狩り」である。

IoT三兄弟なのだから、少しはIoTを絡めたらどうか。例えば、もいだみかんをIoTで取り分けるとか。みかんにIPアドレスを割り当てるとか。ブレストを重ねた結果、今回は純粋にみかん狩りを楽しもうということになった。とくべつ企画「当たり前の旅」シリーズの1本でもあるし。

休日の午後1時、僕たちは神奈川県の藤沢駅に集合した。
IoT三兄弟のトレードマーク、サンバイザーを被ってみかん農園を目指す
IoT三兄弟のトレードマーク、サンバイザーを被ってみかん農園を目指す
テクノ手芸部のかすやさんも参加して、目的のみかん農園「芝口果樹園」までタクシーで向かう。駅から北に向かって15分ほどで着くらしい。

みかん農園に向かうタクシーの中で、運転手さんから別の農園のバーベキューを勧められた。手ぶらでいけるバーベキューだから是非行きなさい。みかん狩りよりバーベキューの方が楽しいでしょう、と僕たちの予定にグイグイと介入してくる。次の機会に、とやんわりお断りして国道沿いで車を降りた。

芝口果樹園は、国道から路地に入ってすぐ、住宅街の一角にあった。
売り出し中の豪邸の先の路地を入ると
売り出し中の豪邸の先の路地を入ると
みかんの看板が見えてくる
みかんの看板が見えてくる
ぶどう畑やなし畑もあるらしい
ぶどう畑やなし畑もあるらしい
みかん狩りの料金は1人1000円(税込)。赤ちゃんをおぶって受付業務をこなすお兄さんに料金を支払い、カゴとハサミを受け取る。
アットホームな受付
アットホームな受付
カゴとハサミを持つ長男
カゴとハサミを持つ長男
農園は受付のすぐ隣にあるのだが、そこまで別の男性が案内してくれる。恐らく赤ちゃんをおぶっていた男性のお父さんであろう。あの赤ちゃんは初孫で、名前は「みかん」ちゃんかもしれない。
長男を先頭にみかん農園へ
長男を先頭にみかん農園へ
ここになるみかんを狩る
ここになるみかんを狩る
みかん農園に暖かい日差しが差し込む小春日和。みかん狩りへの期待が高まる。

時間無制限、食べ放題という大盤振る舞い

初孫を授かった(と思われる)男性から、みかん狩りのルール説明があり、僕たちは驚いてしまった。

なんと、時間無制限食べ放題、しかもお土産用に詰める袋まであるのだ。
ルール説明を受ける長男
ルール説明を受ける長男
1人1000円で食べ放題だなんて、随分と大盤振る舞いである。さっきのタクシー運転手さんにこの事実を伝えたい。みかん狩りも凄いぞ、と。

「木によって甘いみかんと酸っぱいみかんがあります」

と男性から補足説明がある。ここに生えているみかんの木、全てが甘いわけではないのだ。木によって、当たり外れがあるらしい。

「それでは、どうぞ」

と、開始の合図とともに、一番近いみかんの木に群がるIoT三兄弟。
甘い木を求めて
甘い木を求めて
いや、違う。

この農園にみかんの木は100本以上はある。3人がそれぞれに分かれて甘い木を探し、甘い木に当たったら知らせる方が効率的だ。
このやり方が違うことに気づいたIoT三兄弟
このやり方が違うことに気づいたIoT三兄弟
今回はIoTの力を借りることができない。今までの人生で培ってきた知恵が試される。

3人分かれて甘いみかんの木を探すことにした。

強欲じいさん現る

分かれて甘いみかんの木を探すが、すぐに甘いみかんが当たるほどみかん狩りは甘くない。三男に甘さを尋ねるが、「まあまあ」という表情を浮かべるだけだ。
三男はまだ当たらない
三男はまだ当たらない
三男の_向こう側でみかんをもいでいた長男にも聞いてみた。

すると、長男は「この木は甘くない!」と食い気味に答えてきた。
この木は甘くない、と長男
この木は甘くない、と長男
そんなに急いで否定しなくても良さそうなものだが、一刻も早く甘い木を探し出したいという気持ちからなのだろう。

そう解釈して、次男の僕は他の木に移動した。兄弟のうちの誰かが甘い木を探せばいいのだ。
甘い木はどれだ~
甘い木はどれだ~
このみかんはどうだ~
このみかんはどうだ~
甘くないわけではない。しかし、他の2人に自信を持って勧められるほどの甘さではないような気がするのだ。それは、長男も三男も一緒なのだろう。

長男を探すと、あれ、おかしい。長男はまださっきの木からみかんをもいでいる。

はっ!

あの木は甘いのだ! 長男は甘い木を独り占めしようとしているに違いない。そういえば、さっきの表情はどこかおかしかった。
何かを隠している顔
何かを隠している顔
長男のもとに駆け寄り、もう一度聞いてみる。

「その木はほんとうに甘くないのですか?」

すると長男はニヤッと笑って、「本当は甘いです」とカミングアウトした。

藤沢のみかん農園に強欲じいさんが現れた。

昔話だったら、最後に痛い目にあうところであるが、途中で正直に転じたからギリギリセーフだろうか。

長男が見つけた甘い木から、三人でみかんをもいで美味しくいただいた。
改心した長男。長男の恩恵を受ける三男。
改心した長男。長男の恩恵を受ける三男。

そんなに食べられるものではない

長男が見つけた甘い木に辿り着いた時、僕は既に4個ほどのみかんを食べていた。長男の強欲を責めてはみたものの、正直、この時点で「もう、みかんはいいかな」という気になっていた。

しかし、三男は違った。

長男の木からいくつかみかんをもいだ後も、貪欲に農園内を探索している。
さらに甘い木を探す三男
さらに甘い木を探す三男
みかんを食べ続ける三男
みかんを食べ続ける三男
これが、三男の探究心である。この探究心のお陰で、過去に2つ、IoT三兄弟としての成果物をあげることができた。

もう、みかんはいいかな。などと、すぐに飽きた自分を恥じる。

三男の探究心に応えるため、僕は形のいいみかんの採取に専念することにした。
葉っぱ付きでいい形のみかんをゲット
葉っぱ付きでいい形のみかんをゲット
僕が取ったこのみかんには、長男と三男も関心してくれて、みかん狩りには色々な楽しみ方があることを知る。


あっ、長男が何かを見つけた。
三男?
三男?
ちょっと、ちょっと、僕はここですよ
ちょっと、ちょっと、僕はここですよ
あ、なんだ!
あ、なんだ!
三男「驚かせてごめんなさい」。長男「いいよ、いいよ」
三男「驚かせてごめんなさい」。長男「いいよ、いいよ」
といった、みかん農園を舞台とした寸劇を楽しむこともできる。
三男のサンバイザーとみかんの色がお揃いー
三男のサンバイザーとみかんの色がお揃いー
三男ばっかり、ずるい!
三男ばっかり、ずるい!
次男だってほらっ!
次男だってほらっ!
空は青いね
空は青いね
さらに、みかん農園ならではの記念撮影も楽しい。
おれたち、IoT三兄弟
おれたち、IoT三兄弟
力を合わせて
力を合わせて
IoTの未来を探る
IoTの未来を探る

柿の木もある

甘いみかんを探しだしたり、農園を舞台に寸劇を楽しんだり。昼下がりのみかん農園で充実した時間を過ごしているうち、僕はあるものを見つけた。
柿の木を発見
柿の木を発見
美味しそうな柿の木だ。

僕の祖父の家の庭には大きな柿の木があった。

毎年この季節になると、その木からもいだ柿の実を持って祖父が遊びに来たことを思い出す。僕にとって柿は、懐かしい祖父の味なのだ。祖父が亡くなって20年近く経ってしまうが、今でも祖父のことを想いながら柿を食べる。それが、秋の習慣になっている。

いくつか、いただいておこう。
ハサミを入れようとしたそのとき
ハサミを入れようとしたそのとき
僕が柿をもごうとしている様子を見て、長男が、

「それ、取っていいんですかね?」

と言ってきた。

え? ダメなの?

「みかん狩りですからね。柿は料金の中に含まれないのでは」

さっき、「強欲じいさん」と呼んだことを根に持っているのだろうか。僕の柿について執拗に追求してくる。

同じ農園にあるものですし、みかんっぽい色をしてますし。

と言い訳をしても、ずっと首を傾げている長男。

「これが昔話だったら、その柿を家で食べると渋かった、で終わりですかね。『ぎゃっ、渋い!』って言って暗転、みたいな」

なんだその昔話しは。そんな昔話はないだろう。

とはいえ、やっぱり気になるので、柿はとらなかった。

長男のいじわるのお陰で人の道を外れずに済んだ。祖父も喜んでいると思う。

IoT三兄弟シリーズ、3回目にして全くIoTと関係のないレポートになってしまった。例えば小田急線の向ヶ丘遊園駅に向ヶ丘遊園地はない。だから、IoT三兄弟にも、IoTの気配がしない記事があってもいいと思うのだ。

だからといって毎回「みかん狩り」のようなことばかりしていたら、それはもう本当にIoT三兄弟ではなくなってしまうので、次回からは、またIoTを追求していきたいと思っています。
帰りは路線バスで帰りました
帰りは路線バスで帰りました
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