銀座は夜の匂い
東京でザ・夜の場所といえば銀座だろう。
その銀座を夕方から夜にかけてうろうろしていると、たまに「あれ?」という引っかかりがある。
バー的な、いわゆる夜のお店が集まったビルの看板。
こちらも夜のお店の看板。
こちらも夜のお店の看板。
そう、最後のは美容外科の病院である。
ママがお酒を出したり、紳士がブランデーグラスをカランとか言わせる要素は無い。
なのに、見て数秒ぐらいは普通に「あー、みゆきママのお店」と認識してしまう。(みゆき通りにあるからこういう名前なだけ)
あくまでもイメージの話で恐縮だが、この「紫色の地に白抜き文字、特に明朝体で店名」というのが、ものすごく夜っぽいのだ。
これが良いとか悪いという話ではない。
ただ「なんか、すごく夜だ!」という驚きを伝えたいというのが、今回の趣旨である。
銀座以外でも紫に白抜き明朝は夜
場所が夜の銀座だからそういう誤解をするんじゃないか、と言われるかもしれない。
いやいや、そんなことはない。いつどこで見ても、紫に白抜き明朝は夜っぽいのだ。
どう見ても夜だろう。昼だけど。
これは中野の路地にあったタイ料理屋さん。
どうだろう、看板だけでとてつもなく夜っぽくないか。
これが紫に白抜き明朝の力である。
夜は鉄板級に夜のお店。ナイトスポット。
昼間に撮ってさえ夜っぽい看板写真だが、これが暗くなって電飾がつくともう、ゆるぎない夜感がある。
ちなみにこのお店、食べログの口コミでも「スナックっぽいタイ料理屋」「外観はスナックみたい」と何件もコメントされていた。やはりみんなそう思っているらしい。
新宿の鍼灸マッサージのお店も、夜だ。
この看板の文字は明朝体ではないが、でも、やはりこの雰囲気は夜だ。
吉祥寺のホテルも、夜。
夜っぽいホテル、というといやらしい想像をしてしまいがちだが、ここはブライダルホールがあったり、地下にボウリング場があったりと、なかなかに立派なホテルである。
なぜか、看板だけがすごく夜っぽく見える。
このビルは階数表示が夜っぽい。
ちなみに、看板の全体ではなく一部だけでも紫と白抜き明朝コンビは夜感を高めてくれる。
看板じゃなくても夜っぽい
さらに見ていると、この組み合わせは看板じゃなくても夜感が得られるということも分かってきた。
例えば、これなんかすっごい夜だと思う。
夜の中央線。
JR中央線の通勤快速は、紫色に白抜き明朝。
まさに、ザ・夜の通勤快速である。
夜のしそごはん。
紫に白抜き明朝のキングオブキングスといえば、やはりこれ。
改めてそういう視点で観ると、もう朝食にふりかけるのがはばかられるレベルで夜感が高い。
はめこみ合成をしても違和感ゼロ。抜群の夜っぽさ。
念のため、銀座の夜の看板にはめこみ合成をしてみたが、驚くほどに違和感がない。
しっとりと和服を着こなすゆかりママが、飲み過ぎた紳士にそっと優しく〆のしそごはんを供する光景が目に浮かぶようだ。
この夜っぽさは、おそらく1970年代辺りに夜の繁華街で紫×白のコンビネーションが多用されたことによる刷り込みなのだと思う。(当時の風俗誌でも紫×白の看板が象徴的に使われていた)
なので、もしかしたら平成以降生まれの人にはもう「わー、これ夜っぽいよね」というイメージは共有し得ないのかもしれない。
仕方ないので、せめて「ゆかりは美味しいよね」という感想だけでも共有できればありがたい。