記事制作インターン 2015年9月18日

ゴーグルアイドル、新宿に散る

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ゴーグルってゴーグル以外に何に使うの? 一生のうちゴーグル使うのって何回だろう? そう考え始めると、止まらなかった。ゴーグルに恋してしまった。私がこの子のためにできることとは何だろうか。それは、「命を吹き込む」こと――。
身長176㎝、月と風呂とことばを愛する女子学生。常になにかを持て余している。



お前をスターにしてやる

見よ、この透明度。しなやかな曲線を描きぴったりと顔にフィットする、美しいフォルム。

その名もVFレンズシリーズ石綿ばく露対策用密閉ゴーグル(アスベストレベル3・ダイオキシンレベル1対応)である。
このゴーグルが後ですごいことに
このゴーグルが後ですごいことに
なんと勇ましいネーミング。すばらしい。全く読む気がしない。

さっそくかけてみる。
装着
装着
ふむ……。
微かに香るゴム臭。確かに守られてる感はある。

透明で曇り知らず、傷つきにくい、超硬防曇……。
このゴーグルは人々が「視界を妨げず目を守りたい時」にしか使われない。
このゴーグルもそれで満足している……。
人生初、ゴーグルについて思いを巡らす
人生初、ゴーグルについて思いを巡らす
守ってくれる。それだけなのだ。
他に何もできないのかお前は。
実用感たっぷりのパッケージ
実用感たっぷりのパッケージ
仰々しい名前でありながら、要は目を守ることしかできない。確実に普段使いはされないだろう。
必要な時にだけ呼び出される、都合のよい女のようだ。

しかしそんな便利な都合は、くそくらえである。

ゴーグルよ、果たしてそれでいいのか。
一生自分のためでなく、誰かのために生きる。必要でないときは、倉庫行き必至だ。

私は176cmの高身長、この方女子としてのふるまいを期待されたこともない。

一度母にリカちゃん人形を買ってもらったが、興味が持てなかった(母に気をつかって少し遊ぶフリはしてみた)。

だが今のお前よりましだ。

私ならお前の個性をもっと引き出せる。都合のよい女だけでは終わらせない。
そう、アイドルにだってしてあげられる!

こうして私のゴーグルアイドルプロデュース大作戦は始まったのである。

ゴーグルアイドル、作成開始~~!

材料は女子を感じさせるものばかり☆
材料は女子を感じさせるものばかり☆
アイドルになるためには、まず衣装である。
前述のとおり、幼い頃、リカちゃん人形にも目もくれなかった筆者は、なけなしの女子力で材料を選別した。

一口にアイドルといっても、親しみやすい“会いに行ける”アイドルではない。
キャラ立てをしっかりし、そんな惑星はないと言われても必死にキャラを通す「偶像としてのアイドル」。

ピンクのフリルにメルヘンなお花。多少安っぽくてもいい。キラキラした飾り。ポンポン。

これぞ女子。女子っぽいぞ。
パンツなんて言わせない☆
パンツなんて言わせない☆
「なんかこれパンツっぽくね?」

という言葉を無視しつつ、黙々と作業を続ける。
何がパンツだ。今に見ておれ。
素敵なフリルスカートの完成☆
素敵なフリルスカートの完成☆
滲んだようになっているのは布用ボンドである。
お花で気分ルンルン☆
お花で気分ルンルン☆
シロツメクサの花輪さえ作ったことのない筆者。
花かんむりが思いのほか上手くできて満足である。
完成に近づいてきました☆
完成に近づいてきました☆
ニヤニヤしてしまう。これはイイぞ。

でもまだ何か足りない。
そう、個性だ。

お花にフリフリしているだけでは、アイドルとしてすぐに忘れられてしまう。
料理にスパイスは必須。恋にライバルは必須なのである。
触覚とベルを追加っ☆
触覚とベルを追加っ☆
光が見えた。

このとき筆者は確信した。
この子は、もう、立派なアイドルだ、と――

このゴーグルに、命を吹き込む瞬間がきた。

ゴーグルアイドルに命を吹き込む

最終兵器! つーけまつーけまつけまつげー♪
最終兵器! つーけまつーけまつけまつげー♪
目は女の命。きらきらと輝く瞳は、アイドルにとって欠かせないものである。
緊張の瞬間。ふるえる指先。
ドンキではじめてつけまを買った筆者
ドンキではじめてつけまを買った筆者
完成(ナナメってるのはご愛敬)☆
完成(ナナメってるのはご愛敬)☆
か、かわいい。
想像以上の出来に困惑する。
持ち上げてもかわいい
持ち上げてもかわいい
置いてみてもかわいい
置いてみてもかわいい
遠目でもかわいい
遠目でもかわいい
ここに、ゴーグルアイドルの誕生――

いや。

まだだ。
アイドルとしてデビューし、人々に認められなければ、このゴーグルは報われない。
大丈夫だ。この時のために努力してきたんじゃないか。

私はゴル子(命名)を手に取り、新宿へと降り立った。

ゴル子、新宿でデビュー

つけまつげもバッチリ
つけまつげもバッチリ
意を決しゴル子を装着。
消えないボンド臭。耳元で鳴る微妙なベルの音。

これがゴル子の、初めの一歩。
ALTA前に立ってみる
ALTA前に立ってみる
が、おかしなことに誰もこちらを見ない。
見てくれない。目に入ったとしても、薄笑いだ。

やめてくださいそれ一番つらいやつです。
交差点を歩いてみる
交差点を歩いてみる
人が多いはずの交差点でも、無反応の人々。
後ろのお姉さんとゴル子の衣装がかぶる
後ろのお姉さんとゴル子の衣装がかぶる
これはアイドルとして致命的だ。他人と服がかぶってしまった。
なんならお姉さんと写真撮りたいくらいの一致。

無残に散る

新宿に絶望する図
新宿に絶望する図
東京へ出てきて3年目。
色んな経験を積んで、アイドルプロデューサーとして洋々と船を漕ぎ出してみた。

しかし雑踏は、容赦なく我々をシカトする。
我々の努力も、夢も、希望も載せた船を、新宿という海は一瞬にして呑み込んでしまった。

ゴル子。私の力が及ばなかったのだ。

調子に乗ってポーズしたものの、この後新宿で恥辱を受ける結果となる。

人々を喜ばせることとは、幸せな気持ちにすることとは、何だろうか。そんなことを、ゴーグルアイドルプロデュースを通して考えさせられた。

そして気づいた方もおられるかもしれないが、今回せっかく買ったのに使えていない謎の(リンゴのような)木の実については、後でスタッフがおいしくいただきました。
この時はイケると思ってた
この時はイケると思ってた
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