特集 2015年8月15日

写真のやりとりだけで人と出会うゲーム

突然ですが、ここはどこでしょう?
突然ですが、ここはどこでしょう?
以前、東京に不慣れな友人と待ち合わせをしたとき、電話越しに「今いる場所を説明できない」と言われ、代わりに数枚の写真がメールで送られて来た。

仕方なく写真を手掛かりに友人を捜索するぼく。わずかな情報を頼りに友人の居場所を特定していく。
…あれ? これ面白いぞ!

目に映る景色がどんどんアドベンチャー色に変わってく。ぼくの秘かな探偵ごっこ。いやだめだ、この体験はみんなと共有しなければ!

そうだ、これをゲームにしよう。
大阪府出身。東京都目黒区在住。学生時代に住んでいた長野県が恋しく頻繁に通うひと。デグー飼ってます。

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友人の居場所を推理せよ!

以前、待ち合わせの際に友人から届いた3枚の写真を再現する。あの時とぼくと同じように、友人の居場所を推理してみてほしい。
1枚目
1枚目
2枚目
2枚目
3枚目
3枚目
唯一の手掛かりは渋谷にいるということだけ。もっとわかりやすい写真は撮れないものかと呆れるレベルだが、これくらいの方が探し甲斐がある。セブンイレブンの店舗名さえわからないし、友人はぼくを試しているのだろうか。

ちなみにこの時は1枚目の写真にビルの名前が写っていたので、写真の場所が渋谷1丁目11付近だと推測できた。行ってみると、友人はセブンイレブンの店内にいた。

このような状況をより多くの人に体験してもらうため、ぼくが考えたのが「写真のやりとりだけで人と出会うゲーム」である。

ぼくが作ったルールを説明しよう

まさにいまゲームが始まろうとしている。ぼくはこれから3時間以内にパートナーと出会わなければならない。
まさにいまゲームが始まろうとしている。ぼくはこれから3時間以内にパートナーと出会わなければならない。
このゲームは、都内(東京メトロ圏内)のどこかにいるパートナーと3時間以内に出会えばクリアとなる。

ただし電話やメールで連絡をとることはできず、互いに意思を伝えられるのは「写真のやりとり」だけ。

しかも写真には以下のように制限ルールがある。
・送れる写真は一人5枚まで
・写真に「文字」を写してはいけない(これが肝)


ゲームの名前は「ピクチャクトゲーム」

もちろんぼくが名付けた。ピクチャー(写真)とコンタクト(連絡)を組み合わせた造語だ。名前を付けるだけで一気に愛着が増してきた。冒険はもう始まっている。

このゲームには進行役もいます

朝9時、古賀さんからゲームスタートの合図が来た!
朝9時、古賀さんからゲームスタートの合図が来た!
ゲームの進行役は、編集部の古賀さんにお願いした。

ぼくがパートナーに写真を送りたいときは古賀さんに送信すると相手に転送してくれるし、パートナーからの写真は、古賀さんを経由して送られてくる。

また、古賀さんには写真に文字が写っていないかを厳しい目でチェックしてもらっている。税関のように。

未知なるパートナーと写真のやりとり

街には意外と「文字」が多い
街には意外と「文字」が多い
文字が写らないよう、早速1枚目の写真を送った
文字が写らないよう、早速1枚目の写真を送った
最初にぼくが送った写真は、バッグと傘。
まずは自分の持ち物をパートナーに伝えたかったのだ。

と言うのも、実はぼくもパートナーもお互いが誰なのか知らされていない。正体不明の相手とやりとりするのは、ミステリアスでドキドキする。
しばらく待っても写真が来ないので再びぼくから送った
しばらく待っても写真が来ないので再びぼくから送った
2枚目の写真は中目黒GT。これに気付いてくれるかは怪しかったが、ともかく写真を送らないことにはゲームが進まない。

それでも反応がないので、もう少しわかりやい目印がある駅に移動することにした。
エリアは東京メトロの圏内なので、一日乗車券で移動
エリアは東京メトロの圏内なので、一日乗車券で移動
移動中も路線図から目が離せない。どこ行こうか。
移動中も路線図から目が離せない。どこ行こうか。
移動するのか、相手を待つのか。状況に応じた判断と決断もゲームの楽しみどころである。

一発ゲームオーバーに気をつける

勘のいい人なら、「渋谷に行ってハチ公やモヤイ像を撮って送ればいいじゃん」と考えるだろう。

しかし、このゲームにはNG写真リストというものが設けられている。もしリストに載っている写真を送ると、その瞬間にゲームオーバーとなってしまうのだ。

NG写真リストは進行役の古賀さんが10個選定しているが、ぼくもパートナーも何がリストにあがっているのか知らない。

つまり、ハチ公、モヤイ像、東京タワー、銀の鈴など、わかりやすいランドマークを撮って送ると、これに引っ掛かってゲームオーバーになる可能性があるのだ。
(みよ、よくできたルールを!)

本格推理の時間

日比谷線で移動していると、パートナーから写真が来た
日比谷線で移動していると、パートナーから写真が来た
建設中のビルが二つ。手前には橋のようなものも見える。なるほど、まったく分からん。
とりあえず銀座駅で降りてみた
とりあえず銀座駅で降りてみた
恐らくパートナーも中目黒に気付いていないと思うし、ぼくも相手の居場所が皆目見当もつかない。

わかっているのかいないのか。それさえもやりとりできず、非常にもどかしい思いをする。
そうこうするうち2枚目の写真が来た
そうこうするうち2枚目の写真が来た
今度は木の向こうに特徴的な建物が写っている。見たことがあるような、ないような……。

ネット検索で「円盤 建物 都内」と調べてみた。
ミッドタウンの写真に例の建物が写ってる!
ミッドタウンの写真に例の建物が写ってる!
六本木にある東京ミッドタウン。その奥に見える建物と、送られてきた写真にある建物がすごくよく似ている。

恐らく間違いないだろう。行こう六本木。日比谷線なら銀座から一本だ。
わかったよという意味を込めて日比谷線のマークを撮って送った。ギリギリ文字が入らないように。
わかったよという意味を込めて日比谷線のマークを撮って送った。ギリギリ文字が入らないように。
パートナーは絶対に六本木にいる。急げ、急げ。
ミッドタウンに来ると木の向こうに例の建物が見えた。
ミッドタウンに来ると木の向こうに例の建物が見えた。
そうか、あの建物は赤坂のTBSだ。改めて写真を見ればTBSにしか見えないのに、文字がないから全然気付かなかった。

でも収穫もある。TBSと一緒に写っていた「木」だ。

六本木のミッドタウン横にはたくさんの木々が植えられている。恐らく、パートナーは六本木側からTBSを撮影したんじゃないだろうか。
さらに工事中の建物も発見。1枚目の写真は多分あれだ。
さらに工事中の建物も発見。1枚目の写真は多分あれだ。
赤坂にいたパートナーが、六本木に徒歩で移動していると予想。合っていれば、ぼくらは近くにいるはずだ。

すると、再び写真が届いた。
かお!
かお!
とここで、パートナーの顔が判明した。
ライターのきだてさんだ。前に一度会ったことがある。

背後には日比谷線のマークもある。赤坂には日比谷線が通っていないので、ぼくの予想通り赤坂から六本木方面に歩いているのは間違いなさそうだ。

駅は恐らく六本木駅だろう。ぼくが駅に戻れば、パートナーと出会えてクリアである。

そして迷走する……

4枚目の写真として、きだてさんが通ったはずのミッドタウン前の横断歩道を送る。近くにいるという合図だ。
4枚目の写真として、きだてさんが通ったはずのミッドタウン前の横断歩道を送る。近くにいるという合図だ。
日比谷線の六本木駅に舞い戻り、ドヤ顔できだてさんを探す。……ん、困った。いないぞ。
六本木駅……全く見当たらないのである
六本木駅……全く見当たらないのである
六本木駅……全く見当たらないのである
六本木駅……全く見当たらないのである
しかも3枚目の写真でパートナーの背後に写っていた柱の模様がどこを探してもない。六本木近辺にいたはずなのに、どこに行ってしまったのか。……むむ困った。

しかし、焦りとともに妙な興奮がこみあげてくる。明らかに迷走している自分がなんだかすごく心地いい。ぼくはこの体験をしてみたかったのだ。

先ほど送った横断歩道の写真は完全に無駄だった。けれど、迷いに迷って最後に出会えばそれこそ奇跡!
すると4枚目の写真が届いた。ちょっとご陽気
すると4枚目の写真が届いた。ちょっとご陽気
地球のようなマークが描かれた看板。……え、知らん。
六本木ヒルズの中かな。探せ、探せ。
残り1時間を切った。おーい、おーい。
残り1時間を切った。おーい、おーい。

来てよパートナー!

地球のマークが描かれた青い看板は全く見つからない。申し訳ないけれどこっちへ来てもらうことにする。
最後の写真では六本木ヒルズの階段を撮って送った。
最後の写真では六本木ヒルズの階段を撮って送った。
残り約40分。もうぼくは5枚すべての写真を送った。
あとは来てもらうことを祈るしかない!
きだてさんを信じて待つ
きだてさんを信じて待つ
するとパートナーから最後の写真が来た。薄いビルだ。
するとパートナーから最後の写真が来た。薄いビルだ。
残り時間は20分を切っている。まずい。

最後の写真を見ると、やけに薄いビルが特徴だが、「六本木 薄い ビル」で検索してみても、全くヒットしない。がぜん、汗が吹き出てきた。

どこにいるんだろう。近くにいるはずなのに。

ガーンな結末

結局、制限時間の3時間が経過しタイムアップとなった。ぼくはパートナーと出会えなかったのだ。くぅ…。

進行役の古賀さんを通じてお互いの場所を伝え、新橋で落ち合うことになった。
見事に噛み合わなかったパートナーのきだてさん
見事に噛み合わなかったパートナーのきだてさん
話してみると最初からぼくらは全く意思疎通ができていなかったことがわかった。残念極まりない。

4枚目、5枚目の写真も、言われてみれば「あー」と声をあげてしまったが、ゲーム中は焦っていて全然気付けなかった。悔しい。

というわけで、きだてさんの目線でもう一度ゲームを振り返ってみます。

きだてさん目線のピクチャクトゲーム

ここからはきだてさんから聞いた話を元にお送りします。
一人称をきだてさんに置き換えてお読みください。

時間は、朝9時に戻ります(キュルルル)。

スタートは四谷駅から。
最初の写真が来た。赤いバッグ?
最初の写真が来た。赤いバッグ?
この写真は判じ絵のようなものと予想する。赤いバッグだから、赤、赤、赤、んー赤坂か!

よし分かった。赤坂に向かおう。
この写真はよく分からないのでスルーだな
この写真はよく分からないのでスルーだな
分からないものを追いかけても迷走するだけ。
とにかく自分は赤坂に行って、赤坂を伝えよう。
建設中の東京ガーデンテラスを送信!
建設中の東京ガーデンテラスを送信!
さらに赤坂TBSを送る。TBSの文字を木で隠したよ。
さらに赤坂TBSを送る。TBSの文字を木で隠したよ。
この2枚の写真で赤坂は伝わるはず。
さぁ、パートナーはどう出るか?
また写真が来た。…え、有楽町線?
また写真が来た。…え、有楽町線?
赤坂ではなく、有楽町線に乗っているのか。
しかも、わざわざこのマークを送って来るということは、有楽町線の有楽町駅にいると予想する。

(この写真が大きなすれ違いの原因でした。日比谷線を表す灰色が、スマホの画面では有楽町線を表す黄土色に見えたようです)
有楽町駅に着いて写真を送信。マークも入れたよ。
有楽町駅に着いて写真を送信。マークも入れたよ。
(ワカバヤシはこの写真を見て日比谷線のマークだと思い込んでしまいました。探してもいないはずだわ)

赤坂では会えなかったので、今度は有楽町で待つことに。まだまだ時間もあるし、来てくださいな。

…と思ったところで、次に届いたのが謎の写真。
は…? 何この写真…?
は…? 何この写真…?
なんで横断歩道なの。意味が全く分からない。
まずいぞこれ。話が全然噛み合わないじゃないか。

だけど、不思議とワクワクしてきた。一方通行、すれ違い。日常では得られない興奮。面白くなってきたぞ!

とは言え、有楽町から動くのはリスクが高い。このまま有楽町を伝え続けて、なんとか出会ってやる!
有楽町の国際フォーラムを撮って送る。
有楽町の国際フォーラムを撮って送る。
写真が来た。これは有楽町からすぐ近くにある地下鉄の入口だ。見覚えある!
写真が来た。これは有楽町からすぐ近くにある地下鉄の入口だ。見覚えある!
……違った。見覚えは気のせいだった。
この写真どこなんだろう。まだ有楽町に来てないのかな。
有楽町でさまよい中。時間もなくなってきた。
有楽町でさまよい中。時間もなくなってきた。
とりあえず国際フォーラムの外観を撮る。これで気付いて来てくれ!
とりあえず国際フォーラムの外観を撮る。これで気付いて来てくれ!
そしてこのままタイムアップ。
以上が、きだてさんから見たゲームの一部始終です。
(参考)
○ピクチャクトゲームのルール説明書(PDF
○ピクチャクトゲーム進行役の手引き(PDF

もどかしさが癖になる

伝えたつもりでも伝わらないし、相手の意図を読み取るのは難しい。けれど、そのうちそれが快感になってくる。できれば、出会ってクリアしたかったが、3時間があっという間で楽しかった。うん、これ面白い。

チーム対抗でやっても、東京以外でやっても良さそう。進行役の立場で傍観するのも面白そうだ。またやるぞ!
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