特集 2015年7月14日

特殊すぎるペン!定規!紙! 夏の文房具フェス2015

斬新すぎる2色ボールペン
斬新すぎる2色ボールペン
文房具的に夏の季語ともいえるISOT2015(国際文具・紙製品展)。
東京ビッグサイトで3日間、各メーカーが新製品の発表展示を行う文房具業界の一大イベントだ。

そのISOT2015レポート、2日目は特殊用途の接着剤から特殊用途の定規、特殊用途の紙まで特殊文房具まつりである。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

前の記事:鳥獣戯画で伝言するメモ! 夏の文房具フェス2015

> 個人サイト イロブン Twitter:tech_k

特殊接着剤といえばセメダイン

接着剤でおなじみセメダインは、新たにものすごい限定された用途で役に立つ接着剤を展示していた。
接着剤の殿堂、セメダインブース。
接着剤の殿堂、セメダインブース。
なにがどう特殊かというと、プラモデルのメッキパーツおよびクリアパーツ専用なのだ。
プラモ好きにはかなりありがたい特殊性。
プラモ好きにはかなりありがたい特殊性。
一般的なプラモ用接着剤だと、メッキを溶かして表面をガサガサに荒らしてしまったり、接着した周囲のクリアパーツが曇ったり、というのがある。
この『ハイグレード模型用セメダイン』は、無溶剤・水性タイプの接着剤なので、そういう接着ミスが基本的に無い。これはありがたい。
全体がメッキパーツでできているプラモなんかはきれいに作るのが非常に難しいのだが、これさえあればかなり楽になるんじゃないだろうか。

普通の接着剤よりも硬化時間がかかるのが残念だが、硬化前ならはみ出した接着剤を水で拭き取れるというメリットもある。
よくくっつきそうなガムテも。
よくくっつきそうなガムテも。
さらに、セメダイン初のガムテープ。接着剤メーカーのガムテはさすがに良くくっつきそうな気がする。

ところで「布テープJのJってなんですか?」と聞くと「国産なのでジャパンのJです」ってセメダインの人に堂々と宣言されてしまった。

なんか久しぶりに聞いたな、ジャパンのJ。
名前は脱力系だが、ちゃんとくっつくぞ。
名前は脱力系だが、ちゃんとくっつくぞ。
手芸業界はいま布用接着剤がアツい。ということで、もちろんセメダインからも、がっちりくっつく布接着剤『nu~no!』が登場。
洗濯しすぎてヨレヨレになったTシャツ。でも接着ははがれてない。
洗濯しすぎてヨレヨレになったTシャツ。でも接着ははがれてない。
ブースでは、実際に『nu~no!』を使ってビーズなど手芸パーツを接着して洗濯を繰り返すというエクストリームな耐久テストの結果も公開していた。

キルマークのように洗濯回数を正の字で追記していき、現在は150回オーバー。
もはやTシャツ本体の方が着られないレベルまで痛んでいるが、接着したパーツの方はまだまだ大丈夫。
布接着剤で雑巾も作れる、という作例。べたべたしそうな雑巾だ。
布接着剤で雑巾も作れる、という作例。べたべたしそうな雑巾だ。

色の切り替えが特殊な2色ペン

プラスチック成形品メーカーのエポックケミカルは、2色ペン『Batons』を展示していた。

2色といっても、色の切り替え方法がノック式でもロータリー式でもない、第3の2色ペンなのだ(ややこしい。)
2連油性ボールペン、というカテゴリが斬新。
2連油性ボールペン、というカテゴリが斬新。
確かに、2連ボールペン。
確かに、2連ボールペン。
軸後端のノックを押すと、連なった赤と黒ペンが同時に出てくる。持つときは普通に書くように握って、赤で書きたいなーと思ったらくるっと上下を入れ替えるだけ。

いちいちノックし直す、とか、持ち替えてロータリースイッチを回す、という手間がゼロなので、切り替えはめちゃくちゃ早い。

握った感覚も、見た目ほど違和感はない。普通のペンのように書ける。
持ち方はこんな感じ。本当に違和感は少ない。
持ち方はこんな感じ。本当に違和感は少ない。
実はアジア産の似たような方式のペン(数年前に入手)が僕のコレクションにあったのだが、『Batons』はノック式。

この2連式は本当にスピーディに切り替えができて便利なので、いっそこういう多色ペンのカテゴリとして世界的に定着して欲しい気もする。
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特殊すぎる三つ折り定規

通路をうろうろ歩いている途中で、黙々と紙を折り続ける実演ブースを発見。
前の男性がずっと紙を折り続けてた。なにかの苦行か。
前の男性がずっと紙を折り続けてた。なにかの苦行か。
名古屋の設計会社、メカニカルデザインさんがオリジナルグッズのブランドとして立ち上げたKOBARICのブースだった。

で、なんでここの方が延々と賽の河原のように紙を折り続けているのかというと、展示している商品がA4用紙をきれいに三つ折りにできる『紙折り定規』だからだ。
機能がまんま名前という、わかりやすいやつ。
機能がまんま名前という、わかりやすいやつ。
見積書や請求書を封筒に入れる際、だいたいは三つ折りにして入れるだろう。あの三つ折りがきれいにピタッとできない人はこれを使おう、というもの。
まず定規の隙間にA4の紙をセット。
まず定規の隙間にA4の紙をセット。
定規を当てたまま、折る。
定規を当てたまま、折る。
取りだして、もう一つの隙間に紙を当てて折り込む。
取りだして、もう一つの隙間に紙を当てて折り込む。
この行程で、長3封筒(お馴染みの、A4を三つ折りにしたのが入る封筒)に入れやすく取り出しやすいストロークの折りが常にできる、という仕組みである。
実際にやらせてもらったが、確かに簡単。三つ折りの折り幅に迷いがちな人は、最初からこれを使えばいいと思う。

ただ問題は、定規としてはやたらデカい、ということ。
使わないときはスチールデスクにくっつけておけるよう磁石が埋め込まれているが、それにしたってやっぱり邪魔だ。

「A4三つ折りがしやすい」と「定規として邪魔」がトレードオフなので、自分の不器用さ具合で選べばいいと思う。

文房具大賞グランプリの特殊用途紙

ISOTでは、その年に発売された文房具の中から審査員によって「機能部門」「デザイン部門」それぞれの文房具大賞が選出される。
で、その中からさらに一番と思われるものにグランプリが与えられる。

今年の文房具大賞・機能部門グランプリは、神戸派計画の『SUITO』。
おしゃれな神戸派計画ブース。
おしゃれな神戸派計画ブース。
パッと見、何のための紙かわからない『SUITO』
パッと見、何のための紙かわからない『SUITO』
これ、万年筆の先端(ニブ)をきれいにする専用のクリーニングペーパーなのだ。

かなり日常的に万年筆を愛用している人でない限り、ほぼ使う事のないニッチな文房具である。
まず、切れ目のある端でペン先をぬぐう。
まず、切れ目のある端でペン先をぬぐう。
続いて、半円のくぼみのある側でニブの根本についたインクを吸い取る。
続いて、半円のくぼみのある側でニブの根本についたインクを吸い取る。
最後に、全体を使って仕上げぬぐい。
最後に、全体を使って仕上げぬぐい。
ピカピカ!
ピカピカ!
ティッシュなどでぬぐうと紙の繊維がついたり、過剰にインクを吸いすぎて余計に汚れたり、ということがある。『SUITO』は、そういう時のための専用紙なのだ。

僕はかなり適当な人間なので万年筆のニブにインクが付着しててもほとんど気にしないのだが、きれいになると確かに気持ちいい。

この壮絶なまでのニッチさも含めて、機会があれば試してみた方がいいと思う。

今日紹介したような特殊すぎる文房具から便利すぎる文房具まで、さらに詳しい文房具情報が知りたい方は、8月29日のお昼から、最新文房具がたっぷり見られる文房具トークイベント『ブンキョウ・ブングジャム#9』へどうぞ。

僕もISOTで取材してきた写真数百枚使って、びっちり最新文房具について語ります。
ブンキョウ・ブングジャム#9
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