特集 2015年2月14日

午前1時からの洋食店

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「今マンガやドラマで深夜食堂というのがやっていますが、野毛にはまさにリアル深夜食堂と言われるようなお店が結構あるそうです。しらべてきてくれませんか?」はまれぽ.com読者のIchiさんからこんな投稿が届いた。


調べてみたところ、午前1時からオープンする野毛の「シベール」では下ごしらえからすべて丁寧に作られた洋食をおいしくいただける、ということが分かった。

はまれぽ.com 山崎 島
はまれぽ.comは横浜のキニナル情報が見つかるwebマガジンです。毎日更新の新着記事ではユーザーさんから投稿されたキニナル疑問を解決。はまれぽが体を張って徹底調査します。

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午前1時からの洋食店

大衆食堂に社員食堂、いろんな食堂がありますが、深夜にどっしりした洋食をいただける、深夜食堂ならぬ深夜洋食レストランが野毛にあるとのこと。2012(平成24)年1月に[「野毛には、リアルな深夜食堂がある?」で取材した際に、読者の方からのコメントでも「シベールもいいですね」と投稿があった洋食店にはまれぽ.com編集部・山岸と寒さに身を寄せ合いながら行ってまいりました。

夜中の福富町を宮川町に向かって早足であるっていると・・・
見えてくる
見えてくる
黄色い看板の
黄色い看板の
「シベール」。JR関内駅から徒歩7分・日ノ出町駅から徒歩5分
「シベール」。JR関内駅から徒歩7分・日ノ出町駅から徒歩5分
この時はまだ開店前。開店は午前1時
この時はまだ開店前。開店は午前1時
中の様子をちらり
中の様子をちらり
お店の佇まいからすでに心を掴まれた。深夜の野毛は意外と静かで、シベールのひっそりとした雰囲気は良くなじんでいる。入る前から良いお店なのが分かったのって初めて。

お店の前で待っていると、午前1時ちょうど、ナイスな白髪の男性が中に入れてくださった。
中はカウンター席
中はカウンター席
お湯が沸いてる
お湯が沸いてる
電気がつきました
電気がつきました
店内はこぢんまりとしていて、使い込まれたカウンターや調理器具が良い味を出している。無言で写真を撮りまくるザキヤマギシ。
店主の河合さん
店主の河合さん
はじめ、取材をお願いした時は少し乗り気でなかった河合さん。「以前テレビに取り上げられたとき、一見さんが一気に増えたのはありがたいんですが、常連さんが入れなくなってしまって困ったんです」と、いつも来ているお客さんに対しての思いやりが分かる。はまれぽや今回の取材についてご説明し、受けてくださることに。どうぞよろしくお願い致します。

開店したばかりで忙しいなか「コーヒーでも飲みながら」とやさしい河合さん。
おいしいコーヒー(400円)は、なんとおかわり自由
おいしいコーヒー(400円)は、なんとおかわり自由
さっそくお店についてお話をお伺いしました。

栃木県ご出身、東京育ちの河合さんはもともと製薬会社で薬を作る研究をなさっていた。“職人”として生きていきたい、という思いから会社を辞め30歳で調理師学校に入学。料理の勉強を始めた。

「本当は宮大工になりたかったんです。でも、30歳から始めるには難しく、和食の世界へ入ろうと思った。でもね、30歳をすぎると料亭には入れないんですよ」と、淡々と飾らずに当時のことを振り返られた。しかし洋食なら遅くないと、10年ほど修行。中区海岸通の名店「レストランスカンディヤ」で調理場に立ち、その後系列店である今はなき中華街のバー「コペンハーゲン」の料理長に抜擢された。同店ではお酒の知識も学ぶためにバーテンダーも経験されたという、とても勤勉な方。そして、今から28年前の1987(昭和62)年、40歳で独立。

ギリシア神話に出てくる“自然を守る女神”を由来に「シベール」と名付けられ同店が誕生した。
まな板を熱湯で殺菌しているご様子
まな板を熱湯で殺菌しているご様子
開店直後は福富町で営業。深夜も営業しているというスタイルは当初から。当時は午後10時から翌朝の8時までお店を開けていた。「28年前は深夜にやっているお店がなかったんです。コンビニやファミリーレストランも午後10時で閉店する時代でした。深夜やっているお店と言えば焼き鳥とか寿司屋とかラーメン屋だけで。洋食屋はなかったので、それが理由です」

なんだか、なんだかわかんないけど痺れた!!
素敵です河合さん
素敵です河合さん
「本当は店を持つ気はなかったんです。本を書きたかったんですよ。“コックの嘘”っていう」
職人気質で、ユーモアもあわせ持つお人柄。

「シベール」は今から18年前、福富町から現在の宮川町に移転し、現在に至る。
横浜に来たのは「調理師学校の先生に横浜のお店を紹介されたからです」
横浜に来たのは「調理師学校の先生に横浜のお店を紹介されたからです」
客層の95パーセントは夜遅くに働いていらっしゃる方々。職人さんやクラブのママさん、接待飲食店の従業員をしている男性客などが多いのだそう。
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深夜にいただく洋食の味

手書きのメニュー
手書きのメニュー
同店は洋食レストランだが、ネギラーメン(800円)や冷やし中華(900)、牛肉のたたき(1200円)などもある。さっぱりとした冷やし中華は、季節を問わず人気だそう。
山岸は始終合掌していた
山岸は始終合掌していた
ここでお客さんもいらしたので、一緒に料理をいただくことに。私たちはオープン当時からあるという人気メニューのエスカルゴ(1200円)とカニのクレープ包みグラタン(1400円)をいただいた。
手際よく
手際よく
調理する河合さん
調理する河合さん
丹念に仕込んだものを温めたりオーブンに入れたりを中心に調理する。河合さんお1人でお店を全て回すため、オーダーが入ったあとにイチから調理せず、お客さんを待たせないよう工夫をしているのだそう。

「営業は午前1時から午前8時までですが、その日の営業後、午後3時までは仕入れや仕込みなどで店にいます。夕方になると新鮮な食材が手に入りませんし、仕込みも時間がかかるので」と、河合さん。同店のメニューはほとんど河合さんのオリジナル料理で、ソースもイチから全て手作りされている。
このクレープの皮、何日かけているでしょうか
このクレープの皮、何日かけているでしょうか
なんと、3日です。生地を作って寝かせ、焼いてからまた寝かせ、中身を包んでからまた寝かせるんですって。これぐらい時間をかけないと、生地が破れてしまったりしてうまく作れないそう。また、クレープの中のクリームと里芋ソースも3日かけて作っている。
生クリームをたくさんかけて
生クリームをたくさんかけて
チーズを盛ってオーブンへ
チーズを盛ってオーブンへ
でもって
でもって
完成がこちら
完成がこちら
とろり
とろり
おいしかったんです。どれぐらいおいしかったかと言うと、ザキヤマギシ、お互いの食べている様子を写真で撮り忘れるくらいです。クレープはクリームに浸かってるにもかかわらずしっとりしているのが分かるし、なんていうか、ちゃんと中のタラバガニとズワイガニの風味を感じる。時間と手間をかけてじっくりと仕込まれたこちらの一品。是非ご賞味いただきたいです。ほんと幸せになれる。
こちらはエスカルゴ
こちらはエスカルゴ
目がうつろになっちゃった
目がうつろになっちゃった
バターとニンニクが・・・ね。まず香りが良いのです。味も、香りの通りに豊か。なのにくどすぎない。これは素材が良いんだなあ。ワインでスキッといただきたい。さらにうれしいのはパンも一緒についてくるところ。ソースをパンですくって二度楽しめる。
お隣りさんからおすそ分けしてもらったツナのサラダ(800円)
お隣りさんからおすそ分けしてもらったツナのサラダ(800円)
マヨネーズ風味のシンプルなサラダも美味。「ずっとこのお店に来たかったの!」というお隣の神奈川区から来たというナイスなカップルも「この味を出したくても出せない」と大絶賛。
河合さんから「みんなでどうぞと」サービスが・・・
河合さんから「みんなでどうぞと」サービスが・・・
いただいたハムとキューリのサラダ(1000円)はまかないで作っていたものをお客さんのリクエストで出したところ、またたく間に人気メニューとなったというサラダ。やさしいカレー味と丁寧に細切られた野菜が、もりもり食べられる。「簡単だからみんな手元を見て作り方を覚えちゃうんです。で、自分たちの店のお通しにしたりしてね」と河合さんは笑っていらした。
お隣さんのオニオングラタンスープ(700円)
お隣さんのオニオングラタンスープ(700円)
人気のオニオングラタンスープ。玉ネギを3時間かけて炒めている。温まりたいこの時期にはいいですねえ。

河合さんのセンスの良い冗談とおいしい料理で、良い夜を過ごせてる!! と感じた。正直な料理とお客さんを大切にしている深夜の洋食レストラン「シベール」。

是非是非皆さんに行ってほしいですが、「飲みすぎたりして周りの人に迷惑をかけない」というエチケットなるものを携えて行ってくださると、良い夜を過ごせますよ!! どうぞよろしく。山崎は確実にまた行きます。

ちなみに、河合さん、テレビは全く見ないそうなのでドラマ「深夜食堂」のことはご存じないとのことでした。

取材を終えて

まず河合さんのお人柄に感激した。いろいろな人の人情が交差する深夜のレストラン。ロマンチックでした。全てひっくるめて大切にしたいレストラン。だれかここでプロポーズしてくれないかな。

シベール
住所/横浜市中区宮川町1-2-10
電話/なし
営業時間/午前1時~午前8時
定休日/水曜・日曜
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