折り紙会館での展示
取材の日程を決める前に、ちょうど『おりがみ会館』で大人に交じって展示をしているというので行ってみた。
最近では弟のちしゅう君(小3)も影響を受けているらしく、いっしょに展示していた。
『おりがみ会館』がある事さえ知らなかった。
大好きなハ虫類、両生類のオンパレード。
細部までよく観察して作っている昆虫標本。羽のカットがお見事。
お母さんのために作ったと言うナマケモノ。
展示されていたオオトカゲの模様は……
このようにして作られていた。実はこの中に文字が隠されているという。
家の中は、絵とフィギュアでいっぱい
さて、待ちに待ったお宅訪問である。さぞ切り折り紙がたくさん飾ってあるのだろうと予想していたが、どちらかというとりゅうせい君が昔描いた絵や、フィギュアコレクション(恐竜・ハ虫類・両生類・昆虫・動物など)が多い。
本物は迫力満点。1年生のときに描いた『トラ』。
シンプルに仕上げてある作品もバランスが秀逸!
フィギュアコレクションも小学生のものとはとても思えない。
ただ、水槽の中に、なにが入ってるの~?と覗くと……
すべて切り折り紙で構成されていた。レイアウトは頻繁に変えるらしく、訪問時も何回も移動させていたりゅうせい君。
制作時間1日平均2時間
時間さえあれば作品作りに勤しんでいるというりゅうせい君は現在小学6年生。お年頃である。けっきょく最後まで、撮影許可は得られなかった。
一方、弟のちしゅう君は小学3年生。ごらんの通りやんちゃ盛りだ。
ガムテープで作ったウミイグアナをサービス精神満点の瞳で見せてくれるちしゅう君。
「ボクだってつくるの大好きだよ~」
とはいえ、制作している光景も撮りたいし、もっと作品も見たい。「うん、顔うつさなければいいよ」とりゅうせい君。
そして、「あ、作品はもっとありますよ。一応とってあるの」とお母さん。ぜんぶ捨てちゃったのかと思っていたわたしはほっとした。しかしあの立体物を保管するのも大変そうだ。
数々の作品がひとつの段ボールのなかに
お母さんに出していただいた1箱の段ボール。
「え。これだけ?」
と心の中で思った事は認めざるを得ない。
あとは、やっぱり捨てちゃったのかな……などと思っていたら……。
広げたら、こ、こんなにあった……。そうだ。いくら立体物でも紙は紙。折って収納できるのだ。しかもこれ、折り紙だし。
作業台は、こたつ
作品をひとつひとつチョイスしていく間に、りゅうせい君に制作をしてもらうことに。
作業台のような机もあり、勉強机もあったので、わたしはてっきりそこで作業するのかと思っていた
こたつ! いつものように図鑑とテレビを交互に見ながらの作業。意外とアバウトに作品は生み出される。
こうなったら、なにを選んでいいのか迷う……
「これはなんですか?」
おかあさん「さあ……りゅーくーん、なんだったっけ?」
りゅうせい君は制作とテレビに夢中。
とりあえず作品を見ていただこう。
ネズミ
火の鳥の尾羽。繊細!
フェニックス
サカダチコノハナナフシ
オオムカデ
フェニックス
白い昆虫たちを集めてみた
プテラノドンのリング
ニシキエビ
ツノゼミ
徹夜で作業する事も! 想像力が上回っている作品群
昆虫や恐竜、ハ虫類ばかりではない。想像力でモノを作り上げているという事がよくわかった。
なにか質問するとナマ返事はしたり、テレビは観ているようだが、実は手を止めることをいっさいしないりゅうせい君を、わたしはずっとチェックしていた。
「集中しすぎて寝ない(徹夜)で作業する事もあるんですよ。本当は止めないといけないんでしょうけど……」とお母さん。
い、いけなくないです! ぜんぜんいけなくないと思います! すばらしい!
一方、りゅうせい先生は……
横になって作ってた。
2,3才からはじめた制作。すでに腰痛持ちに。
だいたい2,3才頃から、絵や工作をはじめたりゅうせい君。ほぼ毎日制作している事から、すでに肩こり、腰痛持ちなのだという。そこまでして彼をかき立てるものっていったいなんなんだろ。
天才ってこうやって生まれるのかな~と、わたしは彼の腰を案ずるよりも、なんだかうれしくなってしまったのだ。
すいません。もっと、小さい頃の話も聞いてみたい!
小学3年生のときに描いた絵。オオサンショウウオや魚、昆虫、プランクトン。河童や妖怪(水木しげる先生の大ファン)まで、大好きなもので埋め尽くされている。
恐竜走りで鬼ごっこ!
2才の頃から恐竜図鑑をじーっと凝視していたというりゅうせい君。文字はカタカナから覚え、幼稚園では恐竜走りで鬼ごっこをしていたとのこと。なにそれ。やってみたい……。
動物はかならずカラダから描くので、ほとんどの子が正面で頭でっかちになりがちなのに対し、りゅうせい君の絵は横向きで実物に近い大きさになる。さすが図鑑を眺める時間が長いだけある。
そして、運動会や芋掘りなど、人間の絵を描く時にはキョーミがないのでまったくチカラがこもっていないそうだ。この徹底ぶりにわたしはものの見事に魅了された。
「今、キョーミあるものってなあに?」と聞くと、インドネシアやコスタリカの新種の生き物を発見して命名すること、だそうだ。
折る・切る・折り込む
さて、こたつでの制作は順調に進行しているようだ。
まず、紙をふたつに折って、切っていく事からはじめる。切り終えたあとは、胴の部分、脚の部分を徐々に細かく折り込んでいく。
約一時間後『テナガエビ』完成。制作風景を撮らせてくれとは依頼したが、まさかこんなに短時間に完成するとは思ってもいなかった。
こうして1枚の紙から作り上げられる。
とにかく作る事が好き(人間以外)
りゅうせい君は、ねんど細工も得意とする。
以下は小学4年生のときの作品。これを同僚に見せられた時、わたしは思わず驚嘆の奇声をあげた。
『補食するカエル』
ところがもったいないことに、ねんど作品は作ったらすぐにつぶしてしまうのだという。
おかあさんより りゅうせい「動物図鑑」を作ってほしい
切り折り紙や絵が得意なので「手先が器用で美術の才能があるね」とよく言われますが、りゅうせいの場合は自分の好きな生き物に対する観察力が鋭くて、その作品に生き物への愛情が感じられるように思います。
人間を描かないのは人間に対するキョーミが薄いのかもしれませんね。
友だちが「あーそーぼー!」と訪ねてきても、「いい」と断り、読書したり制作に励むような子供なので、もうちょっと人間にもキョーミを持って仲間をつくって、せっかくの中学高校時代は青春してほしいものです。
将来はどうも動物園に関わって仕事がしたいそうですが、それこそ新種発見を目標に世界中を旅するようなたくましい子になって、りゅうせいの動物図鑑を完成してほしいですね。(お母さん談)
最後に、「りゅうせい君の将来の夢ってなあに?」と、聞いてみた。終始無口なりゅうせい君だったが、「(ペットである)ヒョウモントカゲモドキをもう一匹飼うこと!」といきなり目を輝かせて元気に答えてくれたのだ。
その瞬間、彼をムギューと抱きしめたくなった。やってる事は大人顔負けでも、子どもは子どもなのだ。好きだから作る。きっと、今はそれだけなのだ。そのことがなんだかとてもうれしくてしかたなかったし、壮大な返答を予想していたわたしはなぜか自分を恥じたのだった。
わたしの手のひらにのせたカレは、じっとりゅうせい君を眺めていた。相思相愛だね!
12月の弟の誕生日に、その夢は叶ったそうです。だとしたらやっぱり次は……新種発見かな!?