あおむろひろゆき実録『家』
第二章~金ちゃん出禁処分
私が会社に入って2年目の春に、上司の斡旋でとある民家に住まわせていただくことになりました。その家は築60年以上で、その家を建てた金ちゃんという大工が定期的にメンテナンスをしに来るきまりになっていました。
第二章~金ちゃん出禁処分
私が会社に入って2年目の春に、上司の斡旋でとある民家に住まわせていただくことになりました。その家は築60年以上で、その家を建てた金ちゃんという大工が定期的にメンテナンスをしに来るきまりになっていました。
ガンガンガンガン!
この金ちゃんという大工は結構な頻度で突然現れる上に(私がいない時は合鍵を使って勝手に侵入してメンテナンスをする)、メンテナンス後はこちらがビールとおつまみを出さないと帰らないので、自分の中ではかなりめんどくさい存在になりつつありました。
おまけに本当に修繕しないといけないのか疑いたくなるほど普通の箇所にもバンバン釘を打ち込むので、不信感も生まれていました。しかしながら60年以上この家をメンテナンスしてきたという金ちゃんとこの家との歴史に敬意を払い、私は来る日も来る日もビールとおつまみを出し続けました。
徐々に要求がエスカレートしておつまみにお刺身(マグロ)を要求してきた時には反射的にビンタしそうになりましたが、グッとこらえました。
そんな日々を2ヶ月ほど過ごした、ある日のことです。
その日は仕事が立て込んだこともあり、家に帰ったのは23時頃でした。
疲れてとぼとぼ歩いていると、何らやら家の様子がいつもと少し違います。
おまけに本当に修繕しないといけないのか疑いたくなるほど普通の箇所にもバンバン釘を打ち込むので、不信感も生まれていました。しかしながら60年以上この家をメンテナンスしてきたという金ちゃんとこの家との歴史に敬意を払い、私は来る日も来る日もビールとおつまみを出し続けました。
徐々に要求がエスカレートしておつまみにお刺身(マグロ)を要求してきた時には反射的にビンタしそうになりましたが、グッとこらえました。
そんな日々を2ヶ月ほど過ごした、ある日のことです。
その日は仕事が立て込んだこともあり、家に帰ったのは23時頃でした。
疲れてとぼとぼ歩いていると、何らやら家の様子がいつもと少し違います。
なんか家がピカピカしてるんですわ。
あれっ、この家、イルミネーション機能あったっけ?それとも、自分が疲れてるだけ?幻覚でも見ているのかな?と思いながら玄関を開けます。
一瞬、俵屋宗達の風神雷神図屏風の雷神が現世に舞い降りてきたのかな?と思いましたが、目の前にいる雷神は、びっくりするくらい見覚えがあります。
目の前にいる雷神はどこからどう見てもパニック状態で、こちらの姿にも全く気づきません。
目の前で起きている出来事に対して理解が追い付かず、何故か私は感動してしまいました。
そして、雷神に向かって思わずこう言ってしまいます。
そして、雷神に向かって思わずこう言ってしまいます。
まさか自分の口からこのような言葉が出るなんて思ってもみなかったのですが、『くそじじい!』という罵声は限りなくナチュラルに自分の口から発せられました。
鬼神と豹変してしまった私を前に金ちゃんは、ビールとおつまみ欲しさに私の不在時に家をわざと壊していたことを認めました。
本来なら警察を呼んでもよかったのですが、この家を建てた大工さんということもあり、今回は無罪放免としました。
しかしその日を境に、金ちゃんを出入り禁止にします。(合鍵は没収して、業者を呼んで鍵を取り換えてもらった)
こうして金ちゃん騒動はひと段落し、平穏な日々が訪れました。
鬼神と豹変してしまった私を前に金ちゃんは、ビールとおつまみ欲しさに私の不在時に家をわざと壊していたことを認めました。
本来なら警察を呼んでもよかったのですが、この家を建てた大工さんということもあり、今回は無罪放免としました。
しかしその日を境に、金ちゃんを出入り禁止にします。(合鍵は没収して、業者を呼んで鍵を取り換えてもらった)
こうして金ちゃん騒動はひと段落し、平穏な日々が訪れました。
その翌月のことです。
日曜日の昼下がり、私がテレビを見ていると玄関のチャイムが鳴りました。
「郵便かな?」と思い、玄関の扉を開けます。
「郵便かな?」と思い、玄関の扉を開けます。
びっくりするくらい怪しいおじさんが来ました。
そのおじさんは、自分が書いた本をこうして訪問販売しているそうで、私にも買って欲しいと言ってきたのですが…
手に持ってる本がどっからどう見ても、駅とかで無料でもらえるアルバイトの求人情報誌なんですよ。
ここは冷静に対処せねばならないと思い、おっさんの自尊心を傷つけないように限りなく丁寧な口調でお断りさせていただきました。
おっさんブチギレ!
“警察を呼ぶか?でも警察が来てくれる前にやっかいな事態になったらどうしよう…”と、私の頭の中は完全に混乱状態でした。
あくまでおっさんは、絶対に駅とかで無料でもらえるアルバイトの求人情報誌を売ろうとしてきます。
因みに売値は5000円とのことでした。絶対買いたくありません。
因みに売値は5000円とのことでした。絶対買いたくありません。
そしていよいよどうしたらいいのか分からなくなった時、ひとつの奇跡が起きます。
ドーーーーーーーン!
空から金ちゃんドーン!
アルバイト情報誌バーーーーーン!!!
おっさんのメガネドーーーン!!!!
玄関のドアバターーーーン!!!!!
金ちゃんと一緒に空から落ちてきた猫シャーーーーーーッ!!!!!
金ちゃんドーーーーーン!!!!!
おっさんのおしりプリーーーーーーン!!!!
カープ帽ヒュル~ッ!!!
なんと、まるで映画のワンシーンかのように、空から金ちゃんが落ちてきました。
私にアルバイト情報誌を売りつけようとしていたおっさんも完全にビビってしまい、無言で走り去ってしまいました。
金ちゃんに事情を聞くと、出禁になった後もやっぱり純粋にこの家のことが心配で辛抱たまらず、ついに我慢できなくなって今日は屋根のメンテナンスをしていたそうです。
そして作業をしていると何やら下から大きな声がするので気になって覗き込んだところ、誤って転落してしまったとのことでした。
私にアルバイト情報誌を売りつけようとしていたおっさんも完全にビビってしまい、無言で走り去ってしまいました。
金ちゃんに事情を聞くと、出禁になった後もやっぱり純粋にこの家のことが心配で辛抱たまらず、ついに我慢できなくなって今日は屋根のメンテナンスをしていたそうです。
そして作業をしていると何やら下から大きな声がするので気になって覗き込んだところ、誤って転落してしまったとのことでした。
金ちゃんは「この家から離れてみていろいろ考えたけど、やっぱり純粋にこの家のことが心配なんやわ。でも、もう二度と関わらへんから、今まで迷惑かけてごめんな。」と呟くとその場を去ろうとします。
「待って金ちゃん!」
「家に冷えたビールとおつまみあるから、一緒に飲もう」
こうして金ちゃんのこの家に対する愛情を目の当たりにした私は、金ちゃんと和解し、夜が更けるまでお酒を飲みかわしました。
それからは、この家に何かがあった時のみ金ちゃんに来てもらい、メンテナンスをお願いすることになり、私と金ちゃんの間のわだかまりも解消されることとなりました。
こうして金ちゃんのこの家に対する愛情を目の当たりにした私は、金ちゃんと和解し、夜が更けるまでお酒を飲みかわしました。
それからは、この家に何かがあった時のみ金ちゃんに来てもらい、メンテナンスをお願いすることになり、私と金ちゃんの間のわだかまりも解消されることとなりました。
今でも満月を見るたびに、暗闇の中で轟音を立てながら放電した電流で照らされた金ちゃんの頭を思い出します。