特集 2015年1月14日

マスター、「代官山」ください

パイプ片手に小粋なマスター
パイプ片手に小粋なマスター
高円寺のポータルサイト「Concent」で、バーのマスターに「高円寺」をイメージしたお酒を作ってもらうという連載を持っている。しかし、たまには別の街でもやってみたい。向かったのは代官山と蒲田。果たして、どんなお酒が出てくるのか。
ライター。たき火。俳句。酒。『酔って記憶をなくします』『ますます酔って記憶をなくします』発売中。デイリー道場担当です。押忍!(動画インタビュー)

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日曜を選んだのは失敗だったか

代官山。言わずと知れたお洒落タウンだ。やはり、お洒落なお酒が出てくるのだろうか。
日曜の夜7時
日曜の夜7時
代官山といえば、2011年にオープンした蔦屋書店も有名だ。
一度だけ行ったことがある
一度だけ行ったことがある
それにしても、洋服屋と美容室ぐらいしか見当たらない。日曜を選んだのは失敗だったか。
お洒落の彼岸を思わせるディスプレイ
お洒落の彼岸を思わせるディスプレイ
1LDKのお家賃16万5000円
1LDKのお家賃16万5000円
小一時間ほど歩き回った末に、気になる店を見つけた。
代官山の「代官」
代官山の「代官」
しかし、ここも日曜休みである。

豊臣秀吉の「秀」に明治時代の「治」

さらに歩いて、ようやく開いているバーを発見。雰囲気も良さそうだ。
「CAFE STREAMLINE」
「CAFE STREAMLINE」
扉を開けて確信した。うん、これは当たりだ。
ブリキを基調とした内装
ブリキを基調とした内装
店内はゾウアザラシの話で盛り上がっている。マスターに声をかけた。
若林秀治さん(42歳)
若林秀治さん(42歳)
「豊臣秀吉の『秀』に明治時代の『治』です」。自己紹介も洒落ている。聞けば、お祖父さんが駒込の名前占いの人のところに行って、勝手に名付けたんだそうだ。
「宝の地図」的な風合いのメニュー
「宝の地図」的な風合いのメニュー
店のオープンは3年前。凝った内装は5カ月かけて自分で作ったとのこと。

「近未来の乗り物の融合体のようなイメージですね。でも、場所や時代はあえて曖昧にしてあります」
自作のブリキグッズ
自作のブリキグッズ
存在感のある食品サンプル
存在感のある食品サンプル

古き良き「代官山」の香りがする

さて、本題を切り出す。「マスター、代官山という街のイメージでお酒を作ってください」。すると、こんな答えが。

「それならちょうどいいかもしれません。この通りだけ、住所が『代官山町』なんです。あとは、恵比寿とか鉢山町になっちゃう」
銀座の有名店「白いばら」のマッチ
銀座の有名店「白いばら」のマッチ
ひとしきり考えたのちに「同潤会アパートがあった頃の代官山が好きなので、そのイメージで作りますね」。

さあ、楽しみだ。途中、「レモンかと思ったら玉ねぎでした」というお茶目な一面を覗かせつつも、「代官山」は手際よく作られていく。
こちらは玉ねぎ
こちらは玉ねぎ
そして、完成である。
「お待たせしました」
「お待たせしました」
これが「代官山」だ!
これが「代官山」だ!
昭和13年から販売されている「ニッカ・アップルワイン」というリキュールに、隠し味として桃のリキュールを加え、炭酸で割ったものにレモンスライスを添える。
ひと口飲むと…
ひと口飲むと…
おお、おいしい。ふだん、カクテルは飲まないが、すっきりとしていて確かに古き良き「代官山」の香りがする。

せっかくなので名前を付けましょうよ、と水を向けると、「じゃあ、『75(ナナゴー)館』にします。ここの番地が代官山町7-5なので。同潤会の棟名のイメージですね」。

値段は750円。美しい。

マスターいわく、「昔の代官山はスイーツ店とかはなくって、エッジの効いた大人が洋服を買いにくるような街」だったそうだ。
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居酒屋やスナックはたくさんあるものの

代官山と「代官山」を堪能した。お次は蒲田である。代官山と対極の雰囲気を持つ街という意味合いで選んでみた。
「蒲田行進曲」でもおなじみ
「蒲田行進曲」でもおなじみ
品川駅から3つめ。JRに東急池上線と東急多摩川線が乗り入れ、近くには京急蒲田駅もある。
下町の繁華街である
下町の繁華街である
自転車も大量に撤去される
自転車も大量に撤去される
いざ歩いてみると、居酒屋やスナックはたくさんあるものの、いわゆる“バー”がない。しかし、毎夜の鍛錬で身につけた嗅覚で、よさそうな店を探し当てることに成功した。
どうだろうか
どうだろうか
店の名は「Bar Seed1」。表に料金表も貼り出してあり、明朗会計だ。
標準的な価格設定
標準的な価格設定

ライムを絞る力加減で味が違ってくるの

扉を開けると、カップルがちょうどお会計をするところだった。マスターは物腰の柔らかい人物だ。
千種寿さん(43歳)
千種寿さん(43歳)
ちぐさひさしさん。ずいぶん縁起の良さそうなお名前だ。よく、「芸名?」と聞かれるとのこと。

オープンは昨年2月。24歳から8年間、大森で店をやっていたが、そこを閉めた後にいろいろとあって、今回2度目の独立を果たしたという。

さっそく、「蒲田」を注文する。「じゃあ、店の売りになっているジントニックにしましょう。私のはパンチが強いんです」。
これが「蒲田」だ!
これが「蒲田」だ!
ひと口飲むと…
ひと口飲むと…
おお、こちらも美味しいではないか。

「ジンの量もよそより多いけど、何といっても決め手はライム。絞る力加減で味が違ってくるの」

いかに周囲に飛び散らさないかで頭がいっぱいで、絞る力加減のことは考えたことがなかった。

高校は受かったけど行かず、15歳からこの世界で働いているそうだ。なるほど、含蓄のある言葉が出るわけだ。
「最近ハマってるの」と言って出してくれた
「最近ハマってるの」と言って出してくれた
マスターの実家は羽田。夏の祭りには神輿も出るが、大波に揺れる舟のように左右に大きく振る「ヨコタ担ぎ」という独特の担ぎ方なんだそうだ。

「一度だけやりましたが、2、3日は肩が使い物にならなかったわね」

こういう話が聞けるのも、飲み屋の醍醐味である。
「マンゴスチン」と読む
「マンゴスチン」と読む
上のお酒は常連客からのお土産で、「ホントまずいから」と繰り返し言うので、気になって味見させてもらった。いや、割と飲める味でしたよ。

どちらも1店目でこころよくOK

というわけで、「代官山」と「蒲田」を味わえたよき夜である。じつは断られることを想定して、それぞれの街で数軒ハシゴする覚悟をしていたが、どちらも1店目でこころよく受けてくれた。そして、自分が店を出している街の話になると、やはり思い入れが強いようで、数々の面白い話を聞くことができた。さて、次はどこへ行こうかしら。
お見送りしてくれました
お見送りしてくれました

<取材協力>
CAFE STREAMLINE(代官山)
http://cafestreamline.takara-bune.net

Bar Seed1(蒲田)
http://bar-navi.suntory.co.jp/shop/S000004975/
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