YRP=横須賀リサーチパーク
全日本何の変哲もない駅選手権で優勝とれそうな駅
YRP野比駅はもともとは「野比駅」だったそうだ。しかし横須賀リサーチパークが開設されたことにより「YRP野比駅」に改称されたらしい。
駅の改称といえば「業平橋」→「東京スカイツリー駅」が記憶に新しい。スカイツリーばりのインパクトが横須賀リサーチパークにあったのだろうか。
先をいそごう。
バスで15分で横須賀リサーチパークの入り口に着く
マムシ出る
何もないところに通信・IT系の有名企業がズラリ
山のふもとを切り開いたところを歩いていると、唐突に建物が出てくる。聞いたことのある企業ばかりだ。
NEC
富士通
ドコモ
どれも一様にデカい。6畳ワンルームアパートに届くアマゾンのダンボール箱みたいな、変な存在感ある。その中でもNTTには変な迫力があった。
NTT
すごく大きい。写真で撮ると遠近感が狂う。そして、このまま空中にゆっくりと浮かびあがりそうなSF感もただよう。スターウォーズの帝国軍ってこんな感じの宇宙船乗ってなかったけ?(でも後から調べてみたら全然違いました)
食堂がうまい
さらに進むと、共同の社食のようなところに入れた。せっかくなので日替わりランチを頼む。
ホタテとホウレンソウのクリームオムライス 470円
これがめっぽううまくて興奮した。いいところだ、YRP。
さっきから若くてラフな格好をした人たちとよくすれ違う。あれきっと研究者とか技術者なんだろう。立派な建物、優秀な人材、うまいランチ……。携帯電話くらいピチョっと出来てしまうというのもわかる。
いや、しかし。YRPがどういうところかはよくわかったのだが……。
YRP、どうみても観光地じゃない。工業団地みたいに、いくつかの通信系の会社の研究所をひとまとめにしてあるところだ。
なぜ観光地じゃないところの名物を作るのだ。携帯サブレー。私はYRPからさらにバスで15分ほどのところにある菓子店「大そね」に急ぐ。
大そね
町のお菓子屋さん、という感じ
ここが「携帯サブレー」を製作しているお菓子屋さんだ。野暮ったいけれども優しいたたずまいである。
ここが近所にあったら、クリスマスケーキを注文して、娘と一緒に持って帰りたい。ここは家から遠いし、私は子供はおろか結婚もしていないが、そういうタイプの幸福を喚起させる。
これが携帯サブレーだ
飾り気のないお菓子屋さんの中で、携帯電話サブレーは一番いい場所に置かれていた。
12枚入りで1,080円
手土産として必要な情報が全てそろったパッケージ
なつかしいタイプの携帯電話だ
サブレにはYRPのロゴが刻印されている
取材に応じてくれたご主人
このサブレ、パッケージの携帯電話のイラストからして20年くらいの歴史はありそう。
ご主人は「あまり気にしたことないから、どれくらい前だったかちょっとよく覚えていない」といっていた。
サブレ本体は特に携帯電話を模すことなく、長方形になっている。しかし、これが結果的に昨今のスマートフォンの形にそっくりである。向こうの方から携帯サブレーに寄ってきた。
製作の経緯を聞いてみたところ「市の方から要請があって、作ってみたんだよね」とのこと。
一口食べさせてもらう。とても素朴な味がする。
「美味しいですね」というと「サブレーだから、バターが後味でフワッと香るように作ったよね」と教えてくれた。
思い切って「サブレの売れ行きどうですか」と聞いてみたら「手土産にちょうどよく使う人多くて、けっこう売れている」とのこと。
横須賀市内のスーパーやお菓子屋さんにも卸しているらしい。地元の人の定番おみやげなのだ。
なんというか……私は……携帯サブレについてうたがった見方をしてしまっていたのかもしれない……。
携帯電話型の牛乳もあるらしい
ちなみに「学校給食では携帯電話型のパック牛乳が出た」そうだ。
あとで検索したらこういうコーヒー牛乳出てきた
これが毎日給食に出るわけか。じわじわとボディーブローのように携帯電話推しである。ここまでくると、なぜ観光地じゃないところの名物を作るのか? みたいな疑問は消える。名物を作るには観光地じゃなくても別にいいのだ。
携帯電話牛乳は見つからなかったけど
この後「近所のスーパーをめぐったら携帯電話型の牛乳見つかるかも?」と思い、バスを乗り継ぎ、人に話を聞き、夜まであちこち探索したが見つからなかった。給食にしか出ないタイプのやつなんだろう。そこに気付くのにものすごく時間がかかった。
今日はいろいろ歩いて「横須賀は携帯電話発祥の地なんだ」ということが、身体に刻み込まれた。もう一生忘れないと思う。
不案内な土地でバスに乗っている途中に日が暮れると、ここからもう戻れなくなるような気持ちになってしまう。恐かった