東京理科大学、神楽坂キャンパスへ
11月23日、理大祭(理科大学の学祭)初日。
繁華な神楽坂から一本路地に入ったところに、文具研究同好会が活動している理大神楽坂キャンパスはあった。
校舎手前からすでに学園祭の匂い(揚げ物とか甘い物とか)がしてる。
嘘じゃないって。本当に「文具研究同好会」はあるんだって。
巨大フランクフルトとか一口ホットケーキといった学祭ならではのジャンク屋台フードに心を揺さぶられながらも、事前に聞いておいた会場教室を目指す。
ここにいる人たち、みんな文房具が好きなんだと思うと胸が熱い。
会場の教室はすでに結構なお客さんが。
意外にもと言うか、お年寄りから小さな子供までがわいわいとワークショップに参加している。
地域の文房具好きな老若男女がここに集結しているのだと思う。
初手からかなりどうかしてる研究展示
黒板の辺りには、文具研究同好会の皆さんが行っている研究の報告ファイルが展示されている。
「シャー芯の比較をしてみたよ ぺんてる編」
「ぺんてる製シャープペン芯の比較」はまだ分かるとして。
「プレピーのフォルカン改造について」はさすがに説明がいると思う。
プレピーというのは、プラチナ万年筆が発売している200円の激安万年筆。
手軽に万年筆っぽい書き味が体感できるので、初心者にもおすすめの一本である。
で、フォルカンというのはフニャフニャと柔らかい特殊なペン先のこと。
このレポートは、激安万年筆のペン先を削るなど改造してフォルカンっぽく改造できないか、という趣旨のものだった。
文具好きにとっては非常に興味深い内容なのだが、途中から「ペン先にかかる荷重Fが」とか「紙面との水平方向での摩擦力はFcosθ≫μNと微少と考えられる」という文面が出てきた。
正直、慣れ親しんだ庭先で蝶々を追いかけていたつもりが、よく見たら体長20mで毒鱗粉を撒きながら襲ってくる毒蛾だった、というぐらいの衝撃である。
来年以降はここで文房具の研究をしてください。
僕は途中で読解を諦めてしまった「万年筆のペン先を力学的に解析したフォルカン改造レポート」だが、理大受験希望と思われる女子高生がけっこう真面目に読み込んでた。
すごい。
文房具ワークショップいろいろ
教室の一番奥で『フリクションインクを使ったカードづくり』ワークショップをしていたのが、先日知り合いになったうちの一人、先代会長の深川さん。
深川さん。左下の写真がフリクションインクの顕微鏡画像。
彼は、こすると摩擦熱で色が消えるフリクションボールペンのインク(メタモインク)に興味を持ち(ここまで文具好きとして普通レベル)、ついに3000倍のレーザー顕微鏡などを使ってメタモインクの解析を始めてしまった(ここから完全におかしいレベル)という剛の理系者だ。
小さい子供にわかりやすくフリクションの仕組みを説明中。(あの解析画像は使わない)
このワークショップはカードに普通のマーカーとフリクションマーカーで絵を描くだけ。で、熱を加えるとフリクションで描いた部分だけ消え、コールドスプレーで冷やすと元に戻る、という遊びである。
簡単にフリクションの面白さが体感できるので、このコーナーは子供に大人気だった。
他にも文房具でいろいろ遊ぼう
フリクションコーナーと同じく人気だったのが、『ホットボンドでシーリングワックス遊び』コーナー。
シーリングワックス(封蝋)というのは、封筒の口に溶けたロウを垂らしてハンコのような型を押しつけて封をする、ヨーロッパ貴族の風習である。
ただ、シール用のロウは値段が高いので、同じく熱で溶ける安価なホットボンドを垂らして型を押しつけて遊ぼう、というものだ。
こんな感じで簡単にかわいいのができる。楽しい。
ホットボンドは冷えて固まっても弾力があるので、作ったシールは紙から剥がして持って帰ることができる。
ホットボンドは冷えて固まっても弾力があるので、作ったシールは紙から剥がして持って帰ることができる。
ロウだと冷えると完全に硬化してしまうので、きれいに剥がすのは難しい。
シーリングホットボンドはなかなかいいアイデアだと思う。
ここでも子供達が夢中になって遊んでいた。
鉛筆の削り屑からできた粘土『もくねんさん』遊びコーナーは子供も大人もハマってた。
竹でかっこいいペンを作るコーナー
別のコーナーでは、文具研の先代副会長 苅米さん指導で、竹を削ってかっこいいつけペンを作るワークショップが行われていた。
文具研副会長と文房具の話をしながらじっくり竹を削る。楽しい。
太めの竹軸に細い竹を挿し、その先端をペン先として削りだしていく。
さすがにここは刃物を扱うので子供には難しいのだが、僕の前には女子高生3人連れがキャッキャ言いながら竹を削りまくっていた。
作業机に出ていた文具は、見る人が見れば「おっ、あんた好きだね」とニヤニヤできるラインナップ。さすが文具研。
ちなみに材料となる竹は、苅米さんのご実家の山で採ってきたものとのこと。
僕の幼馴染みにも実家に竹林を持っているやつがいるが、小学生の彼と僕は竹で弓矢を作ってはランボーごっこばかりしていた。竹ペンとはだいぶ雰囲気が違うな。
お、なんかかなり格好良くなってきた。
ペン先を削り終わったら、あとはグリップに麻糸をぐるぐる巻き付ければ作業完了。
作業時間は10分強で、いい感じに出来上がった。
かっこいい竹のつけペン。インクを溜めるように溝を切ったりと工夫してる。
インク溜めを作ってあるので、いちどドブッとインク瓶に漬けるだけで結構な量の文字数が書ける。
いかに文具好きでもつけペンを作業に使うことはあまり無いが、こうやって遊んでみると、なかなか優雅な気分でいいものである。
おお、書ける書ける。たまにはつけペンいいな。
あまりにも僕がキャッキャ言いながら試し書きしているので、うしろにで見ていたおばさまたちも「これ、私たちにも削りたい」と言い出した。
おばさまたち、たっぷり削っていってくれ。楽しいぞ。
今回取材させていただいた東京理科大学
文具研究同好会のサイトには、メタモインクの3000倍解析や、プレピーのフォルカン改造レポートなどの研究報告が掲載されている。
文具好きを自称する方は、ぜひご一読を。だいぶおかしなことになってるぞ。
あと、宣伝で申し訳ないが、東京駅近くの文具店 モリイチ京橋店2Fギャラリーにて、12月19日まで僕がコレクションしている珍文房具を標本にした展示をやっています。
『
色物文具標本展 ~イロブンの発生と進化~』
平日のみオープン、9時~18時まで、というなかなか勤め人にはハードルの高いイベントですが、会社をサボるついでに見に来てください。
12日のみ20時までナイト営業+トークイベントもやります。