特集 2014年11月13日

東京いろんな消火器めぐり

正確には消火器の箱めぐりです
正確には消火器の箱めぐりです
街に存在しているけど普段はあまり目にとめないもの。そのひとつが消火器ではないだろうか。

有事の際以外はひっそりと街角にたたずんでいる彼らだが、しかし、よくよく見てみるとそれぞれに個性があり趣がある。

そんな愛すべき消火器を見て回った。
1980年生まれ埼玉育ち。東京の「やじろべえ」という会社で編集者、ライターをしています。ニューヨーク出身という冗談みたいな経歴の持ち主ですが、英語は全く話せません。

前の記事:深夜の街をみんなで徘徊する謎イベント

> 個人サイト Twitter (@noriyukienami)

消火器がおもしろい

街中に置いてある消火器。火災発生時の初期消火用に至るところに設置してあるものの、これまでその姿をまじまじと観察してみたことはなかった。

だが、とある飲み会帰りの夜道、月夜に浮かぶ消火器に目を向けると、その姿がなかなか味わい深いものであることに気づいた。
オーソドックスなのはこういうタイプ
オーソドックスなのはこういうタイプ
赤いボックスに入ったオーソドックスなタイプ以外にも、じつにさまざまなデザインの消火器があるのだ。東京でいえば区ごとにぜんぶタイプが異なるため、新種の消火器を発見するたびちょっとした喜びがある。
千代田区は先ほどのオーソドックスなもの以外に、ウルトラマンちっくな消火器もある
千代田区は先ほどのオーソドックスなもの以外に、ウルトラマンちっくな消火器もある
また、区が設置しているもの以外に、近隣の町会だったり、住人の方だったりが地域防災のために置いている消火器も見受けられる。

大通り沿いなどに面して目立つ場所に置かれている区の消火器に比べ、こちらはなんだか少し所在無げである。

公の消火器と棲み分けする意味で、こうしたタイプを野良消火器と呼びたい。
台東区で見つけた野良消火器。柱の物陰に隠れるようにひっそりとたたずむ
台東区で見つけた野良消火器。柱の物陰に隠れるようにひっそりとたたずむ
ちょっとしたスキマにも、よく目を凝らすと消火器
ちょっとしたスキマにも、よく目を凝らすと消火器
ふたりなら寂しくないよね
ふたりなら寂しくないよね
なかにはプロダクトとしてかっこいいものもある。
中央区で発見。ロケットのようなフォルムが印象的。部屋にインテリアとして飾りたいくらいかっこいい
中央区で発見。ロケットのようなフォルムが印象的。部屋にインテリアとして飾りたいくらいかっこいい
台東区にて発見。中央区のものと形は似ているがデザインが少し和風だ
台東区にて発見。中央区のものと形は似ているがデザインが少し和風だ
「封」の印字がなんだかかっこいい。剥がすと魑魅魍魎的な何かが出てきそう
「封」の印字がなんだかかっこいい。剥がすと魑魅魍魎的な何かが出てきそう

消火器さがしの旅へ

もう少し範囲を広げて創作してみよう。翌日、山手線に乗り込み消火器さがしの旅に出た。
まだ見ぬ消火器に想いを馳せつつ
まだ見ぬ消火器に想いを馳せつつ
路地裏にポツンと置かれている消火器。風雪に耐え忍び時を経たそれらの中には、消火器を超えた何か、たとえばまるで道租神やお地蔵さんのような雰囲気を醸し出しているものもある。

たとえばこちらの野良消火器。サラリーマンが行き交う新橋の駅前で見つけた。
新橋の雑居ビル前に鎮座する野良消火器
新橋の雑居ビル前に鎮座する野良消火器
お供えしたくなるような雰囲気があるような気がしなくもない
お供えしたくなるような雰囲気があるような気がしなくもない
でも、横にへんなシールが貼られててありがたさ半減
でも、横にへんなシールが貼られててありがたさ半減
こっちは港区の消火器。刑務所の扉みたいなデザイン。僕が消火器だったらここには入りたくないな
こっちは港区の消火器。刑務所の扉みたいなデザイン。僕が消火器だったらここには入りたくないな
なぜかへんなシール貼られがち
なぜかへんなシール貼られがち
明るい色や特徴的な形をしたものが多い中で、品川区の消火器はやや異質だった。ザ・地味である。
品川の住宅街。落ち着いた雰囲気の街並みが広がる
品川の住宅街。落ち着いた雰囲気の街並みが広がる
景観に配慮してか、品川区の消火器はいたってシンプル。ゴミ箱と間違えそうなくらいシンプル
景観に配慮してか、品川区の消火器はいたってシンプル。ゴミ箱と間違えそうなくらいシンプル
封が解かれていた。開いて中を見てみたかったけど、バチがあたりそうなのでやめておいた
封が解かれていた。開いて中を見てみたかったけど、バチがあたりそうなのでやめておいた
では、おとなりの目黒区はどうか?
では、おとなりの目黒区はどうか?
目黒区はオーソドックスな赤箱タイプ。一本足がかわいい
目黒区はオーソドックスな赤箱タイプ。一本足がかわいい
なお、粉末タイプと液体タイプの2種類がある
なお、粉末タイプと液体タイプの2種類がある
横に使い方も書いてあるなど親切
横に使い方も書いてあるなど親切
強化液タイプ
強化液タイプ
消火器に貼られたシールもエリアによってテイストが異なる。たとえば、恵比寿で見つけた消火器はシールの貼りかたもどことなくお洒落だ。さすが渋谷区。
恵比寿にて発見。お洒落ステッカーがベタベタ貼られている
恵比寿にて発見。お洒落ステッカーがベタベタ貼られている
パブの看板みたい
パブの看板みたい
でも、消火器にシールを貼るのはやめましょう
でも、消火器にシールを貼るのはやめましょう
一方、新宿駅前の消火器。恵比寿に比べ、なんだかゴテゴテしている
一方、新宿駅前の消火器。恵比寿に比べ、なんだかゴテゴテしている
扉の立てつけも悪くなっていて満身創痍。酔っ払いが蹴っ飛ばしたのかもしれない
扉の立てつけも悪くなっていて満身創痍。酔っ払いが蹴っ飛ばしたのかもしれない
新宿区のオフィシャル消火器。形は港区と同じ牢獄タイプ
新宿区のオフィシャル消火器。形は港区と同じ牢獄タイプ
夢中で探していたら、いつの間にか夜になっていた
夢中で探していたら、いつの間にか夜になっていた
暗くなり、消火器か否かの判別が難しくなってきた
暗くなり、消火器か否かの判別が難しくなってきた
探しているうち、消火器のありそうな場所というのがなんとなく分かってきた。特に匂うのは大通り沿い、路地裏の角、公園の脇あたり。

もし外出中に火災に出くわしたときは、この嗅覚が役に立つかもしれない。
あと、こうした壁掛けタイプも多い
あと、こうした壁掛けタイプも多い
豊島区。オーソドックスな赤箱
豊島区。オーソドックスな赤箱
なぜか柵で囲われた消火器もあった。いたずら防止のためと思われるが、これ置いてある意味あるのか?
なぜか柵で囲われた消火器もあった。いたずら防止のためと思われるが、これ置いてある意味あるのか?
山手線を一周してしまったので、次は東京の東側エリアを攻めてみる。

時刻は20時を回っていたが、まだ見ぬ消火器に出合いたいという思いに突き動かされる。
足立区にて新種発見! 珍しい角柱タイプだ。
足立区にて新種発見! 珍しい角柱タイプだ。
新しいのがこれ
新しいのがこれ
ん? 鳥の羽? ホラーや
ん? 鳥の羽? ホラーや
時刻は21:00。葛飾区へ
時刻は21:00。葛飾区へ
闇が深まり消火器の判別が困難になる。消火器ハンターとしての勘だけが頼りだ
闇が深まり消火器の判別が困難になる。消火器ハンターとしての勘だけが頼りだ
「カ」の文字が力強い葛飾区の消火器。消火力も強そう
「カ」の文字が力強い葛飾区の消火器。消火力も強そう
建物と建物の隙間も意外な消火器スポット
建物と建物の隙間も意外な消火器スポット
こういう隠れ消火器はポイントが高い。なんのポイントかはよくわからないけど
こういう隠れ消火器はポイントが高い。なんのポイントかはよくわからないけど
足立区。シンプルなのがかえって潔い
足立区。シンプルなのがかえって潔い
墨田区。緑と同化
墨田区。緑と同化
若干、竹っぽくもある
若干、竹っぽくもある
珍しいスケルトンタイプ。江戸川区にて発見
珍しいスケルトンタイプ。江戸川区にて発見
とまあ色んな消火器を見てきたが個人的なナンバーワンを最後に紹介しよう。江戸川区の住吉というところで見つけたこちらの消火器だ。
社のような木箱がふたつ。消火器の文字がなければ思わず手を合わせてしまいそうなほどに荘厳なたたずまいだ。
社のような木箱がふたつ。消火器の文字がなければ思わず手を合わせてしまいそうなほどに荘厳なたたずまいだ。

消火器には街のカラーが表れる?

今回の消火器さがしのように、テーマを決めて街を歩くのは楽しいものだ。

それにしても消火器ひとつにこんなにバリエーションがあるとは思わなかった。それぞれの意匠に区の特徴がなんとなく表れているような気がして興味深い。もっともっと色んな消火器を見たいので、あなたの街の変わった消火器情報などありましたらご一報いただけると幸いです。
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