おきなわワールド南都酒造さんに行ってきた
というわけで本日お伺いしたのは南城市にある、「おきなわワールド」。このおきなわワールドはその園内に沖縄の歴史・文化・自然を詰め込んだテーマパークで鍾乳洞の玉泉洞やハブ博物公園、築100年以上経た古い民家を移築した琉球王国城下町などまさに沖縄のエッセンスをぎゅっと詰め込んだ観光名所です。
ここでは沖縄の地ビールである「ニヘデビール」や沖縄の果実を使った「島のなごみ」という果実酒、ハブカレーなどのハブ加工品を販売していますが目玉商品と言えばやはりハブ酒。平成4年にできたこの施設では年間6000匹のハブを加工しているのだそうです。
ハブ酒が並びます。
最近蛇口付きハブ酒が新商品としてでたそうです。
ハブエキス配合フェイスマスクや
ハブカレーも
今回はこの南都酒造さんでハブ酒について詳しくお話をお伺いしました。
ハブ酒製造の現場から
お話をお伺いしたのは南都酒造の製造課長糸数さん(右)と東仲與根(ひがしなかよね)さん(左)。
―さっそくですが、ハブ酒ってただハブを泡盛に漬けるだけではないのですか?
それでもハブ酒にはなると思うんですけど、そうやって作ったハブ酒はだいたい臭いんです。偶然臭くないものができたりもするらしいんですけど。そのあたりで「ハブ酒は臭い」みたいなイメージを持っている方も多いようです。
南都酒造で作られているハブ酒はまずハブを血抜きして内臓と臭線という器官を取り除いています。これをするのとしないのとで全然出来上がりが変わってくるんです。ここまでやってるのはウチくらいじゃないですかね。
―下処理をされたハブはどうなるんですか?
アルコールに漬けます。ハブによってはアルコールが濁る場合があるので様子見の意味も含めて1年間くらい漬けておきますね。
アルコールに漬けられたハブ
―この段階で既にとぐろを巻いて、口を開けた状態になってるんですね!
このハブはラベルによれば平成25年5月15日に漬けられたものらしい。
―アルコールに漬けられたハブはどうやって製品になるんでしょうか?
ハブを59度のアルコールに漬け込んだもの10年以上も寝かせて熟成するらしい
こちらはハーブを泡盛に漬け込んだタンク。ハブ酒にハーブってギャグみたいだ。
取り出して、ハブエキスと8~13種類のハーブを泡盛に漬け込んだエキスをブレンドしたものに漬け込んでいきます。せっかくなので、一緒にやってみましょうか?
というわけで
いつもは処置室という加工専用の場所で作業をしてるそうですが、今回はタンクのある場所で作業させてもらいました。
特別にハブ酒のハブを瓶に詰め替える作業を体験させて頂くことになりました。
まずアルコールからハブを出して、整形のために口に噛ませている発泡スチロールを取り除きます。下処理されたハブからは内臓、臭線は取り除かれてますが毒を出す毒腺は取り除かれていません。
既に及び腰である
ハブの毒はアルコールに漬けられることで無毒化するらしいんですが、何度も「牙に気をつけてください!」って注意を受けました。これ刺さったらどうなるんだろう…。
ハブからアルコールを抜き出して
水を入れて洗います
続いて取り出したハブをなぞるよう指でしごいて、体の中のアルコールを出し、さらに口から水を入れて洗います。ハブのおしり部分に穴が空いていてそこからアルコールと水は出ていく感じです。
とぐろを巻いていて分かりにくかったんですが、まっすぐ伸ばすと結構な長さですね。1m以上はありそうです。ちなみにこのハブは先島(八重山諸島)で捕れたものだそうでで最近は沖縄本島ではあまり原料となるハブが見つからず、先島で捕獲されたものが多いそうです。
再び瓶に戻す
こちらがハブとハーブのブレンド
ハーブの香りが漂います
さっきのインタビューでも出てきたハブエキスとハーブのブレンド酒を注ぎ入れます。
これで完成…と思いきや、まだ大事な作業が残っています。
細い金属棒でハブを裏返します。
それはハブの空気抜き。先ほど入れたハブの体の中にはまだ空気が入った状態です。このままハブを漬け込むととその部分から腐ってしまったり、臭いの原因になる場合もあるのだそうです。
そこで細い金属製の棒で先ほどのハブを頭を下に回転させて頭から順番に押していって、おしりから空気を抜いていきます。
めちゃめちゃ時間がかかった
この作業がまた、地味に難しいのです。頭から順番に押していけば空気が抜けるはずなのですが、ハブがプカプカしてる状態なので、どこを押しているか分からなくなってきます。
空気が抜けきった状態。心なしかハブも満足そうに見える。
手こずりながら作業を終えて、ようやく完了。ここまで結構時間がかかってしまったのですが、一緒に作業しながら指導してくれた東仲與根さんは1日500匹くらいのハブを移し替えたりする時もあるのだとか…!
この移し替え作業、ハブを伸ばしたり、丸めたりと形を変えるのでウロコなどがちらほら剥がれてしまいます。それらウロコなどの細かいゴミは4-5回程度、濾紙にお酒を通すことでしっかりと取り除きます(その作業も手作業!)。
そしてさらに1年ほどしっかりと寝かされたものが商品として出荷されていくのだそうです。
これはもう工芸品の域なんじゃないか
僕がお手伝いしたやつもいずれここに並ぶのかも
今回瓶詰め作業をお手伝いさせて頂いたサイズのハブ酒は定価29,700円。
結構よいお値段するんですが、ハブの下処理から、アルコールに漬ける作業、お酒に漬ける作業、商品のラベル貼りに至るまで全てが手作業なのだそうで、ものすごい手間と時間がかかっていることを考えれば、この値段も納得な気がします。
ちなみにハブ酒は飲んだ分だけ注ぎ足しすれば瓶の中のハブが白くなるまでは楽しめるということで南都酒造では注ぎ足し用のハブ酒も販売されていますよ。
こちらは珍しい銀ハブのハブ酒。南都酒造所では珍しいハブでハブ酒を作ってみたいらしいが、大体併設されてるハブ博物公園で展示物になってしまうらしい。
「ハブ酒なんてイロモノだ」なんて思っていた方も製造工程を見てどうでしょう?ちょっとハブ酒が欲しくなってきたんじゃないですかね?
今回協力頂いた南都酒造所では通常時はハブ酒を作っている所は見られませんが、タンクの様子などはいつも見学することができますので興味がある方は是非とも足を運んでみて下さい。
おきなわワールドには斜め上の企画が目白押し
というわけでハブ酒のできるまでいかがだったでしょうか?
おきなわワールドでは9月28日(日)まで暗闇にヘビを放った空間を歩くことができる別の意味で怖いお化け屋敷「まっくらヘビの森探検」
こちらはもう終わってしまいましたが、大蛇と布団で添い寝できるという斜め上の企画なども行われたりしいました。気になる方はホームページのイベントをチェックしてみてください。
取材協力
株式会社 南都 南都酒造所
http://www.nantosyuzo.com/
〒901-0616 沖縄県南城市玉城字前川1367
TEL:098-948-1111