ヘルメット、改造開始
どこにせつなさがあるというのか
ヘルメット。それは自転車通学をする中高生をはじめとした沢山の人間のやわらかい部分を守るために日々活躍している。
そこに感情はない。
そんなヘルメットにせつなさを施してみるのが今回の目標だ。
モーターや機械を使わなくてもちょっとした工夫をすれば、きっとこいつは化ける。
材料の買い出しに行き、「せつなくなりそうなもの」で飾ってやることにした。
頭から生やす
アルミの棒を植えました
頭から何かがにょきっと生えているのは面白いというのが通説だろう。
これから生やす何かを固定するためのアルミ製の板を編集部石川さんに譲って頂き、ドリルで穴をあけてからネジで固定した。
これでもう保証は使えない。
せつない
表情がもうせつない
私の住んでいる関西圏の花火大会が、大雨のため次々と中止になった。せつない。
ヘルメットがそんな私のために花火を上げてくれた。
ヘルメットではなく私がせつなくなっているのが惜しいところだろうか。
孤独感
窓辺にひとり佇むヘルメット
それっぽくなるかと、とりあえず窓辺に置いてみた。
おお、それっぽい。
社内に気の合う同僚もおらず、休憩時間にひとり寂しく外を見つめるヘルメット。
きっとこんな感じだ。せつない。
ただそんなものがテッペンから生えていたら気の合う同僚は居ないだろう。
誕生日の招待者を待つヘルメット
だれもこない
129円という安さだけで買った、誕生日とかに被る帽子を乗せてみた。
そして窓際に向けると、バースデーパーティーに招待したクラスメイトを待っているように見えてきた。
クラスの人気者と誕生日が被って、みんなその子のパーティに行ってしまい、誰一人来なかったという後輩の話を思い出す。
どうだ、せつなく見えてきただろう。
応援してみる
キャー ヘルメットさん超せつないー こっち向いてー
せつないとヘルメットに言い聞かせればせつなくなるのではないかと思い、アイドル風うちわを作って応援してみた。
当然なのだが、何の反応も返ってこないため、ただただ心が苦しくなった。
一人でやるのがよくないのかと思い、応援を呼んだ。
ふせんサポーターの皆さん
人数が増えばにぎやかになり、せつなさとはかけ離れてしまうのかと思いきや、逆にせつなさが増した。
これは不思議だ。
思わぬところから援軍
ふと、昨日Loftで買い物した時に、「2000円以上お買い上げのお客様に」と言われ、線香花火をプレゼントされたことを思い出す。
鞄をあけると奥底にティッシュのこよりのような物が見える。
これだ!これは使える!!
いよいよチョウチンアンコウですね、と言われる
アドバイスしてもらい、アルミ棒の先端を曲げ、その先に線香花火をつけるというスタイルになった。
石川さんの助けを借り、線香花火に着火してもらう。
しかし、風が強く、うまく火がつかない。ゆらゆらと火をかわして行く。
そして着火
ちなみに私は火が大の苦手です
苦戦したものの、なんとか線香花火に火をつける事ができた。昼間に撮影したのでわかりにくいが、しっかりパチパチと燃えている。
これが夜だったらなら、夏の終わりを感じつつ、小さく燃える炎を見つめる美しくも切ない画になっただろう。
でもこの画もせつなさポイントは十分にある。
ポップな色をした丸みを帯びた物体から、たより無さげに金属が伸び、なんとかぶら下がった線香花火が短い命を燃やしている。それだけで十分切なく、儚い。
しかし被っている私は、灰と火の粉しか見えず、火傷するのではないかという恐怖でいっぱいでした。
だらしない私の就職活動を心配する母
お母さんへ
3日間家を空けましたがお元気ですか。私は東京でこのヘルメットと仲良くなりました。
私はたしかにだらしないし、字も下手だし常識もありません。でもヘルメットはそれでもいいって教えてくれました。
ヘルメットだってせつなくなれました。私だってきっとなにか可能性を秘めているのです。
だから、そんなに心配しないでね。