特集 2014年3月7日

心が痛まない大根おろしアートを作る

これが何か分かったら、ものすごい天才かエスパーかどちらかです。
これが何か分かったら、ものすごい天才かエスパーかどちらかです。
ある日スーパーで大根が1本88円で売られていて、安い!と買って帰ったら、母も別のスーパーで2本168円の大根を買ってきていました。
3本の大根を傷む前に手っ取り早く使い切れる料理はないものか検索しようとしたら、『大根』の検索候補に『大根おろしアート』なるものが出てきました。

大根おろしとアート、このふたつの単語がいまいち結びつかなかったのですが、やってみたらハマりました。食べ物で遊ぶって楽しいですね。
1980年北海道生まれ。
気が付くと甘いものばかり食べている偏った食生活を送っています。


前の記事:一日1時間しか営業しない喫茶室に入りたかった


大根おろしアートとは。

大根おろしアート、で検索すると画像がざくざく出てくるほど流行っているようですが、恥ずかしながら全然知りませんでした。
料理としては鍋ものが多いようで、鍋に浸かった大根おろシロクマなどの立体的な作品が数多く公開されています。
みぞれ鍋とか雪見鍋とか言われている鍋にキャラ弁要素を加えたものですね。

それじゃあ私もやってみよう、と最初に挑戦したのがこちら。
素朴な雰囲気のゆきだるま鍋。
素朴な雰囲気のゆきだるま鍋。
アートというのもはばかられるようなシンプルなオブジェではありますが、初回ということで大目に見てください。
とは言いつつ、これを作りながら自分が不器用であるという根本的な事実を思い出したので2回目以降もレベル的にはこんなもんです。
目はゴマ、鼻はにんじん。帽子は醤油で着色。
目はゴマ、鼻はにんじん。帽子は醤油で着色。
こんな簡素なつくりの物体に、小さめの大根1本分使っています。
大量の大根を消費したい時にうってつけのメニューですね。

ただ大根を消費するだけなら普通のみぞれ鍋でもいいですが、大根おろしアートの効果で鍋を囲む人々の気持ちが優しくなるような気がします。
私が作った料理に関しては、「味がしない」「味濃すぎ」のふたつの選択肢しかない低能なときめきメモリアル状態の家族の面々から、この日も味が薄かったにもかかわらず、「味はともかく、かわいくてよかった」という新しいコメントが出てきました。
意外と好評です。

大根おろしアートのコツ。

一回作ってみて、少しコツがわかってきたような気がします。
おろした大根の水分を絞るのですが、絞りすぎるとパサパサになって形が崩れやすくなるので、ほどほどに留めるのがポイントです。
手で絞るとやりすぎるので、ざるで水分を切りました。
手で絞るとやりすぎるので、ざるで水分を切りました。
大根ってほとんど水分なんだなー。
大根ってほとんど水分なんだなー。
また、大根おろしに着色する際、液体だとぼんやりした色合いになるので、はっきりした色を出したい時は固形物をすりおろして混ぜ込むのがいいようです。
赤・オレンジ系の色を出すならにんじんがおすすめ。
赤・オレンジ系の色を出すならにんじんがおすすめ。
また、形成する時に胴体と頭のバランスをうまく取らないと高確率で頭がもげるので、頭は小さめにつくるか鍋の壁沿いに設置するのがいいと思います。
命名『頭のもげたエンジェル』
命名『頭のもげたエンジェル』

大根おろしざんまいの日々。

大根おろしアーティストとして目覚めて以降、修行と称して大根をおろす日々がはじまりました。
巻き込まれて毎日のように大根おろしを食べるはめになった家族には申し訳ないことをしたと、今は反省しています。
大根パンダ鍋。
大根パンダ鍋。
さきほど「はっきりした色合いを出したい時は固形物で」と書きましたが、これは醤油で着色したため淡い色合いのパンダになっています。
大根おろしアート界では黒い部分には海苔を使うことが多いのですが、海苔のつやのある質感ではなく、大根おろしのざらつきのある感じを生かすために敢えて醤油を使いました。
どことなく素朴でほっこりした雰囲気に仕上がったと自負していますが、いかがでしょうか。
雰囲気はほっこりだけど、醤油使いすぎてしょっぱかった。
雰囲気はほっこりだけど、醤油使いすぎてしょっぱかった。
パンダを作っておいて何ですが、『鍋につかる動物たち』というのは当たり前のモチーフではありますが、動物を煮えたぎる鍋に入れるなんて少し残酷な気がします。
そこで、鍋にふさわしいモチーフも考えてみました。
目玉のおやじ鍋。
目玉のおやじ鍋。
私の尊敬する漫画家・水木しげる先生の代表的キャラクター・目玉のおやじです。
よく茶碗のお風呂に浸かっているおやじさんならば、鍋の風呂にも喜んで入ってくれることでしょう。あと、他の動物だと「リアルさが足りない」と言われたら反論できませんが、目玉のおやじならば「本物見たことあんのかよ」と反論できるという思惑もあります。
虹彩はにんじん、瞳孔は海苔で作りました。
虹彩はにんじん、瞳孔は海苔で作りました。
湯気でカメラがくもってしまいましたが、うっかりセクシーショットに見えなくもないくらい馴染んでいます。
これは家族のウケが一番よかったです。

しかし、連日鍋だと具材が似たようなものになってしまい、飽きがきてしまいます。
そこで、鍋以外でもアートを作ってみました。
たとえば、大根おろしを添えた和風ハンバーグ。
命名『ギロチン台のZくん』。
命名『ギロチン台のZくん』。
当サイトのキャラクター・Zくん。
『2』と見間違えそうな『Z』、しかも位置がかなりずれている上にZくんの体がよく分からなかったので顔だけがハンバーグに無造作に載っていて、外国のパチモン業者がやっつけで作ったお土産品のようなB級感が漂っています。
命名『トクホハンバーグ』
命名『トクホハンバーグ』
大根おろしアートは3Dが主流ですが、時には平面的なものがあってもいいんじゃないか。そう思い、描いてみたのがこちらです。
これを描いてる間にハンバーグが冷め切ってしまった上、言わないとトクホマークだと分かってもらえないのが難点ですが、結構気に入っています。

そうそう、がんもどきをさっと焼いて大根おろしで食べるのもあっさりしてて美味しいですよね。
がんもどきひな人形。
がんもどきひな人形。
がんもどきが着物の裾っぽく見えて、作りが粗いわりにかわいくできたような気がします。
口と扇にハムを使ったのですが、『ハムとがんもどきはあわない』という試さなくても分かりそうな事実を身をもって体験できました。

食べても心が痛まない大根おろしアート。

大根おろしアート、これは流行るのも納得です。だってかわいいもん。
かわいい?と疑問を持つ方もいるかもしれませんが、私にとってはどれもかわいいわが子のようなもの。
でも、かわいいがゆえに心が痛みます。
頭もげた上に原型をとどめないほど崩されるゆきだるま。
頭もげた上に原型をとどめないほど崩されるゆきだるま。
せっかくかわいく作ったのに…という少し残念な気持ちと、残酷なことをしているような罪悪感。
ひよこ饅頭を食べる時、あるいははとサブレーを食べる時に頭から食べるかおしりから食べるかで悩む人には分かってもらえるはずです、この感じ。
ちなみに私は、ひよこの場合は「いっそ一思いに頭からかじる」派です。
助けてくれ鬼太郎!とアフレコしながら食べました。
助けてくれ鬼太郎!とアフレコしながら食べました。
そこで、「崩れても、壊れても、心が痛まない大根おろしアート」を考えてみました。
それがこちらです。
これなら崩れても壊れても心が痛まない!
これなら崩れても壊れても心が痛まない!
と自信満々に作りましたが、妹に
「なにこれ?アフリカの部族のシンボルか何か?」
「あ、分かった!ハンギョドンでしょ、サンリオの!」
などと言われたので、多分誰にも伝わっていないことは分かっています。

イメージ的には、こんな感じでした。
イメージ図がすでに分かりにくい。
イメージ図がすでに分かりにくい。
正解は「ドラマ『スパイ大作戦』の、スパイに指令内容を伝えると自動的に消滅するオープンリールのテープ」でした。
これなら、もともと消滅するはずのものなので、崩れようと壊れようと食べてしまおうとまったく心が痛みません。

ドラマ中ではデッキ自体は消滅しないので、テープ部分のみを表現しようとした結果、このような形になりました。
おはようフェルプスくん。
おはようフェルプスくん。
君および君のメンバーが捕えられ、あるいは殺されても当局は一切関知しない。
君および君のメンバーが捕えられ、あるいは殺されても当局は一切関知しない。
なお、この録音は自動的に消滅する。成功を祈る。
なお、この録音は自動的に消滅する。成功を祈る。
録音消滅。おそらく今頃フェルプス氏が作戦立案中。
録音消滅。おそらく今頃フェルプス氏が作戦立案中。
海苔の質感がテープの感じを上手くあらわせているのではないかと思っていましたが、こうやって見るとテープの感じを表現する以前に造形がひどすぎますね。

でも、分かりやすいモチーフで「わー、パンダかわいい!」というのも盛り上がりますが、「これ何だと思う?」というクイズ方式も脳トレのようで案外楽しめます。
皆様も鍋の季節が終わる前に、脳トレアートをぜひお試しください。

大根おろしアート、楽しいです。

すっかり大根おろしアートにハマってしまい、大根を消費するために始めたはずが、今やアートのために大根を買いに行く始末です。
鍋を見せた時の家族の「わぁ、かわいい!」という反応もうれしく、キャラ弁を作るおかあさんたちの気持ちが分かったような気がします。

オープンリールテープに関してはもっとやりようがあると思うので、いずれリベンジしたいです。次はトクホハンバーグ式の平面型で再挑戦してみようかと考えています。
そういえば、トクホハンバーグも心は痛みませんでした。
そういえば、トクホハンバーグも心は痛みませんでした。
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