特集 2014年1月18日

豚は鳴き声以外ぜんぶ食べられるのか

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沖縄料理を出す店ならばだいたいの店でメニューに載っているであろう、ラフテーやソーキ、テビチ、ミミガー。これらの共通点は全て豚肉を使った料理であるということ。沖縄県の豚肉消費量は本土と比べなんと1.4倍以上。沖縄では“豚は鳴き声以外は全て食べる”と言われるほど、食卓に欠かすことのできない食材なのです。
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お正月料理の定番といえば「お雑煮」を思い浮かべる方も多いと思いますが、沖縄ではお雑煮ではなく「中味汁」や「イナムドゥチ」などの沖縄ならではの汁物を食べることが多いのです。中味汁は豚の腸などの臓物をかつおだしで煮込んだもの。イナムドゥチは豚肉やかまぼこ、しいたけなどを白みそで煮込んだもの。どちらもやはり豚肉を使った沖縄料理です。
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そんな豚肉、普段は何気なくスーパーで買っている人が大多数だと思いますが、今回は“豚は本当に鳴き声以外は全て食べることができるのか?”という噂の検証をすべく市場の精肉店に伺いました。

町田精肉店

今回お世話になる町田精肉店さんは那覇市の栄町市場内にある家族経営の精肉店。
朝9:30頃に開店、19:00頃までの営業。しかし9時前から新鮮な豚肉を求めて常連客が訪れることもあるんだとか。1年でもっとも忙しいのは12月28・29・30日の年末。この時期になると朝夕には行列できるほどだそうです。
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お父さん(町田宗順さん)はこの道37年のベテラン。その昔、現在のように食肉センターで大まかに豚を解体し適当な大きさに分けてから店頭に運ぶわけでは無かった時代は、かなりの重さの部位も担いで運んだり、電ノコも無いため鉈で解体して腱鞘炎になったりしていたそう。
色々と便利になった今も働くのが大好きで、家族からも24時間働いているようなものだと思われているそう。ちなみに娘さんからは“マグロ(回遊魚だから)”と呼ばれているとか。
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お母さんと娘さんは店頭で接客を担当。お母さんは「何円分」「何々を作りたいけど、どの肉がいいか」「赤身と脂の割合はこれくらいで」など、お客さんの細かい要望に合わせてその場でお肉をさばいて売っている。調理や保存のコツなんかも教えてくれるきめ細やかな対応は昔ながらの商売ならでは。

息子の宗太さんは肉屋になって8年。未だに毎日師匠であるお父さんに怒られる日々だとか。

それではさっそく解体の様子を見ながら豚肉の部位について勉強していきましょう。

※以下、肉々しい画像が続きます。苦手な方は目を細めて読み進めてください。

ソーキ

現在では豚肉は食肉センターでおおまかに頭、胴、尻、脚などの部位に解体されて運ばれてきます。お店で一頭分を捌くのにはだいたい30分くらいかかるそう。
包丁は常に研ぎつつ部位ごとに使い分け
包丁は常に研ぎつつ部位ごとに使い分け
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まずはソーキ(あばら、つまりスペアリブ)から。胴は半身の状態で食肉センターから届けられます。
背骨やアバラ骨の境目に包丁を入れ剥がす
背骨やアバラ骨の境目に包丁を入れ剥がす
感覚で覚えるしかないという職人技
感覚で覚えるしかないという職人技
巨大なソーキ。この後、整形(余分な脂を取る)という作業を行うそう
巨大なソーキ。この後、整形(余分な脂を取る)という作業を行うそう
小さな包丁を何度も研ぎながら少しずつ丁寧に身を剥がしていきます。ソーキは肉と脂のバランスが大事。肉を付けすぎても落とし過ぎてもダメで、また豚の個体によって脂の付き具合が違うので難しいそう。

Aロース・Bロース

沖縄ではロース肉は、AロースとBロースの2種類に分けられています。
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Aロースはヒレ肉と並ぶ豚肉の最上部位。脂身は少なくとても柔かいのが特徴。
Bロースはいわゆる肩ロースと呼ばれる部位。脂身が多く濃厚な味わいの万能食材です。
背骨がついていた上の部分から切り分ける
背骨がついていた上の部分から切り分ける
Bロース側は難しくAロース側の皮は剥がしやすい
Bロース側は難しくAロース側の皮は剥がしやすい
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左側の赤身が多く見えているのがBロース、右側の白い脂の膜で覆われているのがAロース。これらもこの後きれいに整形していきます。本土に出荷する時は8mm程度の脂をあえて残して整形し出荷するそうですが、沖縄では脂を取ってある方が人気なんだとか。

三枚肉

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ソーキとロースを外して現れるのが三枚肉。沖縄そばの具やラフテーなどに使われます。

チラガー・アゴ肉

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続いて頭。頭はチラガーとアゴ肉に分けられます。まずはアゴ肉を切り離します。
耳の下から口角まで包丁を入れる
耳の下から口角まで包丁を入れる
骨に沿って剥がしていく
骨に沿って剥がしていく
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首側から刃を入れますが、骨も組織も細かい部位なので、傷つけないよう包丁の背を使って慎重に進めていきます。ほぼ骨から剥がし終えたら、ひっくり返すように頭からアゴ肉を外します。
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続いてはチラガーと呼ばれる豚の顔の皮。まず鼻先の真ん中に切れ込みを入れます。
骨から剥がすように包丁を入れていきます
骨から剥がすように包丁を入れていきます
チラガーを剥がすのは意外と簡単とのこと
チラガーを剥がすのは意外と簡単とのこと
チラガーはまつ毛のある硬い眼の周りを切り取ってから売るのだそう。また、唇や鼻先だけ買う人もいるんだとか。ちなみに生でもボイルでも受け渡し可。
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耳毛が生えている耳の外側部分、そして鼻先も切り落としてチラガーが完成。時々おみやげ屋さんなどでも見かけるチラガーが、顔の上半分のみの部位だったとは知りませんでした。
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舌(タン)は根元のほうが脂乗りがよく柔らかいそう。
アゴ肉は「いつもみたく顎を4つに分けて」という注文で買って行くお客さんもチラホラ。

ちなみに気になる脳みそですが、勿論捨てることなく売られています。沖縄では体の調子が悪いとき、それと同じ部位の肉を食べることがあるそうです。おじぃおばぁの世代は頭痛の時に脳みそをおつゆにして飲むそう。
目は研究などで使われることもあるので業者に引き取られていきます。

クンチャマー・シリー・メーグーヤー・シリグーヤー

クンチャマー
クンチャマー
シリー
シリー
クンチャマーとは首肉のこと。脂を残して処理した首肉をショルダーベーコンに加工して出すところもあるそう。油みそに加工したり、煮付けやイリチャー(炒り煮)にも使える部位。アゴ同様、他の部位とは脂の食感が異なりコリコリとしています。
メーグーヤー
メーグーヤー
シリグーヤー
シリグーヤー
メーグーヤーとはうで肉のこと。沖縄のスーパーの豚肉売り場ではグーヤーヌジーとも表記されています。シリグーヤーはもも肉のあたり。チビジリとも呼ばれます。

その他の部位

刃の形が違う包丁にチェンジ。これは皮と脂を剥ぐのに使います。
形は変わっても常に包丁は研ぎながら
形は変わっても常に包丁は研ぎながら
スルスルっと剥ぐように
スルスルっと剥ぐように
ここで出た脂は飲食店が持っていき、ギョーザのコクだしやラードとして使うのだそう。
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皮は煮付けに使われることが多いんだとか。
心臓
心臓
腎臓
腎臓
今回店頭で見せてもらった心臓はだいたい生体体重100kgぐらいの豚のもの。下茹で処理されたものが売られており、スライスしてサラダにすると美味しいそう。心臓のサラダとは!その他、ミミガーやキュウリなどの具とコーレーグース、キムチ、酢味噌、酢醤油等であえてお祝いの席に食べたり、シンプルに塩だけで食すのもおすすめだとか。

腎臓はマメと呼ばれている部位。昔は風邪をひいた時など、シンジムン(煎じたもの)としてニンニクと炊いておつゆにして飲んだりもしていたそう。真っ二つに切った断面に見える部位は硬いので通常は切除するそうですが、これをあえて欲しがる人もいるというマニアな部位のひとつ。食用以外では研究用にも使われます。
尻尾
尻尾
げんこつ
げんこつ
尻尾は炒め料理などに。本当は豚のシッポはくるんとしててかわいいのですが、機械で挟んで切断する際にまっすぐになってしまうそう。げんこつは豚骨スープなどの出汁取り用に。

また、これまでに出てきませんでしたが、血はチーイリチャー(血の炒め煮)に、背骨などは出汁に、脂身はラードに、腸などは中味汁に使われます。

果たして鳴き声以外ぜんぶ食べられるのか

というわけで豚肉を部位ごとに細かく紹介してきましたが、果たして鳴き声以外は全て食べることができるのでしょうか?
実は、そのこたえはNO!さすがに全てとはいかないそうです。
実は、そのこたえはNO!さすがに全てとはいかないそうです。

捨てる部分はいくつかありますが、まずは爪。足先にある爪は電ノコで切り落としてから店頭に並べられます。
もうひとつは頭蓋骨。チラガーとアゴ肉、注文があれば脳みそを外した頭蓋骨は業者に引き取られ廃棄されます。
最後にリンパ。もも肉やうで肉付近にあるリンパはキレイに取り除かれています。

つまり、正確には“豚は爪と頭蓋骨とリンパと鳴き声以外は食べることができる”ということでしょうか。
でもほぼ食べることができると言えるほど捨てる部分が無いですね。

町田さん曰く、豚には今回紹介しきれなかった部位もまだまだたくさんあるそうです(各部位の名称は地域やお店によって違います)。
お客さんの細かい要望に合わせてその場でお肉をさばいてくれたり、スーパーでは売られていない部位があったり、調理や保存のコツなんかも教えてくれるのは精肉店ならでは。スーパーだけでは知ることのできないディープな世界がそこにはありました。豚肉のことで困ったらみなさんもお近くの精肉店を訪れてみてはいかがでしょうか。

取材協力

町田精肉店

住所:沖縄県那覇市安里386(栄町公設市場商店街)
TEL:098-885-1300
営業時間:9:30~19:00頃まで
定休日:日曜、正月
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