なめる点滴
先日、知り合いに甘酒飴が好きだと言ったら「何ソレ、甘酒のアメ?」と返された。確かに甘酒飴は近所で置いてる店は少ないが、ちゃんとネット検索でも全国の甘酒飴がヒットする。現に東京と埼玉で手に入れることが出来たのだから。
足で探した3種(各200円前後)
甘酒飴を意識したことがない人に向けてプレゼンしたいと思う。簡単に言えば、甘酒を凝縮して飴にしたのが甘酒飴だ。口の中で転がすと、甘酒の風味が鼻から抜けて楽しい。液体と違ってすぐ無くならないのも良い。
さらに、甘酒はその豊富な栄養から“飲む点滴”と言われている。甘酒飴は言わば、“なめる点滴”といえるだろう。美味しい上にからだに良いなんて、天童さんも「舐めたらええ。こればっかりは舐めたらええ」っていうはずや!
甘酒飴たべくらべ
「甘酒を 出来ることなら 飴化したい」それは酒粕の原料である米を主食とする我々の性だ。このあと作ってみたいので、入手した甘酒飴を参考にしながら自分の中の“理想の甘酒飴”を固めていこう。飴だけに。
吉仁製菓の甘酒飴
酒粕は入っていない
酒粕のコクはないが、しっかり甘酒の風味になってる固飴(かたあめ)だ。甘酒アイデンティティーは香料だけだろうにしっかり甘酒してる。しいて言えば甘酒の上澄みの風味。量は少なめだが、パッケージが群を抜いてかわいい。
ロマンス製菓の千歳鶴 甘酒ソフトキャンディ
塩と生クリームが効いている
近年の“生”志向を反映するようなソフトタイプで、口に入れた時の酒粕の風味と塩味がアクセントになってる。あと、舌に絡みつくような生クリームの濃厚さが高級感を誘う。大人のミルキーといったところか。有楽町のどさんこプラザにて購入。
松屋製菓のソフト甘酒飴
水飴、砂糖、酒粕の順
こちらもソフトタイプ。原材料の酒粕が三番目に記載されているように、酒粕の配合量が多いようだ。噛むごとに、噛むごとに、酒粕の風味が押し寄せてくる。塩味が欲しいところだが、好みで言えばコレかなと思う。
小さい文字かわいい
ブラックコーヒーで舌をリセット出来ることに気付く
味の方向性は決まったが、問題は固さ。実はソフトタイプは苦手だ。これを見て味よりもまず「あ、銀歯はずれそう…」と思った人って結構いると思う。僕もメントスを噛んで銀歯が取れたクチだ。粘着質のお菓子に気を使うようになった。目標は金太郎飴のような固飴だ。
甘酒飴レーダーチャート
いずれ劣らぬ商品なので、すべてのいいとこ取りをしたい。
甘酒飴を作る
そもそも飴の作り方をよく知らない。とりあえず市販品の原材料表示を参考に作ってみる。特別なものが入ってるわけではなさそうなので、僕でもできそうだ。
砂糖・水・水飴・酒粕を入れて煮詰める(塩入れ忘れる)
泡立ちがきめ細かくなってきたころ火から外すと、
もろみ味噌ができました。
あれ何この色。まったく固まらないし、弱ったな…。
実は原材料表示にヒントがあったのだ。原材料表示は材料の多い順(重量順)に記載するルールである。表示を見比べてみると、固飴とソフト飴では砂糖と水飴の量が逆転している。固くしたければ砂糖の量が水飴の量を上回るほど入れなければならないのだ。
さらに悪いことに、熱い飴が酒粕をどんどん焦がして味を変えてしまっていた。手で触れるぐらいまで飴の温度が下がった時に酒粕を投入することにする。
冷却と硬化のはざまを見計らって酒粕投入
コネコネ
千歳飴チックに出来た
冷やしてからカット
固さもカチカチに仕上がった。口の中でなじませると、甘酒が溶け出しながら柔らかくなっていった。いつまでも舌で転がしていたくなる。給食で出たフルーツ白玉の白玉を5時間目終わっても口の中で弄んでいたクラスメイトの気持ち、今ならわかる!(わかりません。)
嗅ぐ点滴
とはいえ、甘酒飴もノンカロリーではない。究極的には風味(フレーバー)だけを味わいたい。ならば挑戦してみたい、甘酒のエッセンシャルオイル作りに。甘酒のアロマで甘美な空間を演出したい。
用意するのは酒粕とフタ付きの瓶
酒粕をヘキサンという溶剤に浸す。これは溶剤抽出法といって、精油を得るひとつの方法らしい。ヘキサンは取扱いに注意が必要な溶剤だ。
酒粕のヘキサン漬け
ジャスミンやローズなどの植物の香り成分を抽出する時は、この方法を使うという。浴室で換気をしながら行う。2日間放置して様子を観察する。
―植物の天然の香り成分がロウとなって溶剤に溶けだす。
とあるので賭けてみたが、驚くほど何も変化しなかった。
香り成分溶けだしてるのかな…?
ただ透明の液ぞ残れる…
ロウとやらが確認できないが、やり方が間違っていたんだろうか。半信半疑になってしまうが、おしなべてどのサイトも同じことを書いている。やはり酒粕は植物じゃないんだと思うしかない。
でもあきらめきれない。というかこの方法で合っているのだろうか。植物の根でもできるというので、香り豊かなゴボウで試してみた。
あれ和田さん、家族増えた?
同じように浸して1日待った。
すると茶色いものが出てきた!
下にも溜まってる
ゴボウを取り除く作業はベランダで
ドレッシングの分離のよう
カップ焼きそばのソースのようでもある
ロウ状態ではないが、ゴボウの匂いがガツンとくる
ついに出来た。精油作りに成功したのだ、ゴボウの。
うん、やっぱゴボウはかぐわしいな…。
酒粕からは精油は得られない?
ゴボウの精油抽出で図に乗っていた僕のもとに、ウェブマスターの林さんから情報が入った。理科教師のライター加藤まさゆきさんに見解を聞いたというのだ。
加藤さん「ゴマとか、油脂が豊富なものならできるかもしれませんが、酒かすは研ぎ澄まされた米で作られているからワックスを含まないためヘキサン法による抽出は難しいのでは?酒かすの精油を抽出するには超臨界液化二酸化炭素という絶対に家庭ではできない方法ならいけるのかもしれません」
超臨界液化二酸化炭素……。コーヒーのカフェインを取り除く方法だという。ボイル=シャルルの法則とかが出てくるようなわりかし早い段階で、化学の授業を脱落した生徒にとってはもう少しだけゆっくり理解する時間が必要なのである。そして自分ではできない事を知る。
しかし、加藤先生が家庭じゃ無理と言ってくれたことで妙にあきらめがついたところがある。そして、ヘキサンの取り扱いには注意が必要だ、とか言ってた自分が恥ずかしい。加藤先生ありがとうございます!
甘酒飴突き詰めたらゴボウのエッセンシャルオイルが出来た
結局、甘酒のエッセンシャルオイルは出来なかった。よく考えたら点滴は嗅ぐものではない。なめるまでに留めておこう。
甘酒で不可能なことも、甘酒飴なら叶えてくれる。F1のレース中やスキューバダイビングしながら甘酒飲みたいと思った時も、甘酒飴だったら大丈夫。
食わず嫌い的な人も一度は食べてみてほしい。多くが冬限定だったりするので見つけたら即買いをオススメする。取り扱うスーパーが増えることを願うばかりだ。