自分史上空前の朝食ブーム
「ごちそうさん」に影響され、いま自分の中で空前の朝食ブームが巻き起こっている。以前はパン一枚で済ませることも多かったが、最近は朝からご飯を炊き、数種類のおかずを食卓に並べる習慣ができた。おそらく同じような人が、全国に急増していることだろう。
ごはん、味噌汁、漬物、のり、焼き鮭、卵…。和朝食には、定型のスタイルに基づいた様式美のようなものがある。
ジャパニーズトラディショナル朝ごはん「鮭定食」(byすき家)
そうした朝ごはんの「型」みたいなものは日本特有のものかと思ってたら、どうやらそうではないらしい。先ごろ、東京に「世界の伝統的な朝食メニュー」を提供するカフェレストランがオープンしたというのだ。
それがここ、「WORLD BREAKFAST ALLDAY」(渋谷区神宮前)
ご覧の通り、オシャレな店構えに若干ひるむ。店内もファッショナブルなカップルや女性客が多いようだ。ユニクロのオシャレなカーディガンを着てきてよかった。
メニューは2カ月ごとに変わる。訪問時はフィンランドの朝ごはんを提供
「朝ごはんを通して世界を知る」をコンセプトに今春オープンした同店。2カ月サイクルでメニューを変え、世界の伝統的な朝ごはんを発信している。これまで「ヨルダン」「メキシコ」「ベトナム」ときて、10月からは「フィンランド」。メキシコのタコスやベトナムのフォーは好きだけど、朝食というと想像がつかないな。
ナナメから見てもやはりオシャレ
フィンランドということでディスプレイにはあの谷の仲間たちがいた
店内は大きな長テーブルひとつを全員で囲むスタイル。お客同士の距離がすごく近く家族的雰囲気。朝シャンしてきてよかった
して、フィンランドの朝食とは?
では、さっそく料理を食べよう。フィンランドの朝ごはん、いよいよ想像がつかないが、メニューにはかわいいイラストと分かりやすい料理の説明がのっていた。
未知の料理だが、メニューに詳しい説明が書かれていて安心
これがフィンランドの伝統的な朝食「カルヤランピーラッカ」
カルヤランピーラッカ。小島よしおの新しいギャグみたいな名前だが、その正体はフィンランド東部カレリア地方の伝統料理だ。ミルク粥をライ麦のパイで包んだもので、上にのっているのは卵とバターで作ったムナボイ。しっとりもちもちしたパイを噛みしめると、ミルク粥の優しい味とバターの香りがほんのり広がる。添えられたミートボールのほどよい塩気や酸味の効いたサラダ「ロソッリ」も、いいアクセントになっている。うまい。
起きぬけの、まだ眠れる細胞をゆっくりじんわり呼び覚ましてくれるような朝ごはんだ。
こちらはフィンランドの定番スープ「ロヒケイット」。やわらかな口当たりのクリームスープに鮭、細かくカットしたジャガイモ、ニンジンなどの野菜がたっぷり
クランベリージュースで作ったフィンランドのホットドリンク「グロッギ」。酸味と甘みのバランスがとてもいい
フィンランドの家庭のデザート「ベリーのキーッセリ」。ごろごろ入ったベリーの食感が楽しい
朝からボリューム満点のメニューをいただき、すっかりお腹は満たされた。すると、今度はフィンランドという国に俄然興味が湧いてくる。
テーブルにはフィンランドの特徴をまとめたイラストカードが置かれていた
めんたま飛び出るくらい税金が高い! でも社会保障制度がものすごく手厚い!
サンタクロースはフィンランド在住! などなど色々勉強になる
遠い北欧の地、フィンランド。これまでは「寒い」「ムーミン」など、断片的なぼんやりしたイメージしかなかったが、一気に知識が流れ込んでくる。おいしい朝ごはんを入口に、その国の文化や歴史に興味を持つ。そんな、食いしん坊きっかけの知的好奇心の満たし方があってもいいんじゃないかと思う。
なぜ朝食レストランなの?
それにしても、なぜ朝食を切り口にしようと思ったのだろうか? 同店のPRを担当する堀内明さんに聞いてみましょう。
「このお店を運営しているのは栃木県日光市にあるデザイン会社『有限会社日光デザイン』です。6年前から日光で、日本の古民家をリノベーションした宿『日光イン』を営んでいます。日光インに滞在したたくさんの外国人ツーリストとの自然な会話のなかで、各国の朝ごはんがとてもユニークかつその国の文化や歴史、国民性などを色濃く映し出していることに気付き、世界の朝ごはんを一日中提供するスタイルのお店をスタートしました」(堀内さん)
こちらはレギュラーメニューの「イングリッシュブレックファスト」。フライドブレッド、ベイクドビーンズ、卵、マッシュルームとトマトのソテー、ハッシュドポテト、厚切りベーコンとボリュームたっぷりの大満足メニュー。イギリスでは週末のブランチに食されることが多いそう
世界中の珍しいジュースやアルコールメニューも揃う。こちらはペルーのインカコーラ。コーラというより、メローイエロー(古い)みたいな色と味でした
ちなみにインカといいつつ、原産国はアメリカだったりする
──これまで中東、北米、アジア、北欧と幅広いエリアの朝食を提供していますが、国を選ぶ基準はありますか?
「明確にこれ、と決めてはいませんが、今回のフィンランドのように季節(クリスマス)を意識して決定したり、日本にいるとあまり馴染みのない国のごはんを食べてもらうことで新鮮な感覚で食や文化を体験してもらえたらと考えて、国を選んでいます」
ヨルダンの朝ごはん。ホプスと呼ばれるピタパンや、ひよこ豆のペーストであるホンモス、甘いホットチャイが朝の定番だそう。強烈な香辛料を多用するのがアラブ圏の食文化の特徴。(※こちらのメニューは終了しています)
メキシコの伝統的な朝ごはんメニュー「チラキレス」。トウモロコシのトルティーヤを揚げ、サルサソースで煮たスパイシーな一皿。朝から刺激的なメニューである。さすがラテン系。(※こちらのメニューは終了しています)
ベトナムの麺料理「ブン・ボー・サオ」。日本で有名なフォーよりも、より家庭的で親しまれている丸麺の「ブン」を使った朝ごはんの定番なんだとか。甘酸っぱいタレにつけて食べる。(※こちらのメニューは終了しています)
──日本ではあまりなじみのない料理ばかりだと思いますが、レシピはどうやって調べていますか?
「本で調べたり、その国出身の方、旅行で訪れたことのある方などからヒアリングを行っています。また、外部のフードディレクターの方にメニューを考案していただきながら、決定しています」
提供するメニューによって店内の装飾も変えるそう
母国の朝ごはんが食べられるお店は貴重とあって、現地出身の外国人もけっこう食べに来るそうだ。なるほど、日本人だって異国生活が続けば、味噌汁が恋しくなりますもんね。
シンプルだからこそ奥が深い朝ごはん
朝ごはんはシンプルだからこそ、その国の食をぐっと凝縮している。この小さな店は世界の食文化の縮図なのかもしれない。なお、来年1月~2月はベルギーの朝ごはんを提供する予定とのことだ。
<WORLD BREAKFAST ALLDAY>
http://world-breakfast-allday.com/
渋谷区神宮前3-1-23-1F
営業時間:火曜~土曜は9時~22時、日曜・祝日は9時~17時(月曜は料理教室等のイベントを開催 ※月曜が祝日の場合は火曜)
問い合わせ先:03-3401-0815