特集 2013年12月6日

はじめてのアマチュアプロレス大会

出場選手もセコンドも、女性だらけのアマチュアプロレス興行!!
出場選手もセコンドも、女性だらけのアマチュアプロレス興行!!
取材をきっかけに通うようになったアイスリボンの女子プロレスサークルが、去る12月1日に第1回自主興行「レディ!」を開催いたしました。
未熟ながらこの私も、リングネーム『道の駅おおた』として試合に出場しました!
とても楽しかったです!というだけの内容ですが、しばしお付き合ください。
1980年北海道生まれ。
気が付くと甘いものばかり食べている偏った食生活を送っています。


前の記事:いろいろなお茶で、新しいお茶漬けを作り出したい


アマチュアだけど『プロレス興行』。

まず、皆さんが感じるであろう疑問をひとつずつ潰していきましょう。
プロレスファンにはさほど違和感なく受け入れられると思いますが、馴染みのない方なら戸惑いを隠せないだろう言葉、『アマチュアプロレス興行』。
アマチュアなのかプロなのかはっきりしてくれ。そう思われる方も多いかもしれません。
メキシコのルチャ・リブレにはプロライセンス制度がありますが、日本のプロレスではそういった制度を取り入れていないので、ここでは『アマチュア』『プロ』という言葉を厳密に考えずにふんわりしたニュアンスで捉えていただけますと幸いです。
この覆面パンダ(左)もプロレスラーです。ふんわりしたニュアンスが伝わるでしょうか。
この覆面パンダ(左)もプロレスラーです。ふんわりしたニュアンスが伝わるでしょうか。
ちょっと検索すれば『アマチュアプロレス』『学生プロレス』といった団体が出てきますし、プロじゃない人のプロレス興行自体はそこまで珍しくありません。
ただ、プロ団体が運営母体で、コーチが現役の、しかもトップ戦線で活躍している女子プロレスラーで、参加選手全員が女性のアマチュア興行というのはわりと珍しいケースだと思います。
プロレスラー・志田光選手にプロレスを教わる時点でかなりレアな環境。
プロレスラー・志田光選手にプロレスを教わる時点でかなりレアな環境。

ノウハウというほどでもない情報

この記事をご覧の皆さんも、きっといつかプロレス興行をする日が来ることでしょう。
その時、この記事が何かの役に立つかもしれません。是非参考にしてください。

「人数増えたし、プロレスサークル単独興行やってみたら?」と団体側から提案を受けたのが、確か8月のこと。
メンバーに興行やりたいかやりたくないか、出場したいかしたくないか、やるならどんなことをしたいか、などのアンケートを取り、それをもとにミーティングを重ねて、興行全体の流れを考えたのが9~10月。
開始時間と終了時間を設定して、対戦カードを考えて、アイスリボン所属レスラーへオファーを出して…と、まだ大会の実感はわかなかったけど、考えるだけで楽しかったです。
アンケートでアイディア出しした8月。
アンケートでアイディア出しした8月。
皆で興行について話し合った9~10月。
皆で興行について話し合った9~10月。
コスチュームを探しに行った11月。
コスチュームを探しに行った11月。
興行を執り行う上では出場者の人数と観客の見込み数から会場を選定したり日時を決めていったりするのだと思いますが、私たちの場合、場所はいつも練習しているアイスリボン道場、日時は道場の空いている12月1日というのが早い段階で決まっていました。

一番悩んだのはチケット代のこと。
アマチュア興行はチケット代無料で運営費は参加者負担、お客様からはカンパという形でお金を頂戴するのが一般的です。

素人の興行でお金を取ることに批判的な意見もありましたが、「友達が習っている日本舞踊の発表会に行くとしたらチケット代1000円くらい払うだろう」というOL的習い事感覚、中学生メンバーのことを考えると一人当たりの負担額はなるべく抑えたいというのを総合的に鑑みて、友達が払ってくれそうな金額として500円に設定しました。
メンバーのつてで、桑沢デザインの学生さんにチラシデザインしてもらいました。
メンバーのつてで、桑沢デザインの学生さんにチラシデザインしてもらいました。
興行の開催が発表されて、チラシも出来て、チケットも売りはじめて、500円が功を奏したのか売れ行きが意外と好調で…と、どんどん逃げられない状況になってあわあわしていた日々が、昨日のことのように思い出されます。
そうそう、おそろいのTシャツも作りました!文化祭みたい!
そうそう、おそろいのTシャツも作りました!文化祭みたい!

『道の駅おおた』の誕生

『道の駅おおた』って何だよ、という疑問もあるかと思います。
私は全体的にセンスが無く、安直でダサいリングネームしか思いつかなかったので(例・ナイスフレーバーおおた)、デイリーライター陣にアドバイスを求めました。
その結果が『道の駅おおた』です。
ナイスフレーバーよりはマシだと思うので満足していますが、いかがでしょうか。

名前以上に不安があったのは、私の実力についてです。
取材で初めて練習に参加した時、撮影のため同行してくれた編集部の安藤さんとライター大北さんが二人とも苦笑いを浮かべているほどにダメダメだった私。
開脚前転をしようとして、
開脚前転をしようとして、
起き上がれず倒れる。
起き上がれず倒れる。
果たして試合が出来るほど成長しているのか、と疑問を持たれる方も多いはず。
興行が決まってからの練習風景を大北さんがプープーTVで公開してくれたのですが、それを見ると意外と動けるように見えます。
しかし、この時は自分のコンディションが良かったのと練習メニューがわりと得意なものだっただけで、実際のところ出来ないことの方が多いです。
しかも、当初の予定では第二試合で5~6人で試合を行うバトルロイヤル戦に出場する予定だったのですが、出場選手の変更等により、急遽第一試合のタッグマッチに変更になりました。
バトルロイヤルなら人数多いから埋もれたりどさくさに紛れて勝ったりできたかもしれないけど、タッグマッチだとそこまで逃げ場がない…

そんなもろもろ悩みを解消すべく、生み出した秘策がこちらです。
アイドルレスラー、道の駅おおたです☆
アイドルレスラー、道の駅おおたです☆
多分、会場の皆さんもこの記事をご覧の皆さんもコイツやべぇと思ったことでしょうが、私自身どうかしてると思います。

何故こうなったかと言えば、急には強くなれないので弱くても許される存在を目指したからです。コミカルなファイトを得意とするレスラーも比較的強さは求められないのですが、それには高い技術と客席を笑わせるセンスが必要です。

技術もセンスもないので、消去法でアイドルになりました。
道の駅おおたのオリジナル技「タンスの角に足の小指をぶつけた痛みを再現」
道の駅おおたのオリジナル技「タンスの角に足の小指をぶつけた痛みを再現」
名前が『道の駅』で自称アイドルレスラー、ファイトスタイルはキモい、というコンセプトが迷走しすぎているレスラーですが、とても楽しかったです。
写真見てたら自分にイラっとしたので、次やる時は覆面レスラーにしよう。

興行自体は大盛況でした

興行自体は全4試合で、観客数146名と立ち見が出るほどの多くの方にお越しいただきました。
そんな大盛況な中チケットを7枚しか売っていないので超アウェイな戦いが予想された道の駅でしたが、中には「道の駅!」や「駅!」と声援を送ってくれる方もいて、意外と名前として違和感がないのかもしれません。
もしくは、ただお客さんが皆優しい人だっただけでしょうか。

私が出場した第一試合は、私だけ見るとネタっぽいと思われるかもしれませんが、タッグパートナー・如月アリス選手のフレッシュな若さあふれるファイトや対戦相手のマチコ・デラックス選手の圧倒的なパワーなど、実は見どころ満載の試合でした。
如月アリス選手のドロップキック。
如月アリス選手のドロップキック。
中二病を患う累ヶ淵ルイ選手。基本的に卑怯な戦法を使います。
中二病を患う累ヶ淵ルイ選手。基本的に卑怯な戦法を使います。
アリスを軽々と担ぎ上げるマチコ・デラックス選手。すごくパワーがあります!
アリスを軽々と担ぎ上げるマチコ・デラックス選手。すごくパワーがあります!
結果は、アルゼンチンバックブリーカーにより如月アリス選手、つまり私たちチームの敗北。
アリス選手はもっと強くなるため、練習生となることを志田コーチに直訴!という熱い展開もありました

私は出オチみたいな存在なので、勝敗にも熱い展開にも一切関与してないですけど。

プロレスだけどお絵描きバトル

他のメンバーの試合はセコンドとして応援していたのですが、どの試合もすごく面白かったです。

第二試合は漫画家VS予備自衛官VSプロレスラーによる職業対抗3ウェイマッチでしたが、この試合は会場中から笑いが起こる楽しい試合でした。
最初は普通に組み合ったりしていたのですが、そのうち、それぞれが自分の得意な分野での勝負を持ちかける展開に。
OL兼予備自衛官ゆみこ選手は、エアガンを振り回して他選手に自衛隊的訓練を強要。
「貴様らそれでも軍人か!」が口癖。腕立てしている人の背中に乗るゆみこ選手。
「貴様らそれでも軍人か!」が口癖。腕立てしている人の背中に乗るゆみこ選手。
漫画家なでなでろう選手は、同じお題でその場で絵を描き、お客様からの拍手が一番多かった選手が勝利する「お絵描きバトル」を提唱。
なで選手によるお絵描きバトル、お題『初音ミク』。皆意外とうまい。
なで選手によるお絵描きバトル、お題『初音ミク』。皆意外とうまい。
お絵描きバトルでは『初音ミク』と『キン肉マン』のふたつのお題が出され、どちらも皆意外とうまかったのですが、中でも漫画家なでなでろう選手は群を抜いていました。
なで選手の『キン肉マン』。大きな拍手が起こりました。
なで選手の『キン肉マン』。大きな拍手が起こりました。
お絵描きバトルには勝ったけど、スケッチブックで殴られる。
お絵描きバトルには勝ったけど、スケッチブックで殴られる。
最後は現役中学生プロレスラー・弓李(きゅうり)選手が、自分の得意なプロレスで無事勝利を収めました。
プロレスラーが漫画家と予備自衛官を二人まとめてフォール!
プロレスラーが漫画家と予備自衛官を二人まとめてフォール!
中学生で受験生でもある弓李選手、この日は午前中に模試を受けてからお昼はアイスリボンの大会、夜はプロレスサークルの大会に出場してくれました。若いって素敵ですね。

第三試合は、第一試合で勝利を挙げた選手が我らがコーチ・志田光選手と対戦できるというものでした。
身長では負けていないマチコ選手ですが、攻め込まれる場面が多かったです。
身長では負けていないマチコ選手ですが、攻め込まれる場面が多かったです。
練習で誰にも投げられたことのないマチコが投げられた!
練習で誰にも投げられたことのないマチコが投げられた!
私が出てたら死んでたので、第一試合で負けてよかった!(負け惜しみ)
私が出てたら死んでたので、第一試合で負けてよかった!(負け惜しみ)
マチコも意地を見せる!
マチコも意地を見せる!
しかし、志田選手のブレーンバスターに沈む結果に…
しかし、志田選手のブレーンバスターに沈む結果に…
プロレスサークル一の身長とパワーを誇るマチコでもプロ選手の前ではこんなにぼろぼろにされてしまうのか…と、改めてプロのすごさを感じましたが、そんなプロを相手に最後まで立ち向かっていったマチコ選手には会場中から惜しみない拍手が送られていました。

号泣するエースVSハーフマラソン大会に出場してきたプロレスラー

メインイベントの第四試合、プロレスサークルのエース・彩(さい)&HIROMI組VSアイスリボン所属・内藤メアリ&新田猫子組によるタッグマッチ。
内藤選手と新田選手はプロレスサークルのs前身となった『プロレス教室』出身で、彩選手の熱烈なオファーを快諾してくださいました。

この日はハーフマラソン大会に参加してからの参戦という内藤選手と新田選手に対し、疲れが残っているであろう序盤に一気に勝負に出ようとする彩&HIROMI。
ガンガン攻め込む彩選手(右)とHIROMI選手(左)。
ガンガン攻め込む彩選手(右)とHIROMI選手(左)。
彩選手はプロレスサークルの誰もが認めるエースで、プロレス大好き!戦えてうれしい!という感情をストレートに表現するタイプです。
プロと戦いたい!という積年の願いが叶って本当に生き生きしていたし、後半は悔しさのためか痛みのせいか号泣一歩手前で、そんな素直さが一番の魅力だと思います。
泣き虫番長・彩選手のドロップキック!
泣き虫番長・彩選手のドロップキック!
HIROMI選手は彩選手ほど感情を露わにしないのですが、彼女も本当にプロレスが大好きです。
HIROMI選手はプロレスサークル歴が一番長く、プロレス教室時代の内藤選手や新田選手と一緒に練習していたそうです。
小柄で細くて、決して体格に恵まれているわけではないのに、長い間ずっと練習してきて、ずっとプロレスを好きでいて、今こうしてメインのリングに立っているんだな…と思うと
勝手に感情移入して泣けてきました。
HIROMIも猫子を投げ捨てるぞー!
HIROMIも猫子を投げ捨てるぞー!
結果としてはハーフマラソン帰りの内藤選手がネックブリーガーからの片エビ固めで彩選手に勝利という形で終わりましたが、この二人のタッグを素人とナメずに真剣に向き合ってくれた内藤・新田両選手の試合を間近で見ることができて本当によかったです!
猫子選手の顔面ひっかき攻撃!
猫子選手の顔面ひっかき攻撃!
内藤選手も容赦なし!
内藤選手も容赦なし!
やっぱりプロの壁は分厚いです。とても、ハーフマラソン走ってきた人とは思えません。
プロレスラーの体力、すごいですね。

サプライズ倍返し

全試合終了後、この興行を以て今までプロレスサークルで指導していた志田光コーチが辞任し、後任としてアイスリボン所属レスラー・235(ふみこ)選手が就任することが発表されました。ちょっとしたサプライズ人事ですね。
志田コーチ(左)と、後任の235コーチ(右)
志田コーチ(左)と、後任の235コーチ(右)
私たちはその話を一週間前に聞いていたのですが、その場で泣き出すメンバーがいるほどに衝撃的な話でした。帰り道、皆の空気がどんよりしていたのを思い出します。
そんなサプライズ人事に報復サプライズすべく、我々もこっそりネタを仕込んでいました。

志田コーチが締めの挨拶をしたところで、ちょっといい感じの音楽が流れて一度退場したメンバーがお花を持ってリングイン!
一人ずつ、感謝の言葉とともに志田コーチにお花を手渡します。
「本当にありがとうございました」とお花を手渡す道の駅。
「本当にありがとうございました」とお花を手渡す道の駅。
隙をついて後ろに回り込み、
隙をついて後ろに回り込み、
スクールボーイだー!
スクールボーイだー!
私がプロレスサークルに初めて参加した日に習った丸め込み技・スクールボーイを決めてサプライズの師匠越えを狙いましたが、志田コーチは微動だにせず、逆に私が蹴り飛ばされて終わってしまいました。
プロの壁は分厚い。しかし、それをアマチュアでも弱い部類の奴が言っても何の重みもない。
蹴り飛ばされた私に追い打ちをかける優しい仲間たち。
蹴り飛ばされた私に追い打ちをかける優しい仲間たち。
師匠越えは叶いませんでしたが、「絶対泣かない」と言っていた志田コーチを泣かすことができたので、この勝負は痛み分けですね。
次回興行では絶対に志田越えしてやるぞ!私以外の誰かが!!
蹴り飛ばされた私に追い打ちをかける優しい仲間たち。
志田光の目に光るものが!!

人生で一度はリングに上がるべき

初めての試みで慣れないことだらけだったし、トラブルも無かったわけではありませんが、本当にやってよかったです。
普段の練習はもちろん楽しいけれど、人前で試合としてやるのはまた違った楽しさがありました。この楽しさを知らずに人生が終わるのはもったいないので、皆さんも是非一度、リングに上がって試合するべきです。
プロレスサークルは随時メンバー募集中なので、試合したい方、是非どうぞ!

試合後、キモいと評判だった私にも労いの言葉を掛けてくれるお客様がいて、本当に嬉しかったです。
『プロレスファンに悪い人はいない』って噂、本当かもしれないぜ、と思いました。
デイリー読者の方が、フレンチクルーラーの遺影みたいな写真を持って応援にきてくれたのも嬉しかった!
デイリー読者の方が、フレンチクルーラーの遺影みたいな写真を持って応援にきてくれたのも嬉しかった!

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