大阪Dスポめしツアー(イシヤマアズサ)
これがそのミニコミ
「大阪Dスポめしツアー」でとりあげられているのは中津と十三という地域。どっちもディープスポットとして話題にも上がらないような、渋い地域だ。今回は中津を回ってみる。
中津商店街の駄菓子屋
最初に向かったのは商店街の中にある駄菓子屋。しかしこれが、今時どこを探しても見つからない本格的な駄菓子屋だった。
本当に駄菓子しか置いていない本気の駄菓子屋
商店街がほとんどシャッター閉まっている中、ギラギラ営業している
「Dスポめしツアー」より
通路を挟んで逆サイドでも元気に陳列されている
セピア加工でタイムスリップ。インスタグラムがタイムマシーンになる
中津商店街は100年以上前からある。この駄菓子屋さんは60年前からやっているという。
レトロとかじゃなくて、本気の時代の重みだ。
よく見たら駄菓子が奇妙
しかし、売られている駄菓子には、そんな重みを物ともしない。
スマホグミというお菓子
スマホがグミになるだけでもすごいのだが、よく見るとネットスケープナビゲーターみたいなアイコンがある。古参のネットユーザーにもたまらない。
水あめ食べてるクリーチャー三人組
水彩で完全コピーされてる
極端に陽気なキャラだな…と思っていたら「まともなのが1人もいない!!」ってコメントされていた。イラストはホンワカしているけれども、言うことちゃんと言うって感じだ。
軒先に付けられたリボンは「通行人が頭ぶつけないように」つけたそうだ
たしかに、こういうの大阪ガイドブックには載らない。ふつうにしていると通り過ぎちゃいそうだが、一度見始めると情報量が多すぎる。これが本当の「ディープ」ということか。
食べログに載ってない人気のお好み焼き屋さん
お好み焼き屋さん「池田」。食べログはおろか、インターネットに情報が全くないお店だった。
このたたずまい、観光客には入れないですよ
イラストの再現度すごい
入るとでかい鉄板のカウンターが二つある。これ、万が一ステーキとか焼いたら、ものすごく高くつく形式の店なんじゃないか。
目の前で焼いてくれる
席に着くと、続々と地元の人が立ち代りやってくる。人気店なのだ。一人で食べてく人もあり、持ち帰りの人もあり。そしてみんながみんなと顔見知り。
94歳のおばあちゃん働いてる
メインで働いているお母さんの他に、94歳のおばあちゃんも店を手伝っている。
「熱い熱い」っていいながら鉄板を拭いたり、スズメに「今日はもうあげるものなんにもない、なんにもない」っていったりしてすごくかわいい。
お客さんがあらかじめお釣りを計算して、おばあちゃんにお金を渡したりしている。しかし、そのお客さんサイドの計算が間違っていて、あわててお母さんが訂正するというヒヤヒヤする一幕もあった。
ブタ玉550円
ブタ玉すごくうまそう。というか実際すごくうまい
イシヤマさんが食い物を描くと、さらに過剰なシズル感が加わる
鉄板から直接食べられるので、いつまでも冷めなくて最後までおいしい。…のはいいんだけれども、熱いし量はあるしで、食べるのにすごく時間がかかる。商売の効率すごく悪い。値段安いし大丈夫かと思う。
ずっと熱い
謎のアボカド専門店
アボカド専門店というのもある。なんでアボカド?と思ったが、調べたらアボカド専門店というのは最近流行っているみたいだ。ひょっこり最先端の流行が出てきてあなどれない。
一見、お店かどうかなのかもよくわからない
しかしイラストでは謎っぽい要素は一つもなくステキである
アボカドの種をタダで勝手に持って行ける
生えてきたやつは100円で売っている
店内で大きさごとに分けられているアボカドたち
メガアボカドが「関西初入荷!」ってこれはめちゃくちゃすごいことなんじゃないのか
アボカドグッズある。コースター
アボカド生ジュース買える。持っているのは取材に同行してくれたミニコミショップ・シカクの店主
「アボカドちゃん」ときたよ
お店の人に「今晩みんなででかいアボカドを食べたい。いいのありますか」と聞いてみると「おっきいやつで今日食べられるアボカドちゃんはないですね~」と返事が来た。
おいしく食べるには熟成が必要なんだそうだ。繊細な食べ物である。
そしてなにより「アボカドちゃん」という女の子みたいな敬称に、心の底からびっくりする。お店の人は皮をむいたアボカドみたいに滑らかな顔をしていた。民話のようだ。
そのあとお店の人が「アボカドの歌」のCDをかけてくれて、なんとなくずっとそれを聴いてしまった。南国のメロディーにすごく説明的な歌詞がついている、ふしぎな歌だった。
(
youtubeにありました)
中津のUSJ、ピエロハーバー
中津といえば高架下が有名だ。当サイトでも記事になっている(「中津の高架下がすごい」)。
この高架下にあるピエロハーバーという居酒屋がすごい。
高架下にいきなりでかいチャップリンの壁画が現れる
チャップリンの対面に居酒屋の入り口が
びっくりさせるような壁画描いときながら、値段は良心的なのが一層怪しい
チャップリン、怖いですよね
無駄な物てんこ盛りでスケール感狂う
ピエロハーバーは高架下の倉庫を居抜きで使っている。ものすごく広い。そしてその広さの使い方がみょうなのだ。
高い天井にでかい油絵置いてある
全ての壁に映画モチーフのでかい壁画
小さな劇場スペースがある
卓球に興じる人々
中津のUSJ
同行してくれたシカクの店主は「ここは中津のUSJやで」といっていた。「違うだろ」と言いたくなるが、安易に否定できない気もする。結果、なんとなく黙ってしまった。
ゲーム類も充実しておる
きれいに撮れた猫の写真展示スペース
こんな「ひとんち感」のある本棚、狙ってもなかなか作れるものではない
紙粘土と絵具と針金で作ったオブジェが無造作にいくつも置かれていた
イシヤマさんと一緒です
実はここピエロハーバーには「大阪Dスポめしツアー」の作者、イシヤマさんと一緒に来ていたのだった。
デラックスにソファーの席を選んだんだけれども
ものすごく食べにくそうにしていた
このあと、僕たちがご飯を食べている卓がテーブルではなくて、ちょっと大きめの「テレビ台」のリサイクルだということに気付いた。意外なところに謎解き要素だ。
たこ焼きにはしば漬けがついてくる。これもピエロハーバー独特の文化
イラストなめたらおいしい味しそう
イシヤマさんに「食べ物の絵すごく上手ですよね」といったら「水彩で光の感じをうまく出すのが好き」「一つの画面に、一番暗いところと一番明るいところを入れるようにしています」と言っていた。
やたらうまそうと思っていたが、ちゃんとおいしく描けるメソッドが本人の中で確立されているのだ。一度試しに革靴とかもうまそうに描いてもらいたいなと思う。
(*とか書くとまるでたこ焼きがまずかったかのように思えるかもしれないけれど、すごくうまかったです)
事務所とつながってる
イシヤマさんが「奥に行くともっと面白いですよ」という。行ってみたら、飲食スペースと事務所がなんの仕切りもなくつながっている。ちょうどユニットバスのような感じだ。
いちおう「事務所」の貼り紙はある
事務所スペースにも入ってしまえる。働いている人に、なにもとがめられないし、全然動じていない。透明人間になったみたいだ。
事務所の入り口には、猫のケージがあった。これも遊べる。
けっこう遊んでくれる猫だった
居酒屋+ギャラリー+小劇場+卓球場+ゲームバー+図書室+会社見学+猫カフェ。
これだけでもすごいんだが、事務所のさらに奥には「和太鼓教室」と書いてあるスペースがあった。「中津のUSJ」というより、「人が入れる巨大な闇鍋」が近いなと思う。
事務所の人みんな帰っても開放したまま
中津の濃さ
今回行ったところは、地下鉄の中津駅から半径200メートルくらいに全部が収まる。すぐに全部周れてしまうように思えるが、よっぽど体の強い人じゃないとお勧めできない。
醤油を煮詰めてジョッキで一気飲みするような衝撃だと思う。
このことは「大阪Dスポめし」では書かれていないし、むしろ平和なムードに演出されているので十分注意して欲しい。
実際、この後僕は何が何だか分からなくなって、数時間寝込みました。