きっかけは友人からのメール
ここ数年韓流アイドルにハマっている友人から、こんなメールが届きました。
『今度、私の好きなアイドルのライブに行かない?』
前述のとおり韓流にまるで興味のないため、私は確かに断ったはずでした。
『いや、私はいいよ。』と。
そして数週間後、話は終わったものと油断していた頃に再び友人からメールが届きました。
『一応、チケット取れたよー\(^o^)/』
…!?
一瞬、何を言っているのか分かりませんでしたが、つまりこういうことです。
こちらはNo thank youのつもりで言った『いいよ』を、友人はOKの意味の『いいよ』だと捉えたのです。
日本語って難しいですね。
いくら断ったつもりだったとはいえ、友人が昔から必要以上にポジティブシンキングだと知っていたのに簡単なメールで返事を済ませてしまった私にも問題はありました。
今回はそれを勉強させてもらったと思い、ライブにお付き合いすることにしました。
すでにチケット取った後で断るのも面倒そうですし。
大人として取るべき態度
ここで、私が取る態度として考えられるのは二つあります。
(1) 仕方ないから付き合う、というスタンスを貫く。
(2) いっそ自分もファンになる。
いや、(2)は行き過ぎだろう。ていうか、その二つ以外にも取れる態度はあるだろう。
そう思われるでしょうが、その時の私にはこれしか思い浮かびませんでした。
そして、いくら自分が好きではないからといって、周りが楽しんでいる中一人だけ嫌々参加している態度を出すのは大人としてどうなのか、という考えに至りました。
どうせ行くならチケット料金分くらいは楽しんでやろう、という貧乏性もあり、私は(2)を選択したのでした。
ファンになるためには、まず今のような「全然知らない」「興味がない」という状況を打破しなければなりません。
そこで考えた作戦がこちらです。
命名・ガリ勉作戦。
本来ならば「好きだから知りたい」という気持ちから情報を求め、だんだん詳しくなっていくべきところですが、今回は時間が限られているので先に知識を頭に詰め込むことにしました。「せっかく知ったんだから好きになろう」という、逆方向からのアプローチです。
ノートに情報をまとめたり暗記カードを作ることで勉強を効率的にし、また、文字を書くというひと手間がアイドルへの愛情へ結びつきはしないかという期待も込められています。
他にも、少しでも覚えやすくなればと自分なりの工夫も加えてみました。
見にくいですが、1人ずつをプロレスラーに例えてます。
白いからあだ名が「小麦粉」(これもすごいセンスだな)というメンバーは色白すぎてチョップを受けるとすぐ肌が真っ赤になってしまう渕正信選手、自称「カリスマ担当」というメンバーは『黒のカリスマ』こと蝶野正洋選手、というように一人ひとりを無理矢理プロレスラーに例えました。明らかにこじつけですが、これは意外に覚えやすかったです。
暗記しやすい上、プロレスに例えることで勝手に親しみも感じるようになりました。
動画でもチェック。
また、忘れてはならないのが動画による楽曲チェック。
ライブで2時間知らない曲を聴き続けるよりは、多少知っている曲がある方が楽しめるはずですし、写真で覚えてもそれが奇跡の1枚の可能性もあるため、動画でもメンバーを判別できるようにならなければなりません。
私がそういう目で見ているせいかもしれませんが、やっぱり皆似たような雰囲気で分かりにくかったです。
勉強の日々
実は、学生時代に暗記カードを作って勉強したことがなかったのですが、便利なシステムですね。
出先でのちょっとした空き時間などに手軽に勉強ができて、学生時代に使っていれば私の成績はもう少しよかったのではないかと悔やまれます。
例えば、1時間待ちの長い行列の間。
ドンヒョンは渕正信だから…
色白の『小麦粉』だ!!!
というように、暗記カードは隙間時間の活用に効果抜群でした。
写真と照らし合わせて顔と名前を一致させています。
カードを作るという手間はありますが、忙しい社会人の方にこそ是非お勧めしたい勉強法です。と思いましたが、私がやっていなかっただけで、多分皆さんはこの方法をすでにご存じでしたよね。
また、各種デバイスを活用するのも効率的な学習においては重要になります。
お昼休憩時に楽曲チェック。
私は日頃外で音楽を聴くことがあまりないため携帯音楽プレイヤーを使っているだけで何だかわくわくしてしまい、段々、このアイドルの曲が自分をわくわくさせているかのような気分になってきました。
これが世に言う吊り橋効果でしょうか。
メンバーもほぼ覚えたし、MCでの掛け声や日本デビュー曲での簡単なフリも覚えました。
私の急造ファンぶりに、もしかしたら友人をドン引きさせてしまうのではないだろうか。そんな危惧を抱きつつ、ライブ当日がやってきました。
やってきた当日
「じゃあ6月1日、国際フォーラム前で待ち合わせということで」
と『ときめきメモリアル』の主人公が女の子をデートに誘う時のようなメールを送り、現地で友人を待つことにしました。
『ときメモ』の主人公はさして興味もなさそうな美術館やらコンサートやらに女の子の趣味に合わせて出かけては女の子に気に入られるようなリアクションを取って好感度を上げるという、涙ぐましい努力でモテ男の地位を獲得していますが、一切興味がないのに他人の趣味に合わせたライブに行くためにこんなに手間をかけている私も、まるで『ときメモ』主人公のようではありませんか。
女の子と仲良くなるためではなく、興味のないものを好きになるためにデートをする主人公。とんだクソゲーですね。
昼の部と夜の部の1日2回公演で、私が見る夜の部は午後4時開場、5時開演。
3時過ぎには現地に着いてしまい、一番乗りだったらどうしよー、などと思っていたのですが。
開場1時間前の時点で相当並んでました。
皆タオルやバッグなどのグッズを持参している上に、すごいテンションでした。
私の後方に立っていた高校生くらいの女の子二人組など、
「やっと会える!」
「早く会いたいよー」
と言っていて、『ライブを見に来た』のではなく、『メンバーに会いに来た』感覚なのです。並び順では一歩勝っていたものの、ライブに臨む姿勢として負けた、と感じました。
試合に勝って勝負に負けた、みたいな感じでしょうか。
敗北感を打ち消すように、最後の追い込み。
また、なかなか友人と連絡が取れず、まぁよく待ち合わせに遅れるしなぁ…とさほど気にしていなかったのですが、
「ごめんねー、昼の部が終わったのついさっきでさぁ」
1日2回公演のダブルヘッダーでした。
友人をドン引きさせるどころか、私の方が軽く引いてしまいました。
ライブ自体は、メンバーも見分けられるしMCやパフォーマンスの盛り上がりポイントも理解できたし普通に楽しむことができました。予習していってよかったと心から思います。
ただ、このアイドルを好きになれたかというと、その点においては予習不足だったかもしれません。
何というか、頭ではファン心理を理解しているつもりでも、心がそれに追いついていけない感じなのです。
欲を言えば、仲良しムードばかりでは嘘っぽくなるので、お互い対抗し合うようなマイクパフォーマンスや客席を巻き込んでの乱闘などがあれば心から応援したくなったかもしれません…って、それじゃプロレスですね。すみません。
友人は1年前からファンクラブに入って応援しているそうなので、私もあと1年間くらいアイドルについて勉強する余地がありそうです。
ファンクラブ限定バッジ。このバッジにふさわしいファンへの道は遠い。
結果:韓流アイドルのライブに予習して行ったら友人の好感度が上がる。
ライブ自体は楽しめたので、事前準備の有効性・重要性については実感できました。
ただ、ファンの気持ちを頭ではなく心で理解できるようになるにはガリ勉方式だけでは足りないようです。3か年計画くらいでじっくり作戦を練るべきでしょう。
ただ、予習はひとつ意外な効果をもたらしました。
「私の好きなアイドルのこと、一生懸命覚えてきてくれてありがとう!!」
と友人が非常に喜び、私に対する評価が上がったようなのです。
人の趣味に合わせて好感度が上がるなんて、本当に『ときメモ』か。
「楽しかったでしょ? CD貸してあげるね!」
と言われ、とっさに
「私はいいよ」
と答えてしまいましたが、どちらの意味で捉えられたのかはまだ確かめていません。