ウソに魂を売り渡す
当日の記事はこちらのページで見ていただける。
バーンと集中線の中央にデイリーポータルZのロゴがあるが、当日はこれが2分半に1回のペースで、次々と新しいサイト名に更新されていた。しかもこのページだけじゃない。サイト内の全ページの左上肩にあるロゴが、すべて同時に更新されていたのだ。
ロゴはWebサイトの命である。それをウソに売り渡してしまう、捨て身の企画だ。
いま「売り渡してしまう」と言ったが、別にお金をもらえるわけではない。ウソに魂を無償提供だ。
ルールはシンプル。
新サイト名はすべてTwitterで募集した。いくつかのルールに沿っていればなんでもOK。そのルールとは、
・「DailyPortalZ」のDailyPortalの部分を変えられる。
・ただし最後は「tal」で締めること
・使えるのはアルファベットのみ
この3つだ。この記事の前半2ページでは、実際にロゴとして使用したサイト名から、傑作選をお届けしよう。
~したる(決意)
語尾が「tar」ということで、「~したる!」という決意表明のサイト名がたくさん登場した。
「こんな会社辞めたるZ」
会社辞める系はたくさん来ました。ストレス社会!
「鼻毛天まで伸ばしたるZ」
長さの前に方向が逆。
「裸で外歩いたるZ」
捕まった時にニフティの名前を出さないようにしてほしい
「あの子の縦笛なめたるZ」
今話題の、犯罪予告ツイートです
「慰謝料とったるZ」
慰謝といいつつ妙に張り切ってウキウキしてそうなのが気になる
「もう寝たるZ」
深夜に登場したサイト名。遅くまで付き合わせてすみません
「じっくりコトコト煮込んだるZ」
口調はぶっきらぼうながら家庭的な一面も
~したる(上から目線)
「たる」という同じ語尾なのに二通りの意味が出てくるのが日本語の面白いところである。
「皆さんが静かになるまで待ったるZ」
まだ静かになってないのに校長先生が喋りだした。
「お前を蝋人形にしたるZ」
今日はいつになくフレンドリーに接してくる閣下
「お手々のしわとしわを合わせたるZ」
どうもありがとうございます
「わかった、開国したるZ」
ペリー「ありがとうございます」
コラム:ロゴ変更企画のできるまで
なにせエイプリルフールに向けて動き出したのが本番5日前くらいで、その時点では読み物サイトをやめて「日刊イカ情報」にしようとか、新入社員にロバが入社してくるとか、お土産「デイリい恋人」を売り出そうとか、そんな話をしていた。
なんでロゴを変える話になったのか、今となってはあんまり覚えていない。
サイトのタイトル変更、ロゴも刷新、タイトル案はTwitterで募集。更新は交代制で24時間、根性で手作業。ここまで決まったのが本番5日前である。
タルタルソース
語尾ではなくうまく「タル」を活用したい!という気持ちから、タルタルソースに関するサイト名が30分に1本くらいのペースで投稿された。
「タルタルZ」
これが基本形
「大好きタルタルZ」
思いのたけを込める
「キャリータルタルZ」
ミニアルバム「もしもしチキン南蛮」
「このフィレオフィッシュ入ってないよタルタルZ」
倒置法で強調されるタルタル
「タルタルソースで食べたるZ」
タルタルと「~たる」の合わせ技。技巧派だ
「小樽Z」
シンプルで美しい。
「新潟県土樽Z」
マイナー地名には県名を補足せざるを得なかった
「ビア樽Z」
ウィンナー好きのウェブマスターがいそう(今もいる)
「ドンキーコングの樽Z」
徐々にニッチな樽が登場、タイトルも説明的になってきた
「海賊船にあるのは樽Z」
そして文章きました。「樽」で一行使ってるのが誇らしげ
「Z」
みんなが「tal」に注目する中、「Z」に主軸を置いたタイトルが一点だけあった。
「三重県の首都たるZ」
Zと書いて「津」。首都じゃないだろ、という突っ込みもあるかと思うがそこは文字数の都合で仕方ない。 ※津市は世界一短い地名として「Z」表記でギネスブックに掲載されています。
コラム:実は二度目
そういえば、以前もデイリーポータルZはロゴを変更したことがある。
詳しいことは
このページにまとめてある。このときから数えて、ロゴ変更は2回目。前回はチャリティ企画だったので、あのロゴを変更することで世の中に貢献した。でも今回は違う。純粋な「ふざけ」なのだ。
タルつけただけ
とりあえず最後にタルつけときゃいいか、という投げやりなサイト名も多かった。
「タツヤお疲れ様タルZ」
私信にもタル
「巨人、大鵬、卵焼きタルZ」
せっかくの語感の良さが台無し
「ガダルカナルタカタルZ」
こちらは語感アップ。このためにガダルカナルのスペルを調べたのかと思うと味わい深い。
「仕事と私どっちが大事タルZ」
大事な質問の途中でふざけないで。
「た」まで生かす
もうちょっとだけがんばって、「た」まで原文を使っている例。
「月曜眠タルZ」
月見ル君想フ、みたいになってる
「生麦生米生タルZ」
むしろ躍動感が出た例
「やい、のび太ルZ」
うわ~ん、ドラえも~タルZ~
「ハイ、タケコプタルZ」
国民的アニメの人気の高さをここへきて実感しました
「もしかしてお前ら付き合っタルZ」
察しがいい上に声のでかい先輩。知られてはいけないタイプの相手
「あなたお風呂にする?ご飯にする?それとも、ア・タルZ」
ア・タルZを選ぶと何が始まるのか
パーフェクト
完全に「タル」を使いこなしている例。ひとつの完成形だ。
「ジャイアンリサイタルZ」
国民的アニメシリーズ、金字塔です。
「忸怩たるZ」
ネガティブな単語なのにロゴの堂々ぶりがすごい。
意味変わってる
語尾を「タル」にしてしまうと、意味まで変わってきてしまうことがある。
「桐島、部活やめたるZ」
桐島視点
「雨にも負けたるZ」
負ける気満々
「パンがなければお菓子を食べたるZ」
ただの食いしん坊
「くるしゅうない、もっと近う寄ったるZ」
目をぎらつかせこちらに寄ってくる殿
人名
「タル」をうまく使って人名にひっかけた作品も。
「滝川クリスタルZ」
偽物だ!
「諸星あたるZ」
これはうまい。うまいだけに頻出でした。
「藤原鎌タルZ」
これも頻出。「Fujiwara」と「no」で改行する派としない派で別れた
「部屋とワイシャツとワタルZ」
ワタル誰だよ
「そろそろ漫画返せよワタルZ」
ワタル、いい加減な奴だな
「ともちーハッピーバースデー ワタルZ」
あっ、けっこういい奴だった
ロゴはいかにして作られたか
本番5日前に企画が決まってから急遽、オリジナルのロゴの作者であるおぎわらさんに、アルファベット全文字のフォントを作ってもらった。もらったフォント(というかただの画像ファイルだ)を使って実際にPhotoshopの手作業でロゴを作ってみたところ、30分かかった。24時間やっても50個弱しかロゴが作れない。たぶん途中でトイレに行ったりコーヒー淹れに行ったりするので実際にはもっと少ないだろう。これではいかん。
数字を作ってもらうのを忘れたので当日は数字が使用禁止になった
編集部専用のジェネレーターを作って、ロゴを生成できるようにした。30分の作業が0.5秒に短縮された。技術革新である。(実際にはアップロードしたり公開作業をしたりが手動なのでほかにも10工程くらいあり、キビキビやっても1分はかかる)。
こうして、準備万端で当日を迎えたのだ。
デイリーポータルZ
みんな好き勝手「タル」で作文する中、ちゃんと「デイリーポータルZ」を生かしてマイナーチェンジ版を作ってくれた人もいる。
「ダイアリーポータルZ」
偽物としては正統派
「だいたいポータルZ」
あと一歩なんだよなー
「NOTデイリーポータルZ」
もう昔の俺とは違うんだよ。
「おばあちゃんのポータルポータル焼きZ」
一記事一記事、真心を込めて書いています
「やーい、おまえんちデイリーポータルZ」
ライターの子供が将来本当にそうやっていじめられるかもと思うと冗談では済まない
報告
皆がおもしろサイト名を考えるなか、あえてひねらず近況報告をしてくる人も。素朴な内容はかえって味があった。
「新潟からおじさんが来てるZ」
日常の些細な疑問や思いつきを取り上げるサイトとしては、このくらいの日常感あふれるサイト名の方がいいのか。
「ちょっとお風呂あふれたるZ」
リアルタイム感があり昨今のネットの潮流によくあったサイト名かもしれない
「煮汁冷やすと固まるZ」
近況の枠さえも超え、もはや客観的事実。
「ピッチャーびびったるZ」
ヘイヘイ
「メガネかけたらモザイクが消えたるZ」
ほかに背が伸びるサプリなども販売するサイトです
「嫁にきつく当たるZ」
やめてあげてください
ルール無視
終盤、もうなし崩し的にこういうのアリになりました。
「ブラジルZ」
意味はまったく分からないが字面がかっこいい
「Windows Z」
新OS、駄作と傑作が交互に出るといわれてますが、駄作の方のやつですね
「iPhone Z」
一文字足しただけなのにこの猛烈なダサさはなんなのか
「デイリーヤマザキZ」
デイリー界の永遠のライバル同士がついに融合
「ファイナルファンタジーZ」
終盤も終盤、これでこの企画終わりそうになり「なんかまずい気がする!」と思いあわてて次の候補募集しました
540個あった
かなりたくさん紹介してきたが、これでもほんとごく一部である。なんせ24時間稼動、540個ものロゴが集まったのだ。
次のページでは、その24時間の様子を時系列で見ていきます。
時間帯別傑作選
本企画はエイプリルフール突入の0:00から始まり、23:59まで24時間営業で行われた。24時間は一区4~5時間のシフトに分割され、それぞれ編集部メンバーが一人ずつ張り付いて担当。その5人に、それぞれの担当時間で印象に残ったロゴをきいてみました。
当番は林
お気に入りベスト3
「ゆうすけ結婚したるZ」
ほんとに前の日にプロポーズされたそうです。大型ビジョンでプロポーズとかそんなテレビで見た話がデイリーポータルZで行われるとは!
「今年こそ離婚したるZ」
結婚したるの前にあったのが離婚したる。人生における陰と陽をサイト名で表現できて満足です
「まさかり担いだ金タルーZ」
まさかりかついだキンタルー。最後をルにするだけで異国情緒感じる名前になったのがよかった。
最初はOtal Z で笑っていたのですが、そのあと引き継いだ人が「おたるはしょっちゅう来るよねー」みたいに言っていたので、Otalいいよねーとは言いにくくなりました。でも最初はこれが面白かったんです。いいじゃないかOtal Z 。小樽情報満載のサイトです。
0時~5時はギャグが細分化されてない幸せな時代だったのかもしれません。巨人大鵬卵焼きの時代ですね。
1日でギャグが細分化されて消費しつくされてしまう感じは、ピラニアに食べられる牛を眺めているような気分でした。
当番は安藤
お気に入りベスト3
「みのもんたるZ」
こういうサイトあるんじゃないかというくらいにおさまりがいいです。さすがみのさん。
「おばけのQタルZ」
タルZにまったくつながっていないのに口に出して言いたくなる語呂の良さ。大文字のQを効果的に使っています。
「お味噌樽Z」
これもタルZにまったくつながらないのですが、なにしろシンプルでいいですよね。お味噌。
5時からの当番だったので4時に起きてこれまでのロゴをざっと眺めていました。すでに秀作がいくつも出ていたので、この調子だとかぶることがあるかな、と思ったんですが、意外とかぶりなくいいツイートが集まっていました。
朝の忙しい時間帯だったからか、たまに投稿が途絶えることもあったのですが、いま空いてるのでチャンスです!ってツイートしたら直後に一気に投稿が押し寄せてきて、夜明け前に一人であわあわしていました。
担当は古賀
お気に入りベスト3
おさまりもいいし、無害だし、けれどきちんとひねりもあってこれは今後もたびたび思い出したい“tal”です。
「焼肉裏返したるZ」
「~したる」は頻出で、一時ロゴに気前のいいおっさんが「なんでもこうたる」「一生面倒みたる」と次々現れるとう状況になっていましたが、その中でもこれはしみじみきました。なぜ急に焼肉屋で世話を焼くのかと。
「プロジェクトZ」
この時間帯で「tal」縛りをはずしていいものか迷いましたが、圧倒的な説得力に採用しました。
絶え間なく投稿をいただき嬉しい悲鳴の時間帯でした。速いときは1分に2つくらい更新したのではないでしょうか。
時間ごとに連投する方が来ては去る感じで、ちょっとハッシュタグのタイムラインが飲食店っぽいなと思いました。
このころになると人気があるものも徐々に出てきて「Jaian recital(ジャイアンリサイタル)」、「Moroboshi Aatal(諸星あたる)」、「Otal(小樽)」は1時間に1回は投稿されたのではないでしょうか。
かぶっていても、「うーん、じゃあそろそろこの辺で“Otal”いっとくか」という感じで出していました。作業現場にいた編集部石川に「DJですね」といわれて気分よくやらせていただきました。
担当は橋田
お気に入りベスト3
「あ、郵便局閉まったるZ」
この時間帯ならではのツイート。 生活感があってよかった。
「ああ肩凝ったるZ」
これも、夕方って感じですよね。 1日仕事して疲れたなっていうのがわかります。
「ドラゴンボールタルZ」
これ、全然tal関係ないですが、見栄えが良くて気に入りました。
昼間から夕方、夜にかけての時間帯を担当しました。
やはり昼間の投稿は少な目でしたが、お仕事が終わってからの時間帯に投稿が増えたと思います。
ツイートしている人も、リストをみながらツイートしていたのか、
関連の言葉が続いたりしたのがおもしろかったです。
歴史だったり、野球やジブリ映画だったり。
簡単にロゴができるジェネレーターを石川さんがつくってくれたのですが、
それでも手数はあり終盤は混乱しました。
担当を終えた古賀さん安藤さんが途中で何の作業をやっているのかわからなくなるよと言っていて、そんなわけないじゃないと思ったのですが、まんまとその現象になり反省しました。
担当は石川
お気に入りベスト3
「HDMIケーブルZ」
終盤、みんながルール無視してWindowsZとかiPhoneZとか言い始めカオスが訪れたころ、ダントツで何が何やらだったのがこちら。振り返ると「いつのまにか遠くに来ちゃったなー」っていう、アレです。
「おまえ、柔軟剤使っタルZ」
それと同時期、あえてコンプライアンス順守で挑んでくる対抗勢力が出現。その中でも秀逸だったのがこちら。
「気が付くとあいつのこと考えタルZ」
そしてそんな時流の流行り廃りに関係なく、エヴァーグリーンな輝きを放っていたのがこちら。深夜の投稿であることを考えるとなおさら甘酸っぱい気持ちに。
終盤はもうめちゃくちゃにしてやろうと決めていたので、ルール無視の案も載せたりしてどんどん自由度をあげていきました。そうすると、ルール無視してくる人たちとちゃんと守ってくる人たち、長文で攻める人たち、怒涛の勢いでパロディを送りつけてくる人たちなど、グループに分かれて群雄割拠の戦国時代のような様相を呈し始めます。そこで各グループからいい作品をピックアップして採用、そうするとグループの採用数に応じて戦況が変わる、という神視点の運営をさせていただきました。
時間帯的にも一番盛り上がった時間だったと思います。楽しかった!
お付き合いありがとうございました。
24時間も続く読者参加企画、編集部もそれなりに大変だったが、それよりも読者の皆さんがよく付き合ってくれたな、と思う。その節はどうもありがとうございました。
さて、ここまで読んできてくれた皆さんは大量のロゴを一気見させられてぐったりしていることと思うが、実はまだまだある。
こちらのページに全ロゴを掲載しているので、まだ体力の残っている人はぜひみて欲しい。