特集 2012年12月21日

島ぞうりでハーフマラソンを走ってみる

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友人から「サンダル履きでフルマラソンを完走した人がいるらしい」という話を聞きました。
調べてみると2時間46分58秒で完走。そして、その記録をギネスに申請中なんだそうです。

もう本当に、ただただ凄いなーと思うニュースなんですが、話を聞いた当時わたしも数週間後に伊平屋ムーンライトマラソンに参加することが決まっていたのです。

伊平屋ムーンライトマラソンとは沖縄本島の北にある伊平屋島で毎年行われるマラソン大会。スタートの時間が遅いので走っている途中で日が暮れ、ゴールする頃にはすっかり夜になり月が浮かび上がっているという全国でも珍しい夜間のマラソン大会です。
フルマラソンとハーフマラソンのコースがあり、わたしは体力的にフルマラソンで完走はできないので、毎年ハーフで参加しています。

この日から「せっかくだから島ぞうり(沖縄県民が愛するビーチサンダル)で出場するのもありかも!?」「いやいや島ぞうりでマラソンは無謀すぎる!」と冗談でやってみるには20kmがハードすぎて、決断できない日々が続きました。

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伊平屋ムーンライトマラソン当日

苦悩に満ちた私の手には島ぞうり
苦悩に満ちた私の手には島ぞうり
当日になってもまだどうするか、答えはでていませんでした。
でも距離は違いますが、気持ちはギネス記録に挑戦のようなもの。考えただけでドキドキします。ギネスという未知の誘惑が私を駆りたてるのです。

とりあえず島ぞうりを改良しよう

島ぞうりを履いたことのある方ならわかると思いますが、島ぞうりは長く履いていると指の股が痛くなります。

以前「できるかな?瞬足島ぞうり」で短距離を走ったときも痛かった。
ここです
ここです
これを回避せずにして完走はならず!
まずは痛くなりそうな部分を保護。
テーピングは伊平屋島では見つからなかったので絆創膏で代用
テーピングは伊平屋島では見つからなかったので絆創膏で代用
あと足裏が平たいと負担が大きそうなので、靴の中敷きをぞうりの表面にセット。
これは事前に購入していました
これは事前に購入していました
できました。
頼りないけどこれで完成です
頼りないけどこれで完成です
試走してみます。
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10m走っただけですが、わりといけるかもしれない!、と思いました。

最後の迷いを振り切って

こちらは用意してきたランニングシューズと改造島ぞうり。
どちらがハーフマラソンに必要なものかは一目瞭然です
どちらがハーフマラソンに必要なものかは一目瞭然です
しかし心は決まりました。

スタート地点から宿として泊まっている前泊公民館までは約1キロ地点。
公民館まで来た段階で無理と判断したら、島ぞうりで走るのは中止しようと思います。
念のため、すぐにランニングシューズに履きかえられるように、玄関前に靴を置いてスタート地点へ向かいました。
お前を置いてマラソンを走る日が来るなんて
お前を置いてマラソンを走る日が来るなんて
会場到着。

恥ずかしさなのか無謀さを思ってなのかは自分でもわかりません。
でも決めたはずの心が何度も折れそうになりました。
正直帰りたい
正直帰りたい
準備体操は、ムーンライトマラソンおなじみのみんなでエアロビ体操。
もちろん周りはランニングシューズ
もちろん周りはランニングシューズ
「あれ?どうして島ぞうり?靴忘れちゃったんですか?」と優しい人に声をかけられて、つい「はい」と答えてしまいました。
無防備な足下
無防備な足下
スタート直前
それでもその時は着々と近づいていたのです。
それでもその時は着々と近づいていたのです。
そして、スタート!
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雲ひとつない晴天の中、私の戦いが始まりました。
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ちゃんと完走ができるのでしょうか!?

サヨナラ靴よ

序盤は順調に走ることができました。
大会に向けて練習はまったくできていなかったのですが、それも感じないぐらいの爽快な走りに自分でも驚くほどに。

たくさんの仲間と一緒に走るのが楽しい。
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タッタッタ
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そして見えてきた前泊公民館。
ここに靴が…
ここに靴が…
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島ぞうりのままで行く!

一瞬本当にいいのか?と自問しましたが、すごく気持ちよく走れていたので、このままいけるような気がしました。

快調な走り

公民館を過ぎてからも足はどんどん進みます。
溢れる自然と、沿道の応援が本当に嬉しい。
走っちゃうぜー!
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5キロ通過
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夕日が海に沈みます。
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ブヒブヒの応援も嬉しかった。
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だんだんキツい

さてそうこうしているうちに、私の足に異変が。
まずは足の指を保護していた絆創膏が剥がれました。
でもこれは想定内。
ポケットに入れてきた予備の絆創膏で保護しなおします。
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そして月が出て、日が沈み
夜になりました。
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10キロ地点
暗い!
暗い!
このあたりから携帯で思ったことをメモするようになりました。

18:20「暗い。もう目立たない」
日が暮れる前に横を走っていたランナーが近づいてきて「わざとですか?」と言われたのが心に刺さっていたのです。冷静に聞かれるのは心に堪えます。暗くなったからもう靴がどうだとか見えなくて良かった、と思いました。

18:38「散歩のようだ」
10キロを過ぎてからは最初の勢いはなくなり、疲れて走れませんでした。トボトボと暗闇を島ぞうりで歩く私。まるで散歩だ、と思いました。

18:45「よくつまづく」
平坦なアスファルトの道路を歩いているのにつまづくのです。もうダメなのかな、と思いました。

作戦実行

このままじゃいけない、そう思った私は作戦を実行することにしました。

いったん広告です
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これは何かというとミュールバンド。
歩くたびにパカパカと脱げかかってしまうミュールやパンプスを、足と固定するグッズです。

島ぞうりがパカパカとなって指に負担があったので、巻いてみました。
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しかし、これがものすごく邪魔でした。
20mで取ることに。
作戦その2:靴ズレが怖いなら靴下を履こう
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なかなか良い作戦だと思うでしょう。
しかし、みなさんもぜひ試してください。

島ぞうり+靴下=滑って歩けない

エエイっ!
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バンドも靴下もどちらも失敗し、途方に暮れる私。
策は尽きた
策は尽きた

迫り来る制限時間

いろいろ端折りますが、折り返し地点まで来ました。
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その頃には、こんなにしんどいのは全て島ぞうり原因な気がして途中裸足で歩いてたりしたんですが。
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残り10kmを切ったあたりで私は重大なことに気付きます。

制限時間に間に合わないかも!
これじゃギネスどころじゃない!


記憶が遠くてうまく思い出せませんが、残り10キロを2時間でぐらいだった気がします。

そこからは全速力で歩きました。
足痛い。内股がさけるように痛い。マラソンの途中で筋肉痛になったのは初めて
足痛い。内股がさけるように痛い。マラソンの途中で筋肉痛になったのは初めて
5歩走っては100歩歩く、という無意味な歩行を試したりしました。

突然ですが、伊平屋ムーンライトマラソンあるある
あと何キロ標識だと思って喜ぶとハブ注意
しんどくても人はため息をつきます
しんどくても人はため息をつきます
島ぞうりマラソンあるある
終盤は「島ぞうりガンバレ!」って言って欲しくなる。
あのね、島ぞうりでここまで来たの。褒めて…。
あのね、島ぞうりでここまで来たの。褒めて…。
そしてついに
帰ってきました!
帰ってきました!

ゴールしました

ということでなんとか制限時間内にゴール(3分前だった)
ゴールのときも誰にも島ぞうりだって気付いてもらえなかったけど
ゴールのときも誰にも島ぞうりだって気付いてもらえなかったけど
しかし絆創膏のかいあって、無傷で走りきれました!
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島ぞうりでハーフマラソンを走りきってわかったことは、

足の裏がゴミのようになる
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あと、めちゃくちゃ嬉しくても表情が死ぬ
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以上でございます。

ということで、島ぞうりハーフマラソンの記録は3時間27分47秒 。
フルマラソンサンダルの人よりも1時間近く遅い記録に、自分でもがっかりです。
ギネスは遠い!

あとから知りましたが、最近マラソンをサンダルで走る人が増えてきているそうです。
靴の専門家の方も「はだし」に近い感覚で走れ、怪我のリスクを半減できることから注目しているそうです。
走るのに自信がある方は、ぜひ島ぞうりを履いてギネスに挑戦してみていただきたいと思います。

伊平屋島ムーンライトマラソン

冒頭でも少しご紹介しましたがこのマラソンは離島の伊平屋島で行われるので出場する際は島に泊まることになります。
もしかするとマラソンよりもこれをお目当てできている人が多いのではと思われるのがこちらです。

大会前夜におこなわれる前夜祭
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大会後に行われる後夜祭
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この前後夜祭は島民の方が一丸となって開催してくださる一大パーティー。
ステージではたくさんのひとが会場を盛り上げてくれ、温かいごはんも振る舞われます。
走った後に食べる温かい牛汁のおもてなしが嬉しい。
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そして忘れてはいけないのが魅惑のカクテル、照島パンチ。島唯一の酒造所、伊平屋酒造所の泡盛「照島」をシークヮーサーやレモンで割ったもので、度数はわりと強いのですがこれがめちゃめちゃ飲みやすく美味しい!島に来た心のゆるみもあり、ついつい水のように飲んでしまうのです。
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後夜祭の後も宿泊所で一緒に泊まっている人たちと、お互いの健闘をねぎらいつつ夜遅くまで宴が続くことも。他のマラソン大会では味わえない、宿泊必須の離島のマラソン大会ならではのお楽しみなのです。

翌日のフェリーで伊平屋島を後にするときにも、島のみなさんがフェリーターミナルで見送ってくださるのも感動的。
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一度出場すると必ず来年も出たくなるマラソン大会なのです。

みなさんも普通のマラソンに飽きたら伊平屋を訪れてみてはいかがでしょうか。
来年の開催は2013年10月19日(土)。 もちろん私もまた参加しようと目論んでいます!
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