特集 2012年10月1日

リアルさ追求 カブトガニ・スイーツ

割と本気で攻めてくるカブトガニスイーツのリアリティ
割と本気で攻めてくるカブトガニスイーツのリアリティ
独特の形が印象的な海の古生物、カブトガニ。「生きている化石」として知られているように、現在も約2億年前から姿を変えずに現存している。

日本ではすっかり数が減ってしまって天然記念物にも指定されている。今回訪れたのは国内の生息地の1つである、岡山県笠岡市。

こうしたご当地クリーチャーは、地元でそれにちなんだ商品展開がなされることがある。笠岡のカブトガニも例にもれないのだが、なんだか、リアルなのだ。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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手加減なしだぜ、カブトガニ・スイーツ

カブトガニご当地事情を求めてやってきた、岡山県笠岡市。ここには世界で唯一というカブトガニをテーマにした博物館がある。
上から見るとカブトガニ型をしてるらしい
上から見るとカブトガニ型をしてるらしい
縦横無尽に迫ってくるカブトガニ
縦横無尽に迫ってくるカブトガニ
生体展示もある
生体展示もある
もう一匹はひっくり返ってた
もう一匹はひっくり返ってた
それは「笠岡市立カブトガニ博物館」。たくさんの標本や解説があって、そういうつもりはなくてもカブトガニ博士になれそうな施設だ。

入口すぐのところには早速水槽があり、中では2匹のカブトガニが飼育されていた。水底に古代からの姿をゆったりと横たえるカブトガニ。そしてもう一匹はひっくり返ってじたばたしていた。
君ってそんな感じだったっけ
君ってそんな感じだったっけ
カブトガニと言うと地味でおとなしい古生物というイメージだったのだが、意外に落ち着きない。逆さまになって相当あせっているのだろうか。このもがきぶりに、個人的には好感をもった。
和菓子屋ならではのピリッとした空気漂う
和菓子屋ならではのピリッとした空気漂う
きれいな和菓子と並ぶカブトガニ
きれいな和菓子と並ぶカブトガニ
笠岡にはこのカブトガニをモチーフにしたお菓子があるという。まずやってきたのは、清月堂というお店。

ガラスケースの中に見える美しい和菓子は、ちょっとした美術品のようでもある。ただよく見ると、その横にカブトガニもちゃっかり並んでいる。
知らずにもらって箱開けたら驚くだろうな
知らずにもらって箱開けたら驚くだろうな
ここでは「瀬戸のかぶとがに」という名前で焼きまんじゅうが売られている。ビニールが反射してやや見づらいが、それでもなんだかリアルな造形が見て取れるだろう。

大きさにいくつか種類があるのだが、小さいのと中くらいのを買ってみよう。
焼きまんじゅう「瀬戸のかぶとがに」
焼きまんじゅう「瀬戸のかぶとがに」
造形に加えて、てかり具合もさらなる雰囲気をかもし出す。この手のご当地お菓子、まんじゅうだったら皮に焼き印を押しておしまい程度のものもよく見るが、これは違う。ここまでやるかという気概を感じる。
博物館で見たつがい写真を参考に
博物館で見たつがい写真を参考に
君たちも遠慮せずつがいたまえ
君たちも遠慮せずつがいたまえ
しかも、カブトガニという万人が必ずしもかわいいとは思わないであろうモチーフ。それでこのたたずまいというところに、果敢な攻めの姿勢が感じ取れる。
最中版「瀬戸のかぶとがに」
最中版「瀬戸のかぶとがに」
裏面にもこだわりが
裏面にもこだわりが
「瀬戸のかぶとがに」には最中バージョンも存在。造形のリアリティはやはりまんじゅうと共通で、素材感からかこちらの方がカチッと硬そうな感じがよく出ている。

さらに最中の場合、ひっくり返してもリアル。中央部のわらわらした脚も再現されているのだ。

そう言えば水槽でひっくり返っていたあいつ、元に戻れただろうか。
カブトガニ博物館で見た表示
カブトガニ博物館で見た表示
博物館には彼らの復活スキルについて解説するパネルも展示してされていた。訪れた人がひっくり返ったカブトガニを心配しすぎないようにとのことだろう。今頃ちゃんと戻れているといいのだが。
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内部に反映させたリアリティ

続いて訪れたのは、同じく笠岡市内の玉利軒。先ほどの清月堂と同じ町内にあるお店だ。
こちらは洋菓子も扱うお店
こちらは洋菓子も扱うお店
店先にポスター発見
店先にポスター発見
こちらで作っているのは「親子かぶとがに」というおまんじゅう。店頭にもポスターが貼ってあって、イチオシ具合がよくわかる。


笠岡市観光連盟のサイト
によると、既に50年以上前から販売しているそうだ。最近になってご当地ものにあやかったわけではなく、もう半世紀も前からこのカブトガニまんじゅうは存在していたのだ。
かわいいケーキも気になるけど
かわいいケーキも気になるけど
やっぱり圧力かけてくるのはカブトガニ
やっぱり圧力かけてくるのはカブトガニ
まんじゅうはテカテカと元気そう
まんじゅうはテカテカと元気そう
出来たてのドデカ版も登場
出来たてのドデカ版も登場
それっぽい模様とストレートに「カブトガニ」の文字が刻まれたせんべいも独特の訴求力を放つ。かわいらしいケーキとの振れ幅が大きい。

そしてまんじゅうは、ここでもいい具合の光沢が。小・中・大と大きさがあって、ちょうど焼き上がった大サイズも見せていただけた。大きくなる分、ディティールの再現が密になってカブトガニ感がアップだ。
ディティールがつぶれているのが特徴
ディティールがつぶれているのが特徴
そこがまた化石っぽい
そこがまた化石っぽい
大きいのは食べきる自信がなかったので、今回は小と中とを購入。確かに形はまあわかるのだが、細かい部分ははっきりしない描写になっている。

実はそれには、このまんじゅうの誕生時期が関係している。長い間使ってきた型押しは、すでにかなりすり減ってしまっているらしい。そう知ると、この曖昧さにも歴史が感じられてくる。

ただ、理由があるとは言え、ビジュアルのリアリティには欠ける部分もあるこのまんじゅう。しかし、勝負は見た目だけではない。
中の餡が独特の色
中の餡が独特の色
切るとわかるが、中の餡は緑がかった色をしている。抹茶を混ぜてこの色を出しているそうだ。それは本物のカブトガニの特徴と関係している。

カブトガニの色はそもそも透明なのだが、空気に触れると青色に変わるらしい。それに近づけて抹茶餡にしているとのことなのだ。

もしかしたら食欲にはつながらないかもしれないリアリティ。そういう危惧を超えたこだわりがそこにある。
実はあいつらに助けられてた
実はあいつらに助けられてた
カブトガニの力を借りてできた薬品
カブトガニの力を借りてできた薬品
そう言えば博物館でもカブトガニの血液についての解説があった。色が変わるという特徴だけでなく、人間に役立つ応用ができる性質があるというのだ。

実際、カブトガニを捕獲して「献血」してもらい、その成分から作る薬品が開発されているとのこと。献血は血液総量の3分の1ほどを抜いて海に戻すらしい。それで復活するというから、あいつらやっぱり結構タフだ。
紋章のようでかっこいい最中版も
紋章のようでかっこいい最中版も
やっぱり中は緑色
やっぱり中は緑色
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カブトガニのがんばりを見つめて

最後はこれまでの店から少し離れたところにある藤屋菓子舗。軒の黄色い文字でアピールしている商品は「備中そだち」のようだ。
看板では最中「備中そだち」推し
看板では最中「備中そだち」推し
和菓子を脱してサブレタイプも
和菓子を脱してサブレタイプも
「備中そだち」は俵型の最中だが、こちらにもカブトガニ系のお菓子はラインナップ。「かさおかカブニサブレ」は、カブトガニをモチーフにしたご当地キャラ「カブニ」を冠したサブレのようだ。

この店で最も攻めの姿勢を感じるのは「夫婦かぶとがにまんじゅう」。そのリアルさは、お菓子の「しおり」にある。
「夫婦」は「めおと」と読むタイプか
「夫婦」は「めおと」と読むタイプか
思いっきりカブトガニの写真を掲載。見た人が「このおまんじゅう、おいしそう!」という気持ちになるのかどうか心配になるリアリティだ。

左右から迫る人間の手も、謎めいたドラマを感じさせる。カブトガニは夫婦仲がよいとされている生き物なので、その特徴をネーミングにしたのだろう。そういえば、博物館でも2匹仲良く水槽で展示されていた。
「まあ、でかいかな」という大きさの大水槽
「まあ、でかいかな」という大きさの大水槽
やっぱり一匹ひっくり返ってる
やっぱり一匹ひっくり返ってる
記事冒頭で紹介したのとは別の、展示コーナーにある「カブトガニ大水槽」。2匹のカブトガニがゆったりと過ごしている。

たださっき「仲良く水槽に入れられて」と書いたのは、ちょっと違ったかもしれない。またも一匹逆さまになっていて、もう一匹は明らかにそっぽ向いてる。
完全にアウト
完全にアウト
助けてるようには見えない
助けてるようには見えない
じたばたしている一匹を思わずしばらく見守っていると、そこにもう一匹が近づいてきた。

ただ、どうも助けているようには見えない。どちらかというと、ひっくり返ってる相手をうりうりと小突いて邪魔しているように見える。まあ、こういう仲睦まじさというのもあるだろう。
まんじゅう自体もカブトガニ
まんじゅう自体もカブトガニ
人形焼風のまんじゅう
人形焼風のまんじゅう
しおりのリアルさだけではなく、夫婦かぶとがにまんじゅう本体もカブトガニをかたどっていて、なかなかそれっぽい。切ってみると人形焼っぽいのがわかる。
一堂に会するカブトガニ
一堂に会するカブトガニ
今回手に入れたカブトガニスイーツを丸く並べてみた。会議でも開いている感じだろうか。

カブトガニ博物館ではいろいろなカブトガニの写真を見たが、こういう並び方をしたものはなかったと思う。ただ、別の印象的な写真はあった。
哀愁漂う1枚
哀愁漂う1枚
悲しいね
悲しいね
カブトガニがつがうとき、数のアンバランスがあるとオスが一匹のメスに連なってつながるのだ。これは悲しい。

お菓子たちで再現してみる。なんとなくこうして並べただけなら何とも思わないだろうが、知ってしまったカブトガニの生態という意味を重ねると、なんともほろ苦い。

イメージってもんがあるんだから仲良くな
イメージってもんがあるんだから仲良くな

古代のロマン漂う生物、カブトガニ。それをモチーフにしたお菓子はどれもリアルな部分があった。博物館の水槽にいた現物もなんだかおちゃめでかわいい。

日本では天然記念物だが、タイあたりでは普通に食べちゃってると言うからそれもすごい。ともあれカブトガニたちには仲良くやって欲しいと思う。
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