特集 2012年10月1日

伊勢うどん独立国

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伊勢名物の伊勢うどん、知らない人が食べたらうどんの概念が覆る位の食べ物だ。

何がすごいって柔らかい。普通のうどんは生めんの状態からの茹で時間が15分位なのに対して伊勢うどんは1時間くらい茹でるらしい。食感もツルツルとかいう感じではなくデリュドリュニュ。という感じ。

と、そんな伊勢うどんの話をしていて思い出したのが、三重県に住んでいたときに食べたうどんは伊勢うどん以外もあまりコシが無かったような気がするという事。

もしかして伊勢うどんで概念が覆っちゃってるが故に三重県民は茹ですぎの基準がずれてしまっていて全体的にうどんが柔らかいのではないだろうか。

伊勢の伊勢うどん以外のうどんの硬さはどのくらいだろうか。
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

前の記事:ケータイの電池、%表示でも均等じゃなくないか?

> 個人サイト owariyoshiaki.com

コシが無いといえば立ち食いうどん

立ち食いうどんらしい立ち食いうどん
立ち食いうどんらしい立ち食いうどん
伊勢の伊勢うどん以外のうどんは柔らかいのか調べる前に比較対象として大阪の立ち食いうどんにやってきた。
きつねうどん290円
きつねうどん290円
立ち食いうどんは柔らかいし、どこでも同じくらいの硬さだろうから基準としてもってこいだろう。
コシとは無縁。
コシとは無縁。
茹で置きのうどんをザザッとお湯ですすいで器に盛って出汁を注ぐ立ち食いスタイル。表面はツルツルしているが噛むとふにゃんとして、どこを取っても同じ硬さ。コシなど無し。
そば混ざってるとなぜかうれしい。
そば混ざってるとなぜかうれしい。
これでも十分柔らかい。ここを基準にしてしまって良いのかと思う。

うどんの硬さ測定マシーン

さて、うどんの硬さを計るにあたって、体感だけでもいいのだけれどやはり数値でハッキリと出るほうがわかりやすい。どうしたもんかと思っていたら。
すごい時代になったもんだ。
すごい時代になったもんだ。
なんと、iPhoneアプリで表面にかかった圧力を測定して切れた瞬間を記録するという物の硬さを測定するものが…ウソです。
うどんの硬さ測定マシーンver.2
うどんの硬さ測定マシーンver.2
そんなiPhoneアプリはなかったので、うどんの硬さ測定マシーンをどうにかこうにか作ってみた。
ハイテク技術を多用してスケルトンに仕上げた。新型iPhoneで噂されてたけど実装されなかった物を先取り。
ハイテク技術を多用してスケルトンに仕上げた。新型iPhoneで噂されてたけど実装されなかった物を先取り。
うどんにプラスティックの刃が乗っており、徐々に重さをかけて切れた時点で測定する。iPhoneにも出来ないことを実現するハイテクマシーンだ。
慎重に水を注ぐ。
慎重に水を注ぐ。
マシーンをセットした時点では特に変化は無し。どのくらいで切れるのか検討がつかないので少しずつ、少しずつ水を注ぐ。
あ、切れた。
あ、切れた。
しばらく変化は無かったが一度刃が入り始めるとズズズッと進んでそのまま切れた。コシの無い、均一な硬さの結果が出た感じだ。
42g
42g
立ち食いうどんの数値は42g。もう一度やってみても41gであったので大体この位の数値だろう。
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コシあるうどんだとどのくらいの数値になるのか

イカ天ぶっかけ大盛り。
イカ天ぶっかけ大盛り。
コシがないうどんの数値は分かった、ならば本題に行く前にコシのあるものも調べてみたくなる。ということでしっかりとコシのあるうどん屋さんにやってきた。
うどんのこの艶やかさ、エロスを感じる。
うどんのこの艶やかさ、エロスを感じる。
表面はつややかで、中はモチッとしたコシのある麺が美味い。体感としては4倍位コシがあり、食べごたえを感じるが数値としてはどうなるのか。
途中まではすんなり刃が入るのにそこから持ちこたえる力が凄い。これがコシか…。
途中まではすんなり刃が入るのにそこから持ちこたえる力が凄い。これがコシか…。
このうどんも計測マシーンで計ってみる。刃を乗せて水を注ぐと表面にスッと刃が入っていったので、あれ?意外と柔らかい?と思ったが、真ん中の辺りでグッととどまり完全に切れるまで結構かかった。
89g。あら、もっと硬いように感じたけれどこのくらいなのね。
89g。あら、もっと硬いように感じたけれどこのくらいなのね。
結果は89g。何度か試してみても80グラム近辺に落ち着いた。立ち食いうどんに比べて約2倍の結果。体感ではもっと差があるように感じたので、数字で客観的に調べたのは意味がありそうだ。
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よし、それじゃあ伊勢に行くか。

伊勢うどん本体も気になるよね

伊勢神宮(外宮)にお参りしておいた。
伊勢神宮(外宮)にお参りしておいた。
今回の主目的は伊勢うどん以外のうどんのではあるが、やはり伊勢うどんの硬さも気になるところ。だって、あれ、凄いぜ。
老舗っぽいお店。
老舗っぽいお店。
特に下調べはしていなかったが、駅近くにあったお店でひっきりなしにお客さんが入っていっていたのでここに入ってみた。
うすうどんっていうのは普通のうどんだろうか。
うすうどんっていうのは普通のうどんだろうか。
伊勢うどんを注文してメニューなどを見ながら待つ。伊勢うどんとは別カテゴリでうすうどんというグループがある。これが一般的なうどんだろうか。

伊勢そばというのもあるが、あれは一体…?茹でまくったそばだろうか考えるだけで恐ろしい。
伊勢うどんどーん!
伊勢うどんどーん!
そう思っていた所に伊勢うどんが届けられた。知っていても目の前に置かれるとおののく存在感。太い!デロっとしてる!!
これ以上持ち上げようとしたら、ちぎれる。
これ以上持ち上げようとしたら、ちぎれる。
かかっているたれとかき混ぜて食べる。グリュグリュと混ぜるだけでうどん生地が箸に絡みつく。

切れそうになるうどんにびくびくしながら口の中に入れると、甘めのたまり醤油とうどんが口中に広がっていく。噛まなくてもとろけていくうどん。

立ち食いうどんにコシは無いが、伊勢うどんはコシどころか、なんというか、固体として他の物体との壁が無い。いつ液化しても不思議じゃないポジションでうどんとしての形を保っている存在だ。
持ち上げるだけで箸が食い込む硬さ。
持ち上げるだけで箸が食い込む硬さ。
立ち食いうどんがご飯だとしたら伊勢うどんはおかゆ。同じ素材を使っていても別料理。人によって好みは分かれるところだろう。超濃厚うどんの茹で汁ゼリー、というのが僕の中での認識だ。

伊勢うどんって、硬さとかあるんですか

やはりすごいぜ伊勢うどん。体感でこの硬さを評価したら、無い。ということになる。0である。何倍とかじゃなく、ゼロ。でもこれ、実際計れる位の硬さあるんだろうか。
水注ぐ前からすでに切れちゃいそう!
水注ぐ前からすでに切れちゃいそう!
大丈夫かなと思いながら伊勢うどんに計測の刃を乗せる。慎重に乗せたにもかかわらず乗せた時点で1/3位まで刃が進んでいる。あっ、やっぱり硬さゼロなんじゃないか!?
プラスティックで押し切ったのに名刀で切ったかのような切り口である。
プラスティックで押し切ったのに名刀で切ったかのような切り口である。
このまま切れてしまうかと思ったが、何とか留まったので水を注ぐ。すぐに決着はつきそうな感じはしていたが、予想通りにスパッと切れた。
立ち食いうどんの半分以下の数値。
立ち食いうどんの半分以下の数値。
切れた時の重さは17g。もう一度試してみたときは21gとどちらも立ち食いうどんの半分ほどの重さ。しかもこれは単純に半分ということではなく、太さが二倍、体積なら4倍位ありそうなものでの結果だ。

「太さが2倍の場合、本来なら4倍の力が必要なのである。にもかかわらず伊勢うどんは…」

とかいう解説が入りそうな所だがそういう所は詳しくないので分からない。いや、でも多分、太いのに簡単に切れるってのは凄いと思うよ!
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やはり概念覆ってるでしょう

数字で見ると伊勢うどんの柔らかさが浮き彫りになった。これが名物として成り立っている地域である、普通のうどんも他の地域くらいの硬さで出そうとしたら「これ、硬くない?もうちょっと柔らかいほうがいいでしょ」となるだろ、これは。
普通のうどんはございませんか?
普通のうどんはございませんか?
伊勢では伊勢うどん以外のうどんも柔らかいのでは?説に一層の自信を持った。早速普通のうどん屋を探してみよう。
伊勢うどん屋はすぐに見つかる。
伊勢うどん屋はすぐに見つかる。
と、検索して出てきたうどん屋に行ってみるも、どこも伊勢うどんしか置いていない。駅前や伊勢神宮の近くで観光客向けのお店が多いからだろうか。ちょっと人に聞いてみよう。
年季の入った食堂がよかった(うどんは伊勢うどんのみ)。
年季の入った食堂がよかった(うどんは伊勢うどんのみ)。

やはり概念覆ってるでしょう

僕「すみません、伊勢うどん以外の普通のうどんを出してるお店ってこの辺にありませんか?」

地元の人「えっ、うどんですか?普通のうどんって、あの、うどんじゃないあの、うどんですかね?」

おぉ…うどんじゃないうどん…。地元の人にとっては伊勢うどんが「うどん」で、それ以外のうどんは「うどんじゃないうどん」みたいな扱いなのか…。
年季の入った食堂では食品サンプルも年季が入っている(岩石)。
年季の入った食堂では食品サンプルも年季が入っている(岩石)。
地元の人「そういううどんを出してるお店はちょっと知らないですねぇ」

えっ、無いの!?えっ!?味噌カツが名物でも普通にトンカツはあるでしょ。えっ、そういうことじゃないの?そういうことじゃないにしても、好みはあるでしょう!?無いの!?一択!?
年季の入ったソフトクリームは焦げ目が入る。
年季の入ったソフトクリームは焦げ目が入る。
僕「ここら辺の人は伊勢うどんしか食べないんですか!?」

地元の人「食べるとしたらあのうどんですねぇ。他のところ行ったら食べることもありますけど…」

なんと…。伊勢うどんは観光客向け名物ではなく、独占するくらいの地元食であった。他の人に聞いてみても同じような答え。マジか。

普通のうどんを追い求めて

予想以上の伊勢うどんの実力(柔らかさと支配率)に驚きながらも、どこかに無いだろうかと探し求める。
おしゃれカッフェみたいなところでも伊勢うどん
おしゃれカッフェみたいなところでも伊勢うどん
日本では欧風カレーが一般的だが外国人の方がやっているインドカレー屋がたまにある、みたいな感じで他地方出身の方が伊勢で普通のうどんを出している、みたいなことは無いだろうか。
普通の喫茶店みたいなところでも伊勢うどん
普通の喫茶店みたいなところでも伊勢うどん
日本にあわせて味を調整している、みたいな感じで「伊勢の人は柔らかいのが好みでね、柔らかめにしてるんだよ」みたいな話が聞きたい。
どんべえは普通のどんべえ
どんべえは普通のどんべえ
「だけど、諦めてはなくてビシッとしたコシのうどんも置いてていつか、うどんのコシの魅力を伝えられたら思ってるんだ」ってキラキラした目で言う若者に会いたい。

が、どのうどん屋に行っても伊勢うどんののぼりが立っている。圧倒的である。

伊勢うどんキングダム

見て回ったお店は本当に伊勢うどんのみ。本当に、本当に普通のうどん無いの?パラレルワールドなの?
本当に無いのか。普通のうどんは。
本当に無いのか。普通のうどんは。
ならば外食ではなく、スーパーなどではどうなのか。
あった!しかも25円。安い。
あった!しかも25円。安い。
さすがに家では伊勢うどんは食べるまい、と思ってスーパーでうどんを探す。と、あった!大阪とかでも売ってる普通のうどんだ。やっぱり流石に伊勢といえども自炊では普通のうどん…。
ボリュームがぜんぜん違う
ボリュームがぜんぜん違う
と、思いきや顔を上げてみると周りは伊勢うどんで囲まれていた。そば、焼きそば、うどんを足した量の三倍くらいはあるんじゃないかという伊勢うどん量。ちょっと流石に多すぎないか。
蒲焼のたれかと思ったらうどんのタレ。
蒲焼のたれかと思ったらうどんのタレ。
しかも専用のタレもたっぷりと置いてある。うどんスープは置いてないのに伊勢うどんのタレはワンコーナー作るくらいに置いている。そんなにもか、そんなにも伊勢うどんか、いや、そんなにあっても持て余すだろう。
おばあちゃん、そんなに食べる!?ってくらい買っていった。
おばあちゃん、そんなに食べる!?ってくらい買っていった。
と、思っていたらおばあちゃんがガッサガッサと6袋くらい買っていった。えええっ、おばあちゃん、それ、賞味期限4日くらいしかないよ!?大丈夫!?食べれる!?そう思うも、その後も次々と大阪でのうどんの売れ行きとはまったく違う勢いで売れていく。一体何なんだ…。

それでも、それでも、カレーうどんなら…

うどん そば ってのれんを見て入ったけど、右の看板に伊勢うどんって書いてたんだね…(写真見て気づいた)
うどん そば ってのれんを見て入ったけど、右の看板に伊勢うどんって書いてたんだね…(写真見て気づいた)
伊勢は内でも外でも完全に伊勢うどん一色だ…まさかここまで圧倒的だとは…。
伊勢うどんが使われてなさそうなうどんメニューを探せ。
伊勢うどんが使われてなさそうなうどんメニューを探せ。
だが、全部が全部伊勢うどんじゃないだろう。あのタレだからこその伊勢うどん。ここは、カレーうどんだ!カレーうどんの麺は伊勢うどんじゃないだろう。
出汁とカレーの香りがいいですな。
出汁とカレーの香りがいいですな。
この熱々のカレールーの中で、あのフヨフヨの伊勢うどんの麺であれば形を保つのも難しいはず。ここでは普通の麺が使われているだろう。
と、思ったけど残念、伊勢うどんでした~。
と、思ったけど残念、伊勢うどんでした~。
という見込みはあっさりと外れ、カレーうどんでも使われていた麺は伊勢うどんのものであった…。

伊勢はうどん独立国

スーパーで売ってた伊勢うどん、家で作った。ドリュ感は薄め。
スーパーで売ってた伊勢うどん、家で作った。ドリュ感は薄め。
柔らかい伊勢うどんの影響で普通のうどんも柔らかくなっているのでは。などと考えたが予想をはるかに超えて、伊勢うどんと普通のうどん、伊勢とそれ以外の地域は別物であった。

これは、伊勢うどんがあるからどうとかいう話でなく、伊勢だけ特殊という結論に落ち着いた。

結構好みが分かれる食べ物のように思うが独占状態になっている事が不思議だ。子供のころから食べているものは味覚がそれに合わせて育つから、インドでは辛いカレーを食べられないインド人はいない。という話を思い出した。

日本各地さまざまなうどんがあるが出汁、コシで特色を出すのを、コシを無くす事でまったく異端になっている伊勢はまったく不思議で面白い。
ちなみに、その他の結果はこんな感じでした。
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