特集 2011年11月5日

書きなれない文字で達筆になろう

書き慣れない文字を練習したい
書き慣れない文字を練習したい
字が下手である。小学生の頃、近所の習字教室に通っていたのだが、まったく真面目に通っていなかった。今思えば、如何にして早く帰るかばかり考えていた気がする。当時は字を上手く書くことよりファミコンだったのだ。

今、自分の字の下手さ加減を思うと、あの頃の自分を怒鳴りつけてやりたい。そんな後悔を年々強くしながら大人になった今日この頃、さらなる問題に直面している。
1978年京都生まれ。東京在住。プログラマです。LINEという会社で働いています。
紆余曲折ありまして、ブログで記事を書いていたりします。


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立ちふさがるアイツら

そのさらなる問題というのが、メールアドレスやURLでよく見られる、ここ最近お馴染みのあの文字達だ。代表的なものでいうと「@」(アットマーク)に「/」(スラッシュ)、「:」(コロン)などの、いわゆるITっぽい文字だ。

学生時代に教わってきたひらがな、カタカナ、漢字、アルファベットといった文字であれば、下手なりに頑張って書くこともできるのだが、習ったこともない、さらに書き慣れないITっぽい文字達が、字下手の私の前に高い壁として立ちふさがるのだ。
立ちふさがるヤツら
立ちふさがるヤツら
例えば。誰かにメールアドレスやURLを伝える時に、ネットもない、赤外線通信もないというシチュエーションだったとしよう。字下手としては「エッチテーテーペー・・」とやおら口頭で伝えたいところなのだが、やはりそれには無理がある。ここは手書きで伝えるしかない。ピンチである。

会社の同僚に渡す程度であれば、納得がいくまでじっくり書き直したり、ササっと書いたからちょっと雑になっちゃった感を演出したりと、色々誤魔化す手法はある。しかし例えば「オシャレなBARでコースターの裏にそっとメールアドレスを書く」というような、さもトレンディなシチュエーションであればそうもいかないのである。こちらはまさに一発勝負だ。
私の「@」
私の「@」
どこか物悲しい。サラサラ書いた中で一番駄目そうな@を選んでみた。オシャレなBARでアドレスを渡してもきっと返事は来ないだろ。そんな@だ。トラックの前に飛び出したのに、振り返ったら浅野温子がいなかったような気持ちだ。トレンディどころか、ただ車にひかれそうになった人だ。

また、メジャーな「@」ならまだしも「:」(コロン)、「;」(セミコロン)、「,」(ドット)、「,」(カンマ)といったあたりになると、下手で恥ずかしいというだけでなく、下手すぎる場合「読めない・誤読してしまう」可能性すら出てくるのだ。その場合メールはもちろん届かないし、ブログなら「このページは見つかりません」だ。万が一プログラムなら動かなくなってしまうのである。苦情殺到だ。

なんとかしたい。このあたりのITっぽい文字をなんとかして上手くなりたい。

書き取り練習

そこで。文字が上手くなる方法といえば、やはり書き取り練習である。小学生の頃に誰もがやった書き取り練習。お手本を見ながら、なぞって練習するアレだ。サンプルとして「ひらがな」練習のドリルを買ってきた。
かんせい「ひらがな」。5,6,7才向け。
かんせい「ひらがな」。5,6,7才向け。
「つ」はたまごのような形に
「つ」はたまごのような形に
懐かしい。当時こういう練習ドリルを、ものすごくやっつけ仕事で書いていた覚えがある。そこから「字下手人生」というレールの上を歩き始めたのだ。私にとって忌まわしきこの練習帳の体裁で「普段書かないIT文字」の書き取り練習帳を作ってみよう。例えばこんな感じだ。
苦手意識を無くすために「~よう」口調の柔らかいタッチで
苦手意識を無くすために「~よう」口調の柔らかいタッチで
お手本、なぞりパート、フリーパートでわけてみた。ステップを踏んで練習していくわけである。これをプリントアウトして書き取りしていく。
ババーンとプリントアウト
ババーンとプリントアウト
@書き取り開始
@書き取り開始
書いているうちに、小学生の頃の懐かしい感覚がどんどん蘇ってくる。ひっつき虫を友達と投げ合ったり、給食袋を蹴りながら帰ったり、プール帰りに耳の水を抜くためケンケンしたり。ノスタルな気分になりながら、どんどんなぞる。
なぞるなぞる
なぞるなぞる
この部分が難しい
この部分が難しい
どんどんなぞる。
どんどんなぞる。
どんどんなどんどんなぞる。
どんどんなどんどんなぞる。
@ばかり書き続ける内に、@が@に見えなくなってくる。ゲシュタルト崩壊だ。ちなみにゲシュタルトはドイツ語だ。それでも書き続ける。ドイツのことを思いながら書き続ける。@、@、ダンケ。@、@、ベンツ。@、@、ソーセージ。@、@、ビール。ビール、ビール、ビール。これが終わればビールが飲める。

比べてみよう

ある程度書き取りを終えたところで最初の@と見比べてみる。
ビフォー
ビフォー
アフター
アフター
一番気の抜けたビフォーと、一番上手く書けたアフターを比べているので若干誇張はあるが、かなり良くなった気がする。

感触としては「上手くなる」というよりかは、書き取りの反復をやってから文字を書くと、イメージのお手本をなぞろうとして、筆を運ぶスピードがゆっくりになり必然的に丁寧に書くようになる。この繰り返しで、イメージのお手本をなぞる作業に慣れてくると、書くスピードも上がって「字が上手くなる」という状態に入っていくような気がする。

すごいぞ、書き取り。そうか、こういうことを習字教室でやっていたのか。これでITっぽい文字も怖くない。

さらに他にもいろいろな文字の書き取り用紙をつくってみた。
曲線が多い「&」
曲線が多い「&」
 シンプルでいて奥深い「/」
シンプルでいて奥深い「/」
URLでお馴染み「:」
URLでお馴染み「:」
プログラムなどで登場する「;」
プログラムなどで登場する「;」
昔よく見た「~」
昔よく見た「~」
ハイフンじゃないよ「_」
ハイフンじゃないよ「_」
ドメインを彩るニクいヤツ「.」
ドメインを彩るニクいヤツ「.」
金額の区切りで使うよ「,」
金額の区切りで使うよ「,」
これで練習すれば、コースターにサラリとメールアドレスを書けるようになるはずである。トレンディは目の前だ。
おてもとにもサラリと。
おてもとにもサラリと。
次はIT文字よりも、さらに普段書かないアレの練習を進める。
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地図記号

さらに上手くかけるとカッコイイものはないかと色々考えてみた。やはりこれだろう。
地図記号400(日本地図センター)。450円。
地図記号400(日本地図センター)。450円。
そう、地図記号である。

眺めるだけで心踊る地図記号。これをキレイにかけるとかなりカッコイイ気がする。地図記号を上手く書ける男。「趣味は地図記号を書くことです」。合コンでもバッチリのつかみだ(多分)。
モテ地図記号。
モテ地図記号。
こちらも書き取り用紙を用意した。
実ってます「果樹園」
実ってます「果樹園」
レ点じゃないよ「畑」
レ点じゃないよ「畑」
テンテンテン「茶畑」
テンテンテン「茶畑」
立派な鳥居「神社」
立派な鳥居「神社」
踊っている風「発電所』
踊っている風「発電所』
ビビビ婚ってあったよね「電波塔」
ビビビ婚ってあったよね「電波塔」
眩しい青春「高等学園」
眩しい青春「高等学園」
いい湯だな、お馴染み「温泉」
いい湯だな、お馴染み「温泉」
これもお馴染み「郵便局」
これもお馴染み「郵便局」
夢の名残「城跡」
夢の名残「城跡」
これで地図記号も書き放題である。好きな地図を印刷して手書きで地図記号を書きこめば、例えばご近所を茶畑で埋めたり、自宅の横に城跡を配置したりできるわけである。シムシティ状態だ。
憧れの「おんせん」も
憧れの「おんせん」も
「しろあと」は意外と難しい
「しろあと」は意外と難しい
IT文字、地図記号それぞれ、プリントアウトして練習できるPDFをご用意したので、興味のある方は是非どうぞ。

記憶もなぞる

小学生以来の「書き取り」、そして「なぞる」という作業。パソコンや携帯で文字を打つことが多い昨今。紙に向かって延々と何かを書くという作業は、思いの外色々な記憶や感覚を思い出させてくれた。鉛筆は2Bが好きだったなとか、 赤白帽をウルトラマンかぶりしたなとか、教室の床をワックスがけした後はテンションあがったなとか。今回のIT文字や地図記号だけでなく、音符やリサイクルマーク、交通標識など、なぞると楽しそうなものが世の中には沢山あるので、皆様も是非なぞって頂いて、一緒に昔の記憶もなぞってみてはいかがでしょうか(上手いこと言えた)。
地図記号の本に載っていた言葉。神田川先生の「料理は愛情」に近いパッションを感じる。
地図記号の本に載っていた言葉。神田川先生の「料理は愛情」に近いパッションを感じる。
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