特集 2011年8月24日

昔書いた文章をセルフカバーしてみる

LIVE AT TOKYO DOME(イメージ映像です)
LIVE AT TOKYO DOME(イメージ映像です)
この夏、東京ドームで人気アーティストが過去の名曲のセルフカバーライブを行った。海外のアーティストでも過去の名アルバムを一枚まるまる演奏するカバーライブが流行っている。自分もセルフカバーというのをやってみたいなあ。オリジナル曲ないけど。そうだ、過去の文章のセルフカバーはどうだ。過去の恥ずかしい封印をひっぺがして再生してみよう!…と思ってやってみたけどマジで恥ずかしいですよ、これ。
1972年佐賀県生まれのオトナ向け仕事多数のフリーライター。世間の埋もれた在野武将的スゴ玉の話を聞くのが大好き。何事もほどほどに浅く広く、がモットー。

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競馬新聞に夢中だったあのころ

過去の文章…といってもここ数年のデイリーポータルZで書いた文章をカバーしても面白みがない。というかそんなに変わってるわけがない。ならば…と、ちょうど実家に帰る機会があったので、10年以上昔に書いたものがないか漁ってみた。すると発見!
大学時代にサークルで作っていた競馬新聞。
大学時代にサークルで作っていた競馬新聞。
92~94年のころ、自分が所属していた大学の競馬サークルで作っていた新聞「競馬ヒヒーン」。B5用紙一枚の内容とはいえ、誰に頼まれるわけでもなく、学校の授業がある間(実質、夏休み・春休み以外)はほぼ毎週!10人くらい集まっては作っていたんだから、あらためてどうかしてるなー。当然新聞は無料配布。
自分のメイン担当はこうした馬柱などの制作。
自分のメイン担当はこうした馬柱などの制作。
たまにコラム的なのも。(産Ⅳ)てのが懐かしい。産業社会学部4回生、の意。
たまにコラム的なのも。(産Ⅳ)てのが懐かしい。産業社会学部4回生、の意。
名前の上の近況欄が学生っぽい。
名前の上の近況欄が学生っぽい。
ああ懐かしい。まだ当時は学生で持ってるのってパソコンどころかワープロがぼちぼちという頃。DTPなんてスゲエもんはなく、ワープロで打ち出したバラバラの記事を貼り合わせて版下を作り、金曜日(競馬は土日開催)に大学の校舎内に張りまくるということをやっておりました。注:学生は馬券を購入してはいけません(当時)

これなら書いてから約17年、セルフカバーするには寝かせ頃だ。ちなみにこの当時、94年のヒット曲は「Survival dAnce」(trf)やら「ロマンスの神様」(広瀬香美)やら。他の歌手にカバーされてたり、お笑いのネタになってたりする所が「一周回った」感ある時代だ。

ではセルフカバーするとしたらどの文章かねえ…。基本的にはどれも「競馬予想」なのでそんなにヒネってるわけではない。ただ大学4年生の最後の号で、卒業生がそれぞれ最後のコラムを書いてるのだけど、あらためて見ると痛いわー、自分!
卒業生が思い出やら何やらを書くページ。
卒業生が思い出やら何やらを書くページ。
でも文体とかそんなに変わってない。
でも文体とかそんなに変わってない。
「自分がこうありたいという願望をその馬に賭ける。自らの事を考えてみると一言で表すならば『狂気』である」「自分は平凡な人間だしこの毎日は変わることがないというコンプレックスや諦観が自分にはない狂気を持った馬達へ声援を送らせるのだろう」 …うわー、もう読んでるだけでクネクネしちゃう青臭さ!「狂気」とかペラっとした言葉で書くなよ、当時の自分!いろいろとかぶれる時期ですよね…。

まあこれは長すぎるのでカバーはしない。というか内容全取っ替えくらいになっちゃうから。音楽でいえば若気の至りで作っちゃった10分くらいの大作、て感じだ。ロックオペラだ。

それであらためて見直すと、まあそこそこまとまりが良い&時代性を感じさせるのがこれ。
フジヤマケンザンという馬についての寸評です。
フジヤマケンザンという馬についての寸評です。
16頭中15番人気のメジロパーマーが勝ったことで、当時見た人に相当インパクトを与えた1992年年末のグランプリレース・第37回有馬記念。その時出走した「フジヤマケンザン」という馬についての寸評記事。この数年前に亡くなった同じフジヤマ、藤山寛美とその娘・直美(当時ドラマ「おんなは度胸」でブレイク中)の名前を絡めつつも必要な情報をそれなりにまとめてると思う。なんだこの自画自賛。まあ17年前の自分自身のことなんだから甘くもなるさ!
ちなみに本誌本命はトウカイテイオー、一番人気はナイスネイチャ。
ちなみに本誌本命はトウカイテイオー、一番人気はナイスネイチャ。
下から2番目の馬が勝ったのでレース後は大騒ぎに。
下から2番目の馬が勝ったのでレース後は大騒ぎに。
ま、レースについてはこの際どうでもいい。上の記事でそれなりにまとまったると思うけど、少しシェイプしつつも、2011ver.らしく付け足してみた。これが俺のセルフカバー!
赤字の部分が付け足した/短くした部分。
赤字の部分が付け足した/短くした部分。
少しずつ文字を詰めつつ具体的な地名をカット。そして最後、なんかひとつくらい追加したいなと「藤山直美といえば松竹芸能、松竹ということは松竹梅の上3つ、ならば上位2つは確定だろう」…。シャレを説明することほどむなしいことはないですね。

しかしそこそこまとまってると自分で思ってる文章をイジるのって、やったところでハッキリした形で良い方に転がらないですね、当たり前だけど。80点を85点や90点にしても、伸び幅はちょっとだもんな。しかも最初のインパクトは越えられない。音楽においてカバーが本家を越えられないのがちょっと分かった気がする…。ま、音楽ほど立派なオリジナルじゃないですけど、この場合。

ヒットラーに夢中だったあのころ

さて、先に説明したとおりこの新聞が17年前のもの。さらに自宅を探してみたら、もっと古い自分の文章が見つかった。おそらく小学5年生のころ、班で回しあった「班日記」の切れ端だ。28年前!
おそらく1983年ごろの古文書、いや日記。
おそらく1983年ごろの古文書、いや日記。
クラスの中で仕切られた班、その中で順番で回してその日の出来事を書く「班日記」てのがあったんですよね。こういうのってだいたいみんな面倒がるんですが、自分は嬉々として書いてたのは今でもなんとなく覚えてる。しかも日記というかコラムというかネタ的というか…自分なりに面白おかしく書こうという意志はあったようで。
ニュースキャスター調だったり。
ニュースキャスター調だったり。
会話と感情描写だけだったり。
会話と感情描写だけだったり。
クイズ形式だったり。
クイズ形式だったり。
自分はあまり覚えがないんですか、同じ学年だった友人によると「みんな大坪の班日記は読んでた」と言ってたので、「自分の文章が人の目に触れる、面白がってもらえる」という体験のルーツかもしれません。

あと、今だと本名とは違うハンドルネームとかIDなんか当たり前ですが、小学校の班日記なのに一丁前にペンネームとか名乗ってる。その名も「MAX大坪」!なんだマックスって。コーヒーか!カー専門店か!…あー恥ずかしい。

ちなみにその「ペンネーム選びの巻」的日記もあるんですが、候補の名前を見てると…。
ヒットラーってなんだよ昔の俺。
ヒットラーってなんだよ昔の俺。
先生からたしなめられてる。そりゃそうだ。
先生からたしなめられてる。そりゃそうだ。
ドイツ軍(正確には田宮のプラモデル)にあっさり触発される11歳のわたくし。この選抜の結果、なんでマックスになったのかも覚えがないですが。

さてその中からイジってみたいんですが…どれも小学生ノリで取り上げるのが難しいな!比較的セルフカバーしやすい日記がこれ。
三重マルもらってます。
三重マルもらってます。
あらためて文章を打ち直したのがこちら。
ハロー。ボンジュール!グーテンアーベント。お晩です。こちらはMKTM(マックス国際テレビモドキ)です。今日のニュースは、KSKK(江北小学校工作クラブ)(んなもんあるか!カゲの声)の6の1で、工作がありました

ミスターXさんに聞いてみました。何を作っていますか。うごく人形です。完成しましたか。まだです。成こうすると思いますか。思います。これでニュースを終わります。


注:「6の1」はクラス名。
とりあえず略称で英語使ってみたり、「カゲの声」とか「ミスターX」とかそういうの好きね、子供のころの自分!コドモなりの技巧派への憧れ!それにしても最初の方は外国語の挨拶とかいろいろ調べて考えてみた風だけど、中盤から雑に、最後はもう投げっぱなしで終わってるのがコドモだ。飽き性だ。

これをセルフカバーするとなると…。逆に手を入れるのが難しいなあ。このくらいしかイジれない気がする。
ハロー。ボンジュール!グーテンアーベント。お晩です。こちらはMKTM(マックス国際テレビモドキ)です。今日のニュースは、KSKK(江北小学校工作クラブ)( んなもんあるか!カゲの声)の6の1で、工作がありました

ミスターXさんに聞いてみました。 何を作っていますか?」「 うごく人形です」「 完成しましたか?」「 まだです」「 成こうすると思いますか」「 思います これでニュースを終わります。
うーん、自分の文章ながらあらためてこの「子供の雑さ」って逆にオリジナリティあるわ。ヘタに手を入れると壊れそうな空気感がある。手を入れるとしたらせいぜいカッコと矢印くらいだなあ。それですら野暮なような。

今これ書けないもんなあ…と言っても、いちおう文章書く仕事しといて、このクオリティだとマズい。ただ、前にさるデザイナーに話をうかがった際「技術はもちろん今の方があるけど、技術がなかった時と同じ勢いのものは作れないよね」と言われたけど、そういう事かもしれない。どれだけ熟練しても小5の勢い、小5グルーヴは再現出来ない。

過去の写真や文章を見返すことはたまにあるけど、「カバーしてみる」という視点で見ると、また違った当時の自分が見えてくるもんですね。気恥ずかしくもそこそこ冷静に面白がって振り返る、それがセルフカバー!

大学時代の似顔絵(筆者中央)。こんなんだったっけ。
大学時代の似顔絵(筆者中央)。こんなんだったっけ。

今じゃ言えない秘密じゃないけど

あと「将来の夢」みたいな作文がどこかにあったはずだけど見あたらず。たしか「地下鉄の運転手」と書いてたような…。なんで当時の自分は地下鉄に憧れたのだろう。三球照代の地下鉄漫才の謎を解きたかったのか?あらためて知りたい。
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