コの字路地とは
どうしてその形になったのか分からないけど、住宅街の地図を凝視していると時折見かけるコの字路地。
うっかり入り込んだとしても、何事もなく結局もとの道に戻ってしまうのだから、その路地の中の家に用がなければ通る理由もない。
こんな路地、たまにありますよね
そこに、敢えて突入してみようと思った。たとえばこんな路地。
1軒の家を挟んで、手前と奥に路地がある
行き交う車も人も、誰も見向きもしない路地に足を踏み入れる。入って行くと、一見それまで通ってきた道と同じ感じだけど、急に騒音がなくなって静かになった気がした。
表の通りから離れ、人通りも車通りもなく、なんだかシンと静まり返っていた。
一見普通の路地だけどまわりに比べて超静か
少し人目を気にしながら進んで行くと、いちばん奥で道は直角に曲がっていた。それ以外には枝道ひとつない。
直角に曲がる以外に選択肢のない路地
この先はどうなっているんだろう、とやや期待しながら角を曲がると...。
すぐにもう一度同じ方向に曲がる
これこれ、これこそがコの字路地の醍醐味である。
角を曲がって目の前に現れるのは、もう一度同じ方向への曲がり角。一瞬、迷路にでも迷い込んだような気分になる。そのくらい、2回連続同じ方向への曲がり角は日常の中の非日常風景だ。いいねぇ。
曲がって進むと元の道に行き当たる
2回角を曲がって進むと、もともと来た道に戻る。コの字全走破だ。
コの字路地から出てくると、ようやく車や人の通る音、風の吹く音などが聞こえてきて、現実世界に引き戻されたような気分になった。コの字路地の中は、いま自分たちがいる場所から薄い膜ひとつ隔てた別の次元のような気がした。そこには音もなければ時間の流れもない、まるで鏡の中の世界。だから道に落ちたみかんもそのままなのだ。
というような説明を頭の中に用意しておいたんだけど。
鏡の世界に宅急便が!
僕が脱出した直後、その異次元の世界に宅急便のトラックが入って行った。...大丈夫、コの字路地の中の人も同じ世界。通販で買い物もできるのだ。
でもやっぱり少しだけ不思議な雰囲気はあったので、ほかの路地にも行ってみた。
コの字路地めぐり
別の場所にある別のコの字路地にやってきた。こういう道がどこにあるかと言うと、毛細血管のような細い道が縦横に入り組んでいる、住宅地の奥の奥の方だ。
ただでさえ探さなきゃたどり着けないような場所だけど、ここには何と、行き止まりの路地から分岐するコの字路地があるのだ。つまり完璧な形の袋小路。激レア!(かどうか分からないけど)
コの字に至る道がそもそも行き止まり
行き止まりにも行ってみたかったけど、とりあえずその手前で分岐するコの字路地に入った。
ここはさっきの路地とは逆で、奥行きがほとんどなくて幅が広い形(言ってる意味分かります?)。
行き止まりの路地から入るとすぐ曲がり角
Uターン部分のスパンが長い
ようやく反対側の角を曲がると
すぐ目の前に行き止まりの路地
目の前の路地がそもそも行き止まりなのでただでさえ静かで、太陽がジリジリ照りつける音すら聞こえそうだった(猛暑の日に歩いた)。
さっきのコの字路地とはだいぶ離れているし家並みも違うけど、なんだか全体的な雰囲気はとても似ていた。時間が止まっているような感じがするし、車が行き交う表通りとはやっぱり違う世界の気がする。
このあと行き止まりに行って気がついたけど、コの字路地の役割とか雰囲気は行き止まりと同じなんだと思った。幅が広がって真ん中に島があるだけで、道の概念自体は行き止まりと一緒。
行き止まりもいいよね
次に行ったコの字路地は奥行きが深い型。通る車もあまり多くないせいか、民家から道路への植物の侵略が少々目立った。
こんな大きな道から直接アクセス
控えめだけど植木鉢が確実に道路を侵略
いちばん奥は集会場のような建物
角を曲がってすぐ次の角が出てくる感じがいい
曲がってまた曲がる
やっぱりここも路地の中は静かで時間の流れが感じられなかった。同じ形の路地を3カ所見て、どこも場所や風景は違うけど雰囲気は同じものを共有している気がしてきた。コの字路地は繋がっているのかも知れない。ソーシャルコの字路地。
このあと最後に見たコの字路地も、結果を先に書くと雰囲気はまったく一緒だった。ものすごい都心なのに。
東京都庁が見えるような場所
都心にこんな路地があるのが驚き
角の外側はバイク置場に
次の角には車が置かれてるあたりコの字路地の自由さ
でも静かな雰囲気はほかのコの字路地と共通
東京都庁を望む、都心の裏道の奥にこのコの字路地はあった。
これだけ賑やかな街の中なのに、路地に入ると静かで、夢の中のような不思議な雰囲気が漂っていた。
コの字路地、用のない人はやっぱり中に入ってはいけないのかも知れない。
街中の自治空間
今回めぐってみて分かったコの字路地の魅力は、路地の中に漂う、外の世界とは切り離された独自の雰囲気だ。
場所がバラバラなのに、コの字路地の雰囲気はどこも似ている。僕のように通り抜ける人がいないから単純に人通りが少ない、ということもあるけど、掃除のされ方や道に置かれた植木などを見ていると、何となくその路地の中が独特の自治領のように思えてくるのだ。
だから入国審査が厳しめなのかも知れない。