編集部日記 2021年3月21日

一歩踏み出した人には妙なエネルギーがある ~ SHIBUYA オープンマイク Powered by 渋谷渦渦

渋谷渦渦*で採択された3つのイベントがカルカルで開催されます。渋谷neo散歩、渋谷ガチャガチャナイト!を紹介してきましたが、今回は3つめ「SHIBUYAオープンマイク」です。
*(東急主催、東京カルチャーカルチャー協力のイベント企画公募プログラム。リンク

オープンマイクとはあらゆるアーティスト・パフォーマーから通りすがり一般の人まで、すべての方に開かれているステージ開放型イベント。それっていったいどういうものなのか、SHIBUYA オープンマイクの主催であるikoma さん(胎動LABEL)に聞いてまいりました。
(インタビュー・構成:林雄司) 

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ikoma (胎動LABEL) 
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通りすがりの人にマイクを握ってもらう

ーーー オープンマイクはいつからやられてるんですか?

ikoma ポエトリーリーディングと出会ってから始めて、3〜4年前からですね。

ーーー  多摩センターでのイベント、ニュータウン*で開催していたんですよね

ikoma 詩人の三木悠莉さんと「POETOWN」というブースを運営したのですが、1回目が給食室で、2回目は給食室とパルテノン大通りでした。パルテノン大通りではバンドとセットのオープンマイクで通りすがりの人にひたすらマイクを握ってもらったりして、多摩市の市長さんがマイクを握ってくれたりしました。
* ニュータウン:CINRA主催のカルチャーイベント。多摩センターにあるデイリーポータルZも過去にいらないものガチャで参加したことがあります。デジタルハリウッド大学八王子制作スタジオ(旧三本松小学校)と多摩センター駅前パルテノン大通りで開催。

ーーー  パルテノン大通りでは完全な通りすがりの人ですか?

ikoma はい。受験生で山梨から来ていた子がいて、受験の話をしたりとか、最後に一言なんかありますかって聞いたら、「みなさんも夢に向かってがんばってくださ〜い」って謎にハッピーな感じで。

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ーーー 一般の方を巻き込むのって難しいと思いますがどうやって声をかけるんでしょう

ikoma 今回の渋谷オープンマイクで司会をやってくれる猫道さんという人がいるんですけど、その方がどなたでも入れるように、オープンにしてくれるのと、ひたすらまわりでスタッフが次やってみない?やりたそうにして見てる人とか笑ってる人に次どうですかって、ゆるーく誘っていく感じで。
意外と自分で「はい」ってやらないですけど、言われるとやるみたいなところはありますね。

ーーー それでみんなけっこうやっちゃうものなんですね。

ikoma 意外と止まるし、ほんと通りすがりのおじさんがマイクを握ったりするし、おもしろかったのが、まわりでブース出してる人たちがマイク握りに来て告知してくれたりとか。目の前でドーナッツ屋さんを出してる人がいたんですけど、その人がマイクを握ってラップ形式でドーナッツを宣伝したり。

ーーー そんな人がいるんですか。

ikoma おもしろかったですよ。ユニークな自転車の後ろに大きなドーナッツをのせたような、自転車で運ぶドーナッツ屋さんで。
ブースが目の前にあったんですけど、乗ったまま前にあらわれてくれて、よかったらマイク握ってくださいって言ったらラップ形式で。ドーナッツが好きな人はだいたい友達みたいなことを言ってめちゃめちゃおもしろかったです。

ーーー歌ってくださいだとハードル高いから、マイクでしゃべるというのは、できますね

ikoma ハードルが高い場合は、司会の人が僕と一緒にお話しましょうとか言って、どこから来たんですかというのを振ったりして会話する、会話しているのを後ろの人達がギター、ドラム、ベースの人がそれに軽く音を付けたりとかして、音でパッケージングするみたいなことをやってました。音があるとただの会話もそれっぽい雰囲気になるというか、パッケージがきれいになるというか。

ーーー 発明ですね

ikoma ポエトリーリーディングももっと一般の人たちがやったほうがおもしろいなって思ったんです。
ニュータウンの給食室でやったときも、通りすがりの人が私は実は十なん年前にここの学校に通っていたんですけどって思い出話を語ってくれたり、いろいろホロリとさせられるような流れがおもしろかったですね。もっと一般の人にオープンマイクを持ち込みたいという気持ちが強くて。

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ーーー 一般の方がかっこよくおもしろくなる仕組みですね

ikoma そうなんですよね。普通の人達に脚光があたってもおもしろいかなと思って、街角にマイクが一本置いてあって、それでやるような文化が生まれてもいいんじゃないかなと思ってます。
基本オープンマイクで自由にやっていいよという感じですけど、テーマを付けるときは「手紙オープンマイク」として手紙をみんな読んだり、伝えたい人届けたい人の手紙を書いて読んだりしています。50人ぐらい、けっこう参加する人がいるんです。いろんなテーマをつけるとみんなも盛り上がるというか。

ーーー 手紙は具体的に想像できてやりやすいですね

ikoma みんな紆余曲折あった人たちばかりなのか、妙な人生の重さが出てましたけどね。50人ぐらい。娘からの手紙とか朗読してる人がいて泣けましたけどね。

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一歩踏み出した人には妙なエネルギーがある

ーーー  これまでに印象に残ってることってありますか?

ikoma 基本オープンマイクってバーとかライブハウスでやることが多いので、一般の人が参加することってあんまりないんですけど、通りすがりやフラっと飲みに来てる人がすごく大事なわけですよ。そういう人たちがマイクを握る瞬間が面白くて、たまたま飲んでいたお兄さんが自分が好きな音楽を流してそれについて語ったりする瞬間とかは盛り上がりますよね。
その時はダブステップという音楽なんですけど、ダブステップが今こういうふうにブームになっているいけど、俺が好きなダブステップはそんなんじゃなくて、もっと熱いものなんだ、聞こえるか、イギリス人たちの声が!みたいな、熱く語る人がいて、マイクをスピーカーにガンガン拾わせたりとかしながら、自分が持ってきた音楽を流したりして、ただ飲み来た人だったらしいですけど。

ーーー ついついスライド見せたくなったりしますけど、そういうことなしで。

ikoma 全然。口頭だけで、ですね。ニュータウンがおもしろいですね。
眉村ちあきちゃんがたまたま参加してくれたんです。そのファンの子が次にマイクを握って、みんなでマイクまわしたりとか、眉村ちあきちゃんがマイクを握っているのを見て私も仲間になりたいって泣きながらマイクを握った子がいて。「私もマイクを握りたいと思って上がりました(涙)」みたいな感じで。会場が妙な熱気で盛り上がりました。オーーって。

ーーー ステージに上るということが感激という

ikoma オープンマイクで一般の方が参加すると妙なエネルギーが出るというか、一歩踏み出してくれた人を見るとみんな盛り上がるみたいなところありますよね。まわりも引き締まる。グッと来るという感じはありますね。

ーーー パッションのものは記憶に残りますよね。

ikoma アーティスト見ていて思うのは、初ライブのアーティストって何か不思議なことが起こるというか、不思議なオーラが出るなとよく思います。
ある程度ライブをするとなんとなく方向性というか、だんだんわかってくると思うんですけど、それ以前に初めてステージに上る人というのは、正解がないから普通のアーティストとか、普通のライブハウスの人が見たらやらないこととか、削ぎ落とされてない部分がけっこう出るなと思っていて。
こういうのを僕は大事にしていて。前も1000人規模の野外フェスに短歌作家として活躍してる方なんですけど、出てもらったことがありました。ステージに上ったことはないと言っていたのですが、連絡のメールのやりとりでも感じるものがあったので敢えて後ろのほうのいい順番で出てもらいました。
イベントを超きれいに丁寧に整えるよりもギャンブル要素が一箇所あると、ピリッとするなと思ったら2日間の中でかなり評判がよくて。

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ーーー 何をやったんですか?

ikoma マイクを一番真ん中にまず置きつつ、また別のところではマイクスタンドを下に折ったようなマイクを設置して。まずは立ってるマイクを使いながらしゃべって、急に移動して正座しながらしゃべるみたいなことをしていて。
持ち時間の10分間が妙なオーラが出たし、不思議な雰囲気になりましたね。その日、錚々たるラインナップだったんですよ。町田康さんだったりとか、ほんとにヒップホップの人達も出てたんですけど、ステージで何回も経験したような人たちがたくさん出てる中で1〜2番目ぐらいにSNSで評判だったんですよね。すごいことが起こるんだなって。

ーーー  不確定なものがあるイベントはワクワクしますね

ikoma 不確定は最高ですよね。どこかでそういう要素を入れると自分もピリッとするし、けっこう今のところがそれがドン滑りすることがなくて、いい感じに噛んでいる気はしますね。

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ーーー ひとりでマイク2本とかありえないセッティングで技術スタッフは大丈夫でした?

ikoma PAさんはむっとしてますよね。それを僕が一生懸命すみませーんって言って、主催者は出演者を立てなければいけないし、PAさんの気持ちもわかるからPAさんに頭さげつつ、そのセッティングを通すみたいな。

ーーー 技術の人ちょっと怖いですもんね。

ikoma 照明さんもPAさんも怖いですよ。とあるホールで電源タップを貸してほしいんですけどって言ったら事前に聞いてませんって言われました。

ーーー カルカルは電源タップを勝手に引き出しから使っても何にも言われないですよ。

ikoma それすごいありがたいですね。

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はぐれものの集まりだから、基本ウェルカム

ーーー まわりはどんな感じなんですか?

ikoma そもそもオープンマイクとかポエトリーリーディングの人たちっていろんな界隈から集まって人たちで、はぐれものが集まってるんですよね。だからみんな個で動いているというか、あまり村っぽくならないというか。個の集合体みたいなところがあって。
だからこそ外の人たちがマイク握る時はウエルカムな感じで迎えてくれる。拍手もすごいしますよね。

ーーー 最高ですね

ikoma ポエトリーリーディングはたまたまお客さんとして行った会場で、こういう界隈があることを知って、そのときもオープンで30人ぐらいの小さなバーでやっていたイベントなんですけど30人みんなバラバラの服装だし、個性が強いんですよね。誰も浮くこともなく、弾かれることもなく、当たり前にいていいって居心地の良さが独特で。

ーーー 通りすがりの人でも受け入れちゃう

ikoma むしろマイク握った時点で歓声が上がるみたいなところはりますよね、

ーーー 人生のいいところを体験できる感じですね。

ikoma ポエトリーリーディングを発表してる人たちはそうはならないし、いいじゃん!基本いいじゃん!グッド!みたいな感じになります。

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イベントについて

ーーー 今回のイベントについておしえてください。

ikoma 「SHIBUYA グランドスラム」という賞レース形式のものと、「想いをマイクに!」という自分が今思っていることを自由にマイクを握って言う2つのコーナーです。どっちもいま募集しています。

ーーー どんな方にでてもらいたいとか、希望はあります?

ikoma 「想いをマイクに!」のほうは渋谷渦渦の始まりの部分ともつながると思うんですけど、閉塞感がある中で、コロナで集まりにくい状況の中でモヤモヤした気持ちを持ってる人はたぶんいると思うので、そういう人たちにマイクを持って発信したいことがある人が出てくれたらいいなと思っています。何を言ってもいいので、そっちのほうにもエントリーしてほしいです。
賞レースのほうはこういうタイミングだから、アーティストも活動する場所がなかったりすると思うので、参加して名を挙げるぞという人が出てくれたら嬉しいかなと思います。

ーーー ゲスト審査委員が豪華

ikoma せいこうさんと小宮山雄飛さんと、渋谷ラジオの西樹さんが審査委員で入ってくださいます。せいこうさん、何をおもしろがるのかな。リテラシーが高いことをやってもうれしそうだし、全く関係ない飛び道具を持ってきてもせいこうさん喜びそう。


今回はライブでのイベント観覧に加えてリモート配信チケットもあります。

 

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