渋谷ガチャガチャナイト
2021年3月26日 Open 16:00 Start 17:00 End 19:30(予定)
出演:日本ガチャガチャ協会会長 小野尾勝彦 ・ザリガニワークス ・現代美術二等兵 ・乙幡啓子 ・林雄司(DPZ) ・ガチャガチャメーカー中の人 【特別出演】ザ・リーサルウエポンズ
リアルイベント:3,000円(税込/日本ガチャガチャ協会会員証と特製ガチャ一回権付き)
オンライン配信:1,500円(税込)
渋谷渦渦*で採択されたイベントがいよいよ3月にカルカルで開催されます。
*(東急主催、東京カルチャーカルチャー協力のイベント企画公募プログラム。)
3つ採択された企画のうち、「渋谷ガチャガチャナイト!」について日本ガチャガチャ協会の3人に話を聞きました。
イベント内容の前にそもそも今のガチャガチャはどうなっているのかを聞いたら、予想以上のハードな世界でした。
ではどうぞ。(インタビュー・構成:林雄司)
ザリガニワークス
「コレジャナイロボ」「土下座ストラップ」などの玩具の企画開発、デザインを行うユニット。ガチャガチャ界のヒットメーカー
小野尾勝彦
日本ガチャガチャ協会会長。ユージン~タカラトミーアーツを経て独立。ガチャガチャに関わって26年。
3人が今回のイベントの主催です。
ーーー 基本的な質問ですが今ガチャガチャって何種類あるんですか?
小野尾 毎月300シリーズぐらい出ています。メーカーが30社あるんですよ。前は5〜6社ぐらいだったんですけど、それがもう30社。
ーーー 1シリーズは何個ぐらい作るんですか?
小野尾 だいたい300円商品だと3万個とか6万個が普通。売れると10万個越えたりとか。ほとんど300円シリーズです。
この業界に入っちゃうと、メーカーって毎月必ず商品を出さないとダメなんです。
ちっちゃい会社だと5アイテムとか、大きい会社だと30アイテムぐらい出すから、それを毎月出さないと忘れ去られる。
武笠 毎月出さないと問屋さんに忘れ去られる。問屋さんの発注によって製造数を決めるある程度の受注生産なんですよ。なので、情報書って問屋さんに送り続けてないとメーカーとしての存在感というか。
小野尾 最近ダメだなって思われる
武笠 しかし問屋さんも賭けなので、あんまり突拍子もないメーカーとか企画とかは手を出しづらい。
小野尾 メーカー側からすると、ザリガニワークスさんは15〜16年ぐらいのブランドをやっているからみんな知ってるんですよ。だから代理店とかもザリガニワークスさんねって、そうするとある程度数が読める素晴らしい人達。有名。
ーーー 数を持ってるんですね。
小野尾 築き上げた。
武笠 僕ら売れても全然もらえないですから。
小野尾 2人でやってるからいいけど、人数多くなったら絶対にできないビジネス。
ーーー ザリガニさんはガチャガチャに関わって長いですか?
小野尾 長いですよね。独立してからずっとですから。
武笠 ザリガニワークス立ち上げてすぐに商品化したのがこのバグスGT。カブトムシとかクワガタをモチーフにした車なんですけど。プルバップで裏ににマグネットが付いているので、ホワイトボードとかにくっついてビューって走る。これがたぶんザリガニワークス最初のガチャガチャで16年ぐらい前。
坂本 懐かしいな。すごい真面目に作ったもん。
武笠 めちゃめちゃ真面目に作りましたよね。
ーーー ヒットしたのはどれですか
武笠 土下座のシリーズですね。
坂本 外せないね。
武笠 売れましたね。
坂本 業界的にも傾向の転機になった。自分で情景を作って写真を撮ってネタにするみたいなのとか。そういうのに使える雑貨としてのガチャみたいなのが出落ち系って後にいわれるようになるんですけど、始まりかもしれないですね。
ーーー それまではどういう感じだったんですか?
小野尾 バグズGTからずっと
武笠 子供向け。おもちゃって感じですよね。
小野尾 土下座ぐらいから大人の人がガチャガチャを買い始めたんです。
武笠 メーカー側の戦略もありましたよね。少子化に向けてターゲットを大人にシフトしていくっていう意向があって。
坂本 順番に置いていくとわかりやすいコントラストになる。
ーーー 土下座はどれくらい出たんですか?
武笠 シリーズ累計310万個ぐらい。
小野尾 すごいよね。
武笠 最初の、第一弾のやつが40万個ぐらい売れたのかな。
ーーー どこかで手応えがあったんですか?
小野尾 最初は注文来てないですもんね。6万とか。
武笠 3万とか6万で。
小野尾 少なく出すじゃないですか。その後いきなりドーンと売れてどこにもなくなって。業界がざわつくというか。このシリーズ行けるじゃんってなると、ワンロット40万とか作るようになって。
坂本 最初の生産数は当時のキタンクラブの採算ラインに行ってなかったんですが、社長がこれ絶対に売れるからそれでもやるって言って、出したら現場でそういうことになった。
ーーー サクセスストーリー。その後の展開は?
武笠 第二弾は夏の土下座。
坂本 渚の土下座。
武笠 なんで季節ものにしたのかなって今でも思うんですけど。アロハシャツ着てて。サーフボードに乗ってるやつもあるんですけど。ふざけた方向に行きました。冬の土下座もありました。
坂本 冬のソナタのタイミングだったよね。あと土下座ストラップ「寿」というのも出して。
武笠 結婚式場をテーマにしたやつとか。途中にキャラクターコラボでキン肉マン土下座が出て、それがすごく相性が良くて、またそれがかなり売れましたね。
武笠 土下座も実はヒットした時に雑貨が出たんですよ。土下座のライセンスを借りたいって。
ーーー 土下座のライセンス!
武笠 土下座クッションとか、土下座コンドームとか、各メーカーさん酷い企画を出してくるんですよ。面白がって。土下座してる人の背中でタバコ消すって申請書が来たりとか。
ーーー OKしたんですか?
武笠 しましたね。だいたいOKしてましたね。
ーーー どんな人が買っているんでしょう
小野尾 女性が多いですね。25、26ぐらいですかね。OLの方が多くて。ザリガニさんのファンであるとか。
武笠 でもガチャガチャファンというか、常にガチャガチャ売り場をチェックして、たぶん僕ら関係なく面白いものを買うっていう人が多いんじゃないですかね。
ーーー ガチャガチャってどこか有名な場所があるんですか?
小野尾 自分が住んでるところのテリトリーがあって、そこを必ずチェックしに行って、ほんとに好きな人は店員さんに聞いて。
坂本 数カ所持ってますよね。自分が行くところみたいな。家電量販店とイオンと。
小野尾 毎月商品が変わるから、毎月毎月。
武笠 狩場を持ってるんです。侮れないのがくら寿司の待合室とか、スシローとか。
ーーー 面白いのがあってもすぐ消えちゃったりしますよね
武笠 最近再販するメーカーも多くなってきたんですけど、昔はほぼなかったんですよね。再販すると、すごく売れたんだなって印象です。よっぽどのことがないと再販にはならないですね。
小野尾 再販するとけっこう残ったりするんです、最後。そのさじ加減が微妙で。もう一回行けるんじゃないかなって思うじゃないですか。それでだいたい失敗するところが多い。
最近だと鬼滅の刃で、どれぐらいまでアクセル踏むか。いつブレーキを踏むか。一時期ニュートラルだったんですけど、映画が始まったからトップになって。あれをいつ止めるのかすごい難しい。
坂本 引く時の早さがすごいんですよね。
小野尾 年明けがやばいんですよ。鬼滅は年明けやばいんじゃないかって思ったけど、まだ生き残ってる。最近だと、チコちゃんが冬に紅白出たからすごい仕込んでたんですけど、ガチャとか。年明けたら全然売れなくなった。
武笠 すって売れなくなりましたね。
坂本 在庫の山。
ーーー 小野尾さんの経験で残ったものありますか?
小野尾 一番残ったのはレッツ&ゴー!!っていう、あれを100万個作って、年明けに全く売れなくて。90万個残しました。だから年明けがゾクゾクするんですよね。鬼滅なんてこんなに売れてるからドキドキもんですよ。妖怪ウォッチもそうだったじゃないですか。ライセンス3年間のジンクスがあって、4年目ぐらいでいきなり落ちるんです。
小野尾 だんご3兄弟ってあったじゃないですか。あれは正規のものが出る前に偽物が出すぎちゃって正規のものが全然売れなかった。
ーーー 偽物ってあるんですか?
小野尾 今はそんなにないですね。
武笠 ギリギリかわしてますよみたいな、「鬼」の缶バッチとか。市松模様の緑と黒の模様で「鬼」とか書いてるやつ。
小野尾 すれすれでやってるね。マスクもあるもんね。
武笠 それがシリーズ化してる。
小野尾 マスクとか缶バッチとか。すげー売れてる。
坂本 鬼、滅、刀って書いてある。
武笠 最後「刃」としないところが微妙にかわしてるのかな。
小野尾 それが楽しいというか、面白いですよね。またすごいの入ってるって。それをみんなガチャ業界許してる。
坂本 ガチャらしいねってなっちゃうんですよね。
武笠 小野尾さんのスライムがなくなってた話がすごく好きなんです。昔、ガチャガチャでスライムがあって、それを倉庫に在庫してたらしいんです。ある日持ったらダンボールがすごい軽くて。開けたらスライムが蒸発していたという。
小野尾 スライム入りの小さいバケツ作って、30万個やらないと作れないっていうから30万個頼んで15万個だけ受注がとれたから売ったんですよ。
あと15万個次の夏に売ろうかなとか考えて倉庫に取りにったら、倉庫から電話かかってきた。「小野尾さん、カートンがめちゃくちゃ軽いんだけど!?」って。
開けたら揮発していて何もなくなってた。カピカピになっていて。ゴミ箱のグリーンのバケツしか残っていなかった。
ーーー夢みたいな話ですね
小野尾 15万個が全部何もなくなってる。何百万ですからね。
ーーー ガチャガチャってカプセルに入れて保管するんですか?
小野尾 カプセルに入れて保管しますね。カプセルには通気口がついてて。
武笠 万が一飲み込んでも最悪空気が通るように。
小野尾 昔はあいてなかったので逆に爆発したりしました。ガチャガチャのマシンの中がすごく暑くなるんですよ。夏になると。スライムみたいな伸びる液体を瓶に入れて「謎の液体なんとか」みたいなものをやったら爆発してガチャガチャのなかが血の海になった。今じゃ絶対にありえないけど。
小野尾 カプセルでレンズ状になっちゃうから。夏場とか温度が60度ぐらいになっちゃって。今は室内だけど、前は外に置いてあるじゃないですか。駄菓子屋の前とか、高熱でいきなり爆破ですよ。「小野尾さんマシンの中が血の海なんだけど?!」って。
子どもとかがガチャガチャに手を突っ込んで抜けなくなったりとかも多かったんですけど、今は蓋がついていて手が入らなくなったんです。
前のマシンは手が入れられちゃうから、ズルズルズルって。そうすると手が抜けなくてレスキューが来る。新聞とかに「ガチャガチャに子どもかまれる」って書かれて。
ーーー 今のお客さんの20代女性はそんなことはしませんね
武笠 ガチャ機に手を突っ込んでいる女性は見たことありませんね。
小野尾 全然商品もちゃんとしているし、爆発しないし。変な商品ないもんな。そういう意味では信用されるようになったかもしれないです。ガチャガチャが。
坂本 確かに。
小野尾 前はガチャガチャっていうと怪しいものというか、何が出てくるかわらないし、親から毛嫌いされてますけど。
坂本 買ってもらえないものが手に入るっていう感覚はあったかもしれいですね。オイルライターとか。
小野尾 ほんとにオイルが付きますからね。
坂本 武器とか。
武笠 鉄素材は魅力的でしたね。
小野尾 電気ショックのカチカチやるやつとか。あれも平気で入れてましたからね。
武笠 今はだいぶ市民権を得てますよね。
小野尾 いい感じですよね。
ーーー 今そういうものは一切ないんですか?
小野尾 排除されちゃいましたね。お店に入れられなくなっちゃった。子ども用だったらSTマークついてじゃないと入れないとか。
ーーー良かったのに出なかったものはありますか?
小野尾 けっこうあるね。
武笠 めちゃめちゃあります。たとえばこれとか。
坂本 最右翼だよね。
武笠 めちゃめちゃ売れなかった。革新的だし、最高だってキタンクラブさんと話して。
坂本 カプセルアドベンチャーというタイトルで。
武笠 今カプセルレスっていう、カプセルを使わないで商品そのものが出てくる企画が流行ってるんです。ダンゴムシ*以降。
* 大きなダンゴムシがそのまま出てくるカプセルトイ。大ヒットした。
武笠 それより数年前にカプセルを有効利用しようという企画で、カプセルがコックピットになっていて、中に入っているパーツをくっつけて遊ぶという商品です。パーツを沢山集めるとロボットにもなる。
坂本 作る意義があるというか。メーカーの正義感みたいな気持ちで作ったんですけど。なかなか問屋さんの理解が得られなかったというか。SNSでも話題になっていて。
小野尾 話題になってたよね。
坂本 これはすごいってなってたんですけど。
武笠 どこで売ってるかわからないってなって。ほとんどお店に並ばなかったんです。
武笠 これもけっこう売れなかったですね。
坂本 これ今見るとすごい質感いいね。
武笠 コレジャナイ寿司って言うんですけど。その頃、インバウンド需要がすごくあったんですよ。だから、外国人向けにコレジャナイ寿司ということで、”これ寿司じゃないよ”っていうのを教えるために作りました。
武笠 寿司の懐って深いじゃないですか。食べ物ってなるとだいたい寿司になっちゃうので、こういうものですね。天狗のお面とか富士山とか、こういうものをシャリに乗せて寿司じゃないですよっていうのをわざわざフィギアにして、コレジャナイ寿司っていうタイトルで出したんですけど。
小野尾 3年前ぐらいから。たまに見かけるよな。
武笠 でもちょっとこれはひねりすぎて外国の方がわからなかった。
坂本 これじゃなさが伝わらなかった。
武笠 考えてみたら旅行に来て、その国の名物を見たいって思うのにいきなりひねられたもん見せられてもわかんないですよね。
武笠 一部の人にはすごい受けたんですよ。
小野尾 さわってみないとこの良さはわからない。
坂本 富士、力士は評判良かったです。
武笠 僕らもノリノリで開発してた。
ーーーこれなんですか?串カツみたいな。
武笠 串カツ田中さんとのコラボ商品で、縁起物をさらに揚げて、運気アゲアゲキーホルダー。これはカプセルの中に串カツ田中の割引券が入っているという画期的な商品だったんですよね。10%OFFのクーポン券が入っているので、200円で買っても串カツ田中さんに行って2000円以上飲み食いするとクロになる。
坂本 錬金術ですよ。
ーーー 今度のイベントは、こういうのが一堂に会する?
武笠 今ご活躍のメーカーさんが数社揃うという感じですね。筐体は20台ぐらい出るので各社の一押しが40商品ぐらいは並ぶと思います。
武笠 今回のために作った缶バッジ、ガチャガチャ協会が作った缶バッジがあって。ガチャガチャの父と呼ばれる人の缶バッジが出てきます。
ーーー ガチャガチャの父は何者なんですか?
武笠 LOハードマンという名前で、ガチャガチャってアメリカのガムボールマシンが最初なんです。
小野尾 アメリカ人でガチャガチャの商品を日本から仕入れる商売をしていて。ガチャガチャのなかみは1930年代から日本で作られていたんです。
もともとハードマンさんはピーナッツをこの商品と混ぜてマシンに入れていた。1セントで入れるとジャラジャラって出てくる。ただカプセルに入ってないから、おもちゃとピーナッツが一緒に出てくる。
武笠 ピーナッツと直接混ざってるってことですね。
ーーー 雑ですね。
小野尾 不衛生なのと、おもちゃでも売れるんじゃね?っていうので、カプセルを作り始めるんです。
そのあたりも今度のイベントで紹介しようかと。ガチャがなんでこういうふうに広まったのかとか話をしたらなと。なんで今ガチャがこんなになっちゃってるのかとか。
ガチャガチャの裏側の話からようやくイベントに繋がりました。ガチャガチャを遊ぶ側で本当に良かった!そんな私たち消費者のためのイベントです。
では情報です!
2021年3月26日 Open 16:00 Start 17:00 End 19:30(予定)
出演:日本ガチャガチャ協会会長 小野尾勝彦 ・ザリガニワークス ・現代美術二等兵 ・乙幡啓子 ・林雄司(DPZ) ・ガチャガチャメーカー中の人 【特別出演】ザ・リーサルウエポンズ
リアルイベント:3,000円(税込/日本ガチャガチャ協会会員証と特製ガチャ一回権付き)
オンライン配信:1,500円(税込)
ザ・リーサルウェポンズ プロフィール
2019年1月、突如として出現。狂気の発明家アイキッドが最終兵器サイボーグジョーとともに、1980年代~1990年代のカルチャーをテーマにした衝撃エンターテインメントを展開する。
Youtubeチャンネル https://youtube.com/c/IROMONRECORDS
公式Twitter https://twitter.com/TLW80s
公式サイト https://www.tlw80s.com/
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