プロ・アマ問わずお笑い実力者が入り乱れて大喜利力を競う、このイベント。そこで主催者の寺田寛明さんにイベントの概要から大喜利の魅力を聞いてみました。
聞き役・構成:小野洋平(やじろべえ)
寺田寛明
マセキ芸能社所属のピン芸人。 R-1グランプリ2021、2022決勝進出者。現役塾講師。 過去約10年に渡り渋谷や新宿で数々の大喜利イベントを主催している。
小6から始まった大喜利人生
――「大喜利渋谷杯」は、どんなイベントですか?
寺田さん:
プロの芸人と一般参加者が一緒に大喜利をするイベントです。出場者は私がオファーした芸人20名と、エントリー募集で集めた60名の計80名。一般参加者の応募が多かった場合はWEB予選で出場者を決めます。
――どうしてこのイベントをやろうと思ったんですか?
寺田さん:
私は芸人と一般参加者が一緒に大喜利をする「大喜利千景」というイベントを10年前から主催してきました。イベントを始めた当時は「大喜利は芸人がやるもの」という認識で、アマチュアの方はアマチュア同士で大会を開催しており、交流する機会はありませんでした。これは、もったいないなと。
――もたいない? なぜですか?
寺田さん:
芸人でなくても、面白い人はたくさんいます。だったらプロとアマを分けず、一緒に面白いものをつくりたいと考えたんです。それに、私自身も大喜利をきっかけに芸人になったこともあって、“面白い素人”の存在をもっと知ってほしいという思いもありましたね。
――寺田さんはいつから大喜利をやっているんですか?
寺田さん:
「爆笑オンエアバトル」という番組のファンサイトで大喜利の掲示板があったんです。管理人がお題を出し、採点も行なっていました。小学校6年生のとき、それに書き込んだのが、私にとって最初の大喜利でしたね。ちなみに、芸人になって初めて出たイベントも、大喜利のライブです。その後も、先ほどお話しした大喜利千景など、さまざまな大喜利イベントを開催してきました。
――例えば、どんなイベントを?
寺田さん:
例えば、バトル形式の「大喜利3on3トーナメント」。名前の通り、3人1組でチームを組んで大喜利対決をする企画です。問題が終わるごとに客席からの拍手投票で勝敗を決めていました。ラップのMCバトルみたいな感じですね。大喜利千景の企画で盛り上がったのは、「笑点リハ」ですね。『笑点』(日本テレビ系列)に急に呼ばれたときでも対応できるよう、ハーサルをしておこうというものです。笑点の大喜利って、それぞれの人にキャラクターがあり、司会のフリから会話的に返すじゃないですか。だから、イベントでも私が勝手に出場者にキャラクターを振り分け、笑点風に答えてもらいました。
あとは「実話大喜利」。これは自分が見たことがあるもの、体験したことでしか回答してはいけないルールです。例えば「こんな走馬灯はいやだ」というお題だとしたら、実体験のなかからしから回答できないので、いかに面白いエピソードを持っているかが勝負です。
――キャラや実話など、テーマを設けると考えやすそうですね。
寺田さん:
「実話大喜利」に関しては、出場者の人が面白いエピソードをいっぱい持っているとを聞いたんです。だったら、大喜利でやってみようかと。フリートークでもいいんですけど、トークテーマを大喜利で出したら、より面白くなるかなと思いまして。
――視点が構成作家さんのようですね。
寺田さん:
出場者がどうしたら面白くなるかは当初から考えていますね。昔のチラシを見返すと「Aマッソ」や「錦鯉」など、今売れている芸人さんが出ていて嬉しくなります。なので、「大喜利渋谷杯」を機に、さらに大喜利のイベントとしての認知を広げ、大喜利カルチャーを発信していきたいと思います。
M-1・R-1のファイナリストも出場
――今回、出場する20名の芸人さんはもう決まっているんですか?
寺田さん:
何名か返事待ちですが、ほぼ確定しています。昨年M-1グランプリに出場したモグライダーの芝さんはダメ元でお声掛けしたのですが、まさかのOKでしたね。
――芸人さんは準決勝からの出場ですが、ものすごいプレッシャーですよね。プロとして負けられないというか。
寺田さん:
たしかに、どういう気持ちで臨むんでしょう(笑)。ただ、WEB予選と第一予選の狭き門をクリアした人が上がってくるので、一般参加者もめちゃくちゃ面白いと思います。なかには、ふざけることに振り切った芸人も出そうですね。決勝の枠も少ないため、審査をするお客さんも決めるのが難しいと思います。
――一般参加者のなかにはだと、常連の人もいるんですか?
寺田さん:
「大喜利千景」の常連さんはいますね。ただ、今回は私からお声掛けするのではなくWEB予選で出場が決まるため、どうなるのかわかりません。常連組もエントリーしてくれるといいのですが……。とはいえ、常連組以外の全然知らない人を見たい気持ちも強いです。今まで知らなかった面白い人に会うためにWEB予選の枠も広くしているので。もちろん、WEB予選の審査は名前ではなく回答で決めるので、全員知らない人の可能性もありますよ。
――どんな方に来てほしいですか?
寺田さん:
例えば、ミュージシャン、ラッパー、演劇の人など、芸人以外のさまざまなジャンルの人に参加してもらいたいです。別でなにかしらの活動されている人だからこそ、出せる回答もあると思うんです。特に演劇の人は絶対に向いていると思います。キャラクターに入り込めますし、発声も十分でしょうから。
――なるほど。応募ってけっこう来ていますか?
寺田さん:
本当にたくさんのご応募をいただいています。常連組はまだ全然来ていないけど、おそらく3月7日の募集期間ギリギリで回答してくれるんじゃないかと思います。
――やはり、時間をかけた方が面白い回答は出ますか?
寺田さん:
人によると思います。すぐに回答して面白い人もいますからね。だから、誰もがじっくりと時間をかければいいというものでもないのかなと。ただ、同じような答えでも書き方や語尾によって面白さが変わってくるので、そこは工夫できるポイントだと思います。
――ちなみに、上手い人の特徴ってあるんですか?
寺田さん:
あると思います。近いうち、通過者の回答も公開しますね(編集注:この項の最後にあります)。 WEB予選のお題を例にしてみましょうか。
寺田さん:
一問目の回答って、正直なんでもありなんです。慣れていない人は、既存の面白いものをそのまま書いてしまいがちですね。逆に慣れている人は、ひねった回答を出してきます。この世に存在しないものを長々と書いてきたりするので面白いんですよ。
――だから、文章だけでもある程度は実力が分かると?
寺田さん:
そうですね。お題の意図として、一問目は「オリジナルの面白さ」を表現する力を見ています。言い換えると、その画面が想像できるような変な文章が書けるかどうか。また、二問目は、「小学生」と「ホストクラブ」という2つの要素を掛け合わせているので、大喜利としては答えやすいと思います。なので、二問目で短いスパっとした回答が出せたら強いと思いますよ。
――問題の意図があったとは。答えやすい方で上手な回答をした方が良いんですね。
寺田さん:
一問目はなんでもアリすぎるので、慣れていないと難しいかもしれませんね。ちなみに、バトルの時と「大喜利千景」のようにシンプルに盛り上げたい時とでは、お題も変わってきますよ。
――どう違うんですか?
寺田さん:
バトルの際に大事にしているのは公平さ。例えば、アニメや芸能人のお題を出してしまうと、知識の差が出てしまいます。『ドラえもん』くらい歴史のある作品なら大丈夫ですけど、『鬼滅の刃』とかだと意外とまだ観てない人もいたりしますから。あとは、答える人数によってもお題を変えています。
――というと?
寺田さん:
単語で答えられるお題を大人数でやると、場がめちゃくちゃになります。例えば「バレンタインデーでもらって嫌だった物は?」というお題だと、名詞でしか答えられないじゃないですか? それを大人数で行った場合、変な単語を言い合うだけの時間になってしまい、収集がつかなくなってしまうんです。
――さすが、多くの大喜利イベントを開催してきた寺田さんならではのノウハウですね。では、第一予選は10名と人数が多いので、二問目のようなお題になりますかね?
寺田さん:
そうなると思います。少人数なら一人ひとりの回答に注目する時間があるので、単語で答えられるお題でもいいんですけどね。
――準決勝、決勝と上がるにつれて、お題の難易度も上がってくるんですか?
寺田さん:
第一予選は一般参加者だけなので、答えやすいお題にするつもりです。ただ、芸人が参加する準決勝からは迷いどころです。というのも、芸人と一般参加者では、答えるときのフィジカルの差があると思うんです。芸人は声量が大きかったり、変な声が出せたり、モノマネもできます。また、単純に文章ではなく、言い方が面白いケースもありますから。
準決勝・決勝は三問ずつあるので、一問くらいは芸人に有利なお題を入れてもいいかなと思っています。ただ、一般参加者が不利にならないようにバランスを考えて、うまくイベントを盛り上げたいですね。
――今回出場される芸人さんは、大喜利が得意な人たちばかりですか?
寺田さん:
そうですね。芸人によっては大喜利が嫌いなケースもあるので、今回は大喜利イベントでご一緒したことのある人を呼んでいます。例えば「赤嶺総理」はもともと、はがき職人出身なので芸人特有のフィジカルがあるわけではないですが、答えがわかりやすくて面白いと思います。
お題①への回答
・洗濯機から顔を出してる渋谷区長が「渋谷を洗い流す!」と言っている(せんだい)
・全然知らない人がうがいに失敗している(田んぼマン)
・爆睡中のぬりかべの上で鬼太郎がコールドストーンアイスを作っている(鉛のような銀)
・終電に駆け込んだ男性がふと顔を上げると他の乗客はおらず、窓の外には真っ暗な光景が延々と続いている……という映像に「渋谷駅に、中央線は通っていません。」と出る(直泰)
・村上春樹のレイアップシュート(ベランダ)
お題②への回答
・下校しながら蹴ってた石を席まで持ってこられて、石にもお金が発生していた(きりまる)
・お世辞を言う前に目をギュッとするのがたまらない(六角電波)
・面倒な客が裏で「7の段」と呼ばれている(速水京香)
・さんま御殿くらい回してたあのおばさんがいなかったら全然成り立っていなかったのでは!?(宇多川どどど)
・「小学生の遊び場がたまたまホストクラブで」「たまたま作ったドリンクを」「たまたま客が飲んで」「たまたまお金を出して」「たまたま小学生が受け取った」ってことにしないと法律的にダメらしくて、でも、そういう法律のギリギリを未成年と一緒に攻めていけるのは楽しい(店長)
お笑いのプロじゃなくても勝てる世界
――当たり前ですけど、即興で面白い回答を出すのって凄いですよね。
寺田さん:
そうですね。今回は1問あたり4分の2問勝負なのですが、意外とやっているとあっという間なんですよ。なので、イベント前には4分の大喜利をやっておかないと考えすぎてしまい、2つくらいしか答えられずに終わってしまうこともあるんです。アスリートじゃないですけど、慣れている人は4分の身体に仕上げてきますね。
――訓練というか、大喜利にも身体作りがあるわけですね。最後に、大喜利の魅力を教えてください。
寺田さん:
一般的には「笑点」や「IPPONグランプリ」など、芸能人がやるものだと思われています。でも、大喜利って一番身近に触れられるお笑いだと思うんです。お題とホワイトボードさえあれば、どこでも、だれでも簡単にできます。
以前、カフェの2階のスペースで大喜利イベントを行いました。そのとき、お笑い好きではない家族連れがいたのですが、小学3年生の女の子も参加してくれたんです。そしたら、その子がめちゃくちゃ面白くて。お笑いの文脈じゃない回答でも、どかどかウケて。
――お笑いの文脈を無視することが面白い回答を出す方法の一つなんですか?
寺田さん:
基本的にはお題に対して、真正面からちゃんと考えた答えがウケやすいし、安定して強いです。正直、大喜利はやればやるほど、こういう答えがウケるってわかってくるんですよね。こういうお題には、こういう答え方をするみたいな。
でも、その流れのなかで、どうやって考えたの? みたいな回答を出されると笑ってしまうんですよ。その女の子は「こんなマンションは嫌だ」のお題に対して、「バーカバーカ駅にある、バカなマンション」って回答で、ホワイトボードには「バカ」の形をしたマンションを書いていたんです。どう考えたんだって……。
――すごい爆発力がありますね。
寺田さん:
それを目の当たりにしたとき「大喜利って、今までお笑いに触れたことのない人でも十分やれるものなんだ」と思えたんです。だから、もっと学校で流行ってもいいなって。普段あまり喋らない人でも、大喜利で手を挙げたら、その時間はその人のものになるわけじゃないですか? 自分の考えたことをみんなが聞いてくれる時間ってなかなかないと思います。
例えば、いきなり芸人のように舞台で3分のネタは厳しいと思いますが、一回だけ回答するのは勇気を出せばできると思うんです。そういう意味でも手が出しやすいお笑いだと思います。今まで芸人以外の回答を見ていても、私には一生考えてもこの回答は出せないだろうって回答もいっぱいありますから。大喜利にはその人らしさというか、その人の人生がそのまま出る感じがします。
――子どももそうですが、ご高齢の人にも出場してほしいですね。
寺田さん:
見たいですね。性別や年齢を超えて、みんなで大喜利をしたら面白そうです。先ほどの子どものようにセオリーを無視した、突拍子もない回答が出てきたら、芸人もお手上げです(笑)。そこがお笑いの深さですよね。
――なんだか夢がありますね。
寺田さん:
参加することで自分も楽しめて、みんなも楽しませることができるのは大喜利の魅力だと思います。また、今までお笑いに全く触れたことない人でも勇気を出せば、プロの芸人に勝つこともできます。勉強、スポーツ、音楽など、さまざまなジャンルを見渡しても、そんなのなかなかないと思います。ぜひ、プロも一般参加者も入り乱れて対決する「大喜利渋谷杯」を観にきてください。
ということでイベント詳細です!
2022年3月20日 日曜日 OPEN 17:30 START 18:00
前売チャージ券は売り切れているので配信でご覧ください。
配信チケットの購入方法は近日公開。東京カルチャーカルチャーのサイトを要チェックのほどよろしくおねがいします。