
ライター 井上マサキさんの記事をまとめた「絶対に見たことがあるアレの正体、聞いてみた」が出版されました。
そういえば見たことあるけどよく知らない「アレ」を深掘りして、読み終わるころには世の中がくっきり見えてくる本です。
そんな本の話を井上さんに聞いてみました。動物園で。
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顔を出すインタビュアー
林:
井上さんの取材スタイルってNHKのテレビ番組「探検ファクトリー」に近いですね。
井上:
ああ、そうですね。
林:
インタビュアー自ら体験してびっくりしてるっていう。
井上:
デイリーじゃなかったらこんなことしないですよ。普通インタビュアーをするときは個性全消しでやってるんで。
林:
横棒になったりしますもんね。インタビュアーの発言はね。
井上:
そうです、こんな顔でリアクションなんかしてないですよ。

林:
ビリビリすごいですもんね。
井上:
ほんと痛いんですよ。
林:
これにこの後ですけど、オリローもやって
井上:
それもあって、あの表紙に僕の顔が入っている。
林:
そうなんですよね。
井上:
「この人がやってますよ」ってわかるようにって、イラストレーターさんとブックデザイナーさんが考えてくれました。

林:
最後の特別編はこの本ができるまでの話になっているのがしゃれてる。
井上:
たぶん本を作ったことある人だと信じられないと思うんですけど、全部できてからやってるんですよ。
林:
そう考えるとすごい
井上:
本文もゲラも全部できてからカバー作るじゃないですか。
林:
確かにそうですよね
井上:
カバーの話を聞いて書いて、責了に滑り込ませてるんですよ
林:
本文がおわってからの行程が本文に書いてある謎
井上:
短期間でやってます
林:
最後に紙の話を書いてますけど、この紙、読みやすくないですか?
井上:
そうなんですよ。真っ白じゃないんですよ。ソフトクリームっぽい。
林:
めくりやすいし
題材からして意外
林:
この本、題材がまず意外なものが多いですよね。固形燃料とか目をつけた瞬間にそっかーっていうような。
ファミレスで店員さんを呼ぶアレ:呼び出しボタン
コンビニで強盗に投げるアレ:防犯カラーボール
旅館のお膳で火をつけるアレ:固形燃料
袋に入ってる「たべられません」のアレ:脱酸素剤
持ったり振ったりして応援するアレ:スズランテープ
音楽の時間に奏でるアレ:鍵盤ハーモニカ
バラエティ番組でよく見るアレ:ビリビリ椅子
叩くとピコッて鳴るアレ:ピコピコハンマー
ロードサイドで見かけるアレ:大型屋外看板
ガソリンスタンドで洗車してくれるアレ:洗車機
保育園児たちが乗っているアレ:おさんぽ車
火をつけると言ったらアレ:チャッカマン
「プチプチ」と言ったらアレ:気泡緩衝材
アイスと言ったらアレ:ソフトクリーム
全員使ったことある、あのゴム:輪ゴム
井上:
はいはいはい。
林:
あと保育園児が乗ってるおさんぽ車
井上:
デイリーっぽさのひとつだなとは思ってて。全然意識してなかったけど、言われてみるとあるっていう。
林:
「あるー!」っていう。
井上:
はっきり概念として言葉になってないんですけれど。

林:
「いやげもの」とか「買ってよかった」みたいなワンワードで言える言葉があればいいんですが。いまは「あるー」としか。
井上:
おさんぽ車は「あるなぁ」ですよね。
林:
名前すら知らないですね。
井上:
そう、あの、あれ。
林:
で、ちゃんとみんな面白い
井上:
ですよね
林:
みなまじめに作っていて、頑張っても頑張んなくても給料一緒じゃないですか~?みたいな人が登場しない
井上:
そうなんですよ
林:
スズランテープのことを考えたことがなかった
井上:
実はスズランテープは2025年7月に生産終了してしまったみたいで。
林:
残念
井上:
最初掲載NGだったんですけど、 記録として残すということで今回載せていただいたんです
林:
記念だ
井上:
取材されたの初めてって言ってたんですよ。
林:
この本を大量に買って社員に配布してくれないですかね
井上:
固形燃料の会社さんはプレスリリースに出してもらいましたね。
林:
固形燃料もすごかったですもんね。あの器まで作ってたっていうのが。
古里さん 最初はもともと旅館にあった鍋で調理がされていたんですが、鍋底と火が近すぎたり、空気が入りにくかったりして、不完全燃焼がよく起きたんですね。(中略)
そこで「うちが鍋を作るしかない」とニイタカは立ち上がる。(p.73-74)
どの商品も開発に熱い話がある
林:
「はじめに」で「標識や電線やタイルの裏側で、これを考えたり作ったり設置したりした誰かがいるんだ。」と書いてますが、みんなすごく真剣に仕事してるんですよね。
井上:
そうなんですよね。
林:
朝から晩まで防犯ボールのこととかプチプチのことを考えている人がいる。
井上:
工場も動き続けているし。
林:
輪ゴムの会社の人も輪ゴムの普及のために手品をしますって言ってましたもんね。
井上:
チャッカマン作った会社の人は山で火がつくか調べるために富士山登ったり
ところがしばらくして、お客様から「高い山の上で火がつきにくい」という声が届いた。
どうも気圧の関係で火がつきにくいらしい。が、よくわからない。実際に現象を確かめるには、高い山に登ってみるしかなさそう。
そんな都合のいい山が……工場の近くにあった。しかも、日本一高いやつ。(p.227)
林:
真面目ですよね
井上:
お客さんから声があって改良する会社さんも結構あるんですよ。
林:
そういう仕様です、で済まさない
井上:
しっかり直さなきゃって何回も直す
井上:
ピコピコハンマーだって最初はハンマーの色使いだったら売れなかったっていう
林:
あの話すごく面白いですよね。痛そうだからって。
木島さん 実は最初のKOハンマーは、頭の部分が黒、持ち手が黄色というカラーリングでした。本物のハンマーに寄せていたんですね。それが逆に、ちょっと本気すぎたみたいで。
(中略)
木島さん 頭の部分を赤に、持ち手を黄色に変えたら、少しずつ売れ始めたんです。ところが売れ始めると、今度は類似品を出す会社が出てきまして……。(p.161-162)
井上:
赤とピンクにして、黄色にして
林:
大量生産するものだから、金型の変更で数十万とか百万ぐらいかかるのに。
井上:
そうですよね。そこはやっぱり醍醐味ですよね。

林:
産業って40年とか30年で入れ替わるって言うじゃないですか。30年前の大企業は消滅するみたいな。でもプチプチとか輪ゴムって永遠にありますもんね
井上:
中の商品とかは多分変わってたんです。
林:
そうそう。
井上:
アイスクリームコーンだって絶対なくならないですもんね。
林:
今ポテサラ入れたりなんか。
井上:
してますね。
林:
アイスクリームコーンがなくなることってないでしょうね。
井上:
食べれる器として。
林:
今後夏は暑くなるからアイスクリーム売れるだろうし、
井上:
豆腐だってなくなんないですよ。
隠れた歴史が見えくる
林:
この本、ソフトクリームが蕎麦屋で売れたとか、歴史として語られない現代史が出てきますね。
1950年代といえば、人々が街頭テレビで放送されるプロレスに熱狂していたころ。(中略)そこで東京下町の蕎麦屋も、客寄せのため店にテレビを置くようになる。
でも、プロレスが放送されるのは夜の20時。みんな夕飯を食べてから蕎麦屋に来ちゃう。肝心の蕎麦が全く売れない。
松島さん 蕎麦以外になにか売ろう、ということで、ソフトクリームを置いたんですね。お子さんにもどうですかと。すると飛ぶように売れた。(p.266)
井上:
確かに洗車機とかもそうですね。
林:
モータリゼーション
井上:
ちっちゃい歴史。
林:
社会が変わって使われるものが変わってくるみたいな。
井上:
ピコピコハンマーの話で、おもちゃで外貨を獲得してたとかね。
井上:
鍵盤ハーモニカも。学習指導要項で楽器を使って最初ハーモニカでやったけど、みんななんか使いにくくて、みたいな。
林:
歴史じゃないですか、全部。
井上:
「たべられません」(脱酸素剤)ができたことでお土産ができたとかそういう話ですね。
林:
むちゃくちゃ大事ですね。それね。
井上:
お土産持って帰れるのは「たべられません」のおかげなんですよ。
林:
日本人が戦後、会社勤めして生活に余裕ができて、観光に行くようになって、おみやげを会社で配る。
井上:
繋がってる。
林:
社会の歴史の一部分につながってますね。
井上:
ビジネス系の人から雑談に最適ですとか、ビジネスのヒントになりますよみたいな声もあります。

林:
呼び込みくんの音声を自分たちでデジタル化したのもすごい
井上:
当時はカセットがもうメインだったという背景が
林:
でもローランドとかヤマハみたいなことやってるんですよね。
井上:
ほんとそうですよね。アナログをデジタルにするのは。
林:
そうそう
井上:
まさかそれがあの「ぽぽぽぽー」に 入っているとはっていう
井上:
コロナ禍で逆転のストーリーも結構あるんですよ。
林:
固形燃料とか。
井上:
固形燃料の会社が実は消毒用アルコールを使ってとか
林:
けっこうニイタカさんのが多いですよね
井上:
フードコートで使われるワンタッチコールもですね。

阿蘇品さん いえいえ、ワンタッチコールがクリニックで使われるようになったんです。
坂本さん 3密防止で待合室がいっぱいになってしまうので、車で待てるようにと、導入されるクリニックさんが増えたんですね。(p.46)
林:
車で待つ人用に作られたものが、フードコートに使われて
井上:
それがまたコロナ禍で車用に使われたという。
林:
ビジネスでいうピボット。
井上:
しかも2回ピボット。
林:
人類史ですね、この本。

ウェブそのままではない
林:
これの対談を読んでいる人はもう買いたくなっていると思うので最後にだめおしです。これってデイリーに載ってるそのままではないんですよね。
井上:
結構リライトしました。
林:
井上さんの文章って完成されてるから直さなくてもいいのかと思っていましたが。
井上:
いやいや。ウェブで勢いで書いてる通じる部分が書籍の縦書きにすると、もうちょっとちゃんとしなきゃって思って補強しましたね。 説明が足りてないところとか。

林:
ほんとだ。この本、すでにある原稿の流し込みだけでいいなと思ったら全然そんなことなかった。
井上:
全編こんな調子で。ゲラになってからも写真と本文が離れてたりとかするんで。

林:
思った以上に手が入っている。
井上:
呼び込み君で校正から「ポポポポポー」のポが一個足りません、みたいな指摘もあり。
林:
細かい!
発売中
という本はリアル書店、ネット書店とも絶賛発売中。写真が動物園である理由は、どちらも見学をテーマにしているから、でした(強引!)。
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お知らせ
『絶対に見たことがあるアレの正体、聞いてみた』発売記念トークイベント+サイン会
日時:2026年4月25日(土) 開演時間 13:00
場所:大阪ロフトプラスワンウエスト
出演:井上マサキ&スズキナオ
新刊発売記念イベントを大阪でやります!ゲストはスズキナオさん。お互いDPZで記事を書く者同士、お互いの取材のことなど話せたらと思います。配信もありますのでチェックしてください!(井上)





