2020年5月21日 オンラインイベント「あんたら愛知がすきだらぁナイト」がカルチャーカルチャーと合同で配信されました。
愛知県大府市出身の編集部安藤が愛知を語るイベント。愛知出身者がYouTubeに大集結し、コメント欄が滝のように流れっぱなしの1時間でした。
YouTubeでアーカイブが残っていますが、その熱狂をここにテキストで再現します。(構成:林雄司)
(アーカイブ動画はこちら)
愛知には尾張と三河がある
安藤:
大府市って皆さん知らないと思うので説明します。
この薄紫が名古屋市ですね。大府市は名古屋市の南、知多半島の付け根にあります。大府市は人口は10万人ぐらい、沖縄でいうと宜野湾市と同じぐらい。
林:
たとえがわかりにくい。
安藤:
愛知には尾張と三河があります。まったく文化が違うんですよね。国が違うと思ってください。
名古屋は尾張で、愛知のいちばん西側にあって、武将でいうと織田信長です。
三河っていうのは岡崎とか豊橋あたり。武将は徳川家康。
えびふりゃー、みゃーとかいうのは尾張。
三河の言葉は「じゃん・だら・りん」。
食べりん(食べて)
やりん、(やりなさい)
しりん(しなさい)
大府市も三河弁なので、えびふりゃーではなく、やりん。
本気の尾張と三河が話すと言葉が通じないと思います。
名古屋はエスカに行け
安藤:
でも今日は名古屋で体験できる食べ物とかお話していこうと思います。
名古屋駅は子供の頃はちょっと怖いイメージがあったんですが、セントラルタワーができてきれいになりました。
でも駅裏と言われる西口は僕が住んでた頃の雰囲気を残しているんですよ。
あちらに行くとちょっと懐かしいなと思います。
行ってほしい場所がこのエスカという地下街なんですね。
安藤:
東はたくさん地下街があるんですが、駅裏はエスカしかない。大府市はオスカです。エスカはちょっと庶民的です。
古賀:
おー、しびれるなー
安藤:
入り口はお土産屋が多いですね。守口漬とか。奥の方に行くと名古屋の食べ物がひと通りそろってます。コメダ珈琲とか あとだいたいあんこが入っている。
古賀:
チョコじゃないんだ
安藤:
僕が愛知を離れるまではパフェにはあんこが入ってるもんだとずっと思ってました。パフェにチョコが入ってるとこれはなんだ?と思う。
愛知の人って変わったものを食べてるんですけど、それを認識してないんですよ。
これが正しいと思ってるので。僕はこれに違和感なく育ってきましたね。
安藤:
あとこれがカレーセット
古賀:
ちょっとなに言ってるのかわからないんですが
安藤:
はい、味噌カツ串がごはんに合いますので、ごはんがあります。名古屋でカレーといえばカレーきしめんなんですよ。エスカではそうですね。
(注:安藤個人の感想です)
安藤:
東京に出てきてカレーセットを頼むと、だいたいカレーとサラダとかですが、それはちょっと違和感がありますね。
古賀:
そういうならしょうがないか。
名古屋の長いエビ
安藤:
ここは日本一長いというエビフライが食べられる店なんですね。35センチ
古賀:
まずエビフライの長さで競い合おうという発想がないですからね。
安藤:
いま古賀さんが長さで競わないとか失礼なこと言ってますけど、長さで競うんですよ。
エビフライに長さ以外で競うところがあるかって話ですよ。
長さか色でしょ。味は食べなきゃわかんないじゃん。
林:
これしっぽまで海老入ってるんですか?
安藤:
入ってます。
古賀:
え、じゃあ長い海老なの?
安藤:
長い海老なんですよ。海老は名古屋でとれるわけでも養殖場があるわけでもない。ただ好きってだけ。
シャチホコに似ているから食べるという説がありますが、そんなことで食べるだろうか。
スカイツリーがイカに似てるからって東京の人はイカ食べないじゃないですか。
林:
たべないねえ。あと、イカに似てない。
安藤:
どうしてエビフライが好きになったかは謎なんですけどとにかく好きですね。
安藤:
エスカはショーウィンドウだけでもおもしろいです。見てほしいのはこの5800円。
定食にはありえない値段なんですよ。
林:
高い。
安藤:
名古屋の人は海老ならば仕方ないなと思って6000円出す。
安藤:
店内に入ると海老の飛行船ツェッペリン号が浮かんでいます。
古賀:
どういう世界観?
安藤:
メニュー1ページ目はさっきの6,540円がお得に5,870円で食べられる。安い。2ページ目がエビフライ定食。3ページ目はエビの丼で、4ページ目はエビカレーですね。これで全てです。海老に終止するんですね。
注文して待っている間に壁を見ると、世界の海老が書いてある。
安藤:
さっきの長い海老は、シータイガー。とにかくデカイ。これを使ってます。
林:
地産地消にこだわってないのが潔いね
安藤:
海老の産地でもないのにというのはずっと悩んでいます。答えがわからないですね。
注文するとこれが出てきます。タルタルです。これを潰しながら海老を待つという。
安藤:
エビフライはこうやって出てきます。ハサミが付いていて、ハサミのケースが定規になってるんですよ。めくると測れてエビフライの長さが分かる。
安藤:
ハサミで切って食べると美味しい。美味しいんですけど、子供のころはこういう大きな生き物がいるんだなっていう驚きがありました。あのサイズの海老を見たことがないし。
食べてみると、最初から最後まで詰まっている。これの衣を付ける前の状態の海老というのは誰も見たことがない。
(注:安藤個人の感想です)
藤原:
あそこで働くしかないんじゃないですか。
安藤:
エビの正体を見るために会社をやめて。
あんまき
安藤:
皆さんご存知だと思いますけど、あんまきです。あんまきは本当に名古屋しかない食べ物だと思います。これは三河にある藤田屋という店です。
あずき、しろ、天ぷらあんまきがあります。
古賀:
甘いものを揚げちゃう発想がアメリカン
林:
オレオフライみたいな
安藤:
何度も言いますけど愛知の人は自分たちがおかしなものを食べているという認識がないので、いま見てもそんなに違和感ないんですよ。
ここで育てしまったので。
なのでちょっと皆さんがその驚かれるテンションがわからない(怒)
安藤:
藤田屋は知立市というところにあって、町のキャラクターちりゅっぴのポシェットがあんまきなんですよ。
安藤:
ちゆりっぴはゆるキャラグランプリ2017で準グランプリ獲得してます。それぐらいあんまきは全国的なものなんですね。
安藤:
知立にあるのがこの藤田屋。大あんまきだけの店。2階は法事ができます。僕が住んでいた大府市からは15キロぐらいありますね。
中学生のころ自転車、愛知でいうケッタマシーン(以下「ケッタ」)で行こうと思って諦めたことがあります。
林:
スタンド・バイ・ミーみたいだ
安藤:
どこまでケッタで行けるかっていうのが強さのバロメーターなんですよ。おれは知立まで行った、おれは師崎、おれは三重まで、とか。
横山:
本当にスタンド・バイ・ミーだ。
林:
途中で汽車に追いかけられたり。
安藤:
野良犬に追いかけられたり。僕は師崎まで行きました。ナガシマスパーランドまで行った鈴木くんが最高でした。中山美穂ショーを見るために。僕はバスで行って見ました。鈴木くんは着いた時点で汗だくでした。
安藤:
で、藤田屋はロードサイドなので、お客さんは車でできて10個20個買って行きますね。
古賀:
ドライブインなんですよね?普通は峠の釜飯みたいなごはん物を売ると思うんですが…
安藤:
どこがおかしいんですか!!!
林:
キレた
安藤:
弁当売ったら車から降りて両手で食べなきゃいけないじゃないですか。あんまきだったら片手で食べながら運転できるから理にかなってるんですよ。
古賀:
こわい。
安藤:
何年か前にマッドマックスっていう映画があって、オーストラリアの砂漠を車で走ってましたが、あれが愛知県のイメージに似てるんですよ。
荒くれものたちがガソリンを求めるように、国道155線を走って藤田屋であんまきを食べる。
マッドマックス怒りの藤田屋。
藤田屋の隣に巨大な国道があって……共感してないですか?
古賀:
めちゃくちゃ行きたいですよ
安藤:
行ってみれば分かると思いますが、マッドマックスの世界観です。
鬼まん
安藤:
鬼まんは愛知の中でもメジャーな食べ物だと思ってまして、
林:
これはなんですか
安藤:
あ、そうですか、そこからですか。
鬼まんは鬼まんじゅうの略です。
サツマイモが入った蒸しパンと間違えられるんですが、決定的に違います。
質感も違うし、歯ごたえも密度もまったく違う。
鬼まんというのはエアーがはいってない。蒸しパンはふっくらしてますが、そういうのはないんです。
安藤:
上から見ると丸いけど、横から見ると平べったい。蒸すとき自重で潰れるんですよ。それぐらい重い。
林:
蒸すと膨らまないんだ。
安藤:
ひろがります。岐阜出身の編集部石川いわく、すいとんに近いたべもの。
小麦粉で、さほど甘くもない。それがさほど甘くもない芋を固めてある。モチモチ感はあります。
林:
ぜんぜん魅力が伝わってこない。
横山:
ちょっといいですか。これはおいしいんですか?
安藤:
美味しいというのは自分の心構え、主観じゃないですか。
古賀:
たべたいなー。私は芋好きとして自分を恥じてます。
鬼まんを私は知らずに生きてきたとは。
安藤:
鬼まんは愛知以外で売ってないんですよ。時間が経つと固くなっちゃうので、東京まで持ってこれない。
似た食べ物は東京にもある。蒸しパンのなかに四角いさつまいもが入っているやつ。あれは偽物ですよ。
林:
安藤さんに聞いて楽天で検索したら鬼まんののぼりしか出てこなかった。
安藤:
通販では売れないし。愛知から出て売ってやろうという気持ちはないです。
鬼まんは東京で売ってないので名古屋まで買いに行くしかない。
時間が経つと固くなるんですよ。固くなるとゴムみたいで。タンスの下に敷く耐震シートみたいになる。
林:
たべてみたい
安藤:
その日だったら歯が立つけど。東京につくとゴムになってます。
安藤:
デパ地下でも売ってます。写真は名店 梅花堂です。
写真の右側に電光掲示板がありますが、これが消えると売れきれ。
150円ぐらい。子供の頃はもっと安かった。美味しいというか、まぁ鬼まんですよね。
でも買うというよりも友達の家の母親が作るみたいなイメージでした。
林:
安藤さん、さっきから味の説明を微妙に避けてない?
安藤:
美味しいといっていいのか…。美味しさのもとになるパンチのある甘みとかしょっぱさではないわけですよ。
古賀:
干し芋みたいな?
安藤:
そうですねなんて言うかなあ
林:
芋羊羹みたいな感じ?
安藤:
いや、芋ようかんは甘いじゃないですか。あれから甘みをとって食感を悪くした感じですね。
古賀:
愛知の食文化ってみそとかパンチのあるものかと思えば、ういろうのような もわっとした味わいを好んだりして…
安藤:
でも根底にあるのは同じだと思うんですよ。垢抜けきれなかった。
料理とか文化って醸成されて進化するじゃないですか。美味しくしようとかきれいにしようとかちっちゃくして儲けようとかそういう感じはしないです。
洗練とまったく逆の方向に走っていくんですよね。
安藤:
ういろうとかインゴットみたい素材の塊ですから。それをそのまま売るかっていう感じもあって。それはこの生せんべいにも現れてるんですけどね。
生せんべい
安藤:
これは東海地方というか本当に愛知だけだと思います。
これからういろうが発生したという説もあります。ベタベタしたせんべいなんです。
知多半島近辺で食べられているもので。戦国時代に武将がですね、せんべいを焼いている時間もないから生で食ったのがはじまりらしいです。
横山:
どんな味なの?
安藤:
べとべとしてますね。
古賀:
味は?!
安藤:
ういろうから風味を消した感じ…砂糖のあじがします。ういろうとか八ツ橋の元祖って言われているんですが、どっちも商品として完成されてるじゃないですか。
八ツ橋なんかニッキの香りがしたりとかするんですけど、生せんべいはもう全てそういうのを取っ払った感じですね。
香料とかそういうしゃれたものを全部排除。
林:
首が長くなる前のキリンのような存在
安藤:
そうですね。原人のような感じですね。僕は自信をもっておいしいと思ってます。
そのまあういろうは有名ですよね。あれはスター選手なんです。その原型が生せんべい。
安藤:
これはこの3層に分かれてて、めくって食べられるらしいんですが、僕はそのままちぎって食べてました。
林:
むかない安藤の始まりだ。
安藤:
ええ、層のまま食べてました。
最後に質問
安藤:
ここまででなにか質問はありますか?
古賀:
あんまきは味としてはどら焼きみたいなもの?
安藤:
それは…古賀さんわかってないですね。プレゼン聞いてもそんな発言が出るのはわかってない証拠。どら焼きとか蒸しパンとか芋ようかんとかそういうのと比べたらダメですよ。ぜんぜん違います。
古賀:
ふわふわしてないの?
安藤:
してないです。重いです。持つと意外に重いです。
古賀:
コメントで失敗した蒸しパンみたいな感じ、ってありますけど、
安藤:
それはわかります。そんな感じですね。
林:
あんまきって切らないの?
安藤:
切る?チュロスみたいに食べるんです!
切るという発想はなかったのでびっくりしました。(呆れ気味に)
安藤:
ではきょうはこれぐらいで勘弁しておいてやる。
(おわり)
アーカイブ動画はこちらです
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このカルカルとの合同イベントの次回は5月28日21時~ テーマは群馬です。