数年前、代々木公園でやっていたタイフードフェスティバルに、ひとりで行ったときのこと。
私はタイカレーを食べながらシンハービールを飲んで、ふらふら、雑踏を歩いていた。
タイ料理の匂いのなか、ふと隣の代々木国立競技場のほうをみると、ぽーん、と、赤いスカートの女の子が、空中を飛んでいるのが見えた。
「!?」
最初、マボロシかと思った。
近付いて、柵のすきまからよく見ると、そこにはチアリーダーの女の子たちがいっぱいいた。いろんなユニフォーム、たくさんのグループ。
彼女たちは、円になって打ち合わせをしたり、アクロバティックな演技のリハーサルをしたりしていた。
「そうか、場内でチアリーダーの大会が開催されていて、出番待ちをしてるんだ!」
ぎゃー、すごいすごい、すごいすごいすごい。興奮して、ええいダメもとだ、と思いながら、競技場の受け付けまで行ってみた。
「あのうー、チアーの大会やってるんですよね!?」
受け付けのかたは、怪訝な顔をした。そりゃそうだ、両手にカレーとビール瓶を持ったほろ酔い状態の女が、ハイテンションで来たのだから。
「……そうですけれども」
「あのう、見学とかって出来ないですか!?」
「いや、ちょっと……」
「だめですか?」
「……」
「……だめ、ですよね…」
がっくりして帰った。そのあと家で、チアーの映像や本なんかの資料がないか、ネット検索しまくってみたんだけれど、(当時は)何もなかった。
本当は滅茶苦茶ハードなスポーツなのに、キラキラ華やかで楽しい美しい、チアリーディング。
何しろ笑顔でアクロバット。かっこいいかっこいいかっこいい! 女子、永遠の憧れ。
チアが見たいよ、チアのこと知りたいよ。
っていうか私、チアリーダーになりたかったんだよ!(ていうか、今もなりたいんだよ!)
(text by 大塚 幸代) |