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特集


はっけんの水曜日
 
チアリーダーになりたかった

「おつかれさまです! 
あのう、無理矢理見学に来ちゃったくせに恥ずかしいんですが、私、チアーの基礎知識からよく分かってないんです。是非そっから教えてください。
チアーって、体操競技的なものと、ダンスと、2種類の方向性があるってきいたんですけれども……」
「そうですね、組体操は『スタンツ』って言うんですが、スタンツが基本の『チアリーディング』と、ゴリエちゃんに代表される『チアダンス』と、2種類あります。まとめている団体も、国内にふたつあるんですよ。私たちは『チアリーディング』のほうに所属してます」
「あ、団体自体が違うんですね、別モノなんですね」
「でも、『チアリーディング』の中にも、『チアダンス』の要素があるんです、ダンスがはいっているので」
「なるほど。だから混同されちゃうこともあるんですね……。
で、こんなふうに繰り返し長時間練習して、作品になったときって、全体で何分ぐらいになっちゃうんですか?」
「公式大会では、2分20秒から2分30秒以内、って決まってます。……大会の資料ビデオがあるんで、強豪チームの演技、見てみますか?」
「うわ、見たいです!
(デジカム画面で試写中)……バック転してるし、すさまじいでっかい旗で学校名を出したり、スタンツもばっちり決まってるし、シンクロしてるし、確かにスゴイ……」
「私、このB女子大、好きなんですよー」
「あのー演技もすごいけど、お客さんの熱狂ぶりが想像以上にものすごいですね、女子多くて、なんだろう、ジャニーズのコンサートばりの黄色い声援……。
でもこれで2分半? ほんとに? すごく長く感じますね。次々にいろんな出し物が、密度濃く放出されてるからかしら……」
「チアリーディングって、構成が決まってるんですよ。
2分半のなかで『オープニング/サイドライン・チアー/エンディング』って3つのパートに分かれていて。
『オープニング』『エンディング』では音楽を使ってスタンツをするんですが、中間の『サイドライン・チアー』では、音楽を使っちゃいけないんです」

「え、そんな決まりが!」
「1分20秒から30秒間は音楽ナシで、声だけの部分があるんです」
「実は皆さんの声を聞いていて、一生懸命解読しようと思ったんですけれども、こう、分からなくてですね……。コールって、決めゼリフとか定番フレーズとか、あるんですか?」
「チアでは、自分たちのチームカラーを言うんです。『レッド アンド ホワイト』とか」
「色ですか!」
「色のほか、『カモン、エブリバディ セイ、ゴー、ファイト、ウィン!』とか……それは見てる方に一緒に言ってください、というアピールですね」
「ああそうか、チアー(応援)をリードするわけだから、お客さんとの一体化が要求されるんですね。コール&レスポンスですね」
「だいたいどこの学校も、伝統的に決まっているコールがあるんですよ。有名なチームのコールは皆が覚えていて、チームが入場する時点で、そのコールを観客が言ってたりします。大会で、自分たちのコールを紙にコピーして配っているチームもいるし」
「へ、へえー! 合唱しちゃうんですね」
「で、オープニングはだいたい『ジャスト ドウー イット!』でシメるチームが多くて、エンディングでは チーム名を言って終わる、という感じです。『ゴー、なんとかズ!』というような」
「フォーメーションを変えるとき、決めたコールじゃなくて、皆がバラバラに何か叫んでるじゃないですか。あれも決まってるんですか?」
「いえ、あれは『フリーアピール』というんですけれども、自由に言ってます。だいたい『オーライ』『カモン』『レッツゴー』ですね」
「『イエス!』は?」
「『イエス!』は、(技が)決まったときに言いますね」
「スタンツって、……皆さん、小さい頃から体操やってた方ばっかり、とかじゃないですよね」
「私も、大学に入ってから始めました」
「それであんな技を……コツとかってあるんですか?」
「筋肉も必要ですし筋トレもしますけれど、やはり力というより、身体に軸を作らないといけないんです」
「バランス、ですか」
「そう、乗ってる側も、乗せる側も、バランスが重要なんです」
「初心者が3段組になるまでって、どのくらいかかるものなんですか?」
「それはもう、本当に個人差で。……練習では、既に出来る人3人と、初心者1人、の4人組でやってみて、慣らしていったり、徐々に徐々に」
「はー…(私、出来ないだろうなあ)。
あと音楽って、いろんなものを少しづつ、ワンフレーズずつつなげて使ってるじゃないですか。あれの選曲っていうのは、どうやってるんですか?」
「自分たちで持ち寄って決めてます。演技と曲って、同時進行できめるんです。『カウント表』っていう、8ビートづつで区切ってある表を、作るんです」
「そうか、台本があるんですね」
「最初は実際動かないでカウント表だけ皆で見て、イメージしてみたりしますよ」
「イメトレですね。
あと、すっごい細かい話で申し訳ないんですけど……みなさん髪の毛、黒いですよね」
「数年前から、大会では、茶髪NGになったんです」
「ええ! そうなのか、なんでだろう……しかしきびしいですね」
「あと、ピンが絶対使えないんですよ。ケガのもとになっちゃうので」
「そうか、刺さるとマズいですね。それは実際やってるかたしか分からない話ですね」
「長い人は編み込んだり、あとユニホームの一部としてリボンを付けたりするのでポニーテールにしたり……髪型はかなり制限されますね」
「そうなのかー……。
しかし、うーん、やっぱ大会とか見たいです、生で」
「5月に選抜大会、8月末から9月にジャパンカップ、12月に学生選手権がありますよ。一般のかたも入れるようになっていると思うんですけれど、会場が狭いせいか……なかなかチケット入手困難みたいですね」
「ちなみに世界選手権とかあるんですか?」
「この間、ありましたよ、代々木で」
「え、代々木で!」
「まだ3回目で、チアーをやっている国って少ないので、10ケ国くらいしか参加していないんですけれど」
「どのへんの国が出場してるんですか?」
「ロシア、ドイツ、イギリス、フィンランド、スウェーデン、スロベニア、台湾……とか。今回はアメリカが不参加だったんですが」
「どこが優勝したんですか?」
「オールフィメール部門が1位日本、2位フィンランド、3位が台湾でした。男女混成部門は1位が台湾、2位日本、3位フィンランド。特に総合順位は出てないんですけど、全体でみたらやはり日本がいちばんかと思います」
「日本、強いんですね。でも台湾、フィンランド……っていうのがなんか意外です」
「以前からジャパンカップを観に来る台湾の人が多かったんですが……今回の審査評では『台湾は、日本のチアーとアメリカのチアーの良いところをミックスして取り入れてる』って言われていました」
「台湾でチアーがいま伸びてる、ってことなんですね。
アメリカのチアー……って、どうなんでしょう」
「チアーの歴史が古いし、日本と違ってチアリーダーが『学校の誇り』みたいな存在ですし、高く飛ぶとか、技術はすごいんですが……ノリがちょっと違うんです。シンクロナイゼーションの点で言うと、日本や台湾のほうが上手いんです」
「ああ、アメリカのチアリーダーさんて、バラバラな感じしますね……そこに重点を置いてないのかもですね。
で、今見学してお話聞いて、私もチアリーダーに挑戦したいと思ってたんですけど、ええと、声出し以外は無理だな、と思ったので……。是非声出しのコツを教えてください」
「あまり高い、キンキン声は駄目なんです。おなかから出すように、私は心がけてます」
「おなかから、ですね」
「あと、初心者でも、『モーション』という型の組み合わせだったら、出来ると思いますよ」
「え! じゃあそれを幾つか教えてください!」


『タッチダウン』 『パンチアップ』

 

『ハイV』 『ローV』
『Tモーション』 『ダガー』
『ランジ』(脚の形の名称) 『Kモーション』 
『Lモーション』 『ブロークンT』

お手本動画(音声なし)。これらを組み合わせると、こんな動きになります。かっけえ!

WindowsMedia
ブロードバンドナローバンド
real Player
ブロードバンドナローバンド


「簡単そう……いやいや、ぜんぜん簡単じゃないっすよコレ!」



 

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