本物のミルフィーユ
ミルフィーユという、パイとクリームが重なったケーキがある。このミルフィーユ、フランス語で「千枚の葉」という意味らしいのだが、実際にパイ生地が千枚も重なっているのか? もしや過剰申告じゃないのか? そのへんどうなのよ、と思ったことはないだろうか。
思えば、世の東西を問わず「千枚漬け」や「サウザンアイランドドレッシング」など、名前に「千」の付く食べ物は多い。 特に日本の場合は「千切り」や「千六本」など、調理の過程にも「千」という数字を使いがちだ。
フランス人も「とにかく薄いのがたくさん!」ということが言いたくて、勢いで「千枚」なんて言ったんじゃないか。
そんなわけで、正真正銘のミルフィーユを作ることにした。
とりあえず、試作としてパイシートから型を取り、焼いてみることにする。
パイを焼くのは、というより、お菓子作りをするのは中学生のとき以来だ。カンを取り戻しがてら、試し焼きといこうじゃないか。
と、さっそくオーブンで焼き上げたのだが、中からはなにやら奇怪なものが出てきた。
えーと。ちなみにこのパイシート、パッケージにはこのように書いてあります。
このパイシートを7枚くっつけて、1008層のパイを作るつもりだったのですが。…あー。そうだった。ヘタにこの生地を伸ばしたりすると、層が出来なかったり、膨らまなかったりするんだった。そもそもシート同士は、そう簡単にくっつかない。徐々に中学の頃の記憶がよみがえってきた。
…いきなり企画倒れの匂いがぷんぷんする。だが、こうなったからには、パイ7枚が同時に皿の上に乗った状態を完成形としたい。同じ「千枚の葉」なことには違いあるまい。
そんなわけで、とにかく形のキレイなパイを作ることに専念することにした。
結果、当初の予定を大幅に超えた量のパイを焼き上げてしまった。狭い部屋は、パイに侵食されたと言ってもよかった。