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ひらめきの月曜日
 
畑のキャビアを手作りする


分からないことだらけ

ここで、ハタと気がついた。まず、茹で時間が分からない。それに、実の周りに付いている皮を、どうやって取り除けばいいのだ。まさか1個ずつ手作業で剥くわけではあるまい。

しかし、これだけ粒が小さいことだし、ものの1分もあれば茹で上がるだろうとアバウトに想定。皮も「柔らかくなったら自然に剥けるんじゃないか」とノンキに構えることにした。

とにかく、いくらネットで検索しても、とんぶりの詳しい作り方なんてどこにも載っていないのだ。すべて想像で補うしかない。

直径1〜2ミリほどの粒の集まり
ザバーッと投入

卓上コンロに鍋をセットし、沸騰したお湯に実を入れて、茹でること約1分。皮を剥くために、実を流しでゴシゴシと洗った。

…ゴシゴシ、シャリシャリ。


ザルにあけて流水で洗う

…ん? シャリシャリというこの音は何だ。とんぶりって、もっと柔らかい食べ物のハズじゃないか。米を研ぐ時のようなシャリシャリした音がするなんて考えられない。

試しに1粒、口に放り込んでみた。

ジャリリ。

これ、まだ全然、茹だってません。硬いです。タネです。


「煎じ中」と言いたくなる色に
困った時には電子レンジを使おう
皮を取るため、水を換えて何度も洗います

柔らかくなりません

再び茹での作業を再開することにした。お米だって炊き上がるには時間がかかる。とんぶりにも同じことが言えるのかもしれない。

茹でながら、たまに箸でつまんで硬さをチェックするのだが、いつまで経っても実は硬いままだ。大丈夫なのか。

20分、30分と時間が経過するとともに、お湯もぐんぐんと減り始め、色も煮詰まったように茶色くなってきた。

お湯を足して、さらに茹で続ける。不安だ。これ、本当にとんぶりになるんだろうか。

作り方が分からないという点で、今の私は江戸時代の「なんとか食べられないか」と思案した人たちと条件は一緒なはずだ。同じ土俵に立っていると言っても過言ではない。

しかも今は電子レンジがある。さすがに江戸時代に電子レンジはないだろう。文明の利器を使える点では、先人達より条件には恵まれている。

…そう思って電子レンジでチンしてみたものの、一向に柔らかくなる気配がない。

再び鍋に戻して茹でる。もう1時間以上茹でている。早くもカセットコンロのガスが無くなりそうだ。おかしい。こんなに時間がかかるものなのか?

この不安を超えたところに、とんぶりはあるのか?

 

出来ました

茹で時間、計1時間30分。豚の角煮でも作るのか、というほどの時間をかけて、畑のキャビアこと「とんぶり」が完成した。


うやうやしく盛り付けてみました

で、結論からいうと、これは市販されているとんぶりとは、全く異なるものだった。結局、柔らかくなることはなかったのである。皮も少しは取れたが、大部分は付いたまんまだ。

手作りしたもの。とにかく黒い
市販のもの。深い緑色をしています

作ったからには、せっかくだから食べてみよう。この硬さも、胡麻だと思えば「こういうのもアリだな」と思えるかもしれないし、昔の人が最初に食べたのも、もしかしたらこんなシロモノだったかもしれない。そう思えば感慨もひとしおだ。

そこで、これも実家ではよく食べていた「とんぶり納豆」にして試食することにした。


言うまでもありませんが、手前の黒いのが自作のとんぶりです
これほど食べるのに勇気が要る物も珍しい

シャリ、シャリ…。いや、決して食べられない硬さではない。ただ、なんというか(シャリ、シャリ)これは口当たりがなんとも言えず(シャリ、シャリ)…悪い。味は…ない(シャリ)。

ついでにクラッカーに乗せてみた。「久し振りにマズイ食べ物を作ったな」と思いました

もしかして

茹でながら、心の隅に湧き上がってきたことが2つある。

1つは「これは本当にホウキの実なのか?」ということと、もう1つは「食用には、もっと若い実を採取するべきだったのではないか?」
ということだ。

市販のとんぶりが緑色がかっていたことを考えると、後者の疑問が「当たり」な可能性が高そうだが、果たしてどうなんだろう。確かめてみようにも、来年まで待つしかない。

真相を知る方がいるのなら、是非教えてほしいところです。

せっかくなので、残った枝の部分をホウキにしてみました

 

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