日系人のおじさんと話す
ブラジリアンプラザの1階にある軽食コーナーの前で、オレンジ色のパンに見とれていたら、店員のマダムに声をかけられた。
「これ美味しいわよー。中身はチキンなのよ、こっちはビーフ……」
カラフルなワンピース、顔の造型は日本人だけれど日本人っぽくない化粧。親切に色々と説明をしてくれる。
「アイスピーチティも美味しいわよ」
言われるままに買ってしまう。
「あ、これかけたら美味しいから!」
彼女はアイスティ用のグラス2つと、野菜のピクルス、ブラジルのタバスコを持ってきてくれた。
「きみたち、日本人?」
隣に座っていた、おっちゃんたちの1人に話しかけられた。彼らはビールを飲んでいた。
「ハイ、そうです……」
「どこから来たの?」
「東京から……」
「へええ、変わり者だねえー、ははは」
「このへんに、お住まいなんですか?」
「いや、僕は仕事で埼玉から来てる。ブラジルの人、みんないい奴だから、ここで飲んでるんだ、ははは。
歩いてる女の子も、おしりが綺麗で可愛いしね。ほんとにねえ、彼女たちのおしりはキュっと上がってて、全然違うねえ。
……あ、彼は同い年なんだけど、ブラジル人なんだよ」
おっちゃんの向かいに座っていたおっちゃんは、顔はどう見ても日本人だった。
「僕は、日系2世。お父さんもお母さんも日本人なんだけど、ブラジルで生まれだからブラジル人なんだよ……」
おっちゃんの言葉は、すこしたどたどしかった。
「いやあ、彼はいいやつだよ、ブラジルの人はみんないいよ、あははは……」
日本人のおっちゃんが笑う横で、日系人のおっちゃんは、苦笑いをしていた。
彼にちょっとだけ話をきいた。ブラジルから日本に来て、いろんな土地で働いたこと。でも今は、ここ大泉が、いちばん居心地がいいということ。
「また遊びに来なさいねえ、お祭りもあるしね。すごいよ、そこの通りが、サンバでいっぱいになるよ」
また来ます、チャオ、チャオ、と言って別れた。
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