車を降りて一面に広がるワサビ田を前にする。
「これ、全部ワサビですか?」
「そうです。全部ワサビです」
この時期はワサビの花が咲き、葉も新緑。1年で一番ワサビ田が綺麗な時期らしい。
「ワサビ田は石、砂利、砂の3層で人工的に作られています」
確かにワサビ田の断面は地層のようになっていて、どの田んぼも綺麗な水がはられている。
「ワサビは水がつくってくれるんです」
高村さん(父)は言う。
綺麗な水が豊富にある地方でないとワサビは育たない。
また、1年中収穫出来るので夏の暑さは大敵で、夏涼しい事も条件に加わる。
水と気温、その条件を満たした中伊豆地方でワサビ栽培が始まったのは今から250年前。高村さん(父)は7代目にあたるという。
今のワサビ栽培はパイプ栽培、植石栽培、の2種類が主流。
パイプの中で苗を育てるパイプ栽培は水に流される事がなく害虫からも守れるので収穫率が高いが、直接水に触れないので味が若干落ちてしまい、市場価格も3割は安くなる。
石をおもりにして苗を支える植石栽培は直接水に触れて育てる事が出来るので味はいいが収穫率が下がる。
田んぼの状態によってパイプ栽培と植石栽培を使い分けているとの事。
「パイプ栽培で育てたワサビはまっすぐで、植石栽培の場合は曲がります」
スーパーで生ワサビを手にして
「これは植石栽培だな」
と蘊蓄をかたむければ、お美味しんぼ山岡に一歩近付けます。
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