笑いにつながる違和感
食べるものを注文したあとも、読み物として面白いのでメニューを精読してしまう。よく読むと日本語部分にも斬新な表現があったりする。キムチやおしんこもある幅の広さ、そして念を入れた注意書きにお店の真面目さを感じ取れる。
さて、しばらくしてやってきたチキンカレーのセット。こんな感じだ。
カレーでありながらも、見た目はなんだか和風っぽくもある。その原因は、合羽橋でも見かけた和定食の店でよく使っているようなお盆にもあるだろう。
それでいて、漂ってくる香りは思いっきりエスニック。でもカレーにネギが散らしてあったりして、全ての感覚が一体化してこない。
ご飯茶碗は前ページで見た通り、種類がいくつかあるようなのだが、今回私の元にやってきたのもクラシックな定食屋で使われているような柄。
スープは普通の汁椀だが、味の方はナンプラーが効いていてタイ料理を思わせる。お盆の左奥にある煮物は、見た目こそよくあるごった煮のようだが、やっぱり アジアンテイスト漂うスパイスが効いている。
もちろんカレーも日本式ではない風味。どれを食べても、はっきりとエスニックなのだ。
お盆の右奥の小皿には、食べるラー油のように見えるものがある。これはどうやら「ミャンマーふりかけ」なるものらしい。この言葉の違和感も絶妙だ。
その正体は、唐辛子やエビ・小魚などを低温の油で煮たもの。食べてみると旨みがすごいのだが、辛さもすごい。ご飯が強制的に進む味わいだ。
このセット、これで750円だから安い。追加で頼んだココナッツミルクを使ったラーメンも、名前は思い出せないけどおいしかった。他のメニューもどれも手頃な価格で、いろんな味を気軽に楽しめる。
さて、日を改めて合羽橋で買ってきた食器を使ってみよう。まずはこれだ。
四角形のお重。うなぎ屋さんでうな重を頼むと、こういうのに入って出てくるだろう。一般家庭ではあまり使わないような食器だと思う。それゆえに特定の食べ物との結びつきが強い。
結構いろいろな種類の柄があったのだが、「いかにも」という感じを重視してのこのチョイス。これでもかと和風。心の中で曖昧なイメージと共によみがえるのは源氏物語。
実践当日の朝、妻に「今日の夕飯のメニュー、これに盛りつけて出してね」と頼んでおいた。帰宅して蓋を開けると、こういうことになっていた。
その日の献立はクリームシチュー。アスパラガスや鶏肉といった具がゴロゴロと入っていておいしそう。シチュー部分だけに視線を集中させるならば、だ。
器、特に蓋部分とトータルで考えると一気に妙な気持ちになる。頭の中で混ざる源氏物語とクリームシチュー。いや、それ、混ざるわけないだろう。
自分で意図的にやったことながら、ぬぐえない違和感。なんだかなー、と思いながら食べるが、口にするといつも通りにおいしい。やっぱり普段と同じじゃないか。
と、思って器を見てよみがえる違和感。戸惑いとおいしさの間で揺れる気持ち。この感覚を味わいたかったのだ。